歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
44 巻, 6 号
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  • 特に頬筋内の走行と開口部付近の形態について
    天野 カオリ, 志賀 華絵, 祐川 励起, 伊藤 一三
    2002 年 44 巻 6 号 p. 515-521
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    ヒト耳下腺管は, 咀嚼運動における咬筋や, 嚥下時における頬筋などの周囲組織の動きに伴い, その影響を受けていると考えられる. 本研究においては, 耳下腺管と頬筋との関連性および開口部付近の構造について, 成人遺体を使用し, 主にSEMで観察し, 機能との関係を考察した. その結果, 頬筋内を走行中の耳下腺管壁には, 頬筋線維束が管壁に近接して長軸方向に走行していた. この筋線維束の一部は, 管壁を構成する結合組織層内に浸入していた. また, 管腔内面の粘膜上皮には頬筋進入前では輪状のヒダがみられた. 頬筋内において縦走するヒダとなり, 頬粘膜下組織に入ると扁平な小隆起状となり, 一部の例において開口部は縦走する隆起により, 巾着状を呈していた. 以上のことから, 耳下腺管は唾液の流れの調節あるいは口腔内からの液体逆流防止などに関連した形態を備えていることが示唆された.
  • Kiyoshi Daito, Yasutaka Azuma, Michiharu Daito, Kiyoshi Ohura
    2002 年 44 巻 6 号 p. 522-529
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    プロスタグランジンD2 (PGD2) は, その受容体であるDP受容体を介して作用することが知られている. 今回われわれは, DP受容体アゴニストであるBW245Cが, 自然免疫系において重要な機能的役割を演じるマクロファージの機能に対して影響を与えることを見いだした. BW245Cはマクロファージ遊走能に対しては, 0.1から10μMにおいて抑制したが, 貪食能に対しては10μMにおいてのみ抑制が認められた. また, BW245CはPMA刺激条件下でのスーパーオキサイド産生能を0.1から10μMにおいて抑制したのに対して, LPS刺激条件下でのNO産生能は10μMにおいてのみ抑制がみられた. さらに, 炎症性サイトカインであるTNF-αに対しては, LPS刺激条件下においてBW245Cは1および10μMにおいて増強効果を示した. 以上の結果より, PGD2はその受容体を介してマクロファージ機能に影響を与える可能性が示唆される.
  • 宮本 哲朗, 水野 守道, 田村 正人, 川浪 雅光
    2002 年 44 巻 6 号 p. 530-540
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    高等動物の骨髄間質細胞のなかには, 多分化能を有する間葉系幹細胞が存在し, 培養下においても, 種々の条件によりさまざまな細胞に分化しうると考えられている. われわれは, これまでにラット骨髄間質細胞をI型コラーゲンとともに培養することにより, 骨芽細胞への分化が誘導されることを報告してきた. 本研究では, 細胞の三次元的配置と細胞分化との関連を明らかにする目的で, ラット骨髄間質細胞を通常の培養用ディシュにて単層培養した群 (2D群), I型コラーゲンをコートしたディシュにて培養した群 (COAT群) ならびにI型コラーゲンゲル内にて三次元培養を行った群 (3D群) にてそれぞれ培養し, 遺伝子発現を比較検討した. 3D群において, ほかの2群と比較して, アルカリホスファターゼ活性が高く, 骨シアロプロテインおよびオステオカルシンの遺伝子発現が誘導された. 本研究により, ラット骨髄間質細胞をI型コラーゲンゲル内で三次元的に培養することにより, 骨芽細胞の分化が誘導されることを明らかにした.
  • Seigo Ohba, Tomomi Baba, Takayuki Nemoto, Tsugio Inokuchi
    2002 年 44 巻 6 号 p. 541-548
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    コラーゲンの異常な発現と蓄積に起因する瘢痕形成は, 生後の外科処置後の深刻な問題である. 一方, 胎児の創傷は瘢痕を形成することなく治癒する. Heat shock protein 47 (Hsp47) はコラーゲンに特異的な分子シャペロンであり, 瘢痕部での発現の増加が認められる. 本研究では, 胎仔および新生仔のラット舌由来の線維芽細胞を用いて, TGF-β1に誘導されるHsp47, IおよびIII型コラーゲンの発現パターンを比較検討した. 新生仔由来線維芽細胞では, TGF-β1処理によりHsp47およびコラーゲンの発現はmRNA, タンパク質ともに増加した. これに対して, 胎仔由来線維芽細胞ではそれらの増加は認められなかった. さらに, プロモーター/レポーター活性を比較するために, マウスHsp47遺伝子のエンハンサー/プロモーター領域を含んだpLUC 5.5 (III) を用いてレポーターアッセイを行った. その結果, 新生仔由来線維芽細胞ではTGF-β1処理により高い活性が認められたが, 胎仔由来線維芽細胞では認められなかった. 以上のことより, Hsp47の発現は新生仔ラットではTGF-β1により増加することが明らかになった. さらに, 胎仔と新生仔におけるHsp47の発現様相の差は, 遺伝子の転写レベルですでに存在することが明らかになった. 個体発生および発育過程におけるHsp47生成のメカニズムの解明は, 生後の創傷を無瘢痕性に治癒させる治療法に寄与すると思われる.
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