歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
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選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • Masayasu Kageyama, Ichizoh Itoh
    2003 年 45 巻 6 号 p. 397-406
    発行日: 2003/12/20
    公開日: 2010/09/28
    ジャーナル フリー
    解剖実習用遺体を用いて, 側頭筋前部筋束の深層にある深部筋束の形態について観察した. この筋束の起始部である側頭下稜については, 頭蓋骨の骨面形態も併せて観察した結果, 以下の結論を得た.
    1. 神経支配や筋膜の状態から, 側頭筋前部筋束の一部と思われた.
    2. 高齢者では, 起始部である側頭下稜の骨面に突起が認められた.
    3. この筋束は, 長径36.85±2.78mm, 幅径12.49±1.37mmで眼耳平面に対する傾斜角は80.83±2.46°であった.
    以上のことから, 深部筋束は浅層の前部筋束の一部であるが下顎運動の際, 強い力が働き, 筋の付着部の骨表面に変化をもたらし, 筋束自体も独立した筋線維束として発達したものと考えられた.
  • 左右顎関節の比較
    豊島 靖子, 飯塚 正, 會田 英紀, 向後 隆男, 大畑 昇
    2003 年 45 巻 6 号 p. 407-417
    発行日: 2003/12/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    一歯のみに外傷性咬合を引き起こしたときの顎関節の組織変化について明らかにすることを目的に, 次の実験を行った. 7週齢の雄性Wistar系ラットを用い, 上顎左側第一臼歯の咬合面にレジンを2mm築盛し, 外傷性咬合を付与した. レジンを築盛した群を実験群とし, 左側を処置側, 右側を無処置側とし, 無処置の群を対照群とした. 実験期間は外傷性咬合付与後3日から56日で, 通法に従い前頭断連続切片標本を作製し, 顎関節の変化について, 組織学的ならびに組織計量学的に比較検討した. 下顎頭では実験側, 無処置側ともに7日後に軟骨層で萎縮性の変化がみられたが, その後BrdU陽性細胞数の増加や軟骨層の肥厚がみられ, これらの値は対照群と比較して高値で, 14日目には最大値を示し, 28日後では対照群と同様の組織像を示した. 以上の所見より, 一歯のみの外傷性咬合の場合, 下顎頭の変化には両側で同様の組織学的変化が生じることが明らかになった.
  • Noritaka Wakana, Satonari Akutsu, Akira Yamane
    2003 年 45 巻 6 号 p. 418-427
    発行日: 2003/12/20
    公開日: 2010/09/28
    ジャーナル フリー
    6カ月齢マウス咬筋において, クレンブテロールがインスリン様増殖因子 (IGF), その受容体 (IGFR) および結合蛋白質 (IGFBP) の発現を変化させることにより, 筋線維直径および線維タイプの変化を引き起こす可能性を検証するため, 咬筋の線維直径を測定し, 線維タイプのマーカーであるミオシン重鎖, IGF, IGFRおよびIGFBP mRNAの発現を調べた. さらに, クレンブテロールによる咬筋の変化に, 筋衛星細胞が関与しているかどうかを明らかにするため, 衛星細胞のマーカーであるmyoD familyとmyocyte nuclear factorのmRNA発現およびproliferating cell nuclear antigen (PCNA) の免疫局在性を調べた. クレンブテロールは筋線維直径を26% (p<0.001), IGF-I mRNA発現量を219% (p<0.05) 増加させ, IGFBP3 mRNA発現量を21% (p<0.001) 減少させた. その他の遺伝子mRNA発現量およびPCNAの局在性に顕著な変化は観察されなかった. これらの結果からクレンブテロール投与はマウス咬筋線維を肥大させたが, 線維タイプは変化させなかつたことが示唆された. また筋線維の肥大にはIGF-I, IGFBP3が関与しているが, 衛星細胞は関与していないと推測された.
  • Yoshiyuki Wada, Ryuichi Fujisawa, Yoshinori Kuboki
    2003 年 45 巻 6 号 p. 428-436
    発行日: 2003/12/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    ビスホスホネートは, 石灰化組織の形成や吸収を抑制することが広く知られている. しかし, 石灰化組織においてビスホスホネートがリン酸カルシウム沈着やマトリクス合成にどのように働いているのかは明らかではない. ビスホスホネートを投与された硬組織を調べるためにいくつかの組織学的な試みがなされてきた. 今回, われわれは生物学的石灰化のメカニズムを研究するためにビスホスホネートを用い, その作用を考察した.
    10mg P/kgのHydroxyethylidene-1, 1-bisphosphonate (HEBP) を7週間ラットの皮下に注射投与した. その後ラットの切歯を取り出し象牙質のマトリクス蛋白質を生化学的に分析した. HEBPを投与されたラット切歯の石灰化の程度は対照群ラットに比較して減少した. しかしマトリクス蛋白質の量は実験群のラットにおいて相対的に増加した. 象牙質独特のリン蛋白であるホスホホリンも実験群のラットにおいて増加した. にもかかわらず, 象牙質のほかの非コラーゲン蛋白の組成は本質的にはHEBP投与により変化しなかった.
    ビスホスホネートによる石灰化の抑制は, 非コラーゲン基質蛋白の合成の抑制によるものではなく, 主にリン酸カルシウム沈着の抑制によるものと考えられる. さらに, ビスホスホネートによりホスホホリンの合成は促進される可能性がある.
  • Kyoko Watanabe, Yasutaka Azuma, Shinya Shirasu, Michiharu Daito, Kiyos ...
    2003 年 45 巻 6 号 p. 437-444
    発行日: 2003/12/20
    公開日: 2010/06/11
    ジャーナル フリー
    マクロファージはほとんどの感染制御に不可欠であり, 自然免疫機構を担っている. 感染時には, lipopolysaccharide (LPS) がマクロファージを刺激し, 炎症性サイトカインを産生する. 近年, A 2 a adenosinereceptor (A 2 aR) が, 組織特異的および全身性炎症応答を抑制し終結させる負の生理的フィードバック機構に重要な役割を果たしていることが示された. 炎症を惹起するLPSと, 炎症を終結させるadenosine受容体との相互作用についての情報を得ることは有用かつ有意義である. しかしながら, 細菌感染時におけるA 2 aR発現に対する細菌由来LPSの影響についてはほとんど解明されていない. 本研究の目的は, マウスマクロファージ様細胞株であるRAW 264を用いて, A 2 aRおよびLPSの受容体であるToll-like receptor 4 (TLR 4) の発現に対する, adenosine, ATPおよびLPSの影響を検討することである. AdenosineおよびATPはRAW 264の増殖能には影響を与えなかったが, LPSは増殖能を増強させた. AdenosineはTLR 4発現を有意に増強させたが, A 2 aR発現には影響を与えなかった. ATPおよびLPSは, それぞれA 2 aRおよびTLR 4の発現を有意に増強させた. さらに, LPS存在下において, adenosineおよびATPはA 2 aRあるいはTLR 4発現のいずれにも影響を与えなかった. 以上の結果より, adenosine, ATPおよびLPSは, マクロファージにおけるA 2 aRおよびTLR 4発現に影響を与える可能性が示唆された.
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