日本視能訓練士協会誌
Online ISSN : 1883-9215
Print ISSN : 0387-5172
ISSN-L : 0387-5172
29 巻
選択された号の論文の43件中1~43を表示しています
  • 澤田 惇
    2001 年 29 巻 p. 1-9
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    超音波診断についての方法、適応、有効性、あるいはその関連事項については、すでに学会や専門書でよく解説されているので、今回は比較的重視されていない事項について述べた。超音波の物理的性質をよく理解することが必要で、伝播、反射、屈折、減衰、音速と解像力との関係の重要性について解説した。パルス法とドプラ法、さらにAモード法、Bモード法について述べた。ついで、眼内および眼窩における定型的な病変の超音波像の特徴について解説し、増幅感度を落として多方向からスキャンすること、眼窩では他側と対比することが必要であると強調した。また、Aモード法に用いられた特殊検査法の底流にある概念はBモード法の実施にもあてはまるとした。おわりに最近の進歩として、虹彩や毛様体の病変の検索に用いられる高周波の超音波生体顕微鏡ならびに造影剤を使用したカラードプラ法の成績を紹介した。
  • 大鹿 哲郎
    2001 年 29 巻 p. 11-18
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    データ解析に必要となる基本的な統計学の手法について解説した。とくに、変量の型、連続変量と離散変量の違い、視力の扱い方、パラメトリック検定とノンパラメトリック検定の使い分け、2群間の差の検定、多群間の差の検定、多重比較、2群間の比率の検定、多群間の比率の検定、相関について述べた。
  • 小林 昭子
    2001 年 29 巻 p. 19-30
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    視野検査は、眼科検査のなかでも多くの視能訓練士が担っている。そのために、視野検査機器について理解しておくことは視能訓練士として必須であり、今回その特徴をまとめた。
    手動視野計の代表であるGoldmann型視野計は、視野全体を把握でき、小児や高齢者も検査可能である。反面、微細な視野変化をとらえにくい、視野変化を数値化しづらい、検査に時間がかかり検者の技術も必要となるなどの点があり、自動視野計が開発されてきた。視標・背景・測定範囲・測定方法といったストラテジー、固視監視・信頼性指標による信頼性の判定、そして、検査結果の解析方法など各機種とも工夫されている。
    また、視標・背景を変えることで、早期発見をめざして細胞レベルでの異常を検出したり、検査時間短縮のため統計を利用した測定方法を採用したり、検査法も一段と進歩している。
    視野検査は自動化により誰でもできる検査となったが、自覚的検査であるため被検者の協力が不可欠である。また、視能訓練士の検査説明が不十分だったり、検査中の様子に気をつけていなかったりすれば、信頼性のない結果となる。そして、器械設定の不備はアーチファクトを引き起こす。視野検査は、患者さんと、検者が、機器で、合作するものであることを、視能訓練士として意識しておくことが大切である。
  • 調 廣子
    2001 年 29 巻 p. 31-36
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 村上 裕美
    2001 年 29 巻 p. 37-40
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    視野測定は視能訓練士にとって欠くことのできない検査である。検査対象が幼児から高齢者と幅広い為各疾患の状態をよく把握し、Goldmann視野計および自動視野計の特徴を理解し、各疾患による視野変化を念頭に検査を行う事が重要である。
  • 2001 年 29 巻 p. 41-46
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 石川 哲
    2001 年 29 巻 p. 47-52
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    最近話題のシックハウス症候群、化学物質過敏症(MCS)に関してその要点を総説的に解説した。本症は微量化学物質の慢性接触により生じた生体の自律神経、中枢神経、免疫系、内分泌系を中心とする過敏反応である。感覚器としての眼は視力低下、かすみ、中心部が見にくい、つかれ眼などの症状、訴えが最も多い。眼は診断にもっとも役に立つ器官である。何故ならば定量的に障害が測定出来るからである。現在特に患者が多いのは新築により生じた症例が中心をなしている。現代人は過去100年前には無かった合成の化学物質の蓄積が既に高く生体の解毒システムがそれに動員されているので、本来ならば反応しない低いレベルの物質でも閾値が低く反応が起こり発症する可能性が強い。現在我々の周囲の環境劣化は健康問題一つとっても21世紀には絶対に放置出来ない所まで来てしまっている。Sick House, MCS問題で悩んでいる患者もこの環境劣化現象の結果現れた可能性が強く今後我々も真摯な立場で環境問題に対処する必要がある事を強調した。
  • 清水 公也
    2001 年 29 巻 p. 53-55
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    近年の眼科学では最新の検査器械が重要な役割を果たしており、正確な検査が必要不可欠である。屈折矯正においては、屈折検査に加え角膜の形状解析が重要である。また、白内障手術においてはmonovisionや多焦点レンズの適応など、両眼視機能の検査は重要である。そのほか、網膜自己回転移植術における斜視手術や、緑内障におけるレーザースキャンによる視神経解析など、視能訓練士に求められる期待は大きい。
  • 宗像 恒次
    2001 年 29 巻 p. 57-63
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    患者さん自らの価値観や人生の目的に照らし、本人自身で適切な治療法を選択するよう支援するには健康相談法とは異なるヘルスカウンセリング法が必要となる。患者さんが本当は何をしたいのかに気づき自己決定するには、ミラーリング効果と共感効果をもてる面接法によって、本人の隠れた本当の気持ちや要求に気づけるよう支援することである。また本人が必要とするセルフケア行動を促すには、その行動を妨げる無力感や見放される怖さや罰意識さなど過去のトラウマ感情をもつイメージの存在を気づかせ、そして変容させ、本人の自信の回復するイメージに変換することである。構造化連想法を用いた本ヘルスカウンセリング法はそれらを構造化された方法で簡便にクイックに実現しうるだろう。
  • 久保 喜美, 池淵 純子, 川瀬 芳克
    2001 年 29 巻 p. 65-76
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 新井田 孝裕
    2001 年 29 巻 p. 79-85
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 向野 和雄
    2001 年 29 巻 p. 87-88
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    私共の両眼の視線はその指標に向かって収束し、網膜対応点に像が結ばれ、其の前後のPanum融像圏の像も合わせ、融像し立体視が成り立つと考えられる。このような精微な機能が可能となるためには1)Inflowとして網膜からの視覚情報の入力、今一つ忘れてはならない外眼筋自己受容器からの入力が眼位、眼球運動を制御していることである。今一つは2)Outflowとして中枢からのEferrent copyと称されるコントロールが言われている。
    しかしこれらのなかで外眼筋自己受容器の働き、なかでも斜視の発生機序、治療における意義はほとんど関心を呼ばれていない、そこで外眼筋なかでも内直筋の解剖学的機能的特徴に注目し、その自己受容器の働きにつき文献をレビューし、自験の結果も合わせ、外眼筋自己受容器が斜視の発生、治療の過程に大きく関与している可能性を示したい。
  • 魚里 博
    2001 年 29 巻 p. 89-102
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    20世紀末になって、世界的に屈折矯正手術が普及しているが、特にLASIK (laser in situ keratomileusis)の発展はめざましく、我が国でも2000年1月にエキシマレーザーPRKの認可がおりたため、世紀末から21世紀はじめにかけて手術件数も飛躍的に急増していくものと思われる。また近い将来超高齢化社会に突入し、白内障手術の件数もさらに増加するとともにQOV (quality of vision)の要求もさらに高まるものと思われる。
    そのため、白内障手術を含めた角膜屈折矯正手術における術前後の視機能評価はますます重要となるが、角膜の形状を大幅に修正された屈折矯正手術眼や人工プラスチック製の眼内レンズを移植された偽水晶体眼の術後検査は術前と同様には出来なくなる。最近の新しい検査機器も登場しているが、その測定原理や結果の判読法を正しく理解していないと大きな落とし穴に陥ることになる。
    ここでは、白内障手術を含めた屈折矯正手術における各種視機能検査で陥りやすい落とし穴とその回避方法について代表的なものを解説する。
  • 恒川 幹子
    2001 年 29 巻 p. 103-113
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    3歳児健康診査における視覚検査(眼科検診)が制度化されて10年になるが、斜視や弱視の早期発見・治療に成果があがっている一方で、今なおもれてしまう症例も少なからず存在する。現在行われている眼科検診の実態についてのアンケート調査(愛知県、熊本県)、および日本視能訓練士協会員に対するアンケート調査をもとに眼科検診の問題点と今後のあり方、また視能訓練士として眼科検診にどうかかわってゆくべきかについて検討した。
    実態調査から明らかになった問題点は、(1)眼科検診実施年齢(2)健診スタッフの構成(3)保護者の眼科検診に対する意識(4)眼科検診への屈折検査の導入の必要性である。
    行政の対応も含めて現行システムの改善とともに、視能訓練士が3歳児に対する検査技術や知識の向上に努め眼科検診に参加してゆく事が望まれる。
  • 野原 雅彦, 高橋 まゆみ
    2001 年 29 巻 p. 115-120
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    小中学校での眼科学校健診において、オートレフラクトメーター使用による屈折検査を導入し、屈折分布や変化を検討した。対象は長野県小県郡丸子町の小中学生1719名で、キヤノン社製RK-3Rを用いて各眼3回以上測定し、その平均値を使用した。
    等価球面度数は、小学校1年生+0.09D±0.61D(平均±標準偏差)、2年生-0.17D±0.69D、3年生-0.33D±0.82D、4年生-0.50D±0.92D、5年生-0.62D±1.12D、6年生-0.99D±1.55D、中学校2年生男子-1.09D±1.61D、2年生女子-1.34D±1.39D、3年生男子-1.33D±1.75D、3年生女子-2.07D±2.17Dであった。乱視度数は、学年や男女差はなく0.4~0.6Dであった。学年が進むにつれて近視化していき、標準偏差も大きくなった。中学生では女子の方が近視化傾向が強かった。また教諭の測定した裸眼視力が良好でも、屈折異常が大きくある者がみられた。学校健診において屈折検査を導入することで、屈折状態を把握し適切な指導を行うことができ、有用と思われた。
  • 玉井 ひろみ, 豊永 友紀, 長澤 佳恵, 堀 浩子, 津村 晶子, 佐々木 奈穂, 福井 智恵子, 岩下 憲四郎, 弓削 堅志, 岡見 豊 ...
    2001 年 29 巻 p. 121-125
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    遠方視力検査は5mとされているが、1.1mの距離で検査を行えるスペースセイビングチャート®(SSC-330 Type II、ニデック社、以下SSC)の有用性を検討したので報告する。
    症例は小児22例、成人105例。小児は5~8歳、9~12歳の症例に分けて検討した。成人は屈折異常のみ、偽水晶体眼、白内障の症例の測定を行った。さらに白内障では、核白内障、皮質白内障、後嚢下白内障に分けて、それぞれ裸眼視力、矯正視力、等価球面値の差について比較検討した。その結果、各症例ともSSCと5m視力表における裸眼視力、矯正視力はよく一致しており、等価球面値の差も0.1D以下で調節介入は見られなかった。使用して感じた利点は1.省スペースとして有用、2.他人に視標が見えないためプライバシーの保護ができる点であった。一方、欠点は1.視標の数が0.1以下で少なく低視力者に使いにくい、2.正面でしか視標が見えないので視野が狭いと視標が見つけにくいのではないか、という点であった。
  • 宮 友美, 浅野 治子, 児玉 州平
    2001 年 29 巻 p. 127-131
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    我々は、成長期の近視における眼軸長と屈折度の比較検討を行った。
    眼軸長は年齢と弱い相関を示した。屈折度は年齢と弱い相関を示した。眼軸長には性差があり、男性の眼軸長が女性の眼軸長よりも長い傾向が得られた。眼軸長は屈折度と強い相関を示した。弱度近視、中等度近視、高度近視の3段階に分類して検討を行ったところ、特に中等度近視において強い相関を示した。眼軸長は弱度近視、中等度近視、高度近視の順に近視の度数が増すほど有意差をもって延長が認められた。
  • 島田 真澄, 小寺 久子, 椚田 細香, 肥田野 めぐみ, 小森 敦子, 小林 昭子, 原沢 佳代子, 臼井 正彦
    2001 年 29 巻 p. 133-140
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    Frequency Doubling Technology® (FDT)は緑内障を早期発見するための視野計とされている。しかし、実際に測定してみるとFDTのスクリーニング検査(以下スクリーニング)と閾値検査(以下閾値)、また、光覚閾値検査との結果に差のある症例を経験する事がある。そこで、その不一致の実態を検討した。対象は緑内障精査依頼の79例79眼で、FDTのスクリーニングC-20プログラムの異常個数、閾値C-20プログラムの異常個数とMD、PSDおよびHumphrey Field Analizer®(以下ハンフリー)30-2または24-2プログラムのMD、PSDを比較した。スクリーニングで異常なく、閾値で異常が検出された症例は35.4%であり、閾値の方が多く異常をとらえていた。閾値で異常なく、ハンフリーのPSDで異常のある症例は3.8%と少なかったが、閾値に異常があり、ハンフリーPSDで異常のない症例は32.9%と多く、ハンフリーよりも閾値の方が早期に異常を検出している可能性が示唆された。閾値の検査時間は280±25秒とハンフリーの516±198秒よりも短時間で検査できた。以上のことより、FDTの閾値は緑内障の視野異常を短時間で検出でき、有用であると考えられた。
  • 角田 智美, 大牟禮 和代, 松本 富美子, 若山 曉美, 谷本 旬代, 楠部 亨, 下村 嘉一
    2001 年 29 巻 p. 141-146
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    目的:タカギセイコー社製Contrast Glare Tester MODEL CGT-1000(以下CGT-1000と略す)を用い正常小児のコントラスト感度を測定し、その有用性について検討した。対象と方法:対象は正常小児35名70眼とした。年齢は4歳6か月~15歳8か月、屈折値は等価球面値にてS+3.38D~S-6.25Dであった。CGT-1000は、視角6.3deg.~0.7deg.の計6種の二重輪を視標とし、上下法を用い被検者の応答に従って0.01~0.45までの12段階のコントラスト感度を自動的に測定できる装置である。コントラスト感度の測定は、視標呈示時間0.4秒、視標呈示間隔2秒を用いて行った。結果:検査可能であった症例は35例中33例(94%)であった。測定時間は53秒~2分50秒(平均1分17秒)であった。コントラスト感度は6.3deg.~2.5deg.視標では症例間にあまり差は見られず比較的高い感度を示したが、1.6deg.より小さい視標では視標が小さくなるごとに症例間での差が大きくなった。また、優位眼と非優位眼に差はなく、再現性の高い結果が得られた。結論:CGT-1000は、小児の検査法として有用であると考えられた。
  • 酒井 幸弘, 洞井 里絵, 宇陀 恵子, 内藤 尚久, 市川 一夫, 玉置 明野
    2001 年 29 巻 p. 147-151
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    これまでの電子瞳孔径イリスコーダでは近見反応を測定することはできなかったが、近年発売されたイリスコーダC-7364®により、近見反応の測定が可能となった。近見反応は自然視で測定するために、明るさが大きく影響されると予測される。今回、自然視での照明条件の違いによる近見反応を明らかにするため、ニュートラルデンシティフィルターを用いて、1000~1luxの照度条件をつくり、実験を行った。また、対光反応の測定も行った。
    全例において、遠見瞳孔径、近見瞳孔径ともに、低照度ほど一定の傾きで大きくなる傾向が見られた。近見反応の縮瞳率は、全例において低照度ほど下がる傾向が見られた。また、近見反応と対光反応の縮瞳率は必ずしも一致しなかった。
    以上より、明るさの違いで、遠見・近見瞳孔径は変化することから、再現性のある近見反応を測定するには、照度を一定にする必要があると考えられた。
  • 小花 佐代子, 福井 優子, 中岸 裕子, 塚本 和子, 湖崎 淳, 湖崎 克, Hiromi Makino
    2001 年 29 巻 p. 153-158
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    成人の斜視は経過が長くて、その発症時期,病態など不明な点が多く、また,感覚異常も当然予想され、手術は敬遠されがちである。また患者の主訴も整容目的、複視、眼精疲労などであり、手術目的もそれらをいかに解決するかである。今回我々は、当院で初回手術を行った成人の水平斜視48名の結果を報告する。内訳は外斜視33名と内斜視15名であった。平均観察期間は12ヶ月であった。治癒の評価は、1) 矯正眼位が少なくとも第一眼位において患者の期待と一致する、2) 眼精疲労が軽減または消失する、3) 複視が残存しても少なくとも第一眼位、さらに最も日常的に眼を用いる範囲において気にならない、とした。結果は外斜視では33名中30名(90.1%)で良好であった。このうち3名は計画的追加手術を行った。不良例は3名で追加手術を必要とした。内斜視では15名中14名(93.3%)で結果良好であった。不良例は1名で近見時、過矯正であった。成人になってからでも斜視を治したい患者は多く、術前に網膜対応検査を含め感覚的にも十分な検査をしていれば、手術結果は良いと思われた。
  • 新見 明子, 石坂 真美, 御手洗 慶一, 古川 理子, 初川 嘉一
    2001 年 29 巻 p. 159-163
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    3年以上経過観察のできた間歇性外斜視73例について術前の輻湊機能を検討した。手術後の遠見眼位は33例において15Δ未満の外斜偏位で良好であり、16例は20Δ以上の外斜偏位で不良であった。それぞれの輻湊機能として、術前検査での斜位に持ちこむ頻度、調節視標、光視標、赤フィルターを負荷した光視標による輻湊近点、大型弱視鏡での融像幅、斜視の型、1時間遮蔽前後の眼位の差を比較したところ、術前の輻湊機能と術後眼位との関連は認められなかった。
  • 赤池 麻子, 阿曽沼 早苗, 高見 有紀子, 岡井 佳恵, 倉野 美和, 関本 紀子, 不二門 尚
    2001 年 29 巻 p. 165-170
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    今回我々は内斜視術後1年以上経過した術後眼位の安定性に影響する因子として手術時年齢、斜視のタイプ、手術方法、融像の成立に注目し検討をおこなった。手術は、両眼内直筋後転術もしくは片眼の外直筋切短+内直筋後転術(前後転術)を施行した。融像は、New 4灯 Test(N4D)視角10°を用いて判定した。術後眼位の安定性には、手術時年齢、斜視のタイプ、手術方法によって影響はなかった。しかし、最終経過観察時に、16Δ以上の外斜傾向を示した例では、前後転術を行っている例が多い傾向がみられた。眼位の良好な例では、融像能力も高く眼位の維持に影響していると考えられた。
  • 阿曽沼 早苗, 赤池 麻子, 高見 有紀子, 岡井 佳恵, 倉野 美和, 関本 紀子, 不二門 尚, 小田 浩一
    2001 年 29 巻 p. 171-176
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    近年、黄斑変性症に対して中心窩移動術が行われており、術後の視力についての報告も増えてきた。日常生活において読書能力は重要であるが、黄斑変性症の患者の中には、視力と読書能力が一致しない者が少なくない。今回我々は、1999年2月から14か月の間に当科にて中心窩移動術を受け、術前後に検査が可能であった31例を対象に、術前および術後4か月以降(平均7.9月)に遠見視力、近見視力、MNREAD-Jによる臨界文字サイズと読書視力を測定し、比較検討を行ったので報告する。
    結果、術前後の遠見視力・近見視力ともに有意な変化はなく、臨界文字サイズと読書視力は改善する傾向にあった。また、術前後の遠見・近見視力の変化に対して読書能力の変化を検討したところ、遠見視力の変化(平均-0.03±0.44)に対して臨界文字サイズの変化(平均0.17±0.35)は有意に(P=0.015)大きく、遠見視力に術前後で大きな変化が認められなかったにも関わらず、臨界文字サイズは改善されることが示唆された。また、近見視力と臨界文字サイズにおいても、近見視力の変化(平均0.04±0.31)に対して臨界文字サイズの変化(平均0.19±0.37)が大きく、近見視力の変化の程度に比較して臨界文字サイズは改善する傾向(P=0.073)にあることが示された。以上より、中心窩移動術前後の視機能の評価法として、遠見視力のみでなく、読書能力を測定することが有用と考えられた。
  • 中島 純子, 杉山 由紀子, 神垣 久美子, 大野 晃司, 鈴木 雅信, 清水 公也, 魚里 博
    2001 年 29 巻 p. 177-183
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    LASIK術後の低コントラスト視力を術前近視強度別に比較検討した。対象は近視矯正を目的としてLASIKを施行された40歳未満で、3か月以上経過観察可能であった症例27名53眼(男性7名、女性20名)である。術前の等価球面度数が-6D未満の症例を軽・中等度近視群(n=28)、-6D以上を強度近視群(n=25)とした。方法はLog MAR近距離視力表®(検査距離50cm・日本点眼薬研究所製)を用いて照度500lxの明室において完全屈折矯正下で25%、6%の低コントラスト視力を術前、術後一か月、術後3か月で測定した。結果は両群とも高コントラスト視力に有意差は認められなかったが、低コントラスト視力は術後有意に低下した。術前近視強度別においては強度近視群では術後コントラスト視力の優位な低下が認められたが臨床上問題となる1段階以上の低下は認められなかった。軽・中等度近視群では術前後で低コントラスト視力に有意差を認めなかった。
    LASIK術後、明所において収差、角膜の不正性はほとんど影響しないと示唆された。またLog MAR近距離視力表®はコントラスト感度の簡易評価が可能であるとともに、等間隔配列であるために微妙な視機能の変化を検出するうえにおいても非常に有用である。
  • 大畑 晶子, 市川 一夫, 玉置 明野, 野村 秀樹
    2001 年 29 巻 p. 185-188
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    目的:中高年者での立体視検査におけるコントラスト感度の影響を検討した。
    方法:対象は50歳以上の140名(以下中高年群)と20~35歳の25名(以下青年群)である。Vision Contrast Test System®により5つの周波数でコントラスト感度を測定した。また、Randot Stereo Tests(以下Randot)及びTNO Stereotests(以下TNO)を用いて立体視検査を行った。TNOとRandotの比を算出し(以下TNO/Randot比)、中高年群の分布の中央値を基準に2群に分けて比較検討した。
    結果:TNOでは、青年群に比べ中高年群は有意に低い立体視力を示した(P<0.0001)が、Randotでは中高年群と青年群の間に有意差は認められなかった。各周波数で中高年群は青年群よりも有意に低いコントラスト感度を示した(P<0.0001)。中高年群のTNO/Randot比良好群はTNO/Randot比不良群に比べ、高周波領域(12c/d、18c/d)において有意に良好なコントラスト感度を示した(P<0.05、P<0.01)。
    考案:色分離を利用するTNO検査表は、偏光フィルターを採用するRandot検査表に比べ低コントラストであり、また赤フィルターと緑フィルターの違いにより左右眼でコントラストに差が生じるため、TNOの結果が高周波数領域のコントラスト感度に影響を受けると考えられた。
  • 西田 ふみ, 高木 満里子, 杉下 陽子, 堀田 明弘
    2001 年 29 巻 p. 189-195
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    斜視を伴わない弱視における立体視の低下は、承知の通りである。その要因として、視力低下そのもの、左右眼の視力差、不等像視などの要因が考えられる。
    我々は、視力と立体視の関係について、大型弱視鏡のBRADDICK RANDOM-DOT GRADED STEREO SLIDES®による立体視を、Ryser社製弱視治療用眼鏡箔®を用いて人工的に視力低下を作り、1.優位眼を視力低下させた時、2.非優位眼を視力低下させた時、3.両眼同時に視力低下させた時について測定した。
    その結果、立体視差90″の正答は優位眼を視力低下させた時は0.7まで、非優位眼を視力低下させた時は0.6まで、両眼同時に視力低下させた時は0.6までほぼ得られた。優位眼と非優位眼を視力低下させた時の正答率に明らかな差は見られず、また、両眼の視力低下時より片眼の視力低下時の方が立体視は得られにくい傾向を認めた。
  • 重冨 いずみ, 原 道子, 倉田 美和, 東垂水 きみ子, 塚本 和子, 白数 純也, 湖崎 淳, 湖崎 克
    2001 年 29 巻 p. 197-202
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    視野異常がある患者から遠近感がつかみにくいと耳にすることがある。このことから緑内障性視野異常のある患者において立体視機能がどの程度あるのか、また立体視に影響を及ぼす視野異常の部位について検討した。対象は当院にて経過観察中の緑内障患者49名(平均66.8±11.6)才で、矯正視力0.7以下、±7D以上の屈折異常、2D以上の不同視、無水晶体眼、斜視、および眼底疾患を有する患者は除外した。遠見立体視はニコンツインチャート、近見立体視はチトマスステレオテストを用いた。緑内障の病期分類はゴールドマン視野計を用いて、湖崎分類で判定し、中心部10度以内の視野はハンフリー視野計を用いて評価した。
    視野障害が進行している方の眼の病期がIII b期までは立体視機能は良く保たれていた。しかし、IV期になると立体視機能は著しく低下した。中心視野で鼻下側の障害がある症例では、立体視が不良である傾向があった。中心視野の極めて狭い症例では近見の立体視検査で視標の大きさによって結果にばらつきがあった。これらの症例では小さな視標では立体視が良好であったが、大きな視標では逆に不良であった。
  • 中村 桂子, 菅澤 淳, 澤 ふみ子, 濱村 美恵子, 稲泉 令巳子, 清水 みはる, 上田 亜由美
    2001 年 29 巻 p. 203-210
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    近年、視覚障害者が増加しており、日常生活に支障をきたしている多くの患者に対応する中で、筆者らは医療と福祉と教育の関わりの必要性を重視し、大阪医科大学附属病院眼科外来にて1998年2月より成人の視覚障害者を対象とした面談を開始したのでその現況を報告する。
    面談は当科スタッフと視覚障害総合施設である日本ライトハウスの職員が担当し、月に1~2回、予約制で1人約1時間半行った。約2年9か月の間に面談を受けた人は54名(男性37名、女性17名)で、可能な限り家族同伴で行った。
    面談の目的は患者の心の不安や現在抱えている問題を十分に聞き取り、混乱している状況を整理し、患者が自分自身を見つめ直すきっかけとなる場を提供することである。面談内容は日常の生活指導、就労状況の聞き取り、身障手帳の取得や障害年金の説明、福祉サービスについての説明、また希望があれば歩行訓練士による基本的な白杖の使い方のアドバイスも行った。また視野狭窄の場合、家族の理解を深めるためにシミュレーション眼鏡を装用しての擬似体験も行った。
    約3年間の試行錯誤の取り組みで、面談に必要なのは一方的な支援ではなく、患者自身の思いを知るという、もっとも基本的な姿勢であることがわかった。その上で適切なアドバイスをするためには、病状を把握している医療スタッフと福祉の専門家が協力して医療機関の中で面談する必要があると考えられた。そこで初めてマニュアル化できない、心のケアも含めたロービジョンケアがスタートできるのではないかと考えられた。
  • 磯貝 由美, 佐藤 友香, 加地 秀, 吉田 正和, 山本 英津子
    2001 年 29 巻 p. 211-215
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    屈折型多焦点レンズ(Array® PA154N)の術後の視機能と日常生活に対する満足度について検討した。対象はArray® PA154Nを挿入し術後6か月以上経過した20例40眼。視機能検査に遠見視力・近見視力・両眼視力・遠方コントラスト感度を施行し、日常生活における5項目についてアンケートをした。裸眼遠見視力0.7以上は72%、両眼で100%となり日常生活への満足度は90%を示した。裸眼近見視力0.4以上は30%であった。近用眼鏡常用者は55%であり、時々使用する者を含めて近用眼鏡所持者は70%と高い依存度を示した。一方、近用眼鏡なしで85%の患者が新聞の判読が可能であった。今回の結果より近用眼鏡の依存度は高かったが、日常生活における適応は遠見・近見ともにある程度可能で、患者自身の満足度は良好な結果が得られた。
  • 樋口 倫子, 宗像 恒次, 向野 和雄
    2001 年 29 巻 p. 217-225
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、心因性視覚障害の行動特性の特徴を明らかにすることと、さらに本障害のSATイメージ療法による治療の効果を視機能および行動特性の側面から検討することである。
    心因性視覚障害の行動特性について、弱視を対照群として比較した。12例の心因性視覚障害の症例を2群に分け、SATイメージ療法介入群(8例)と従来の治療による群(5例)とし、前向き調査を行った。
    心因性視覚障害の症例では、弱視の症例に比べ特性不安が高く、セルフエスティーム(自己価値感)および認知された情緒的支援が低くなっていた。
    SATイメージ療法介入群では、従来の治療法による介入群よりも、視力をはじめとする視機能(視力、色覚、視野)の著しい改善が認められた。加えて、SATイメージ療法介入群で、従来の治療法による介入群に比べ、有意に自己抑制型行動特性・特性不安が低下し、自己価値感および認知された情緒的支援が改善された。
    以上から本症の治療として、過去の心傷体験に伴うネガティブイメージの変換が極めて重要であることが示唆された。
  • 伊藤 美沙絵, 杉山 由紀子, 鈴木 雅信, 清水 公也, 魚里 博
    2001 年 29 巻 p. 227-231
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    Laser in situ keratomileusis (LASIK)前後の眼圧評価を検討した。また、術後眼圧の補正方法を、ORBSCAN内蔵プログラムTonometry Correctionを用いて検討した。症例は、33名59眼で、年齢35.9±11.3歳、矯正等価球面度数-6.4±2.3Dであった。LASIK前後の非接触式眼圧計を用いて測定した眼圧を比較したところ、術前眼圧14.9±2.2mmHg、術後眼圧10.0±1.6mmHg、眼圧低下量4.8±3.6mmHgと有意に低下していた(p<0.0001 Wilcoxon符号順位検定)。また、Tonometry Correctionによる眼圧補正量は6.2±3.6mmHgであった。矯正等価球面度数、角膜厚、角膜曲率と眼圧の相関も検討したところ、角膜曲率以外が有意な相関関係を示した。LASIK後は眼圧が過小評価されており、その眼圧の補正方法として使用したTonometry Correctionは、補正過度の傾向にありLASIK術後の使用には改良が必要と考えた。
  • 藤本 百合子, 中川 真紀, 林 孝雄
    2001 年 29 巻 p. 233-237
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    2歳7か月の男児。内斜視および頭位異常を主訴に来院した。眼位異常は一眼の視神経萎縮のための失明による感覚性内斜視で、頭位異常は顕性潜伏眼振に由来し、その発生は一眼の視力不良のため両眼視機能が損なわれ、交代性上斜位と潜伏眼振が発症し、一眼の失明が遮閉効果となって顕性化したものではないかと考えた。眼位異常や頭位異常を主訴に来院する症例の検査に当たっては、麻痺性斜視や眼振などの鑑別が必要で、症例の診断には様々な角度からの鑑別が重要であると思われた。
  • 酒井 真澄, 中泉 裕子, 島野 香, 多田見 明代, 斉藤 古津枝, 山田 義久, 柿沼 宏明
    2001 年 29 巻 p. 239-242
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    Rubinstein-Taybi症候群は、種々の眼症状を合併することが知られている。本症候群に先天外斜視を合併した一例を経験したので報告する。
    症例は3歳の男児。生後3か月頃より外斜視を認め、1歳9か月時、2歳7か月時に外斜視に対し手術を受け一旦は正位となったが、第2回目手術後1年の観察時点で再び15°の外斜視となった。
    本症例は2度の手術後でも眼位の安定は得られなかった。眼位の安定化不良の原因として手術時期の遅れ、精神発達遅延などが考えられた。
  • 野口 清子, 生田 由美, 久保田 伸枝
    2001 年 29 巻 p. 243-247
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    調節痙攣は、著明な近視化とそれに伴う輻湊が起こり、学童期の小児にみられることがある。原因は諸説挙げられるが、下垂体腫瘍などの器質的疾患が合併していることもあるため、その除外診断が優先される。
    今回我々は、視力低下と複視を主訴に来院し、初診時に行った屈折検査のためのサイプレジン®点眼により、複視が劇的に消失した1症例を経験した。当初これらの原因は、調節痙攣と考え、器質的疾患を否定した上で、各種調節検査を経時的に行った。その結果、両眼視下の調節検査と片眼での静的調節検査では、両者の結果に矛盾がみられた。また、静的調節検査で測定毎の検査結果にばらつきがみられたこと、視力検査でもトリック法に反応するなどの心因性の視覚障害と思わせるような結果が得られたこと、欲求不満や環境の変化がみられたことから、心因による一過性の調節痙攣ではないかと思われた。サイプレジン®点眼により複視が劇的に消失したことも心因が関係しているのではないかと考えた。
    本症例のような原因不明の調節痙攣や内斜視をみた場合、今までの経過や経験を基に、安易に心因性と考え検査や治療に取り組むべきではなく、まず原因の精査と鑑別すべき疾患との鑑別診断をしっかりと行った上で、器質的に何も異常が認められない場合は現症について対処していくべきであると思われた。
  • 石田 歩, 佐藤 幸子, 川崎 真美, 高村 幸子, 松田 恭一
    2001 年 29 巻 p. 249-252
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    大角度の成人の内斜視症例に対して、網膜対応を考慮した斜視手術を行い、背理性複視を回避した症例を経験した。
    症例は22才男性、平成12年3月コンタクトレンズ更新を希望して当院を受診した。50Δの内斜視と交代性上斜位を認めたため、斜視検査を勧めたところ、斜視について過去2度の受診歴があったが、術後複視の危険性を指摘され眼位矯正を断念してきたことがわかった。
    複像検査、大型弱視鏡にて非調和性異常対応、残像検査で異常対応であったが、日常複視の自覚がない点、複像検査にて抑制野が広く認められたことより、手術可能と判断された。
    二度にわたるプリズム装用試験の結果、複視が生じない20Δを目標に同年4月、斜視手術が行われた。術後2ヶ月の現在複視の自覚はなく、整容的にも満足が得られている。
  • 高村 幸子, 松田 恭一
    2001 年 29 巻 p. 253-257
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    網膜異常対応(以下ARC)で大まかな立体視を示した残余内斜視症例に対してプリズム中和を行い、網膜正常対応(以下NRC)を回復したので報告する。
    症例は4歳以降に恒常性内斜視となった5才6ヶ月男児である。1995年1月の初診から2週間後に、NRCの30Δ内斜視として他院に手術を依頼し、6才6ヶ月時に手術施行し、7才9ヶ月時に経過観察目的にて当院再診となった。再診時6Δの内斜視とARCが認められ、偏位に対してプリズム中和を行った。
    プリズム装用1週間後に斜視角が増加したがプリズム量を追加し、18週後に全ての対応検査所見がNRCとなった。9才6ヶ月時、残余斜視角に対して手術施行され、術後、眼位は正位であり60sec. of arcの近見立体視が得られた。正常両眼視の獲得を優先した今回の視能訓練は、正しい選択であったと考えられる。
  • 圷 和子, 根本 加代子, 古谷 幸絵, 根本 龍司
    2001 年 29 巻 p. 259-263
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    我々は当院における斜視弱視患者の瞳孔間距離(略;PD)の経年変化を直線回帰分析にて調査し、1年間のPDの変化量を求め検討した。対象は、1988年6月~2000年9月の間に斜視弱視外来へ継続的に通院し、メガネを3回以上変更した53名のうち、身体的異常を持たない51名である。PDの測定には主としてPDメーター(PM-600,NIDEK社製)を用い、PDメーターによる検査が不可能な者は角膜反射を利用する方法とビクトリン法を用いた。それらどの方法においても左右それぞれの単眼PDを測定し、得られた値を合計して全瞳孔間距離を求めた。我々は対象者51名に3回から4回の眼鏡処方を行った。その調査の結果は、我々は患者に前回の処方より平均1.8年経過し、そしてPDが平均2.1mm成長した時に次のメガネを処方していた事を示していた。初回メガネ処方時の年齢分布は2.5才~10.6才であった。個々のPDの時系列変化は、いずれの直線回帰の式も決定係数(R2)が0.88以上で強い正の相関を示し、個々の直線回帰の係数を平均して求められた式はy=45.9+1.2xであった。これは1年間で1.2mmのPDの増加があったことを示している。この値は、性別、年齢別、斜視の種類別、弱視の種類別において、有意差がない。また、彼らは斜視弱視患者であるが他に身体的な異常を持たない者だけを調査しているので、これらの結果は健常者にも当てはめることが出来るだろうと推定した。
  • 馬場 育子, 仲泊 聡, 北原 健二
    2001 年 29 巻 p. 265-270
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    同名半盲は、その範囲と形状によって、原因病巣の部位診断がある程度可能であるが、MRI等で検出された損傷部位と、視野欠損のパターンが、常に一致するとは限らない。一方、半側空間無視があるとそれが原因で同名半盲と同様の検査結果となる可能性がある。その場合、あたかも黄斑分割を伴った完全な同名半盲になることが推定される。
    そこで我々は、同名半盲患者の視野検査で、完全型であるか否かに着目し、これと半側空間無視との間の相関を統計学的に検討した。対象は、Goldmann視野検査を施行した患者のうち、同名半盲を認めた94名であった。これらの症例の完全型の有無と半側空間無視の有無について集計し2×2分割表分析にて相関を解析した。その結果、x2=10.648、p<0.01で高い相関が認められた。半側空間無視は、右脳損傷患者に比較的多く見られる神経学的症候であるが、視野検査の際に半側空間無視の特性を取り除くことは難しい。したがって、視野検査の結果を判定する場合、半側空間無視の有無について、十分考慮しなくてはならないものと考える。
  • 高崎 裕子, 渡辺 好政, 今井 小百合
    2001 年 29 巻 p. 271-275
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の男性。両眼性複視を主訴に2000年3月9日に来院した。眼位は第一眼位で右眼20ΔXT、外斜偏位は左方視で増加した。眼球運動検査ではむき眼位、ひき眼位でともに右眼内直筋の著明な遅動が認められた。他に右眼眼瞼下垂と輻輳不全が見られた。瞳孔反応は正常であった。右眼動眼神経不全麻痺の状態を呈していた。
    症例には蓄膿の手術歴があったので、精査目的で耳鼻咽喉科に紹介した。CTとMRI検査の結果、右上顎洞に膿貯留と思われるmassが認められ、右術後性上顎洞嚢胞と診断された。2000年3月15日穿刺排膿術を受けた。1週間後、両眼性複視は消失し眼球運動も正常となった。症例は副鼻腔疾患が原因で動眼神経不全麻痺を呈したものと思われた。
    両眼性複視を主訴とする症例に対しては、関連臨床科、特に耳鼻咽喉科の精査を加えることが重要と言える。
  • 佐藤 香代子, 前原 陽子, 北原 園子, 小林 美紀, 江原 裕子, 前田 陽子, 磯野 博明, 高山 秀男
    2001 年 29 巻 p. 277-284
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    適応範囲外とされる間歇性外斜視の症例に対し、金谷法に基づく視能訓練を行なった。症例は2例で、症例1は、7才で手術希望のない、斜視角35Δの外斜視で、症例2は、生後6ヶ月で内斜視が発症し、初診時は5才で斜視角30Δ内斜視と交代性上斜位、対応異常がある症例であった。Anomalous Retinal Correspondenceに対する訓練で、正常対応化し、カイロスコープで経過観察中、近見14Δ遠見8Δの間歇性外斜視へ移行した後に行なったものである。訓練方法は、1987年に金谷らの報告した方法に基づき、Red filterを使用した抑制除去訓練、Jump convergence、 Red filterを使用した輻湊近点訓練、赤・青鉛筆による生理的複視認知訓練、Framing card、 3点カード、ステレオカードによる輻湊訓練、Base out prismによる後退法の順に行なった。結果、症例1は、10Δのプリズム眼鏡で斜視角を減らして、訓練を開始し15ヵ月後に外斜位化した。症例2は、訓練開始13ヵ月後に外斜視化した。金谷法は、大角度の間歇性外斜視でも、プリズム眼鏡により、適応範囲内にもちこむことで、また両眼視機能の弱い症例でも、両眼視機能が潜在していれば、効果が出るのに時間がかかるが、有効であると考えられた。
  • 林 浩実, 梅沢 直美, 恒川 幹子, 竹内 実, 水谷 聡
    2001 年 29 巻 p. 285-290
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    我々は、3歳児健診における視覚検査の実態を知る目的でアンケート調査を実施した。対象は、熊本県94市町村、愛知県88市町村で、方法は、3歳児健診係宛にアンケート用紙を送付し、返信用封筒にて回収した。
    アンケートの回収率は、熊本県が79.8%(82/94)、愛知県が87.5%(78/88)で、視覚検査は1町を除いて、3歳児健診の中で実施していた。実施年齢は、熊本県が2歳10ヶ月から3歳11ヶ月、愛知県が2歳11ヶ月から3歳8ヶ月であった。
    一次検査は両県ともアンケート方式を採用していた。また、熊本県ではランドルト環以外に絵視標やドット視標を使用している市町村もあった。愛知県では、問診票の記載内容から斜視が疑われる場合、21町村で立体視検査を実施していた。屈折検査を導入している市町村は8ヶ所、また眼科医の参加は5ヶ所、視能訓練士が参加しているのも5ヶ所であった。
    現場からは、現行の視覚検査における実施年齢やシステムに対して改良を求める声もあった。屈折検査の導入や健診実施年齢についての検討が必要と思われた。
  • 金井 敬, 鈴木 智哉, 蝋山 敏之, 若林 憲章, 江口 秀一郎, 江口 甲一郎
    2001 年 29 巻 p. 291-295
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    今日まで32年間継続実施している北海道南部地域の学童視覚巡回精密診断の成果と今後の展望について述べる。対象は独自の抽出方式による学童延べ25,719名である。屈折度についてはハーティンガー合致式レフラクトメーターを用い、調節麻痺剤点眼後±0.50D以内を正視とした。今日までの視覚巡回精密診断により、学童の屈折状態の近視化傾向が明らかになり、さらに眼科無医地区の学童及びその父兄の視覚に対する意識向上、眼科専門医受診傾向の増加や眼鏡装用率の向上等がみられた。今後ますます近業主体の生活形態に変化してゆく中で近視化の予防と進行防止のための視覚管理、地域住民の更なる視覚に対する意識向上に向けた啓蒙活動の重要性を再認識した。
feedback
Top