日本視能訓練士協会誌
Online ISSN : 1883-9215
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31 巻
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  • 松本 長太
    2002 年 31 巻 p. 1-7
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    視野検査は、緑内障をはじめとする各種眼疾患の診断、経過観察において欠かすことのできない重要な視機能検査である。近年では、自動視野計の普及により誰でも容易に視野検査が行えるようになった。視野検査は視覚の感度分布を定量的に評価することであり、これには視覚系の様々な生理学的特性が影響する。自動視野計を用いた静的視野測定においても、従来から標準的な測定条件として設定されている視標サイズ、視標呈示時間、背景輝度は、視覚系における様々な生理学的特性を基に視野測定に適していると考えられる条件に設定されている。さらに近年では緑内障などの早期視機能障害を評価するために、Frequency doubling technique (FDT), FIicker perimetry, Blue on yellow perimetryなど従来の明度識別視野とは異なった特殊な検査視標を用いた視野検査法も日常診療に普及しつつある。これら特殊な視野検査法はM-cell系の評価、K-cell系の評価など視覚情報処理におけるより選択的な機能を評価することを目的としている。日常診療において視野検査を行いその測定結果を判断する場合、単に自動視野計の検査員として検査を進めるのではなく、これら視覚の生理学的特性を十分理解して検査に臨むことは、適切な視野測定の施行、測定結果の正しい評価において大変重要なことである。
  • 近藤 峰生
    2002 年 31 巻 p. 9-15
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    全視野刺激による網膜電図(ERG)は網膜全体の機能を評価する検査である。これに対して、Erich Sutter博士の開発したVERIS(Visual Evoked Response Imaging System)では、後極部の網膜の多数の部位から局所ERGを一度に記録することができ、これによって局所網膜機能を他覚的に評価することができる。本稿では、VERISの基本的な記録方法と実際の応用について述べた。このシステムでは、従来のERGと同様に角膜上のコンタクトレンズ電極から眼の電気反応を記録するが、この装置の特別な刺激と解析技術により、ERGのトポグラフィックマップを作成することができる。検眼鏡的に異常がないにもかかわらず局所的な網膜機能異常を呈するような患者を診断する場合にVERISは特に有用である。この新しいテクニックの応用と技術革新にはさらなる研究が必要である。
  • 中川 真紀, 及川 幹代, 濱村 美恵子, 若山 曉美
    2002 年 31 巻 p. 17-26
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 岩城 正佳
    2002 年 31 巻 p. 27-31
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 水谷 聡
    2002 年 31 巻 p. 33-40
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 柏井 聡
    2002 年 31 巻 p. 41-43
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 坂上 達志
    2002 年 31 巻 p. 45-56
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    中高齢者における眼球運動障害として、外転神経麻痺、動眼神経麻痺、滑車神経麻痺、甲状腺眼症、重症筋無力症の診断と治療について述べた。眼球運動障害の原因疾患の診断は、眼科的検査で概ね可能である。斜視手術は、神経麻痺では眼球運動障害の自然寛解を考慮し、少なくとも発症後3か月以降に行うべきである。斜視手術によりすべての麻痺性斜視で概ね良好な結果が得られるが、神経麻痺では動眼神経麻痺が治り難く、筋麻痺では重症筋無力症が治り難い。
  • 難波 哲子
    2002 年 31 巻 p. 57-65
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    中高年齢者では眼球運動障害の発生に伴う視機能のトラブルが多く、その中でも融像障害は視能訓練の対象となる。眼球運動障害の中でも後天性上斜筋麻痺は、視能訓練が奏効して自覚的改善が得られる例が多いが、治療効果の評価には自覚的および客観的評価を組み合わせて行う必要があると考えられる。そこで定量的検査が可能な身体平衡機能測定装置Balance Masterを用いて治療前・後で静的および動的身体平衡機能の分析を行い、視能訓練等による視機能の改善と身体平衡機能との相関について検討した。視能訓練は輻湊訓練、衝動性眼球運動訓練、融像分離結合訓練、融像幅増強訓練、融像側方移動訓練を行った。静的身体平衡機能検査では、重心位置偏位置を測定したところ、中高年齢者の開瞼時、閉瞼時で治療前に比較して治療後は有意な改善がみられた。動的身体平衡機能検査の時計回り8方向の重心移動では、中高年齢者で治療後に特に後方への重心位置偏位量が改善し、移動距離の短縮が認められた。これらの改善は、低下した外眼筋自己受容器の活動性が促進され、眼球運動と身体平衡機能に影響を与えたためであると推察した。また、Balance Masterを用いた動的身体平衡機能訓練は、両眼視機能障害による自覚症状の改善のための訓練に応用可能であると考えられる。眼球運動障害による身体平衡機能の低下は、加齢に伴う身体平衡機能の低下と同様、高齢社会におけるQOLを考慮する上で重要である。
  • 高木 満里子
    2002 年 31 巻 p. 67-73
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    多くの高齢者が良好な視力を獲得できるようになった。しかし、その反面、複視を訴えて来院する患者も増えてきた。複視は日常生活(ADL: activities of daily living)にかなりの支障を来す。その複視を軽減する方法の一つとして光学的手段すなわちプリズム治療を施行した。42歳から85歳の平均66.2歳の42症例を対象とした。眼位検査には自覚的検査を重視し、Maddox rod testとプリズム中和法を用いた。プリズム度数の決定には、眼位検査を参考にして、日常視下で複視が消失するプリズムを求めるが、より良好な両眼視機能が獲得できる度数を目標とした。治療に用いたプリズム度数は、水平偏位に対しては2Δ~30Δ、垂直偏位は1Δ~20Δであった。外回旋10°までの偏位は、水平および垂直偏位のプリズム中和により消失した。上下偏位は全症例の76%を示した。複視に対するプリズム治療は、働き盛りの中年の方は職場復帰への希望が得られ、高齢者は日常生活への復帰ができた。しかし高齢者には全身疾患を伴う事が多いため、十分な経過観察は必要である。
  • 不二門 尚
    2002 年 31 巻 p. 75-81
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 田中 恵津子
    2002 年 31 巻 p. 83-88
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 酒井 幸弘, 宇陀 恵子, 山田 裕子, 内藤 尚久, 小島 隆司, 市川 一夫, 玉置 明野
    2002 年 31 巻 p. 89-94
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    近年、波面収差を用いた解析は屈折矯正手術のみならず、不正乱視の評価など、眼球屈折系を評価する上で重要になってきている。しかし波面収差解析装置は未だ臨床において一般に広く使用されておらず、その使用条件もしっかり定まっていない。今回我々は、波面収差解析ができるNIDEK社製ARK-10000®を屈折異常以外すべて健常な12例20眼に用い、この検査装置の最もよい測定条件を調べるために、測定結果の再現性と散瞳薬使用による収差の変化について検討した。散瞳薬は、塩酸フェニレフリン5%とトロピカミド0.5%塩酸フェニレフリン0.5%を使用した。
    瞳孔領内中心4mmゾーンの収差は散瞳薬使用にかかわらず再現性はよかったが、6mmゾーンの収差は、散瞳薬使用前の測定において低次収差、コマ様収差はやや不安定な結果になった。
    また、トロピカミド0.5%塩酸フェニレフリン0.5%点眼により、全収差と低次収差はやや減少した。高次収差については4mm・6mmゾーン共に散瞳薬使用前後で変化は少なかった。
    ARK-10000®での眼球全屈折の測定は、散瞳薬の使用により安定した。散瞳薬としては収差変化が少ない塩酸フェニレフリン5%が望ましいと考えられた。
  • 超音波式と光学式の比較
    矢野 隆, 魚里 博, 鈴木 博子, 嶺井 利沙子, 根本 徹, 清水 公也
    2002 年 31 巻 p. 95-102
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    眼軸長測定には散瞳下・無散瞳下(自然瞳孔)のどちらの条件が適しているか。また新しい光学式の眼軸長測定装置ZEISS社製IOLMaster™(以下IOLMaster)を従来の超音波Aモード装置NIDEK社製US-800™(以下Aモード)と比較し、その有用性について検討したので報告する。対象は正常有志10名20眼(年齢22歳~28歳)。散瞳前後の眼軸長及び前房深度をAモードとIOLMasterで測定比較した。眼軸長及び前房深度の各測定において無散瞳下のAモードに対する3群(散瞳下のIOLMaster・無散瞳下のIOLMaster・散瞳下のAモード)の間で有意差を認めた。また前房深度測定においてIOLMasterは散瞳前後でも有意差を認めた。眼軸長及び前房深度の各測定の標準偏差値はIOLMasterは散瞳前後では小さく、無散瞳下のAモードでは一番大きかった。瞳孔径別の眼軸長及び前房深度測定の標準偏差値はIOLMasterでは、ほぼ一定であった。Aモードでは瞳孔径が小さいと標準偏差値は大きく、瞳孔径が大きくなるほど標準偏差値は小さくなった。Aモードでは散瞳下での測定、IOLMasterでは散瞳下・無散瞳下のどちらの条件でも測定に適していると考えられた。新しい光学式の眼軸長測定装置IOLMasterは、臨床においても極めて有用な装置であると考えられる。
  • 山田 裕子, 酒井 幸弘, 宇陀 恵子, 内藤 尚久, 小島 隆司, 市川 一夫, 玉置 明野, 山本 悦子
    2002 年 31 巻 p. 103-107
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    LASIKやMultifocal IOLの適応を決めるのに種々の条件での正確な瞳孔径を知ることは重要となってきている。暗所瞳孔径や近見反応を正確に考慮した瞳孔径測定には、従来、イリスコーダーC-7364®(以下ICと略す)が用いられていた。今回、単眼でしか測定できない欠点はあるもののICと同様に赤外線モニターを用いて暗所でも簡便に瞳孔径を測定できるOASIS社製COLVERD PUPILLOMERTER®(以下CPと略す)を使用できる機会を得たので、正常者9名を対象として、周囲の明るさや固視目標の距離を変化させた場合の瞳孔径を測定し、両眼開放下で測定するICでの値と比較検討した。また、CPにおいてさらに測定条件の検討をするため、非測定眼の遮蔽による影響をみた。
    明所ほどCPで測定した瞳孔径のほうが、ICで測定した場合より大きかった。ただし、5 lux以下であれば、両者の測定値に有意差は認められなかった。また、どの照度においても、近見瞳孔径は、遠見瞳孔径より小さかった。また、CPでは非測定眼を遮蔽し、内部固視等を見た場合の方が測定は容易であった。
    以上より、暗所瞳孔径をCPで測定する場合、1 lux程度の準暗室であれば絶対暗室とほぼ同値が得られるが、固視目標の距離をはっきりさせておくか、十分な距離がとれない場合は、非測定眼を遮蔽し、内部固視灯を固視させることが望ましいと考えられた。
  • 高畠 愛由美, 大淵 有理, 小井手 優子, 小倉 央子, 吉川 英子, 佐藤 真由美, 野村 代志子
    2002 年 31 巻 p. 109-114
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    三歳児健診で異常を指摘された児のその後の通院状況を調査した。また、中断者の現状と、中断に至った要因について検討した。
    対象は、平成9年度から12年度の4年間に、上益城郡内5町村の三歳児健診で異常を指摘され、当院での精密検査の結果、要治療および要経過観察となった67名中、1年以上経過した61名である。
    初診時疾患名は、斜視8名、斜位6名、弱視16名、視力不良15名、睫毛内反13名、その他3名であった。
    現在の通院状況は、治癒15名、治療中7名、経過観察中5名、経過観察終了9名、転医1名、中断24名で、中断者が多かった。
    中断時期は、初診後すぐ中断が、24名中17名と多数を占めた。
    今後、定期的に中断者をチェックし、受診を促していく必要性を感じた。
  • 花井 良江, 高椋 志保, 土井 涼子, 長浜 綾, 岩本 寛子, 高橋 広
    2002 年 31 巻 p. 115-120
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    高齢者の眼科ケアを目的に介護老人保健施設(以下、老健施設)の眼科健診に取り組み、入所者の実態を検討した。対象は老健施設入所者106名(平均年齢84.7歳)である。問診後に眼科検査を実施した。健診時、眼科を受診していた者は8名であったが、105名(99%)に異常が認められ、56名(53%)が眼科受診を必要とした。眼疾患では白内障が最も多く、88名(83%)に認められた。また視力検査において、ランドルト検査が可能であった者は73名(69%)で、そのうちの22%は、視力良好眼の矯正視力が0.2以下であった。要介護度別における視力0.2以下の割合は、各介護度間で有意差はみられなかった。このように、老健施設には眼科受診していない者が多数存在し、また要介護度が低い者の中にも低視力者がいることがわかった。老健施設眼科健診は意義があり、高齢者のQuality of Life(生活の質)の向上を目指し今後も積極的に取り組む必要があると考える。
  • 松本 葉子, 小林 順子, 徳田 晶子, 和田 悟, 田中 学, 奥山 眞紀子
    2002 年 31 巻 p. 121-125
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    当センターでは、言葉の遅れや自閉症などでコミュニケーションのとれない発達に遅れがある子どもに対し、一度に多職種で発達評価を行うアセスメント外来を行っている。この外来において、視能訓練士は眼科的スクリーニングを行っている。今回我々は、アセスメント外来における他の職種による発達評価の結果と、眼科要精査となった症例の内容を検討した。
    対象は、平成13年4月から平成13年7月までにアセスメント外来を受診した54名とした。結果は、アセスメント外来における診断名としては、自閉症もしくはその他の広汎性発達障害+精神発達遅滞29名(53.7%)、精神発達遅滞12名(22.2%)、広汎性発達障害8名(14.8%)、精神運動発達遅滞2名(3.7%)、その他3名(5.6%)であった。眼科要精査となったのは、6名(11.1%)であった。その内訳は、眼位異常3名(外斜視2名、内斜視1名)、屈折異常4名(遠視1名、近視2名、近視性乱視1名)、その他1名であった。(重複あり)
    この外来を行うことによって、地域で発達の評価が難しい症例について多職種で総合的な評価を行い、今後どのような支援が必要か家族にアドバイスすることができた。また、視能訓練士がこの外来に参加することで、6名の子どもを眼科受診へつなげることができた。このように、視能訓練士がアセスメント外来に参加し、眼科的スクリーニングを行うことは有効であると思われた。
  • 栗山 典子, 石川 知美, 長村 紀子, 和田 博子, 松井 淑江, 石郷岡 均
    2002 年 31 巻 p. 127-130
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    黄斑剥離を伴う片眼性の網膜剥離に対し、観血的な網膜剥離手術を施行した症例を対象に術後の近見立体視機能について検討した。
    黄斑剥離を認める片眼性の網膜剥離眼中、術後の遠見矯正視力が0.8以上、左右の不同視差が3D以内のもの42例42眼を対象としTitmus stereo tests (TST)およびTNO stereo test (TNO)を用い近見立体視機能の検査をした。TSTでは良好群、中等度良好群、不良群に分類した結果23眼(54.8%)が良好群、17眼(40.5%)が中等度良好群、2眼(4.8%)が不良群となった。TNOでは良好群と不良群に分類した結果27眼(64.3%)が良好群、15眼(35.7%)が不良群となった。黄斑剥離を伴う網膜剥離眼では術前に中心視力が低下するものの、網膜復位後矯正視力が0.8以上の症例では良好な立体視が得られた。
  • 吉村 尚子, 池淵 純子, 筑田 昌一, 真野 富也
    2002 年 31 巻 p. 131-137
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    強度近視の白内障患者における近方視と術後の満足度について検討した。術前矯正視力が0.5未満で、近方視を考慮して手術を施行した20例を対象とした。術前屈折値は等価球面値にて-8.63Dから-32.50Dであった。術前・術後の矯正視力および最大視認力を測定し、また術前の近方視の状況と術後の満足度についても調査し検討した。
    術前の矯正視力は0.02から0.4で、これに対し最大視認力は0.3から1.0(視距離5cmから27cm)であり、全例で最大視認力の値が矯正視力よりも良好であった。術前の近方視では85%の症例が仕事や趣味で近見を重視した生活を送っていた。術後の結果は、矯正視力が0.1から1.0で視力が低下した症例はなかった。最大視認力は0.25から1.0(視距離9cmから44cm)で1例のみが低下していた。術後屈折値は等価球面値にて-1.38Dから-11.25Dであった。満足度では1例のみが不満足であり、これは最大視認力が低下した症例であった。
    手術の際には術前の近方視の状態を把握しておくことが重要で、最大視認力はこれをとらえる指標として有用であった。強度近視患者が満足を得るには“最大視認力を低下させない”という点を考慮し、術前の背景・患者の希望・予測される視力にもとづき、術後の屈折値を設定することが必要と考えられた。
  • 岡 真由美, 深井 小久子, 新井 紀子, 星原 徳子, 森田 雅子, 土光 智子, 岡田 美保子
    2002 年 31 巻 p. 139-143
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    当院において、業務の効率化を図る目的でコンピュータオーダリングシステムが導入された。しかし、ORTの業務はますます複雑多様化している。そこで、さらに適切でかつ安全な視能矯正管理を行い、これを患者に還元するため、視能矯正のワークフロー分析により電子的業務マニュアルを作成した。
    分析はKJ法により行い、臨床に関する業務項目を関連図にまとめた。これをもとに電子的業務マニュアルを作成、視能矯正全体の流れ、外来システム、入院システム、各業務の詳細を示した。
    本マニュアルにより視能矯正システムが視覚化および標準化され、臨床全体の流れと部分的な詳細な内容との相互関係が明確になった。これは、臨床面、教育面、研究面で有用であり、各要素が相互に結びつき機能することで患者中心のより良い医療を提供できるものと考えた。
  • 久保 真奈子, 玉谷 晴代, 松尾 雅子
    2002 年 31 巻 p. 145-151
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    高度の脳障害のために視反応の乏しい児に対して、視覚評価の重要性が認識され、視反応を促進するための訓練の要求が高まりつつあるが、眼科が積極的に関わっていないのが現状である。北九州市立総合療育センターでは、1995年10月より、このような児に対して視覚訓練を開始した。今回の検討は、6か月以上訓練を継続した通園児16名を対象とした。開始年齢は1歳6か月から5歳1か月(平均3歳3か月)で、訓練期間は10か月から4年4か月(平均2年)であった。訓練開始時の視反応は、光覚の確認が難しい、あるいは光覚レベル、形態の固視・追視があっても日常視で視覚を使用していることが確認できないレベルであった。訓練では、情報処理しやすい光、色、形態を視標に、コンピューターも使用しながら、静的あるいは動的に刺激を行った。また、視能訓練士が通園の保育場面に参加し、日常での視反応を保育士とともに評価した。そして、視反応を5段階に分類し、訓練開始時と終了時で効果の有無を検討した結果、16名の対象児全員に1段階以上の視反応の発達が認められた。この結果より、高度脳障害児に対して、視覚の発達時期に視覚訓練を行うことは有用であると考えられた。
  • 稲泉 令巳子, 中島 正之, 中村 桂子, 上田 亜由美, 菅澤 淳, 池田 恒彦
    2002 年 31 巻 p. 153-159
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    重複障害を伴った両眼性先天白内障の兄弟例に対して,術後の屈折矯正の問題点および療育相談の有用性につき検討した。症例1(兄)は,軽度の知的発達遅延,症例2(弟)は,上肢機能障害,体幹機能障害を伴っていた。2例とも生後2ヵ月および4ヵ月の時点で両眼水晶体摘出術を施行した。術後の屈折矯正の方法として,まずコンタクトレンズ装用を開始し,その後コンタクトレンズと眼鏡との併用,遠近両用眼鏡,近用・遠用眼鏡の併用,近用拡大鏡などを適宜取り入れた。症例1は,遠近両用眼鏡,近用・遠用眼鏡の併用が困難で,遠用眼鏡を近見時にずらして使用していた。症例2は学習時に遠近両用眼鏡が使用可能であった。適宜施行した療育相談では,成長に合わせた視覚学習指導が行え,両親の不安を軽減することができた。重複障害を有する先天白内障の術後屈折矯正に際しては,障害の程度に応じた医療側の工夫が必要であると同時に,療育相談の併用による継続的な指導が必要であると考えられた。
  • 河原 佐和子, 赤松 恒彦
    2002 年 31 巻 p. 161-167
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    1980年にWHO(世界保健機関)が発表した国際障害分類(機能障害、能力障害および社会的不利の国際分類、略称ICIDH)は、改訂作業を経て、1999年、国際障害分類β-2試案(生活機能と障害の国際分類、略称ICIDH-2 β-2)の発行へと至った。中立的用語の採用、相互作用モデル、環境因子の導入の変化を踏まえ、 ICIDH-2 β-2フィールドトライアルへの参加を通し、日常の診療で関わる視覚障害の症例についてICIDH-2 β-2試案の使用経験を得た。
    ICIDH-2 β-2試案は、活動制限、参加制約、環境因子の評価から問題を捉えることにより、個人の生活に根ざしたリハビリテーションへの情報提供に役立てる可能性をもつものと考える。
    2001年5月、ICIDH-2 β-2試案は生活機能・障害・健康の国際分類(略称ICF)と確定された。
  • 小寺 久子, 小森 敦子, 小林 昭子, 肥田野 めぐみ, 椚田 細香, 島田 真澄, 原澤 佳代子, 遠藤 成美, 臼井 正彦
    2002 年 31 巻 p. 169-177
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    目的:Frequency Doubling Technology® (FDT)の新たなプログラムScreening C-20-5(以下20-5)の有用性、及びThreshold C-20(以下閾値)に表示の追加されたpattern deviation(以下PD)を加え、閾値について再検討した。対象及び方法:対象は緑内障精査依頼の74例74眼。20-5、Screening C-20-1(以下20-1)、閾値、Humphrey Field Analyzer®Central 30-2 Threshold Test(以下HFA)を施行し、20-5と20-1、20-5と閾値、閾値とHFAを検討した。結果:スクリーニングと閾値の一致率はtotal deviation(以下TD)で20-5は95.9%・20-1は78.4%、PDで20-5は85.1%・20-1は73.0%であり、20-5との方が高かった。20-5と閾値はmean deviation(以下MD)、pattern standard deviation(以下PSD)、TD、PDにおいて有意な相関を示した。特にTDとは相関係数0.929、危険率0.0001未満と極めて強い相関を示した。閾値とハンフリーもMD、PSD、TD、PDに於いて有意な相関を示した。結論:20-5は20-1より閾値との一致率が良く、閾値とハンフリーはPDにおいても相関が再確認できた。20-5は緑内障スクリーニング検査として有用であった。
  • 福山 千代美, 足立 歩, 多賀 恵里, 小室 真寿美, 富山 淑子, 尾高 美知子, 今井 洋子, 宮澤 真砂代, 石塚 岐子, 平井 淑 ...
    2002 年 31 巻 p. 179-184
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    Bagolini線状レンズテスト(BSGテスト)を、半盲の検出に用い、有用性を検討した。
    方法:初診または経過観察中の、両耳側半盲患者5名、同名半盲患者22名を対象とした。BSGテストは、Bagolini線状レンズを、135度と45度と、お互いに軸が直交するように試験枠に入れて、単眼視と両眼視での、固視灯からの光条の見え方を答えてもらった。
    結果:BSGテストで、半盲が検出できたのは、27人中12人(44%)であった。半盲を検出できた群と、検出できなかった不能群の間には、年齢、半盲の種類、原因疾患、矯正視力に有意差はなかった。しかし、発病から検査までの期間を比較すると、明らかに検出群の方が短く、検出群では1例を除いて、全例1年以内の比較的新鮮例であった。
    結論:半盲患者では、経験上、または直前に見た記憶から、半盲側の視空間を補っており、この代償が行われてくると、半盲を検出できなくなったと考えられた。BSGテストで、半盲は検出できるが、特に陳旧例では検出感度が悪く、視野検査のスクリーニングとしての有用性は、限定的と考えられた。
  • 平久保 鉄也, 江平 ゆかり, 沢井 秀明, 内山 仁志, 川村 緑, 北澤 世志博, 西信 元嗣
    2002 年 31 巻 p. 185-189
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    大型弱視鏡は、鏡筒回旋軸上に眼球回旋点を重ねて計測することによって、正確な眼球回旋角度を示す。しかし実際臨床では頂間距離を離して検査するため、両回旋中心を一致させることは難しい。そこで、鏡筒と眼球の回旋中心の不一致による大型弱視鏡の示す角度と眼球回旋角度の差を検討した。
    実際の眼球回旋角度から大型弱視鏡の示す角度を導くための計算式を立て、計算式に代入する値を求めるため、3種類の大型弱視鏡の器械各部位を実測した。また、頂間距離は実際の使用を考え、様々に設定して行なった。
    その結果、(1) 大型弱視鏡が示す角度と、実際の眼球回旋角度との間には誤差が生じる。(2) 鏡筒回旋軸と眼球の相対的な位置は機種によって異なる為、生じる誤差も各機種によってまちまちである。(3) 計測時の頂間距離を長くとればとるほど生じる誤差は大きくなる。ということが分かった。
    大型弱視鏡による正確な眼位ずれ計測は困難であり、今後、精密さが要求される場合には、誤差を消すように換算することが必要であると考えられる。我々は、大型弱視鏡が示している角度から実際の眼球回旋角度を導くための換算プログラムを予めコンピュータに入力し、日常診療で簡便に誤差を補正している。
  • 長谷川 尚美, 中川 真紀, 林 孝雄
    2002 年 31 巻 p. 191-198
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    Occlusion foil (Ryser社製)は、正常視力を段階的に変化させるものであり、弱視治療の場において不完全遮閉具として広く用いられている。今回、このOcclusion foilを装用し、視力およびコントラスト感度測定を行い、その性能を再検証し弱視治療への有用性と留意点につき検討した。
    結果は、遮閉効果の高いとされるfoilでも表示よりも大幅に良い視力の得られるものがある一方、表示以下の視力となるものもあり、視力を段階的に変化させることはできなかった。また、マルチビジョンコントラストテスターMCT8000、Vision Contrast Test System、コントラスト感度視力検査装置CAT-2000試作機の三種の機器を用いてコントラスト感度測定を行ったが、表示に従ってコントラスト感度を変化させることは困難であった。
    Occlusion foilを使用する際には、視覚の変化に多様性があることを理解し、希望どおり視力を低下させ、弱視眼をより積極的に使用できる状態となっているか、様々な角度からの評価を行うことが重要と思われた。
  • 小出 美和子, 塩屋 美代子, 高橋 悦子, 細見 容子, 福岡 安子, 南村 佳子, 西村 和美, 吉田 有希
    2002 年 31 巻 p. 199-202
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    遮閉法を行う際に用いられるアイパッチは、種々なものがそれぞれに工夫されている。今回、皮膚炎を起こしやすい患児の母親が工夫したアイパッチをもとに、オリジナルアイパッチを考案した。接着部の素材は、高純度のアクリル系粘着剤を使用した粘着性伸縮ガーゼ包帯(商品名:シルキーポア)を用いた。目にあたる部分は、遮光性が従来のアイパッチに劣らない事を確認したブロード生地を用いた。
    このオリジナルアイパッチを8名の患児に装用してもらった。それぞれの要望に応じて、より個人に合ったアイパッチを工夫する事ができた。
    このオリジナルアイパッチは、
    1.低刺激性である
    2.大きさが変えられる
    3.安価である
    という利点があった。
  • 特にその心的背景と視力予後について
    井手 浩一, 原 敬三, 樋口 真理子, 帆足 悠美子, 服部 陵子, 上原 伊都子
    2002 年 31 巻 p. 203-209
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    心因性視力障害113例についてその臨床像・心的背景と視力予後について検討した。この内73例は精神科へ紹介し、心身医学的検討が行われた。本症は、10才前後のおとなしい女児に多かった。ほぼ全例が両眼性で中等度の視力障害であった。レンズ打ち消し法により64%に改善がみられた。視力低下の誘因として学校問題、家庭問題、眼鏡願望などが考えられた。比較的短期間に視力回復する例もあるが、長期間かかる例が多かった。精神科的治療を受けた者は回復が早くなる傾向がみられた。
  • 石坂 真美, 新見 明子, 中尾 武史, 古川 理子, 山岸 智子, 初川 嘉一
    2002 年 31 巻 p. 211-217
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    Prism Adaptation Test (PAT)により、陽性反応(eat up現象)がみられた後天性内斜視8例に対して増強手術を実施し、眼位変化、両眼視機能と網膜対応を検討した。術後の網膜対応により、3群に分類した。第1群は術後NRCと判断され、最終眼位は正位~14ΔETと良好であり、両眼視機能の改善がみられた。第2群は網膜対応検査ではARCであったが、術前よりも内斜視角の減少がみられた。第3群は手術前にARCと診断されていたが、手術後に眼位が外斜視化すると、NRCに変化した。3~7年の観察結果では、増強手術後の眼位は良好であり、複視の訴えもなかったが、今後さらに長期的に経過観察する必要があると思われた。また、PATの判定方法やPrism Adaptation Research Groupの結果をもとに、手術の適応についても今後検討が必要であると考えられた。
  • 鈴木 博子, 魚里 博, 矢野 隆, 嶺井 利沙子, 清水 公也
    2002 年 31 巻 p. 219-224
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    レーザー干渉非接触眼軸長測定装置(IOLMaster)の有効性を確認するため、コンタクトレンズ(CL)装用眼の眼軸長を測定し、従来の超音波眼軸長測定装置(Aモード)と併せて検討した。眼疾患の無い正常者10名19眼を対象とし、IOLMasterとAモードを用いて眼軸長を測定した。CLは中心厚が判明しているソフトコンタクトレンズ(SCL)とハードコンタクトレンズ(HCL)を複数用いた。
    IOLMasterとAモードの両者でCL非装用下にて眼軸長を測定した結果、両者間に極めて高い相間関係を認めた(R2=0.99)。CL装用下での眼軸長測定は、IOLMasterにおいてはSCL、HCLともに測定できたが、AモードのHCL装用下での測定はできなかった。SCL装用下眼軸長は、IOLMasterおよびAモードとも非装用下眼軸長よりもほぼ中心厚に比例して長く測定された。IOLMasterではCL装用下でもその中心厚を反映した眼軸長を非接触で評価できた。
  • 川崎 知子, 牧野 伸二, 酒井 理恵子, 保沢 こずえ, 黒澤 広美, 近藤 玲子, 坂庭 敦子, 金上 千佳, 金上 貞夫, 山本 裕子
    2002 年 31 巻 p. 225-229
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    デジタルカメラと電子画像対応眼底カメラに付帯した画像ファイリングシステムを用いて眼位撮影を行なった。従来のフィルムカメラを用いた方法と比較した結果、以下のような利点があった。
    1.従来より短時間で撮影が可能である。
    2.現像処理が不要なため、写り具合の確認がその場で可能である。
    3.9方向眼位の編集がモニター上で作成できる。
    4.記録媒体の省スペース化が可能で劣化がない。
    5.データーベースソフトの利用で資料の検索、管理が容易である。
    デジタルカメラによる眼位撮影は日常臨床に有用である。
  • 藤山 由紀子, 佐々木 美絵, 羽角 智美, 松木 京子
    2002 年 31 巻 p. 231-238
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    三歳児健康診査での視覚検査は、1997年の母子保健法改正により、実施の主体が都道府県から市町村になった。(以下三歳児健診)
    今回、我々は現在の三歳児健診における視覚検査の実態を明らかにするために、神奈川県7つの市における健診結果の分析と、実際に三歳児に携わっている視能訓練士へのアンケート調査を行った。
    神奈川県における受診率は1次検査84.4%、2次検査73.5%、精密検査83.6%であった。2次健診の受診率は73.5%と他に比べ低く、過去の報告と変わらなかった。異常検出率は対象者総数15,903名のうち6%(954名)で、その内訳は屈折異常が3%(477名)、弱視、眼位・眼球運動異常、その他がそれぞれ1%(159名)で、これは過去の報告と比べるとやや低い結果であった。3歳1~2か月児は、3歳6か月児に比べて、診断名の確定が出来ない対象児の割合が多かった。この結果は、検査時期は、発達の状態や協力性などの点からも、3歳0~1か月より3歳6か月の方が適切と答えた、視能訓練士に対するアンケート調査の結果を反映するものであった。今回の結果からは、三歳児健診を効率良く行なう時期は、3歳6か月が適当と思われた。
  • 吉田 秀司, 渋谷 政子, 田辺 久美子, 戸来 透, 加藤 千晶, 森 敏郎
    2002 年 31 巻 p. 239-242
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    微小斜視の周辺融像と立体視の関係を検討した。対象は年齢5歳~12歳の8症例で、ニデック社製Multi Vision Tester-200® (MVT)を用いて周辺融像と立体視の検査を行った。またTitmus Stereo TestsとButterfly Testも併施した。その結果、 MVTでは全症例で周辺融像が認められ、良好な周辺融像を有している症例に良好な立体視が得られる傾向が認められた。しかしながら他の立体視検査では周辺融像との間に明らかな関係は認められず、周辺融像や立体視の分析にMVTが有用であることも明らかになった。
  • 梅田 千賀子, 中西 高子, 佐藤 彰子
    2002 年 31 巻 p. 243-246
    発行日: 2002/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    非定型的周期性外斜視の1例について報告した。
    症例は生後1ヶ月頃より「良い日」、「悪い日」の非定期の外斜視を示しはじめていたが、改善せず3歳7ヶ月より治療を開始した。視能訓練、プリズム療法、手術と加療し眼位、融像巾の安定は得たものの遠見立体視が得られず満足のゆくものではなかった。
    術後10年を経過するが現在も同様であり経過観察中である。
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