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藤井 千晶, 岸本 典子, 大月 洋
2012 年 41 巻 p.
77-82
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
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目的:間欠性外斜視を対象に、プリズムアダプテーション(PA)前後の調節微動の高周波成分(HFC)の出現頻度を比較する。
対象と方法:2011年7月13日から10月31日の間に井原市民病院を受診した間欠性外斜視患者9名(7~58歳)の優位眼を対象にした。交代プリズム遮閉試験で検出された遠見斜視角をもとにPAを行い、乱視補正機能付きオートレフラクトメータと眼調節機能測定ソフトウェアを用いてその前後の優位眼のHFCの出現頻度を測定し、斜視角との関係について検討した。
結果:斜視角40⊿以上の例でPA後にHFCの出現頻度が有意に低下した(P=0.03;Wilcoxon signed-rank test)。
結論:斜視角が大きい間欠性外斜視の中にはPAで調節微動のHFCの出現頻度が減少する症例がある。
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山口 知春, 長谷部 佳世子, 大久保 小百合, 高場 美貴, 志羅 美恵, 長谷部 聡, 大月 洋
2012 年 41 巻 p.
83-87
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
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【目的】CYCLOPEAN DESIGN社製のHOWELL PHORIA CARD
®(以下HPC)を用いてAC/A比の測定を行い、その有用性について検討すること。
【方法】屈折異常以外に眼疾患のない正常被検者56名(20歳代29名、30歳代15名、40歳代12名)を対象とした。完全屈折矯正下にて、far HPC、near HPC、far Gradient法(以下far G)、near Gradient法(以下near G)、大型弱視鏡を用いた交代固視法(以下Synopto)を用いてAC/A比の測定を行い、年代別・測定法別に比較した。統計学的検討には、t検定、ANOVAを用い、有意水準は1%とした。
【結果】1.AC/A比は、すべての測定法において各年代間で有意差は認められず、Synopto、near HPCとnear G、far HPCとfar Gの順に高かった。2.far HPCによるAC/A比はfar Gと、near HPCはnear Gとほぼ同値であった。3.near HPCによるAC/A比は、far HPCより有意に高かった。4.near HPCよるAC/A比は、各年代とも、負荷度数によって有意差は認めなかった。
【結論】HPCによるAC/A比はG法とほぼ同値を示し、斜位症例のAC/A比測定法のひとつとして簡便に使用することができる。
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干川 里絵, 伊藤 美沙絵, 清水 公也, 天野 理恵, 石川 均
2012 年 41 巻 p.
89-94
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
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目的:両眼白内障手術前後の眼位と近見立体視の変化について検討した。
対象と方法:両眼に単焦点眼内レンズを挿入した50歳以上の88例(男性19例、女性69例;平均年齢68±8歳、平均眼軸長23.9±0.9mm)を対象とした。対象症例の基準は、白内障手術前に上下偏位を認めず水平偏位は斜位を保ち(近見の外斜位角度:2⊿~16⊿、遠見の外斜位角度:0~14⊿)、術後1.0以上の矯正視力を有した症例である。測定距離に応じた屈折矯正の下で眼位は交代プリズム遮閉試験、近見立体視はTitmus stereo testを使用し、術前から術後5年にわたり経時的に測定した。
結果:術後5年の明らかな眼位変化は近見時で認められ、11.4%の症例が術前の外斜位から術後に間欠性外斜視や外斜視へ移行し複視を自覚した。この斜視化した症例の術前の近見外斜位角度は12⊿以上であった。遠見時に斜視化した症例は認められなかった。術後5年の近見立体視は中央値50 seconds of arc(arcsec)で、85%の症例が正常範囲の100 arcsec未満であった。
結語:白内障手術前に近見外斜位角度が12⊿以上の症例には、術後に複視を生じる可能性があることなどを含めた情報提供とともに長期にわたる経過観察が重要と考えられた。
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小川 美沙, 木村 亜紀子, 間原 千草, 嶌岡 文, 三村 治
2012 年 41 巻 p.
95-99
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
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【目的】先天眼振に対する水平4直筋大量後転術は眼振の振幅減弱に有効であることが知られているが、この眼振の振幅減弱と視力の向上は必ずしも相関しない。今回、水平性要素に加え回旋性要素も伴い視力予後不良と考えられた先天眼振に対し、水平4直筋大量後転術とプリズム療法の併用を行ったところ、視力の改善が得られた症例を経験したので報告する。
【症例】8歳、女児。6歳時の初診時両眼視力は矯正0.1で、水平・回旋方向の静止位のない先天眼振を認めた。眼球運動に制限は認めなかったが、高度な眼振のため眼位の測定は不能であった。7歳時、眼振の振幅減弱を目的として水平4直筋大量後転術を施行したところ、術後、固視の改善が認められた。しかし、眼位は外斜視を呈しており、完全屈折矯正値に両眼5プリズム基底内方装用にて良好な眼位の保持が可能となったため、プリズム眼鏡装用を開始した。術後2年4か月目には、両眼視力は矯正0.5まで改善し、大型弱視鏡にて同時視を獲得した。
【結論】視力予後不良の先天眼振と考えられた症例に観血的治療とプリズム療法の併用が有効であった。手術時年齢が7歳であったことから外眼筋手術は単なる整容目的と考えられたが、実際には視力の改善が得られた。高度な先天眼振症例では、臨界期にとらわれることなく整容面、機能面の改善を目的に積極的な手術治療と眼位管理を行うべきであると考えた。
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次田 舞, 大野 雅子, 奥芝 詩子, 今泉 寛子, 橋本 雅人
2012 年 41 巻 p.
101-105
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
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糖尿病眼筋麻痺は糖尿病の約1%に発症し、再発例が多く、初発の眼筋麻痺の回復後に同側あるいは対側に眼筋麻痺が発症する。一方、両眼性の糖尿病眼筋麻痺の報告は少ない。
今回我々は左滑車神経麻痺発症41日後に右外転神経麻痺を発症した症例を経験し、発症時期の異なる両眼性眼筋麻痺と考えた。他の疾患が除外されたこと、自然治癒したことより、糖尿病眼筋麻痺と推察した。原因検索のための全身検索が必要と考える。
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田澤 聖子, 菅野 敦子, 秦 規子, 小林 昭子, 原澤 佳代子, 毛塚 剛司, 後藤 浩
2012 年 41 巻 p.
107-111
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
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小児の外転神経麻痺は多くの場合、脳腫瘍や頭蓋内圧亢進、外傷などによって引き起こされる。一方、ウイルス感染やワクチン接種に関連した外転神経麻痺の発症は比較的稀である。
インフルエンザワクチン接種後に良性再発性外転神経麻痺を繰り返し発症した5歳女児の症例を経験したので報告する。初回の麻痺は2か月後に回復したが、その1年後に再発した。再発時の麻痺は、約3か月後に回復した。発症の度に頭部CTを施行したが、明らかな異常は発見されなかった。
小児の外転神経麻痺ではウイルス感染やワクチン接種について詳細に尋ねること、再発の可能性を考慮して経過観察を続けることが重要である。
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中尾 善隆, 岡田 佳子, 木村 徹, 尾崎 志郎, 村木 早苗
2012 年 41 巻 p.
113-118
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
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【目的】強度近視性斜視は中年以降に発症する後天性で進行性の斜視と考えられている。今回、10歳で発症した強度近視性斜視1例を経験したのでその発症機序を検討した。
【症例】10歳(小学5年)時、左眼が急に内斜し複視をきたしたので滋賀医大を受診し、20⊿の内斜位と-4.50Dの近視を指摘された。高校入学前、頭痛・複視が強いため尾崎眼科を受診し経過をみていた。症状はいったん寛解したが大学受験前に再発、悪化したため斜視手術を勧められるが、転居のため当院へ紹介受診となった。平成23年5月の当院受診時、遠見近見ともに35⊿内斜視、屈折は右眼S-9.00D、左眼S-9.25D Cyl-0.50D 65°、眼軸長は右眼27.61mm、左眼27.79mm、Hess赤緑試験で両眼外転不全、MRI検査で脱臼角は右眼135°、左眼121°、両眼上直筋の鼻側偏位、両眼外直筋の下方偏位と外直筋-上直筋バンドの菲薄化、偏位、断裂を認めた。
【結論】近視と内斜視の進行の経過、眼軸長の伸長、眼球の亜脱臼、MRI所見から最も早期に発症した強度近視性斜視と診断し、外直筋-上直筋バンドの脆弱性が主要因であったと考えた。
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秋山 優子, 大熊 志保, 平石 剛宏, 金子 博行, 林 孝雄, 溝田 淳
2012 年 41 巻 p.
119-122
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
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片眼視力障害者の視力不良性外斜視に対し、手術を施行することはよく行われるが、両眼の失明者に対して手術が施行された症例の報告は、我々が調べ得た限りではみられなかった。今回両眼失明者の外斜視(外転偏位眼)に対して手術を行い、患者の精神的なQOL(quality of life)が向上した1例を経験したので報告する。
症例は61歳男性。ベーチェット病による続発性緑内障にて両眼失明。左眼は失明後に有痛性眼球癆となり、眼球摘出後に義眼を装着している。今回、残存している右眼が徐々に外転位に偏位し始め、他人からの指摘が気になったため、本人の強い希望にて眼位矯正手術を施行した。術後眼位は良好となり、患者本人の精神的な負担がなくなりQOLの向上に繋がった。
結論として失明眼による外転偏位眼に対しても、本人の希望があれば患者のQOL向上のため、今回のような手術を行うことは有用であると思われた。
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大北 陽一, 木村 亜紀子, 嶋田 祐子, 三村 治
2012 年 41 巻 p.
123-128
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
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目的)弱視治療を2年以上行ったにもかかわらず、矯正視力1.0に達しなかった症例をまとめ、その特徴と原因につき検討する。
対象と方法)2000年6月からの9年間に兵庫医科大学病院眼科で弱視と診断された初診時年齢9歳未満で、2年以上経過をおえた223例313眼(0~8.7歳)を対象とした。内訳は屈折異常弱視83例166眼、斜視弱視65例65眼、不同視弱視63例63眼、形態覚遮断弱視12例19眼であった。視力測定にはランドルト環字ひとつ視標を用いた。予後に影響を与える因子につき後ろ向きに検討した。
結果)矯正視力1.0に達しなかった不良群は313眼中41眼(13.1%)であった。初診時年齢は視力予後と有意差を認めなかったが、初診時視力は不良群が平均0.21(1.0獲得群は平均0.42)と有意に悪かった(p<0.001)。41眼の内訳は屈折異常弱視4眼(2.4%)、斜視弱視12眼(18.5%)、不同視弱視12眼(19.0%)、形態覚遮断弱視13眼(68.4%)であった(括弧内はその群内比率)。屈折異常弱視4眼のうち2眼は等価球面度数-10.00D以上の強度近視であった。斜視弱視では不同視を合併した5例中4例が予後不良であった。不同視弱視の中で、遮閉訓練にかかわらず予後不良であった2例は5.50D以上の遠視性不同視であった。形態覚遮断弱視の先天眼瞼下垂では屈折異常の合併が予後に影響を与えていた。
結論)初診時視力0.2以下、-10.00D以上の強度近視、不同視を合併した斜視弱視、5.50D以上の遠視性不同視、先天眼瞼下垂に屈折異常の合併が予後不良因子と考えられた。
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宮田 真由美, 齊藤 瑞希, 勝又 麗子, 林 理子, 鶴岡 三惠子, 勝海 修, 宮永 嘉隆, 井上 賢治
2012 年 41 巻 p.
129-135
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
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目的:遠視を有する児童における読書能力を調査し、年齢変化と弱視が治癒した後の経過期間が、読書能力に及ぼす影響について検討した。
対象及び方法:対象は、西葛西井上眼科こどもクリニックを受診した6歳~12歳の両眼の屈折が遠視で、現在の矯正視力、両眼視機能が良好な小学生110例で、不同視がない症例とした。方法は、ひらがな単語で構成された読書チャートMNREAD-Jkを用い、日常視の状態を調査するため両眼開放、屈折異常矯正下にて測定した。読書能力評価は、最大読書速度、臨界文字サイズ、読書視力の3つのパラメーターで行い、年齢と弱視治癒後経過期間ごとに検討した。
結果:年齢別検討では、最大読書速度に年齢による主効果がみられたが、臨界文字サイズ、読書視力においてみられなかった。弱視治癒後経過期間の検討における最大読書速度は、経過期間が長くなるに従って速度も上昇した。さらに、年齢と弱視治癒後経過期間を要因に重回帰分析を行ったところ、どちらも貢献しているが、年齢の方がその比重は大きかった。
結論:遠視児童の読書能力において、年齢に加え弱視が治癒と診断されてからの経過期間の影響も受けることから、弱視は、早期発見・早期治療が重要であることが再認識された。
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蕪 龍大, 小野 晶嗣, 竹下 哲二
2012 年 41 巻 p.
137-141
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
ジャーナル
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【目的】三歳児眼科健診の一次健診で視力検査を実施していない保護者の割合を調査する。また、その視力検査実施の有無が二次健診結果にどのような影響を与えるかについて検討する。
【対象と方法】対象は、2010年度に上天草市で三歳児眼科健診を受診した191名の児とその保護者。方法は、二次健診当日に保護者に自宅で視力検査を行ったかを聞き、行わなかった保護者にはその理由も尋ねた。一次健診の結果に関わらず対象児すべてに二次健診を行った。
【結果】一次健診として自宅で視力検査を行って来た児は111名(58%)、行って来なかった児は80名(42%)であった。視力検査を行わなかった理由として、健診当日に視力検査に関する用紙に気付いたため実施する時間がなかった、視力検査を行うこと自体を知らなかったなどの回答が得られた。二次健診にて視力・屈折異常等により三次健診となった児は191名中15名であったが、そのうち7名の健診児の保護者は「一次健診ではランドルト環で視力検査が問題なく出来た」と回答した。
【結論】二次健診受診児の4割を超える保護者が一次健診で視力検査を行っていないことが判かり、一次健診の実施方法を見直す必要があると思われた。一次健診でのランドルト環による視力検査は、二次健診時の検査時間の短縮に繋がり有効と考えられた。
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旭 香代子, 中岡 真美子, 谷村 亞紀, 谷 知子, 筑田 昌一, 池淵 純子, 楠部 亨, 真野 富也
2012 年 41 巻 p.
143-148
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
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【目的】我々は、以前に3歳児健康診査におけるオートレフラクトメータによる屈折検査の有用性を報告した。今回、当院が参加している自治体での遠視の判定基準1.0Dの妥当性について検討を行ったので報告する。
【対象及び方法】対象は、平成11年6月から平成23年9月までに当院を受診した3歳以上5歳未満の幼児のうち、以下の条件を満たした42名。対象とした条件は、弱視・斜視の治療歴がないもの、恒常性の斜視がないもの、近視3.0D未満、乱視・不同視2.0D未満、調節麻痺薬の点眼前後で視力検査、屈折検査を実施できたものとした。方法は、据え置き型オートレフラクトメータにより自然瞳孔下で測定されたS面度数のうち各児の遠視側の方の眼の度数を用い、遠視の判定基準を1.0D及び2.0Dに設定した場合の弱視の検出数と偽陽性の数について比較検討した。
【結果】42名中弱視と診断された5名について、判定基準1.0Dでは全例が検出されたのに対し2.0Dでは1名が見逃される結果となった。偽陽性の数は、1.0Dの基準では16名中11名、2.0Dでは5名中1名のみであった。
【結論】遠視の判定基準1.0Dは妥当であることが示唆された。しかし、1.0Dの基準では検出率が高まる一方で偽陽性も多くなった。3歳児健康診査で屈折検査における遠視の判定基準を決定する場合、検出率と偽陽性について今後多数例での検討が必要である。
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挺屋 孝子, 齋藤 恵美, 大上 瑞恵, 宮田 真由美, 荻嶋 優, 勝海 修, 宮永 嘉隆, 井上 賢治
2012 年 41 巻 p.
149-154
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
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目的:近年、コンタクトレンズ(contact lens:以下CLと略す)装用人口は増加している。特に、小児のCL使用率は年々増加し、低年齢化している。一方、CL装用開始年齢に明確な基準は設けられていない。そこで、西葛西井上眼科クリニック(以下当クリニックと略す)におけるCL処方の実態について報告する。
対象と方法:平成20年1月から平成23年6月までに当クリニックにてCLを処方した10歳から15歳の小児158名を対象に、性別、年齢、CL処方時の屈折値、CL処方希望の動機、家族のCL使用歴を後ろ向きに検討した。
結果:対象者の平均年齢12.96歳。男女比は53:105で女子が66%を占めた。CL処方時の平均屈折値は、右眼が-3.87D、左眼が-3.77Dであり、CL処方を希望する動機として、運動を理由とする小児が62%、次いで整容目的が16%、不同視・強度近視が10%、その他が4%、不明が8%に分類された。家族のCL使用歴は、家族のいずれかに使用歴ありが59%、使用歴なしが13.9%、不明が27.1%だった。
結論:屈折矯正の第一選択は、眼鏡装用である。しかし、生活様式が多様化する中、小児においてもCL装用が選択肢の一つになっている。小児に対するCL処方及び使用を出来る限り安全にするため、CL処方する際には小児を十分に観察し、保護者と共にCLのメリットとデメリットの説明、CLが医療器具である認識を持ってもらい、理解が得られた上で、装用練習、その後の経過観察を十分に行い、正しく使用されていることを確認することが重要であると考える。
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小澤 優貴, 小林 香, 向井 章太, 佐藤 瑞恵, 石井 祐子, 永野 雅子, 小口 芳久, 若倉 雅登, 井上 賢治
2012 年 41 巻 p.
155-161
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
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目的:1年以上経過観察できた小児の非器質性視覚障害の症例において、視機能検査結果の経過などから治癒に長期間を要した症例の臨床的特徴を検討すること。
対象及び方法:対象は平成18年1月~平成22年12月の5年間に井上眼科病院を受診し、非器質性視覚障害と診断された経過観察期間1年以上の15歳未満小児130例(男児20例・女児110例)。診療録の視機能検査結果より視力の経過から短期改善群(24例)・長期改善群(20例)・繰り返し群(55例)・改善なし群(31例)の4群に分け、男女比・受診動機・全身所見・屈折検査・眼鏡処方・診断時視力・診断時年齢を後ろ向きに検討した。
結果:4群の中では繰り返し群が最も多く、特に女児で高い割合を占めた。男児は女児との比率において、短期改善群は他3群より高かった。片眼性は女児のみであり、全例で視力の改善をみた。4群とも受診動機は学校健診、推定される因子は不詳、診断時年齢は8~9歳が最多であり、群間で差はなかった。改善なし群では診断時視力が不良な症例が多くみられた。このうち女児と7歳以下の症例においてこの傾向が顕著にみられた。
結論:長期観察できた非器質性視覚障害において、女児は診断時視力も予後も不良で、男児では良好な傾向がみられた。過去の報告と比較し、視力の再低下を繰り返す割合が更に高まる結果となった。診断時視力が低いと繰り返し群・改善なし群となる傾向がみられた。
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瀬戸 寛子, 大島 裕司, 松田 由里, 手島 由貴, 村上 美智子, 堀江 宏一郎, 関 正佳, 石橋 達朗
2012 年 41 巻 p.
163-169
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
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【目的】米国American Medical Association(AMA)が推奨し、QOLと相関すると言われているFunctional Vision Score(FVS)を用いて本邦で視覚障害に認定されている患者の障害の程度をスコア化し、日本の障害等級とFVSを比較した。
【対象および方法】対象は視覚障害に認定されている42例(1級8例、2級19例、3級6例、4級3例、5級6例)男性20例、女性22例である。 視力値からFunctional Acuity Score(FAS)、Goldmann視野からFunctional Field Score(FFS)を求めFVSを算出し、本邦の各障害等級とFVSを比較した。
【結果】本邦の各障害等級に相当するFVSの値は1級0~19.9%、2級2.9~60.2%、3級6.9~62.1%、4級7.6~27.5%、5級11.9~74.4%であり、障害等級とFVS間には有意な相関が認められた。(Spearman順位相関係数 r=0.47、p=0.0014)また、AMA分類にあてはめるとclass 4(国際分類:ほぼ全視覚喪失)は1級6例、2級5例、3級1例、4級1例、5級1例、class 3b(極度視覚喪失)は1級2例、2級8例、3級4例、4級2例、5級1例、class 3a(重度視覚喪失)は2級3例、5級3例、class 2(中等度視覚喪失)は2級3例、3級1例、class 1(軽度視覚喪失)は5級1例、class 0(正常視覚)はすべての級で0例であった。
【結論】日本の障害等級とFVSには相関がみられたが、日本の障害等級が同等であってもFVSの基準に従い分類した結果、異なるクラスに分類される症例があった。
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花田 有里子, 前田 史篤, 春石 和子, 渡邊 一郎, 桐生 純一
2012 年 41 巻 p.
171-176
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
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【目的】視力検査の際、“わからない”と答えた被検者に対して、検者が介入して回答を促すと、正答が続き視力の向上をみることがしばしばある。我々は黄斑前膜に対し、検者の介入による視力の向上について検討した。
【対象及び方法】対象は黄斑前膜39例(73.3±8.1歳)で、眼内レンズ挿入眼11例(75.6±9.6歳)を対照とした。黄斑前膜は土橋らの報告に基づき、面癒着型中心窩陥凹存在(11例)、面癒着型中心窩陥凹消失(10例)、面癒着型偽黄斑円孔(7例)、架橋型(11例)に分類した。
被検者には視力測定前に他覚的あるいは前回の屈折値をもとに完全屈折矯正を行い、Landolt環の切れ目の方向を回答させ、3/5の基準をもって視力を判定した(介入前視力)。次いで、Landolt環の切れ目が明確でなくとも回答するよう答えを促し、得られた視力を介入後視力とした。分析では、左右各眼の内、先に測定した眼を対象とした。
【結果】介入前後の視力向上の平均値±標準偏差は、眼内レンズ挿入眼で0.04±0.06 logであった。黄斑前膜全体では0.10±0.08 log、分類別では面癒着型中心窩陥凹存在0.07±0.06 log、面癒着型中心窩陥凹消失0.14±0.11 log、面癒着型偽黄斑円孔0.12±0.07 log、架橋型0.07±0.07 logであり、面癒着型の中心窩陥凹消失と偽黄斑円孔で大きかった。
【結論】黄斑前膜がある被検者の視機能を最大限に引き出すためには、検者の適切な介入が必要であると思われる。
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中村 瑞紀, 肥田野 めぐみ, 林田 利沙, 小林 昭子, 原澤 佳代子, 遠藤 成美, 後藤 浩
2012 年 41 巻 p.
177-180
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
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【目的】閃輝暗点の発作中に静的量的視野検査を施行し、経時的に変化する閃輝暗点の客観的ならびに定量的評価を行うことができた症例を経験したので報告する。
【症例】46歳女性、眼科職員。左同名性の閃輝暗点を自覚してから約10分後に、Humphrey視野計で30-2閾値検査(SITA-standard)を施行した。その結果、左同名性に沈下が捉えられた。自覚症状消失後に施行した検査では、左同名性の沈下は捉えられなかった。
【結論】静的量的視野検査により、経時的に変化する閃輝は明らかな暗点として定量され、閃輝暗点の客観的評価が可能であった。
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大野 恵梨, 須藤 史子, 島村 恵美子, 渡辺 逸美, 渕江 勇太
2012 年 41 巻 p.
181-188
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
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目的:IOLMaster
® モデル500(Carl Zeiss Meditec; 以下IOLMaster)と2検者による超音波Aモード法2種A-Scan PlusモデルSynergy(Accutome, Inc; 以下Synergy)、UD-6000(TOMEY; 以下UD)の水浸法による眼軸長を比較しSynergyおよびUDはIOLMasterに代入可能か検討すること。
対象と方法:3機種で計測し得た63例104眼の眼軸長を比較し、術後矯正視力0.5以上が得られた30眼についてはSRK/T式の術後屈折誤差も比較した。
結果:両検者ともIOLMasterとSynergyの眼軸長に有意差はなく、UDのみ約0.10mm短く測定された(p<0.01)。両Aモードに検者間の有意差はなかった。術後屈折誤差はUDのみ約0.2D近視化し(p<0.01)、また検者間にも有意差があった(p<0.01)。
結論:Synergyは検者のスキルに依存することなく使用でき、IOLMasterに代入可能であるが、UDの眼軸長を代入することはできない。
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岡戸 朋子, 玉置 明野, 小島 隆司, 横山 翔, 吉田 則彦, 市川 一夫
2012 年 41 巻 p.
189-194
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
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【目的】白内障術前検査における光学式眼軸長測定不能眼に対する水浸式と接触式超音波眼軸長測定法の比較。
【対象と方法】白内障術前検査にてIOLマスター
®(Carl Zeiss meditec)による光学式眼軸長測定が不能で、白内障術後3ヶ月に光学式眼軸長測定が可能であった28名36眼。全例術前に水浸式(A-Scan Plus
®:Acuttome)及び接触式(US-4000: NIDEK)超音波眼軸長を測定し、術後3ヶ月時のIOLマスター
®による眼軸長と術前の各値を比較した。有意差検定はWilcoxon符号順位和検定を用い、有意水準は5%未満とした。
【結果】術前の超音波眼軸長測定は、水浸式が平均24.06±1.50mm、接触式は平均23.88±1.40mmで水浸式が有意に長く計測された(
p<0.0001)。術後IOLマスター
®の平均値は24.00±1.40mmで、水浸式とは有意差を認めず(
p=0.44)、接触式とは有意差を認めた(
p=0.002)。また術後のIOLマスター
®との眼軸の差が0.2 mm以内の割合は、標準眼軸長眼では水浸式92.0%、接触式84.0%であったが、長眼軸長眼では、水浸式33.3%、接触式44.4%であった。
【結論】術前光学式眼軸長測定不能例でも標準眼軸においては、A-Scan Plus
®による水浸式超音波測定値は、眼内レンズ度数計算のパラメータを光学式と同じ条件で使用できる可能性が示唆された。長眼軸では、水浸式も接触式同様、測定値のバラつきが大きく熟練を要すると考えられた。
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小野 晶嗣, 蕪 龍大, 竹下 哲二
2012 年 41 巻 p.
195-199
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
ジャーナル
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【目的】術中にトーリック眼内レンズの軸合わせを簡便に行える分度器付きパネルを考案し、2011年の日本眼科手術学会で報告した。このパネルを用いて軸合わせを行った手術成績を報告する。
【対象及び方法】2010年6月から2011年7月の間にトーリック眼内レンズ(Acrysof
® IQ Toric:SN6AT3-5)を挿入し、パネル法で乱視軸を合わせた54例78眼(61~88歳:平均76.1±6.1歳)。術前に座位で細隙灯顕微鏡に取り付けたカメラによる前眼部撮影を行い、虹彩紋理や色素などの目印を見つける。パソコン画面上でこの画像に分度器画像を張り付け、目印からレンズの軸までの角度を計算しておく。術中、顕微鏡映像のモニタにパネルをかぶせ、作成した分度器を取り付けて目印からの角度を測り、パネルに線を引く。術者はレンズ挿入後、この線とレンズのマーカーを重ねて乱視軸合わせを行う。術前、術後1週間、1カ月、3カ月の裸眼・矯正視力、自覚・他覚乱視を測定した。
【結果】平均裸眼視力は術前0.43、術後3カ月0.84、平均矯正視力は術前0.71、術後3カ月1.10だった。平均他覚乱視は術前1.79±0.83D、術後3カ月0.90±0.51D、平均自覚乱視は術前1.31±0.88D、術後3カ月0.55±0.47Dだった。予定軸との軸ずれは6.22±6.10°だった(n=46)。
【結論】パネル法により、他施設の報告と同等の裸眼視力および乱視軽減効果が得られた。
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石田 篤行, 益子 直子, 箕輪 美紗斗, 湯田 兼次
2012 年 41 巻 p.
201-206
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
ジャーナル
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【目的】生体共焦点顕微鏡を用いて、流行性角結膜炎(以下、EKC)の急性炎症後に角膜混濁を残した症例の角膜障害について検討した。
【対象および方法】対象は、きくな湯田眼科にてEKCの急性炎症後、角膜混濁を残した症例10名19眼(8歳~77歳、平均年齢39.4歳:男性7名、女性3名)とした。
方法は、生体共焦点顕微鏡を用いて角膜各層および角膜神経叢の観察を行った。また、Cochet-Bonnet角膜知覚計を用いて角膜知覚の測定も行った。
【成績】すべての症例において、角膜内皮、実質深層に大きな異常は見られなかった。一方、実質浅層には細隙灯顕微鏡で観察された混濁に相当する異常所見が見られた。特に基底下神経叢では神経密度の低下、神経線維屈曲度の異常などの神経障害を意味する所見が捉えられた。また、平均角膜知覚は2.10±0.44g/m
3で有意差を認めた。(Aspin-Welchのt検定、p<0.001)
【結論】今回、EKC急性炎症後に角膜混濁を残した症例で角膜神経叢に異常所見が捉えられた。この結果より、角膜神経叢の障害が重度の場合、神経叢のリモデリング(再構築)の異常をきたすと推定される。そのため、神経由来の再生因子に障害を生じ、角膜混濁など病変の治癒が遷延化することが想定される。
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加藤 幸仁, 小口 優, 玉置 明野, 吉田 則彦, 加賀 達志, 市川 一夫
2012 年 41 巻 p.
207-212
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
ジャーナル
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目的:画角200°の眼底撮影が可能な超広角走査レーザ検眼鏡Optos200Tx™(以下オプトス)と従来型眼底カメラとの撮影上の違いを明らかにする。
対象及び方法:正常眼1眼と糖尿病網膜症例1眼を対象に、オプトスとAFC-230(NIDEK社製 無散瞳カメラ 画角45°)を使用し撮影方法と撮影可能範囲を比較するとともに、オプトスの撮影可能最小瞳孔径についても併せて検討した。
結果:オプトスでの撮影時、被験者はフェイスカバーに顔面を押し当てる必要があった。また撮影画像に睫毛が写り込み、十分な画像が得られない場合があった。オプトスでは画角200°の撮影が可能であったが、AFC-230によるパノラマ画像では100~120°程度であった。オプトスでは瞳孔径1.9mmまで撮影可能であった。
結論:オプトス撮影時には、被験者に顔面を押し当てることによる不快感があることの説明が必要であり、睫毛を挙上させる工夫が必要であった。従来型カメラでのパノラマ撮影範囲よりも広範囲の撮影が、オプトスでは1ショットで可能で、さらに瞳孔径1.9mm症例でも十分な画像を得られることが分かった。
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樹下 美加, 奥出 祥代, 林 孝彰, 武田 裕行, 田中 ふみ, 北原 ゆみ子, 北川 貴明, 月花 環, 東 友馨, 大熊 康弘, 神前 ...
2012 年 41 巻 p.
213-219
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
ジャーナル
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目的:自然経過で視機能の改善がみられた両眼性急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR)の1例について報告する。
症例: 20歳、女性。左眼視力低下を自覚し、その2日後の視力は、右眼(0.9)、左眼(0.2)で、強度近視眼であった。血液検査で、全身性炎症反応はなかったが、抗核抗体が陽性であった。相対的瞳孔求心路障害はみられず、脳MRIで異常所見はなかった。Goldmann視野で両眼のマリオット盲点拡大、Humphrey(中心30-2)で両眼の感度低下(右眼MD 値:-2.40 db p<5%、左眼MD 値:-8.74 db p<0.5%)を認めた。眼底及び蛍光眼底造影検査で明らかな異常はなかった。スペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)所見として、左眼では視細胞内節外節接合部ラインの不整・部分的消失が、右眼では中心窩から鼻側において錐体外節先端ラインの不明瞭が検出された。多局所網膜電図(mfERG)で、応答密度の低下を両眼に認めAZOORの診断が確定した。1か月後、左眼視力は(1.0)まで改善した。約9か月後、視力は両眼それぞれ(1.2)、HumphreyのMD値(右眼:-1.79 db p<10%、左眼:-1.48 db)は改善した。SD-OCT所見として、右眼は不変であったが、左眼では著しく改善していた。mfERGにおいても両眼ともに応答密度の改善を認めた。
結論:AZOORによる視機能障害は必ずしも改善するとは限らない。本症例は、両眼性であり、自然経過で視機能が改善し再発はなかった。AZOORの中には、本症例のように自然軽快傾向のある症例が存在する。
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小林 昭子
2012 年 41 巻 p.
221-227
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
ジャーナル
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【目的】Goldmann視野検査の実技指導用にGPテクニカルチェックシート(以下シートとする)を作成した。問題解決型学習(以下学習とする)前後に施行した視野検査をシートで評価する実技教育指導法を検討した。
【対象と方法】学生視能訓練士(以下学生とする)10名、臨床経験3年の視能訓練士3名を対象とした。指導者は3名であった。対象者間で視野測定し、到達度を指導者がシートに評価した。未到達の項目については問題の想起と解決をグループ討議で行い、視野を再測定後再度シートで到達度を確認した。シートでの到達度の変化から指導法を検討した。
【結果】38項目の内、学生の到達可能な項目数は学習前が平均19.9±標準偏差3.5(平均52%)、後が22.6±4.0(59%)、視能訓練士は前が36.3±1.2(96%)、後が38(100%)であった。到達度の向上が10%以上向上は3/10名、10%未満は5/10名、低下は2/10名であった。「鼻側は正常範囲の外側から動かす」は学生10名全員が到達できていたが、「下方は最大稼働域から動かす」は7/10名、「視標速度を一定にする」は6/10名が学習前後とも到達できなかった。
【結論】GP実習指導に不可欠な項目を列挙したシートを使用することで、指導者は指導内容が網羅できた。学習により検査手技の確認はできたが実測で技術がすべて身についていたとはいえず、指導を繰り返しての検討が必要と思われた。
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前田 史篤, 岡 真由美, 山下 力, 小林 泰子, 田淵 昭雄
2012 年 41 巻 p.
229-234
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
ジャーナル
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視能訓練士の臨地実習では、従来、段階的な認定評価を用いていたが、多施設にわたる実習指導者の主観に左右される部分が大きく、評価基準を実習施設間で統一することが困難であった。また一部の実習生は、実習指導者による客観評価が実習生自身の自己評価より低いにも関わらず、その要因を見出して自己の課題に取り組むことができないことがある。
これらの現状に対して、本研究では新しい試みとしてルーブリックによる評価を視能訓練士の臨地実習に導入し、その有用性について検討したので報告する。
対象は、A大学実習生37名(男性4名、女性33名、20.3±0.5歳)であった。
ルーブリックとは評価項目について段階的な判定基準が具体的に記されており、誰が評価しても結果が変わりにくいといわれている。ルーブリックの項目は実習の基本的事項を考慮した上で、6項目を作成した。評価は、良い(3ポイント)、普通(2ポイント)、もう少し(1ポイント)、不十分(0ポイント)の4段階とし、それぞれに具体的な判定基準を設けた。臨地実習終了後には、実習生(自己評価)と実習指導者(客観評価)のそれぞれからルーブリックの回答を得た。
実習生には臨地実習の開始前にルーブリックを参照させることで、実習中の行動指針を明確化させることができた。またルーブリックには評価の判定基準が具体的に記されており、実習生と実習指導者の両者にとって評価の客観性向上に役立つと考えられた。
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高﨑 裕子, 岡 真由美, 田淵 昭雄
2012 年 41 巻 p.
235-241
発行日: 2012年
公開日: 2013/03/15
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目的 川崎医療福祉大学感覚矯正学科視能矯正専攻で実施している客観的臨床能力試験(OSCE)の医療面接評価表について内容妥当性を検討した。
方法 材料は教員用(T)と模擬患者用(SP)の2種類の評価表で、2009年と2010年の医療面接OSCEにおいて60名の学生に使用した。両評価表は第一筆者がオリジナルに作成した。T評価表の主項目は病歴聴取の方法、主訴、解釈モデルの聴取、まとめと明確化、アイコンタクトなどの10項目で、結果は、よい2点、ふつう1点、わるい0点の3段階、またはよい1点、わるい0点の2段階で点数化した。SP評価表は共感的態度、会話内容の理解、話し易い雰囲気、清潔感(身だしなみ)などの8項目で、医療面接の態度を評価した。結果はT評価表と同様に点数化した。妥当性は、T評価表を因子分析とα係数で、SP評価表を項目特性曲線で検討した。
結果 1.T評価表では2つの因子が抽出され、第1の因子はコミュニケーション能力の領域、第2の因子は医療情報の聴取能力を示す領域であることが明白になった。T評価表10項目のα係数は0.858であった。2.SP評価表の項目特性曲線では共感的態度、話し易い雰囲気、清潔感が重複したが、これらの識別力は高かった。会話内容の理解は識別力が最も低かった。
結論 T評価表の内容妥当性が判明した。しかし、SP評価表はさらに他の観点からも評価できる項目を付加し改善する必要が示唆された。
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