日本油化学会誌
Online ISSN : 1884-1996
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45 巻, 12 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 松本 睦良
    1996 年 45 巻 12 号 p. 1311-1319
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    LB膜の構造と機能を3種類の方法を用いて制御した。最初の方法では, トリガー分子としてヘキサトリアコンタンを用い, 非両親媒性ポルフィリン分子の配向と会合体構造を制御した。トリガー分子なしでは, ポルフィリンは基板に対して傾いた配向をとるのに対し, トリガー分子の存在下ではポルフィリンは基板に対してほぼ垂直の配向をとった。2番目の方法は, ポリイオン錯体形成を利用するものである。ポリカチオン種により, アゾベンゼンLB膜の構造と光異性化反応を制御できることが分かった。最後の方法では, アゾベンゼンの光異性化反応を利用した。光異性化反応はLB膜の構造の変化をもたらし, 導電率のスイッチングと共存するシアニン色素の会合体の変化をもたらした。
  • 石川 行弘, 伊藤 忠義, Kuo Hsiung LEE
    1996 年 45 巻 12 号 p. 1321-1325
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    新規の酸化防止剤及び優れたリポキシゲナーゼ (LOX) 阻害剤であるNC3BをAspergillus terreusの培養濾液から単離し, 1,3-dihydro-7-methyl-4,5,6-trihydroxyisobenzofuranと同定した。リノール酸メチルを基質とする重量法条件において, NC3Bの抗酸化性はトコフェロールよりは強いが, 相乗効果は弱かった。NC3B は, LOXによるリノール酸の酸化を顕著に阻害し, 酸素消費量を減少させることが分かった。
  • 小川 博史, 辻 宏明, 瀬戸 明, 原 節子, 戸谷 洋一郎
    1996 年 45 巻 12 号 p. 1327-1332
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル フリー
    自然界に存在する代表的なポリアミンの1種であるスペルミンの酸化防止効果およびトコフェロール (Toc) に対する相乗効果について, 高度不飽和油脂を自動酸化基質として検討した。その結果, 自動酸化期間中のスペルミンを添加した実験群と無添加の対照群のPVとCVの上昇に差が観察されず, スペルミンは酸化防止作用を持たないことが判明した。
    また, 精製魚油にTocを添加した実験群のPV上昇がスペルミン添加量に依存して効果的に制御されたことから, スペルミンはTocに対して強い相乗効果を示すことが確認された。
    さらに, 自動酸化期間中にTLCで追跡したスペルミン量が260h以内に急激に減少するにも拘らず, 自動酸化基質の誘導期は1200h以上にわたって続き, Toc量もその間残存した。これらの事実から, Tocはスペルミンのアミノ水素からの水素供与を経て, トコフェロキシルラジカルから再生されると考えられた。なお, スペルミンから生成したスペルミンラジカルは脂質ラジカルや脂質ペルオキシルラジカルを捕捉して脂質複合体を形成すると推察した。
  • 甫立 善明, 上野 聡, 矢野 淳子, 吉本 則之, 葛城 俊哉, 佐藤 清隆
    1996 年 45 巻 12 号 p. 1333-1337
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    O/Wエマルション中に分散させたパーム油の結晶化温度 (Tc) および結晶成長速度 (Rcg) を測定した。結晶化のその場観察のため, 超音波音速測定法を用いた。この方法は, O/Wエマルション中の油脂結晶化を短時間で非破壊的に測定可能な点で有効である。測定結果は, 以下の2点である。
    (1) パーム油のみの系 (バルク) では, Tcは32℃であった。一方, エマルション中のパーム油のTcは11℃であった。
    (2) O/Wエマルションにおいて, 10℃でのRcgは, 急冷後始めの500minは著しく増加したが, その後はしだいに減少した。
    これらの結果は以下のことを示唆している。O/Wエマルション中のパーム油結晶化において, バルクにおける結晶化に比べて, 核形成過程は抑制され著しく遅くなったが, 核形成後の結晶成長は, 特に抑制を受けずバルクにおける場合と同じ程度に進行した。
  • 小出 操, 宇川 仁太, 小高 明人, 太垣 和一郎, 玉垣 誠三
    1996 年 45 巻 12 号 p. 1339-1347
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル フリー
    β-グリシルリチン酸二カリウム (GK2) のミセル特性を表面張力, 可溶化, 蛍光, 円二色性及び光散乱法等を用いて調べた。特に, GK2のトリテルペノイド部のカルボキシル基の役割を解明するため, 誘導体であるβ-グリシルリチン酸モノメチルエステル (GMe) の物性を比較検討した。その結果, pH7.4において, GK2及びGMeは, 各々のcmc近傍で会合数20~25の比較的小さいミセルを形成することがわかった。GK2のcmcは, pHが中性になるに伴い増大した。また, 溶質濃度の増加につれ, GK2がアルコール様極性のコアーを持つ, より大きなミセルへと変化するのに対し, より疎水性の高いGMeは, 密で疎水度の高いコアーを持つ柱状ミセルへと変化した。一方, GK2のゲル化機構が分子力場計算により解明された。更に, GK2類の1-オクタノールへの分配挙動を種々の相間移動触媒の存在下でpHを変化させて調べたところ, 特にpH5~7において, 数種のカチオン性相間移動触媒がGK2及びGMeの1-オクタノールへの分配を促進させることが明らかとなった。
  • 高津戸 秀, 阿部 弘行, 島田 克也, 中山 真義, 横田 孝雄
    1996 年 45 巻 12 号 p. 1349-1351
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    イチョウの種子中に含まれるブラシノステロイドおよび4-デスメチルステロールについて調べた。種子の胚乳の部分をホモジェネートし, メタノール抽出後溶媒分配を行い, クロロホルム可溶分画とヘキサン可溶分画とを得た。クロロホルム可溶分画は各種クロマトグラフィーで精製し, イネ葉身屈曲試験において活性な分画を得た。誘導体化後GC-MS分析を行い, ブラシノステロイドの一種であるティーステロンを同定した。さらに, ヘキサン可溶分画は加水分解後分取用TLCにより4-デスメチルステロール分画を得, TMS誘導体化後GC-MS分析を行い, 6種のステロールを同定した。さらに, ティーステロンとステロールの構造的関係について生合成の観点から論じた。
  • 小林 禮次郎, 武藤 正和
    1996 年 45 巻 12 号 p. 1353-1357
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    水/ポリ (オキシエチレン) (10) 硬化ひまし油 (HCO-10) /油系で形成されるW/Oマイクロエマルション領域を求め, その相挙動を水/ポリ (オキシエチレン) (5) モノヘキサデシルエーテル (C16EO5N) /油系と比較した。これによると, HCO-10/トリアシルグリセリン系の水の最大可溶化量は多く, HCO-10/炭化水素系の水の最大可溶化量は少なかった。この傾向はC16EO5N系の場合と全く逆であった。
  • 高橋 是太郎, 十河 和明, 栗原 秀幸, 高間 浩蔵
    1996 年 45 巻 12 号 p. 1359-1361
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    高水分活性域で起こる魚油の酸化に及ぼす食塩の影響をクロロホルム-メタノールで脱脂したマイワシ普通肉の粉末とイワシ油の混合物を用いたモデル系で調べた。20℃における酸素吸収量の経時的変化により酸化誘導期間を求め, 酸化の指標とした。用塩量を増やすことや水分活性を高くすることにより誘導期間が短くなった。食塩の添加は金属イオンと蛋白質の相互作用を妨げ, 結果として金属イオンと魚油の相互作用を高めてしまうと推定した。また, 水分活性が高くなるにつれて, 金属イオンの易動度が増加して魚油の酸化を促進すると考えた。
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