日本油化学会誌
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45 巻, 3 号
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  • 石上 裕
    1996 年 45 巻 3 号 p. 229-242
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル フリー
    高分子界面活性剤は, 高分子電解質の伸びた高分子鎖の収縮挙動によって区別される。オリゴマー型界面活性剤 (オリゴソープ) は質量作用則に従い, ミセル形成に対応して臨界ミセル濃度 (cmc) を有していた。オリゴソープの繰り返し単位当りの部分モル容積が, HLB 値とともに実際の可溶化および乳化作用の大きさと関係づけられた。バイオサーファクタントは, かさ高い構造にもかかわらず小さい cmc と高い表 (界) 面張力低下作用を示した。このような機能は界面での優れた分子配向性に帰せられよう。この挙動はべシクル形成および分子集合系のミセルー脂質粒子-ラメラ-ベシクルヘの変換を見出すことによって確かあられたといえよう。さらに, サーファクチンの棒状ミセル形成は, このように高度に組織化された集合体を形成するのに有効な分子の積み重なりを可能にするためにβ-シートの形成が重要であることが示唆された。バイオサーファクタントは, スピクリスポール酸におけるゲル形成性の乳化・分散, コリノミコール酸とラムノリピッドにおける浸透作用, サクシノイルトレハロースリピッドにおける多点吸着によるエマルションの安定化作用, ラムノリピッド同族体における強い界面活性などの特長を示した。最後に, バイオミメチク・サーファクタントの調整と応用は, 生体中に含まれる両親媒物質の化学構造や生物機能を模倣して, 生物科学への貢献やスペシァリティケミカルズの開発に有用であると結論された。
  • エタノールアミン型リン脂質の極性基の酵素活性への影響
    大勝 靖一, 竹澤 恒雄, 佐々木 一行, 安西 孝之
    1996 年 45 巻 3 号 p. 243-250
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    極性基の異なる種々のエタノールアミン系リン脂質を合成し, 加水分解酵素モデルとしての糖脂質の混合ベシクルを用いたアミノ酸エステルの加水分解の反応場として用いた。そして, リン脂質が触媒活性に及ぼす影響について検討した。その結果, 反応場が液晶状態の時にはその相転移温度の低いものほど触媒活性を促進させた。一方, ゲル状態の時には逆であった。このことは, 糖脂質の加水分解活性は, 反応場の流動性に影響を受けることを示唆するものである。
  • 小日山 正剛, 知見 憲次, 丸山 武紀, 須藤 元雄, 藤田 忠雄, 亀井 正治, 新谷 〓, 菅野 道廣
    1996 年 45 巻 3 号 p. 251-265
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    食じ (餌) ニッケル (Ni) 及び銅 (Cu) のラットの臓器及び組織への蓄積, そして排泄について経日的に調べた。ラットを NiCl2 (Ni として 1,000 ppm) 及び CuCl2 (Cu として 100ppm) を同時に添加した飼料で4週間飼育後, 基本飼料でさらに3週間飼育した。 Ni は添加飼料で1週間飼育後, 肝臓, 肺, 腎臓, 脳及び筋肉組織に蓄積されたが, Cu は肝臓に蓄積されただけであった。Ni 及び Cu 添加飼料から基本飼料に換えることにより, これらの臓器及び組織の Ni 含量は, 脳を除き速やかに減少した。肝臓の Cu も減少した。糞中の食じ (餌) Ni 及び Cu は基本飼料で飼育後, 約1週間以内で対照群と同レベルに減少した。添加飼料で飼育中, Cu の蓄積の有意な増加はなかったので, 飼料を換えた後でも尿中への排せつは減少しなかった。
  • 川瀬 徳三, 河本 久美, 藤井 富美子, 皆川 基, 沢田 英夫
    1996 年 45 巻 3 号 p. 259
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    過酸化フルオロアルカノイルとポリオキシエチレンメタクリレートから得られる, 両端にフルオロアルキル基を有する新規アクリレートオリゴマーの SR 加工剤としての有効性について, ポリエステルの表面改質から検討した。
    空気中のような疎水性環境下では, 表面は撰油性に改質され, その表面自由エネルギー値は 25 mJ/m2以下であり, 分散力および極性力成分はそれぞれ 16~18, 2~6 mJ/m2であった。ESCA 分析の結果, フルオロアルキル基は空気に向がって配列し表面を撥油性にしている事が示された。さらに, 表面自由エネルギーの分散力および極性力成分とESCA 分析によるエーテル結合炭素の C1sおよび F1sピークの含有率との間に高い相関があった。この関係を基に, 布の表面自由エネルギーを見積もった。
    一方, 時間とともに水の接触角は減少し未改質の時よりも低くなった。これは, 水中のような親水性環境下ではポリオキシエチレン基が表面へしみ出して来てオリジナル表面よりも親水性へと変化する (IILIP-FLOP 機構) ことによると説明できる。モデル洗浄実験の結果も, これら新規オリゴマーが FLIP-FLOP 型の SR 加工剤として機能することを支持した。
  • 渡辺 昭次, 藤田 力, 坂本 昌巳, 中川 博視, 大森 義久
    1996 年 45 巻 3 号 p. 267-270
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    アダマンタンカルボニルクロリイド (I) とアミノアルコール, アミノ酸の反応で多数の付加物を合成し, 水溶性切削油剤としての性能を検討した。N- (1-アダマンタンカルボニル) -O- (1-アダマンタンカルボニル) モノエタノールアミン (III) の水溶液は水溶性切削油剤として優れた防錆性と抗菌性を示した。
  • 板橋 豊, 原田 直和, 太田 亨, 松永 勝彦
    1996 年 45 巻 3 号 p. 271-273
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    海産珪藻 Phaeodactylum Tricornutum に存在する遊離脂肪酸 (FFA) の組成を求めた。 FFA は, バッチ培養した定常期の試料の脂質中に 18% 含まれており, トリアシルグリセリン (TG), 炭化水素, ステロールおよび極性脂質 (PL) とともに, P. tricornutum の主要な脂質成分であった。 FFA, TG 及び PL の主要構成脂肪酸は14 : 0, 16 : 0, 16 : 1 (n-7), 16 : 2 (n-4), 16 : 3 (n-4), 18 : 1 (n-9), および20 : 5 (n-3) であった。FFA 中 38% が 20 : 5 (n-3) であり, FFA に多量の 20 : 5 (n-3) が含まれる特徴を認めた。一方, 20 : 5 (n-3) 含量は PL では全脂肪酸中 17%, TG では 9% にすぎなかった。TG に対するパーゼ活性はほとんど認められず, PL に対してホスホリパーゼ A (PLase A) 活性が認められた。以上の結果から, 本珪藻の遊離 20 : 5 (n-3) は, 主に PLase A の作用により PL から生成すると考えられる。PLase A 1活性がPLase A 2活性よりも高いことを考察した。
  • 越智 知子, 木下 葉子, 太田 千穂, 丸山 武紀, 新谷 〓, 菅野 道廣
    1996 年 45 巻 3 号 p. 275-283
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    輸入品及び国産品のビスケット類に含まれているトランス脂肪酸量について調査した。
    1) 総トランス酸含量には輸入品及び国産品ともかなりの幅があった。主たるトランス酸は輸入品及び国産品ともt-18 : 1 であった。また, 輸入品の1銘柄と国産品の3銘柄から魚油硬化油に由来する少量の t-20 : 1, t-22 : 1が検出された。
    2) 輸入品の多くの試料はトランス酸を20%以上含み, 国産品の多くの試料のトランス酸は 15% 以下で, トコトリエノールが検出された。このことは輸入品は植物硬化油を多く配合し, 国産品はパーム油と植物硬化油を混合して用いることが示された。
    3) 各試料の1サービング当たりのトランス酸含有量は輸入品では 0.26~1.78, 国産品では 0, 40~1, 05 と算出された。日本人の1人1日当たりのビスケット摂取量から求めたトランス酸の摂取量は230 (輸入品) ~140 (国産品) と見積もられた。
  • 安斉 順一, 郭 北, 長 哲郎
    1996 年 45 巻 3 号 p. 285-287
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    金電極表面を2-メルカプトエタンスルホン酸で修飾することにより, 電極表面への血清タンパク質の非特異的吸着をほとんど除去することができることを, サイクリックボルタンメトリーおよび水晶振動子ミクロバランスにより明らかにした。
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