微生物リパーゼ, 膵臓リパーゼ及び膵臓リパーゼとアミノ酸配列の似た相同タンパクの界面活性化, 基質特異性及び帽子のように被う短い螺旋構造のlid領域等の機能について, 結晶構造解析結果を参考にして説明した。トリアシルグリセリンの
sn-1,
sn-2及び
sn-3に作用するリパーゼの位置特異性について述べると共に, 脂肪酸特異性を決定する方法について検討した。異なった物理状態にある脂質を,
Rizomucor mieheiリパーゼがどのように認識するかを解析するために, 1mM及び100mMの脂肪酸あるいはエステルを基質として, エステル合成あるいは分解を行った。脂肪酸特異性分析は, 可溶性酵素及び固定化酵素の初速度及び特異性定数 (みかけの最大速度/ミカエリス定数) を比較した。グルタールアルデヒドを用いて陰イオン交換樹脂, あるいは, カルボジイミドを用いて陽イオン交換樹脂に固定化したものの, 1mMの基質に対する活性がより高かった。しかし, 上記のような二価性反応試薬の活性化は100mMの基質に対する活性には観察されなかった。1mMの基質で界面活性化は起こらないので二価性反応試薬により
R.mieheiの
lid領域の塩基性アミノ酸が修飾され活性化されたが, 100mMの基質では界面活性化が起こっているので二価性反応試薬により活性化されなかったと考えた。上記のような比較には加水分解反応の分析は酵素の初速度が有効であったが, エステル化反応の分析は特異性定数が有効であった。
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