日本油化学会誌
Online ISSN : 1884-1996
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47 巻, 10 号
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  • 高木 徹
    1998 年 47 巻 10 号 p. 921-926,1142
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2010/02/19
    ジャーナル フリー
    脂質の組成を求め, 分子構造を明らかにする分析法の最近の進歩を概観した。脂質抽出, 固相抽出法, サイズ排除クロマトグラフィーを含む基礎的操作に関する文献が示されている。脂質エナンチオマーのキラル固定相高速液体クロマトグラフィーによる分離の開発, デルタ5酸の発見と利用の経過, キラル高速液体クロマトグラフィーによるトリアシルグリセロールの立体特異的分析法のトリエルシンを主成分とする高エルカ酸油を得る遺伝子組み替えバイオテクノロジーにおける利用, 昆虫フェロモン脂肪族化合物の光学純度を得るミクロGC分析法の発展などが述べられる。
  • Yong-Goe JOH, Seong-Jin KIM
    1998 年 47 巻 10 号 p. 927-936,1142
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    共役二重結合を持つトリエン脂肪酸とΔ5-に複数のメチレン基が中間に存在する共役二重結合を持つ脂肪酸を含めた各種の植物油のトリグリセリドの分子種の分析において, 銀イオン存在下の高速液体クロマトグラフィー (HPLC) による分析の可能性を調べた。
    α-エレオステアリン酸 (C18 : 3 9c, 11t, 13t) とフニシン酸 (punicic acid, C18 : 3 9c, 11t, 13c) を含有する植物油中のトリグリセリド分子種はその分子種の二重結合の数と配位 (configuration) とに基づいて分けられた。メチレン基が中間に存在する共役二重結合の脂肪酸残基を持つ普通のトリグリセリドの分離パターンとは非常に異なり, 1分子のジエン酸と2分子の共役二重結合を持つトリエン酸で構成されている分子種 (DTc2, 二重結合数8個) は2分子のジエンと1分子の共役二重結合を持つトリエン酸を含有する分子種 (D2Tc, 二重結合数7個) より二重結合数が1個多いにもかかわらず, より早く溶出された。この結果は共役二重結合を持つトリエン脂肪酸と銀イオンとの間に生じる相互結合力 (interaction) が, メチレンが中間に存在する共役二重結合と銀イオンとの結合力より弱いことを示している。その理由はおそらく共役二重結合に存在するπ-電子の非局在 (delocal) 化のためであろう。共役二重結合を持つトリエン脂肪酸と銀イオンとの結合力はメチレン基が中間に存在する共役二重結合を持つジエン酸とモノエン酸との中間程度であると思われる。イチョウ (Ginkgo biloba) 種子油のトリグリセリドの分子種も銀イオンの存在下のHPLCによってきれいに分画された。分子種の溶出順序はその構成脂肪酸の二重結合の個数と位置という要因によって決められる。分子種を構成する脂肪酸と銀イオンの結合力の強さは次の通りであった。C18 : 3ω3>C20 : 3Δ5, 11, 14~C18 : 3Δ5, 9, 12>C18 : 2ω6>C18 : 2Δ5, 9>C18 : 1ω9C18 : 1ω7
  • 和田 俊, 白井 展也
    1998 年 47 巻 10 号 p. 937-946,1143
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    脂肪酸は生体にとってエネルギー源として重要であるばかりでなく, 最近では機能性を持つ物質として生理活性の面からも注目されている。このことから, 脂肪酸組成を正確にかつ容易に分析する機器分析の手法についての情報が求められている。
    本総説ではこのことに鑑み, 主に食品を例に, ガスクロマトグラフィー (GLC) 及び高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 分析に必要なエステル化法等を中心にまとめた。さらには非破壊分析手法である核磁気共鳴 (NMR) 法によるn-3系列脂肪酸及びDHAの定量分析についても触れた。
  • 深津 誠
    1998 年 47 巻 10 号 p. 947-952,1143
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    トリアシルグリセロール分析の実際について概観した。高速液体クロマトグラフィー (HPLC) は次第にガスクロマトグラフィーに取って代わりつつある。光散乱検出器はHPLC法の可能性を拡げた。この検出器のレスポンスの変動は補正可能である。質量分析法 (MS) は複雑な天然のトリアシルグリセロールの組成解析に有効で, 特にLC/MSシステムは高感度な分析を可能にする。大気圧化学イオン化法による質量スペクトルは単純かつ定量分析に有用である。
  • 安藤 靖浩
    1998 年 47 巻 10 号 p. 953-962,1143
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    高速液体クロマトグラフィー (HPLC) を使ったトリアシルグリセロール (TG) の立体特異分析法について概説した。HPLCによる分析法はジアシルグリセロールまたはモノアシルグリセロールの光学異性体 (エナンチオマー) のクロマト分離を基礎とする非酵素的な方法である。分析はTGのGrignardの分解, 部分グリセリドの単離と誘導体化, HPLC分離, および脂肪酸分析によって行なわれる。HPLC法による数種のアプローチを紹介したうえで, 分析の正確さに関わる因子として, 分析中のアシル基の転移, アシル基のロス, エナンチオマーの分離度, および脂肪酸組成の計算方法について考察した。5-オレフィン酸含有の植物油と魚油の分析データを併記した。
  • 石川 大, 瀧 孝雄
    1998 年 47 巻 10 号 p. 963-970,1144
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    コレステロール, グリセロ脂質, そしてスフィンゴ脂質は細胞膜の主要な構成成分である。それら, およびその代謝物は細胞増殖, 分化, およびアポトーシスなどにおける。細胞内情報伝達のセカンドメッセンジャーとしての役割が注目されている。これら複合脂質の領域の研究を推し進めていく上で, 我々は新しい脂質の分析法 “Far-eastern blot (TLC blot) 法” を確立した。この方法はTLCプレート上の脂質を短時間でPVDF膜へ転写するものである。さらに, この方法を組合わせたいくつかの応用法も同時に開発することに成功した。Far-eastern blotはTLCで分離できるほぼ全ての脂溶性成分に有効である事から, 今後, 天然物や薬剤の代謝物, 環境ホルモンといった, 微量成分の分析に大きな威力を発揮するものと期待される。
  • 板橋 豊
    1998 年 47 巻 10 号 p. 971-981,1144
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    キラルHPLC法は操作が簡単で, 感度と精度に優れており, キラル脂質成分の立体配置の決定に有用である。ジアシルグリセリン (DG), アルキルグリセリン, ホスファチジルグリセリンなど分子中に水酸基を1または2個有するグリセロ脂質成分の立体異性体 (エナンチオマー及びジアステレオマー) は3, 5-ジニトロフェニルウレタン誘導体に変換後, ナフチル基を含むキラル固定相を用いて良好に分離されている。トリアシルグリセリン (TG) のエナンチオマー分離はクロマトグラフィーでは困難であるが, TGをグリニャール試薬でランダムに分解して得られるsn-1, 2-DGとsn-2, 3-DGのエナンチオマーをキラルHPLCで分析することにより, TGの部分構造を明らかにすることができる。この場合, キャピラリーGCや逆相HPLCまたはMSを併用すると詳細なDGのエナンチオマー組成を求めることができる。キラルHPLC法はTG分子中の脂肪酸の位置分布, エーテル脂質中のアルキル基の位置及びリパーゼなどの脂質関連酵素の立体特異性の決定にも適用されている。
  • 林 陽
    1998 年 47 巻 10 号 p. 983-996,1144
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    グリセロおよびスフィンゴリン質 (ホスホノ脂質を含む) のソフトイオン化質量分析による構造解析のここ八年間の進歩が纏められている。この方法によりリン脂質の種類 (極性基), 分子量, 疎水部の分子種 (構成脂肪酸の総炭素数, 二重結合の数および位置, および位置 (sn-1かsn-2) が同定される。ソフトイオン化法としては高速粒子衝撃 (FAB), エレクトロスプレー (ES) 或いはマトリクス支援レーザー脱離 (MALD) がその原理, 方法, 生じた分子イオン, フラグメントイオン, 及びプリカーサーイオンのMS/MSにより生ずるプロダクトイオンから得られる情報について述べられている。質量分析計としては磁場セクター型, 四重極型, 飛行時間型およびフーリエ変換イオンサイクロトロン型が述べられた。ジアシル型とエーテル結合型リン脂質の区別は後者にはカルボン酸イオンが一つしか生じないことから行われる。
  • 山岸 明彦, 横堀 伸一
    1998 年 47 巻 10 号 p. 997-1003,1145
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    生物のどの様な生合成経路も進化の過程でできたものであり, 脂質の合成系も同様である。脂質合成系遺伝子の系統学的解析によって脂質合成系の進化を明らかにすることができる。古細菌の脂質合成酵素の研究結果が生物の進化系統の知識と重ねて解釈され, そのことから生命進化初期における脂質合成系の進化に関する情報を得ることができた。
    また, 酵素の系統学的解析法の方法論について概説する。ある酵素に関する適切な知識があればその遺伝子をクローニングすることができる。一般的な分子生物学的技術を用いてその塩基配列を決定することもできる。その塩基配列を相同な配列をもつ酵素遺伝子と共にコンピュータを用いて解析することができる。系統解析に用いられるプログラムの原理とそれぞれの性質を議論する。これらのプログラムはインターネットを通じて入手可能である。
  • 山根 恒夫
    1998 年 47 巻 10 号 p. 1005-1013
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    In relation to the application of enzymes to lipids analysis, characteristics of lipases, phospholipases and cholesterol esterase are reviewed in the first part. Lipase specificities are discussed in terms of positional specificity, stereospecificity and fatty acid specificity. Phospholipase specificities are discussed in view of their sites of hydrolyses and of base group specificity, and finally fatty acid specificity of cholesterol esterase is mentioned.
    In the second part, applications are reviewed of lipases to stereospecific is analysis of fatty acid composition in triacylglycerols, of phospholipases to analysis of phospholipids composition and of cholesterol esterase to clinical analysis of lipoproteins in serum.
  • 小杉 佳次
    1998 年 47 巻 10 号 p. 1015-1021,1146
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    微生物リパーゼ, 膵臓リパーゼ及び膵臓リパーゼとアミノ酸配列の似た相同タンパクの界面活性化, 基質特異性及び帽子のように被う短い螺旋構造のlid領域等の機能について, 結晶構造解析結果を参考にして説明した。トリアシルグリセリンのsn-1, sn-2及びsn-3に作用するリパーゼの位置特異性について述べると共に, 脂肪酸特異性を決定する方法について検討した。異なった物理状態にある脂質を, Rizomucor mieheiリパーゼがどのように認識するかを解析するために, 1mM及び100mMの脂肪酸あるいはエステルを基質として, エステル合成あるいは分解を行った。脂肪酸特異性分析は, 可溶性酵素及び固定化酵素の初速度及び特異性定数 (みかけの最大速度/ミカエリス定数) を比較した。グルタールアルデヒドを用いて陰イオン交換樹脂, あるいは, カルボジイミドを用いて陽イオン交換樹脂に固定化したものの, 1mMの基質に対する活性がより高かった。しかし, 上記のような二価性反応試薬の活性化は100mMの基質に対する活性には観察されなかった。1mMの基質で界面活性化は起こらないので二価性反応試薬によりR.mieheilid領域の塩基性アミノ酸が修飾され活性化されたが, 100mMの基質では界面活性化が起こっているので二価性反応試薬により活性化されなかったと考えた。上記のような比較には加水分解反応の分析は酵素の初速度が有効であったが, エステル化反応の分析は特異性定数が有効であった。
  • 脇 初枝
    1998 年 47 巻 10 号 p. 1023-1029,1146
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    微量ガングリオシド調製法の開発により, 脳シナプス膜や少量癌組織のガングリオシドの定量的分析ができるようになった。質量分析法や核磁気共鳴の進歩は, これらの機器分析を, 新しく発見されたガングリオシドの構造解析に不可欠のものとした。抗ガングリオシド抗体をプローブとする免疫化学的手法は, 特異的で感度の高いガングリオシド検出を可能にし, ガングリオシドの脳内分布をみたり, 癌組織に特異的に発現するガングリオシドを検出するのに有用な手段である。これらの分析手段を駆使して得られた情報は, ガングリオシドの機能研究に提供され, ガングリオシドの機能調節因子としての役割の解明が進展しつつある。
  • 野尻 秀昭, 山根 久和, 大森 俊雄
    1998 年 47 巻 10 号 p. 1031-1041,1147
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    ダイオキシン類にはpolychlorinated dibenzo-p-dioxins (PCDDs), polychlorinated dibenzofurans (PCDFs), coplanar polychlorinated biphenyls (Co-PCBs) が含まれ, これらは類似した非常に強力な毒性を有していることから, ダイオキシン類の環境中への放出と汚染の拡大は深刻な問題と考えられる。本総説では, 環境試料中のダイオキシン類の分析法について述べるとともに, その生物に対する毒性, 環境や食品中の汚染量, 人間の摂取量等についてもまとある。また近年, ダイオキシン類の分解微生物が数多く報告されている。それらによるダイオキシン類の分解は2つのタイプに分けられ, 白色腐朽菌のリグニン分解系酵素による共代謝と, ダイオキシン類を炭素源として生育し得るバクテリアによるものとがある。本総説では, それらの微生物におけるダイオキシン類の分解経路, 分解系酵素についても述べる。
  • 戸谷 洋一郎, 原 節子
    1998 年 47 巻 10 号 p. 1043-1051,1147
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    脂質の酸化は油脂および油脂含有製品の品質管理において, また生体内代謝においても重要な問題である。不飽和脂質は酸化の初期段階において, 主たる一次生成物としてヒドロペルオキシドを形成したのち, 二次生成物として種々の分解物や重合物を生じる。従って, ヒドロペルオキシドを測定する過酸化物価, カルボニル化合物に対するカルボニル価, 遊離脂肪酸に対する酸価, HPLC, GC, 各種スペクトル法のような, 脂質の各種酸化生成物を測定対象物質とする種々の分析法が提案されている。過酸化脂質の測定に際しては, 各測定法の特徴をよく理解した上で, 測定目的および試料の性状に応じて選択することが重要である。
    本稿においては, 脂質過酸化物の定量に優れた精度と再現性を有する新規電位差滴定法を含む過酸化物価法を中心に, 各種の実際的な過酸化脂質分析法の概略を紹介する。
  • 赤坂 和昭, 大類 洋
    1998 年 47 巻 10 号 p. 1053-1059,1145
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    過酸化脂質のフローインジェクション法について述べた。導入された試料はオンラインで連続的に試薬との混合, 反応, 検出が行われる。これらの方法により過酸化脂質を簡便かつ迅速に分析することが可能となる。検出法には早い応答, 高い選択性と感度, 及び共存物質の影響を受けないことが要求される。diphenyl-1-pyrenyl-phosphineを用いた蛍光検出法はこの目的に適した方法の一つであり, この試薬を用いたFIAにより共存する抗酸化剤の影響もなく10-13molレベルの過酸化脂質を2分間隔以内で分析することが可能で, 食用油や食品へ適用し好結果が得られた。この他の方法としてI3-吸光度を測定する方法や化学発光法についても紹介した。
  • 梶本 五郎
    1998 年 47 巻 10 号 p. 1061-1071,1148
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    食用油は広く食品工場や家庭で使用されており, そして, 代謝エネルギー源, 脂溶性ビタミン類, 必須脂肪酸の供給源である。食用油は空気, 光, 熱に連続的にさらされ化学変化をうける。ヒドロペルオキシドの二次反応生成物であるアルデヒド, ケトン, アルコール, 酸, 炭化水素が生じ, 酸化の結果, 異臭, 貯蔵性および栄養価の損失が起こる。
    自動酸化と熱酸化の複雑さはFig. 1, Fig. 2から明らかである。食用油の劣化の評価の方法をTable 1に示1す。それぞれに正確さと最適の測定が要求される。過酸化物, アニシジン, カルボニル, 酸, チオバルビツール酸, 共役ジエンと泡高の測定法と今後の展開について解説し討議した。
  • 宮澤 陽夫, 仲川 清隆
    1998 年 47 巻 10 号 p. 1073-1082,1148
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    天然抗酸化成分のin vitroとin vivoの脂質過酸化に対する効果の評価法を概説した。これまでに, トコフェロール類, カロテノイド, フラボノイド, クルクミノイドの抗酸化力が, ミクロソーム, 赤血球膜, 血漿リポ蛋白, そして動物実験によって明らかにされている。最近では, ヒト体内でのこれら天然成分の抗酸化力が, その吸収と代謝についての検討とともに, 精力的に研究されている。
  • 中谷 陽一, ウリソン ギィ
    1998 年 47 巻 10 号 p. 1083-1097,1148
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    以前より筆者らは生体膜脂質成分の進化について研究を進めてきた。その中で, 原核生物でのホパノイド, カロチノイドが真核生物でのコレステロールと同様に, 生体膜を補強する役割を果しているという仮設を立てた。
    この仮設を人工膜モデルで証明するため, まず両極性カロチノイドが脂質二分子膜中で膜貫通型配向をとっていることを, UV-VISスペクトル解析などから明らかにした。続いて, リン脂質/コレステロール/光化学プローブのシステムで秩序ある二分子膜を構築し, この系で, 直接的な光架橋法を用いてコレステロール分子の配向を調べた。その結果, コレステロール分子が膜面に垂直に挿入され, その側鎖は二分子膜の中央に位置し, その水酸基が水分との界面に面していることを解明した。
    これらのテルペノイドの膜補強剤としての効果については, ベシクルでの浸透圧実験 (ストップド・フロー/光散乱測定), および配向二分子膜での固体2H-NMR解析によって明らかにした。
  • 佐藤 清隆, 上野 聡, 矢野 淳子
    1998 年 47 巻 10 号 p. 1099-1106,1149
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    より実際系に近い複雑な油脂結晶化挙動を探るために, 最近用いられている2つの物性解析法について事例を挙げて紹介する : (a) 放射光X線源を用いた結晶多形転移のダイナミクスの解明, および (b) 超音波音速測定法によるO/Wエマルション中の油滴中の油脂結晶化挙動の解明。また, フーリエ変換赤外分光法による油脂結晶の微細構造解析についても触れる。
  • 川崎 一則, 神坂 泰, 堺 立也
    1998 年 47 巻 10 号 p. 1107-1114,1149
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    共焦点蛍光顕微鏡を適切な蛍光性脂質プローブと組み合わせて用いた場合には, 生体内の脂質分子の経時的・空間的な挙動を定量的に解析する手段として大変有用であり, 脂質研究での貢献が期待される。
    最初にこれまでの光学顕微鏡の性能を超えた共焦点蛍光顕微鏡の利点について解説した。次に, 蛍光標識法の中で生物学研究でよく用いられているものと脂質研究に役立つものを紹介した。そして, 共焦点蛍光顕微鏡を用いて我々が行った脂質の動的解析の実例を示した。 (1) 赤血球ゴースト膜の観察は共焦点蛍光顕微鏡の分解能の高さを実感するのに有効であった。 (2) 脂質分子の経時的・空間的挙動を可視化し定量的な解析を行った例として, 1個のインフルエンザ・ウイルス粒子における膜融合過程の可視化解析を紹介した。 (3) 細胞内の脂質輸送の研究に用いた例として, モルティエレラ属糸状菌におけるリピッド・ボディ形成過程の可視化解析を紹介した。
  • 花田 剛, 岡田 祐二, 八瀬 清志
    1998 年 47 巻 10 号 p. 1115-1121,1149
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    電子染色法, ゲルマニウム・デコレーション法, クライオ観察および電子分光結像法などを用いた透過型電子顕微鏡による数nmオーダーの脂質分子の凝集状態および薄膜中の分子配列および構造を明らかにするための手法を紹介した。
  • 堀口 恭伸, 田中 孝祐
    1998 年 47 巻 10 号 p. 1123-1132,1150
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    界面活性剤は, その分子構造に由来する様々な特性を有しており, 応用分野はますます拡がっている。それとともにその使い方も多様化し, 界面活性剤の分析の重要性は今まで以上に高まっている。
    界面活性剤の分析技術は, 分析機器やコンピュータの進歩に伴い, HPLC, GC, SFC, キャピラリー電気泳動 (CE), フローインジェクション (FIA), NMR, MSなどの機器分析を中心に発展している。本稿では, 界面活性剤の一般的な分析法を概説するとともに, 環境問題や安全性の面から注目されている界面活性剤の定量分析法について詳述する。さらに, FIA, HPLC, LCMS, CEを用いた微量分析法についても最近の分析技術を紹介する。
  • 黒澤 茂
    1998 年 47 巻 10 号 p. 1133-1140,1150
    発行日: 1998/10/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    イオン選択性電極と水晶振動子式の化学センサーの分子認識膜をプラズマ重合法で合成した。テトラフェニルボロンアンモニウム塩, ヘキサフルオロベンゼンと二酸化イオウの混合系, 4, 4'-メチレンジアニリン, スチレン, ペンタフルオロスチレン, フタロシアニン誘導体をプラズマ重合の原料モノマーに用いた。プラズマ重合膜を分子認識膜に用いた化学センサーは, 高感度・高耐久性を示した。
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