日本油化学会誌
Online ISSN : 1884-1996
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47 巻, 5 号
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  • 尾関 寿美男
    1998 年 47 巻 5 号 p. 429-440,523
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    FSM-16やMCM-41のようなメソポーラス無機物質は広い領域の研究者から大きな関心を集めており, 分子ふるい, 吸着剤, クロマト剤, 触媒担体, 触媒としての潜在的な可能性が検討されている。メソポーラス無機物質は無機イオン/界面活性剤ハイブリッドメゾフェーズ (ISH) を燃やしてつくられる。ISHは多成分系であるために, 合成条件に複雑に依存し, 非常に変化に富む構造をとる。われわれはまず, FSM-16やMCM-41の調製法を紹介し, ついでISHの一般的調製法を生成機構とともに述べる。最後に, これまでに調製されたISHを無機イオンの種類, メゾフェーズの多形, 形態, 結晶子径および格子定数に注目してまとめる。
  • 関 隆広
    1998 年 47 巻 5 号 p. 441-448,523
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    LB法は単なる精緻な分子超構造調製法にとどまらず, 物質界面の役割を分子論的に把握する上で極めて貴重なデータを与える。特に分子の動きを伴う現象を取り扱う上で, 2次元組織を与える単分子膜あるいはそのLB膜は格好の系を与える。この解説では上記の観点から, フォトクロミック単分子膜とLB膜の最近動向を紹介する。単分子膜の光力学効果に関する研究及び液晶等分子組織体状態の光制御に関する最新の動向を通じて, 高度な動的分子システムの構築にLB法がいかなる役割を果たすことができるかを紹介する。
  • 山村 隆治, 下村 泰志
    1998 年 47 巻 5 号 p. 449-456,523
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    エイコサペンタエン酸 (EPA), ドコサヘキサエン酸 (DHA) やドコサペンタエン酸 (DPA) を含む高度不飽和脂肪酸 (PUFA) はその生理活性から機能性食品や医薬品として注目を浴びている。中でも医薬品原料として利用したり, またその機能を確認するためにはPUFAを高度に精製する必要がある。PUFAを高度に精製するためにこれまで多くの検討がなされEPAのように実用化されているものもある。しかしPUFAの種類や由来する原料により複雑な処理工程を必要とし, 必ずしも大規模精製が完成しているとは言えない。
    筆者らは, DHAとn-6ドコサペンタエン酸 (DPA) を高い含量で含む海生菌から得られたSingle Cell OilエチルエステルをODS充填カラムを用いた工業的規模での分取HPLCを行い, 分取クロマトだけで高度に分離・精製されたDHA-EとDPA-Eが得られる可能性を見いだした。
  • その吸収と代謝効果
    青山 敏明
    1998 年 47 巻 5 号 p. 457-465,524
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    トリアシルグリセリン構造の違いによる物性等の変化は報告されているが, 生体に及ぼす影響についてはあまり知られていない。本稿では構造脂質の消化吸収過程および栄養生理作用を中心に述べ, トリアシルグリセリン構造が生理機能に及ぼす影響について概説した。一般に1, 3位よりも2位脂肪酸の方が消化吸収性が良いと言われているが, 脂肪酸の種類やその組み合わせ方によって結果が異なることを示した。また, トリアシルグリセリン構造の違いが血漿コレステロール濃度に影響を与え, 脂質代謝に関与することを示唆した。さらに, ある特定の脂肪酸を組み合わせた構造脂質で食欲を抑える作用が見いだされており, 消化吸収性や脂質代謝以外の生理作用にも関与する可能性について言及した。
  • そのメカニズムと応用
    桂木 能久
    1998 年 47 巻 5 号 p. 467-474,524
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    食品および医薬品の分野において, 苦味を抑制する技術は広く望まれている。我々は, ホスファチジン酸 (PA) とβ-ラクトグロブリン (LG) からなるリポ蛋白質 (PA-LG) が, 甘味, 塩味, 酸味に影響することなく, カエルおよびヒトの苦味応答を選択的に且つ可逆的に抑制することを見出した。PAと各種の蛋白質から作製したリポ蛋白質の苦味応答に対する作用を調べたところ, PAを含むすべてのリポ蛋白質に苦味抑制作用が認められた。このことから苦味抑制のキー成分はPAであることがわかった。苦味抑制のメカニズムは, PA-LGが味受容膜の苦味受容サイトをマスキングすることによるものと推測される。つぎに, 実用化を考慮してPA単独および他のリン脂質の苦味抑制作用をヒト官能評価により調べた。その結果, PA単独の場合にもPA-LGには劣るものの苦味を抑制することが明らかになった。また, PIにもPAほどではないが苦味抑制作用のあることがわかった。これを利用して大豆レシチンを原料にしてエタノール抽出法によりPAとPIを高濃度に含むレシチン画分を工業的規模で生産している。得られたレシチン画分およびPAは, 食品および医薬品の苦味マスキング剤として広く使用することが可能であり, すでにさまざまな食品で使用されている。
  • Mohamed Bassim ATTA, 今泉 勝己
    1998 年 47 巻 5 号 p. 475-480,525
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    ニゲラ (Nigella sative L.) 種子とローズマリー (Rosmarinus officinalis L.) の抽出物がコーン油の自動酸化に及ぼす影響について調べた。これら植物の水およびエタノール抽出物は, β-カロチンのエマルジョンを基質にして測定すると, 抗酸化活性 (AA) を示した。さらに, これら抽出物は, 100℃で加熱したコーン油中のトリグリセリドの酸化分解を遅らせた。エタノール抽出物のAAは, 水抽出物のそれよりも大であった。これら4種の抽出物中, ニゲラ種子のエタノール抽出物は油脂の酸化抑制に最も優れており, そのAAはt-ブチルヒドロキノン (2-t-ブチルベンゼン-1, 4-ジオール) と同程度であった。
  • ベシクル2分子膜におけるリン脂質の役割
    大勝 靖一, 斎藤 幸平
    1998 年 47 巻 5 号 p. 481-493,525
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    生体膜を構成する蛋白質 (酵素) とリン脂質の相互作用は酵素の活性に非常に重要である。しかしながらそのような相互作用は詳しくは殆ど研究されていない。本論文では, 6種のリン脂質類似体を合成し, 糖脂質加水分解酵素モデルによるアミノ酸エステルの加水分解反応における反応場として使用した。その結果リン脂質は3群に分類できることが見いだされた : (1) 強力な水素結合で糖脂質を不活性化するもの (ホスファチジン酸類似体), (2) 弱い水素結合で糖脂質を適度に分布させるもの (ホスファチジルグリセロール類似体及びホスファチジルイノシトール類似体), 及び (3) 静電効果で糖脂質の活性を非常に向上させるもの (ホスファチジルセリン類似体, ホスファチジルコリン類似体, ホスファチジルエタノールアミン類似体) 。更に特にホスファチジルセリン類似体は膜の活性化とその維持に寄与し, 例えホスファチジン酸類似体が存在しても, 糖脂質の触媒活性を向上させることが分かった。
  • 食肉類及び食肉加工品
    松崎 寿, 馬場 明, 丸山 武紀, 新谷 〓, 柳田 晃良, 菅野 道廣
    1998 年 47 巻 5 号 p. 495-499,526
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    わが国で市販されている肉類 (牛, 豚, 羊, 馬, 鹿, ウサギ, 鶏, 鴨, ウズラ及びハト), 牛副生物 (舌, 胃, 腸, 肝臓, 腎臓, 心臓及び脂身) 及び食肉加工品 (牛肉, 羊肉及び豚肉) に含まれているトランス酸量について分析した。
    1) 和牛肉の総脂肪酸中の総トランス酸は1.9~6.8%であった。ばら (4.9%), サーロイン (4.2%) 及びかた (4.1%) のトランス酸はヒレ (2.7%), もも (3.1%), ランプ (3.4%) よりも高かった。
    2) 牛副生物の総脂肪酸中の総トランス酸は2.7~9.5%であった。第1胃 (6.7%), 腎臓 (5.5%) 及び舌 (5.5%) のトランス酸含有量は, 他の副生物 (2.7~4.9%) よりも多かった。
    3) 羊肉及び鹿肉の総脂肪酸中の総トランス酸は, それぞれ平均10.2%及び5.3%であった。他の動物肉からは少量のトランス酸が検出された。これらは餌に由来するものであろう。牛及び羊肉加工品の総トランス酸は平均4.4%及び9.0%であった。
    4) 本分析のデータから, 日本人が反芻動物から摂取する総トランス酸量は, 1人1日当たり乳脂肪から0.24g, 牛肉から0.13gの合計0.36gと見積もられた。
  • 山口 庸子, 小林 有紀子, 永山 升三
    1998 年 47 巻 5 号 p. 501-508,526
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    家庭洗濯の浴比低下が新素材繊維の再汚染現象に及ぼす影響を, ターゴトメータを用いて人工汚染布との同浴洗浄を行い検討した。更に, 同一製法の単繊維繊度の異なるポリエステル布を用いて繊維基質構造が再汚染に及ぼす影響について検討した。また, 無リン合成洗剤の洗剤ビルダーとして使用されているアルミノケイ酸ナトリウム (ゼオライト) とトリポリリン酸ナトリウム (STPP) を比較し, 浴比低下に伴う洗浄・再汚染性を評価した。浴比の低下に伴う家庭用電気洗濯機と同様にターゴトメータを用いた洗浄においても洗浄力は低下することを確認した。ポリエステル布の再汚染は洗浴中の汚こう成分によって異なる値を示した。湿式人工汚染布を用いた場合では, 新合繊の再汚染率は浴比の低下に伴い増加し, 単繊維繊度0.2~0.4dのポリエステル布は一般のポリエステル布に比べて浴比変化の影響を受けた。新合繊の再汚染は洗浴中に取り出された汚こう量よりもむしろ洗浴のLAS濃度が著しく低下することによって引き起こされることが判った。これに対して, WFK汚染布を用いた場合では, 新合繊に比べて一般のポリエステル繊維は高い再汚染率を示し, 浴比低下と共に再汚染率は低下したことから洗浴中のLAS濃度よりも汚こう量によって再汚染性は影響を受けやすいことが判った。ゼオライトの洗浄力はSTPPに比べて浴比低下に伴い急激に低下した。しかし, 浴比低下が引き起こす再汚染性に対する洗剤ビルダー効果はほぼ等しいことを確認した。
  • 廣瀬 裕子
    1998 年 47 巻 5 号 p. 509-512,527
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    天然抗酸化剤である (+) -カテキン (1) の抗酸化機構を明らかにする研究の一環として, 1とラジカル反応開始剤を酢酸エチル/メタノール (99 : 1, vol/vol) に溶解し, 光照射下で反応させた。反応溶液から主反応生成物 (2) をクロマトグラフィーにより分離し, UV, IR, MS, NMRスペクトル分析の結果からその構造を検討した。その結果, 2は脂質の過酸化を1が抑制したときに, 1から生成する既報の主要な酸化生成物のメチルエステルであると同定した。2の構造から, 本研究の反応条件においてはB環が1の抗酸化活性に関与していることが明らかとなった。さらに, メタノールがラジカルの攻撃を受けて生成したと考えられるメトキシドラジカルを1が捕捉したことを示していた。
  • 菊田 博茂, 瀧井 忠洋, 大城 芳樹
    1998 年 47 巻 5 号 p. 513-514,527
    発行日: 1998/05/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    非水系の相間移動反応によるアセト酢酸エステルとヨウ化エチルとの反応における2-エチル化の選択性について検討した。相間移動触媒としてトリエチルベンジルアンモニウム=クロリドを用いた室温での反応で高い選択性が観察された。適した溶媒としてはベンゼンであることが明らかになった。
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