日本油化学会誌
Online ISSN : 1884-1996
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47 巻, 8 号
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  • 千葉 一裕
    1998 年 47 巻 8 号 p. 743-751,788
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    天然には様々なフェノール性物質が存在し,多様な生物活性を示す他,有用な機能を持つ物質も多数知られている。とりわけフェノール性物質は,電子移動過程に関与し,酸化還元反応などに重要な役割を果たすものも多い。また,酸化的に活性化された状態では,高い反応性を示し,多くの関連化合物に変換されることがある。このようなフェノール類の酸化的な反応過程は,抗酸化活性の発現機構や,多様な生物活性物質の生成過程を考える上でも重要なステップとなると考えられる。今回,天然由来の抗酸化活性物質やユーカリに含まれるフェノール性化合物に焦点をあて,それらの生成機構,酸化過程における活性中間体の反応性についての電気化学的な特性解析法に関する筆者のこれまでの研究を中心に解説する。
    フェノールは置換基の種類およびその結合位置によって性質が大きく変化する。特に電子供与性の置換基を多く持つものは低い酸化電位を示し,電子を放出することによって,フェノキシラジカルを経てキノン,キノンメチド,キノンモノケタールなどに変換される。この電子の放出しやすさは電気化学的に評価できる。また,酸化電位の高いフェノールも適切な酸化還元メディエーターが存在すれば低い酸化電位で酸化することができる。優れた抗酸化剤は電子を容易に供与する他,酸化状態が安定であること,電子移動について可逆であることなどが重要である。これらの性質を解析する上で電気化学的な方法は重要な役割を果たすと考えられる。
  • 中島 一郎, 砂崎 和彦, 大場 健吉
    1998 年 47 巻 8 号 p. 753-758,788
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    寒天の原料として汎用される紅藻類の海藻オゴノリ(Gracilaria verrucosa)は,海に生息している状態ではプロスタグランジン(PG)を含まない。しかし,物理的刺激を受けると,藻体内に保有する酵素と基質を利用して多量のPGを生成した。
    PG生成量は乾重量あたり約2g/kgに達し、組成の90%はPGE2であった。生成されるPG組成は、藻体に含まれる高度不飽和脂肪酸の組成を反映するが,各PGに対応した前駆体の添加により制御可能であった。
    オゴノリの単藻培養により,この海藻自身がPGを生成することを確認した。また,数種のオゴノリ近縁種に少量のPG生成が認められた。
  • 中島 一郎, 砂崎 和彦, 大場 健吉
    1998 年 47 巻 8 号 p. 759-763,789
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    シクロオキシゲナーゼ阻害剤に影響を受けない,海藻オゴノリ(Gracilaria verrucosa)のプロスタグランジン生成機構の解明を試みた。オゴノリのPG主生成物はPGE2のため,PGE2の前駆物質であるアラキドン酸の挙動に焦点を当ててPG生成を追究した。
    PG生成反応前後の脂肪酸を分析した結果,オゴノリでは糖脂質およびリン脂質がアラキドン酸の貯蔵形態と考えられた。
    放射性ラベルした14C-アラキドン酸を用いてオゴノリのPG生成経路を調べ,PGEは新奇な中間体;15-ヒドロペルオキシ-PGE2を経て生成することを明らかにした。
  • 玉垣 誠三, 豊嶋 俊薫
    1998 年 47 巻 8 号 p. 765-772,789
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    トリテルペン骨格をもつ抗炎症薬β-グリシルレチン酸(β-GA)の円二色性スペクトルが,溶媒の極性によって大きく変わることを見いだし,その主因が骨格の立体配座変化であることを明らかにした。そのようなスペクトル変化はα-GAでは全く観察されない。β-GAにポリエチレングリコール側鎖を装備させるとNa+やK+よりLi+イオン選択性を発現させることが出来ることも分かった。
  • 坊木 佳人, 伊内 秋夫, 松原 八代江
    1998 年 47 巻 8 号 p. 773-776,790
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    アタパルジャイトとセピオライトへのβ-カロチン吸着に対する阻害力は,トリオレインとトリリノレインで差があり,その原因を明らかにするため,トリリノレインの吸着速度と吸着等温線を求めた。見掛の吸着速度は,初期においてトリリノレインの方がトリオレインより遅く,阻害力に直接関与しなかった。トリリノレインの吸着等温線はラングミユアー式に良く適合した。トリリノレインの最大吸着量は吸着剤の比表面積に比例し,トリリノレインが1分子吸着すると452Å2を占有することが分かった。その吸着占有断面積はトリオレインの1.13倍であった。β-カロチン吸着に対してトリリノレインの阻害力がトリオレインより大きいのは,トリリノレイン分子の吸着占有断面積がトリオレインより大きいためであることが分かった。
  • 吉村 彦二, 碓井 正雄, 進藤 良夫, 伊東 洋一, 二宮 淳行
    1998 年 47 巻 8 号 p. 777-782,790
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    2-(ペルフルオロオクチル)エタノールとジシクロペンタジエンの付加反応物からペルフルオロオクチル基が導入されたメタクリレートを合成した。
    本モノマーおよびコントロールに選定した2-(ペルフルオロオクチル)エチルメタクリレートとスチレンとの共重合性は優れ,各々モノマー反応性比はr1=1.35, r2=0.49およびr1=1.22, r2=0.99 (1:スチレン)であった。
    スチレンとの共重合体の塗膜およびモノマー混入の不飽和ポリエステル樹脂の硬化膜の水の接触角はペルフルオロオクチル基濃度と共に増加した。前者で徐々に増加するのに対して,後者では急激に増加した。これは有機フッ素化合物の特異性によるペルフルオロオクチル基の表面への偏在によるものと思われる。
  • 高津戸 秀, 川島 崇弘
    1998 年 47 巻 8 号 p. 783-786,791
    発行日: 1998/08/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    アサ種子中に含まれる3-オキソステロイドについて調べた。脂質分画をクロマトグラフィーで精製し,3-oxo 5α-steroid分画とsteroidal 4-en-3-one分画を得た。各々の分画をGC-MS分析し,前者からは24-methyl-5α-cholestan-3-oneと24-ethyl-5α-cholestan-3-oneの存在を,また,後者からは24-methylcholest-4-en-3-oneと24-ethylcholest-4-en-3-oneの存在を確認した。以前にアサ種子中にブラシノステロイドであるteasteroneとcastasteroneと共にcampesterolとcampestanolの存在を報告していること,および本研究で24-methyl-5α-cholestan-3-oneと24-methylcholest-4-en-3-oneを同定したことから,アサ種子中においてもブラシノステロイド生合成の初期の部分:campesterol→24-methylcholest-4-en-3-one→24-methyl-5α-cholestan-3-one→campestanolが機能していることが示唆された。
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