日本油化学会誌
Online ISSN : 1884-1996
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48 巻, 1 号
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  • 北本 大
    1999 年 48 巻 1 号 p. 3-14,56
    発行日: 1999/01/20
    公開日: 2010/02/19
    ジャーナル フリー
    コレステロールオキシダーゼ (CO) は, コレステロール代謝の鍵酵素であり, ステロイドの3位β水酸基の酸化, 5位二重結合の4位への異性化を同時に行う2機能性酵素である。COはBrebivacterium, Nocardia, Psuedomonas, RhodococcusStreptomyces属等の多くの土壌微生物によって生産され, 種々の分野で利用されている産業用酵素である。今日では, 血清中のコレステロールの定量試薬として臨床検査キットなどに広く使われている。
    COは広い基質特異性を有しており, コレステロール以外の多種のステロイド3位β水酸基に作用する。COは有機溶媒中でも安定であり, また最近ステロイド系以外の化合物の位置選択的, 立体選択的酸化にも利用され, リパーゼのような日常的な有機合成試薬としての利用が期待されている。Brebivacterium属由来のCOの3次元構造は既に明らかになっているが、その詳細な反応機構に関しては未だ充分な情報は得られていない。
    COはワタノハナゾウムシなどの害虫に対し強い殺虫活性を持つことが最近明らかになり, 害虫抵抗性作物の育種のためCO遺伝子の植物細胞での発現が検討されている。また, チーズやヨーグルトなどの発酵食品中のコレステロール含量を低減させる目的で, CO遺伝子の乳酸菌での発現も研究されている。
  • 松村 秀一, 鶴田 浩史, 戸嶋 一敦
    1999 年 48 巻 1 号 p. 15-19,56
    発行日: 1999/01/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    セルラーゼとβ-グルコシダーゼを組み合わせたワンポット合成によって, セルロースとオクタノールからオクチルβ-D-グルコシドが得られた。100mM酢酸緩衝液 (pH 5.0) で飽和した1-オクタノールとα-セルロースをAspergillus niger起源の0.1%セルラーゼ及びアーモンド起源の0.5% β-グルコシダーゼ存在下, 37℃で5日間反応を行うことにより, 1-オクチルβ-D-グルコシドが収率245mg/g celluloseで得られた。
  • 宮下 和夫, 奈良 英一, 平尾 美奈子, 阿部 公紀, 太田 亨
    1999 年 48 巻 1 号 p. 21-27,57
    発行日: 1999/01/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    6種類のトリアシルグリセリン (TG) の水分散系での酸化安定性を, 酸化に伴う高度不飽和脂肪酸 (PUFA) の減少量と過酸化物生成量の測定から比較したところ, オリブ油TGとマグロ眼窩油TGの酸化安定性が最も高く, ついで, エゴマ油TG, 菜種油TG, 大豆油TG, サフラワー油TGの順となった。したがって, PUFAとしてはDHAやα-リノレン酸などの不飽和度のより高いPUFAを含むTGの方が, リノール酸のような不飽和度の低いPUFAを含むTGに比べ, 酸化されにくいことがわかった。また, オレイン酸は, 水分散系でのTGの酸化に対して抑制的に働くことも明らかになった。次に, DHA含量の異なる5種のTGの酸化安定性について検討したところ, DHA含量が30%程度のものが最も酸化されにくかった。また, オレイン酸をTG中に組み入れることでも, その酸化安定性の向上が期待できることがわかった。
  • 白井 展也, 本間 恵都子, 和田 俊
    1999 年 48 巻 1 号 p. 29-35,57
    発行日: 1999/01/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    ドコシル (DCS) カラムを用いる逆相HPLC法によるトリアシルグリセリン (TG) 分子種分析について, その有効性を, 保持比, 分離係数, 試料油分析を中心に, 従来用いられてきたオクタデシル (ODS) カラムと比較, 検討した。DCSカラムはODSカラムに比べてTGの分離係数は大きく, TGの分離が良好であった。DCSカラムはODSカラムに比べて低炭素鎖のTGに対しては保持力が弱いが, 長炭素鎖のTGに対しては保持力が強い。この差がTG分子種分析の分離改善の要因になっていると考えられた。DCSカラムは試料油の大豆油等の植物油, さらには植物油に比べてより複雑な魚油, 乳脂に対してもODSカラムと比べてかなりの分離改善が認められ, 多くのTG分子種を良好に分離することが出来た。以上のことからDCSカラムはTG分子種分析に対して有用なカラムの一つであると判別された。
  • 高津戸 秀, 後藤 千春, 野口 貴弘, 藤岡 昭三
    1999 年 48 巻 1 号 p. 37-40,57
    発行日: 1999/01/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    シロイヌナズナの倭性ミュータントにおける内生ステロールの同定および代謝研究用にepisterol, 5-dehy-droepisterolおよびそれらの重水素標識体 [26, 27-2H6] 5-dehydroepisterol, [26, 27-2H6] episterolを3β-acetoxycholest-5-en-24-oneまたはその重水素標識体から, 5, 7-ジエンの導入, 24-oxo基のTebbe試薬によるオレフィン化および5, 7-ジエンのナトリウムによる還元を鍵反応に用いて合成した。
  • 阿部 文一, 高津戸 秀
    1999 年 48 巻 1 号 p. 41-44,58
    発行日: 1999/01/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    産地別のアワ (Setaria italics Beauv.) 種子および精白粒中のシトスタノール含量について, GC-MS分析で比較研究をおこなった。その結果, 総ステロール中のシトスタノール含有量は20~40%の範囲で, 産地によってかなりの変動がある事が分かった。また, 種子と精白粒間では差がなかった。
  • 山口 庸子, 永山 升三
    1999 年 48 巻 1 号 p. 45-49,58
    発行日: 1999/01/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    新素材繊維を対象に繊維基質形態の相違が洗浄力評価に及ぼす影響を検討した。繊維基質形態の影響を考慮するためにKubelka-Munkの二定数理論式および湊の計算式を織物に適用させて, 従来一定数として取り扱われてきたK/S値に代わって試料布の散乱係数 (S) と吸収係数 (K) を別々に算出した。その結果, K/S値を一定数として取り扱う場合に比較して二定数として取り扱うことによって, 「新合繊」や「テンセル」といった新素材繊維の散乱係数は通常のポリエステル布や綿布に比較して汚垢付着率の増加に伴い大きく低下することを確認した。Kubelka-Munkの一定数としてのK/S値に代わって, 吸収係数 (K) のみを使用した新しい洗浄力の評価方法を提案しその有効性を確認した。
  • 細川 雅史, 堀井 亜希, 高橋 是太郎
    1999 年 48 巻 1 号 p. 51-53,58
    発行日: 1999/01/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    ドコサヘキサエン酸 (DHA) を72.0%含むアシルグリセリン混合物 (PG) を反応基質として外部からアシル基供与体を添加せずにリポザイムIMによる内部エステル交換反応をヘキサン中で行った。可及的にトリアシルグリセリン (TG) に変換する反応条件について検討した結果, (1) あらかじめ五酸化リンを用いてリポザイムIMを脱水してから反応に供すること, (2) モレキュラシーブを用いて過剰の水分を除去することの2点が高TG組成比を得るために有効であることを認めた。すなわち基質中のTG組成比49.4%に対し, 反応生成物のTG組成比が (1) により64.5% (反応時間24h) に上昇し, (1) 且つ (2) の条件下 (合計反応時間48h) では, TG組成比がさらに上昇し, 81.0%の反応物を得ることができた。これによって得られたTGは73.7%のDHAを含んでいた。
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