日本油化学会誌
Online ISSN : 1884-1996
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49 巻, 3 号
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  • 藤尾 克彦, 尾関 寿美男
    2000 年 49 巻 3 号 p. 221-229,276
    発行日: 2000/03/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    イオン性界面活性剤ミセルへの対イオンの結合についての研究を総説する。対イオンの結合量の尺度としては, 対イオン結合度 (β) を使用する。βの3種類の測定方法, イオン選択電極法, 電導度法, 臨界ミセル濃度の対イオン濃度依存性から求める方法について検討し, 対イオンおよび界面活性剤イオンの種類と濃度, ミセルの形状, 温度および溶媒に対するβの依存性について解説する。
  • 大江 猛, 木田 敏之, 張 万斌, 中辻 洋司, 池田 功
    2000 年 49 巻 3 号 p. 231-235,276
    発行日: 2000/03/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    フェニルボロン酸 (PBA) 存在下でのp-ニトロフェニルD-グルコピラノシドの加水分解反応系に, 臨界ミセル濃度以上の塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム (HTAC) を添加したところ, α-グルコシドの加水分解がその立体異性体であるβ-体よりも加速を受け, その結果α/β選択性も増大した。HTAC添加系の加水分解速度およびα/β選択性に及ぼすボロン酸の種類の効果を検討したところ, 親油性の高いボロン酸ほどより高い選択性を示した。すなわち, p-デシルオキシフェニルボロン酸 (C10PBA) が, 検討した中では最も高い加水分解選択性 (kα/kβ=64) を示し, ミセル存在下では, 1mM C10PBAの添加時での加水分解選択性は, ミセル不在系で最高の加水分解選択性を示したメチルボロン酸添加系に匹敵した。
  • 宮城 淳, 中嶋 光敏, 鍋谷 浩志
    2000 年 49 巻 3 号 p. 237-244,277
    発行日: 2000/03/20
    公開日: 2010/02/19
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は, 膜分離法を用いて使用済み食用油脂 (廃食油) を改質し, 再利用を可能にすることである。膜試験は, バッチ式膜分離試験装置に廃食油を入れ, フッ素樹脂製精密濾過膜, 高分子ナノ濾過膜, ポリイミド系疎水性非多孔質複合膜 (NTGS-2200膜) の三種の膜を用いて行った。比較のため, 活性炭を用いた廃食油の改質試験を行った。
    ナノ濾過膜や活性炭を用いた方法では, 廃食油の色はわずかに改善されたが, 粘度低下は認められなかった。精密濾過膜を用いた方法では, 廃食油の色, 粘度とも改善されなかった。一方, NTGS-2200膜を用いた方法では, 廃食油の色, 粘度とも新油の品質とほぼ同じ程度に改善された上に, 廃食油の極性物質や酸化生成物もそれぞれ70%, 38%阻止された。しかし, 自動酸化安定性は廃食油より低下した。廃食油, 新油, NTGS-2200膜透過油のAOM試験条件下における自動酸化安定性試験において, POVと粘度には高い相関関係が認められた。
  • 山口 葉子, 田岡 英実, 國枝 博信
    2000 年 49 巻 3 号 p. 245-253,277
    発行日: 2000/03/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    -SO3-を極性基として持つ水溶性色素とカチオン性界面活性剤, 水の3成分系において, 協同吸着による沈澱, 再溶解現象が観察された。色素にカチオン性界面活性剤 (アルキルトリメチルアンモニウムブロミド) を添加すると, 不溶性の沈澱物が形成され, さらに界面活性剤を添加することで, 沈澱物の水溶液中への再溶解現象が確認された。これは, まず色素と界面活性剤の静電的相互作用により水溶性色素の不溶化が起こり, コンプレックスを形成し, 界面活性剤の疎水基を水側に向けた層が形成されたと考えられる。さらに, 界面活性剤濃度が増加するとカチオン性界面活性剤がミセル吸着を起こし, 再溶解したと考えられる。
    ここで得られた再溶解溶液は, 高粘性のものであったが, これらの粘性は, 水溶性の1-プロパノールを添加することで, 低下された。この原因は, 表面張力, 電気伝導度及び静的光散乱 (SLS) の測定から, 界面活性剤ミセルと色素, 低級アルコール (1-プロパノール) の相互作用によるものと分かった。
  • 葛城 俊哉, 金子 直樹, 佐藤 清隆
    2000 年 49 巻 3 号 p. 255-262,278
    発行日: 2000/03/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    示差走査熱分析 (DSC) により, 水中油型 (O/W) エマルション (油 : 水=20 : 80) 中に乳化分散させたn-ヘキサデカンの結晶化挙動を検討した。乳化にはTween 20を使用し, n-ヘキサデカンには, 4種類の親油性のショ糖脂肪酸エステル : ショ糖ラウリン酸エステル (L-195), ショ糖パルミチン酸エステル (P-170), ショ糖ステアリン酸エステル (S-170), およびショ糖オレイン酸エステル (O-170) を添加した。バルクのn-ヘキサデカンの結晶化温度 (Tc) および融解温度 (Tm) が, それぞれ16.9℃と18.5℃であったのに対しエマルション中では, Tcは3.4℃, Tmは17.4℃であった。P-170とS-170の添加O/Wエマルション中のn-ヘキサデカンのTcを大幅に上昇させたが, L-195の効果はわずかであった。オレイン酸が疎水基であるO-170は, O/Wエマルション中のn-ヘキサデカンのTcに影響を及ぼさなかった。しかし, これら4種類のショ糖脂肪酸エステルは, バルクのn-ヘキサデカンのTcとTmには影響を及ぼさなかった。
    O/Wエマルションにおいて, P-170およびS-170を添加した場合には, DSCに加熱過程では, それぞれ3.6℃および4.1℃に吸熱ピークが, また冷却過程では, それぞれ-3.2℃と-3.0℃に発熱ピークが, n-ヘキサデカンの結晶化または融解のピークに加えて観察された。これらのピークは, エマルション界面で形成される分子会合体の相転移に対応していた。n-ヘキサデカンの結晶核形成促進および分子会合体形成のメカニズムを, ショ糖脂肪酸エステルをn-ヘキサデカンへ添加したことによって起きるO/Wエマルション界面への吸着と, 分子会合体の形成を考慮して考察した。
  • Siriporn LAWAN, Winai DALAN, Suwana PUNYACHEWIN, Thawatwong LAWAN
    2000 年 49 巻 3 号 p. 263-266,278
    発行日: 2000/03/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    タイ北部で多く採れる淡水魚のn-3脂肪酸含量を調査した。15種類の淡水魚に対してガスクロマトグラフィー分析を行ったところ, 学名Channa striata (通称名Striped Sanke-Head Fish) がEPA及びDHAの最も良い供給源であり, 13.11%のEPA及び10.49%のDHAを含んでいた。1日あたりChanna striata 185.7gを採取すれば, 米国食品栄養委員会 (Food and Nutrition Board of National Research Council) のn-3脂肪酸推奨量 (1g/日) に相当した。Channa striatan-3脂肪酸含量が高いので, この淡水魚は健康食品としての可能性が存在する。
  • 山本 二郎, 林森 一, 磯田 陽一郎
    2000 年 49 巻 3 号 p. 267-269,279
    発行日: 2000/03/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    4-ニトロピリジンN-オキシド-SbCl5 (1 : 1) 錯体 (錯体A), 4-メチルピリジンN-オキシド-SbCl5 (1 : 1) 錯体 (錯体B) およびピリジンN-オキシド-SbCl5 (1 : 1) 錯体 (錯体C) のそれぞれと, ベンゾピナコールとのニトロメタン溶液を50℃に保つと, いずれからもベンゾピナコロンが生成し, 反応は次の順で速くなった;錯体A>錯体C>錯体B。これらの錯体を加熱して対応するα-OSbCl4ピリジンに変換したのち, 同じ条件でベンゾピナコールとの反応を行うと, 同様にベンゾピナコロンが生成し反応の速さはつぎのようになった;γ-ニトロα-OSbCl4ピリジン≫α-OSbCl4ピリジン≧γ-メチルα-OSbCl4ピリジン。錯体Aおよびγ-NO2αピリジンとベンゾピナコールとの反応の場合をのぞき, いずれの反応からも少量のテトラフェニルエチレンオキシドの生成が認められた。錯体Bおよび錯体Cは, それぞれの対応するα-OSbCl4ピリジンより, ベンゾピナコールとの反応が速く進行した。
  • 朴 鍾穆, 青山 滋, 張 万斌, 中辻 洋司, 池田 功
    2000 年 49 巻 3 号 p. 271-274,279
    発行日: 2000/03/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    エチル5- [2- (4-ヘキサデシルオキシフェニル) エテニル] -2-ピラジニルメチルホスホン酸ナトリウムのsynhead-to-head二量体をDPPCベシクルの二分子膜に組み込むと, そのベシクル内に内包されたグルコースの流出が抑制される。その流出は254nmでの光照射により促進されたが, 300nm以上の光照射により再び抑制された。この抑制-促進制御は3回繰り返すことができた。この研究は, 1, 2-ジアリールエチレン単量体とその二量体が分子内および分子間で関係するフォトクロミズムを利用して, ベシクルからの流出のon-off制御に成功した初めての例である。
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