1, 2-ビス [(2E, 4E) -オクタデカエイル] -
sn-グリセロ-3-ホスホコリン (DODPC) を含有する混合脂質系リポソームのγ線重合の重合機構解明のため, (a) DODPCと1, 2-ジパルミトイル-
sn-グリセロ-3-ホスホコリン (DPPC) からなるDODPC/DPPCリポソーム, (b) DODPC, DPPC, コレステロール (Chol), ステアリン酸 (SA) からなるDODPC/DPPC/Chol/SAリポソームの2種類の混合脂質を調製し, γ線重合の挙動について調べた。各々の系について, 種々のDODPC/DPPCモル比について検討した。また, DODPC/DPPC/Chol/SAリポソームは, リン脂質/Chol/SAのモル比を7/7/2とした。各系のリポソームはエクストルージョン法により孔径0.2μmのポリカーボネートフィルターを通過させたのち, 線量率3.3kGy/h, 4℃でγ線照射により重合を行った。DODPC/DPPCリポソームのモル比5/5, DODPC/DPPC/Chol/SAリポソームのモル比9/1, 8/2, 7/3, 5/5において, 重合速度が増加した。重合度は, いずれの系においてもモル比が5/5のときに, DPPCを含有しないDODPCリポソームと比べ増加した。混合脂質リポソームの安定性に関しては, いずれの系もDODPC/DPPCモル比が10/0から8/2までは凍結融解操作に対する粒径変化がなかった。各系のリポソームのγ線照射による重合挙動を重合速度論的に解析した結果, いずれの系も重合速度の増加が見られたが, 重合機構は同じであった。また, DODPCと非重合性成分は, お互いに不溶であることが示唆された。重合速度と重合度の増加は, DPPCまたはコレステロールの疎水性的な相互作用によりDODPCのコンフォメーションが変化し, 重合し易いように配向するためと推定された。
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