日本油化学会誌
Online ISSN : 1884-1996
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49 巻, 6 号
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  • 安川 憲, 秋久 俊博
    2000 年 49 巻 6 号 p. 571-582,642
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    21世紀を目前とした今, がんの撲滅は人類に科せられた重要な課題である。我々は, これまでの食用植物や菌類, さらには生薬における発がん抑制物質の探索に関する研究で, 種々のステロールやトリテルペンアルコール並びにこれらの誘導体が, 抗発がんプロモーターのin vivo一次スクリーニング試験法であるマウス耳殻でのTPA誘発炎症に対して抑制効果を持つ事を見出してきた。本稿では, ステロールやトリテルペノイド類のTPA誘発マウス耳殻炎症, DMBAとTPAによるマウス皮膚二段階発がん実験, TPA誘発Epstein-Barrウイルス活性化, 及びTPA誘発HeLa細胞への燐の取り込みなど, 種々の抗発がんプロモーター試験における抑制効果について述べた。これらステロールやトリテルペノイドは食用植物, 茸, 及び生薬類の常成分であることから, 毒性は無いか極めて少ないと考えられる。従って, ステロールやトリテルペノイド類は発がん抑制物質として有望な化合物群の一つとして期待される。
  • 登成 健之介, 鮫島 圭一郎
    2000 年 49 巻 6 号 p. 583-590,642
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    3-メチルシクロペンタノン類の抗菌性について, 分子軌道法のHOMO, LUMOから導かれる絶対的電気陰性度 (χ) および絶対的ハードネス (η) について論じ, 3-メチルシクロペンタノン類の最小阻止濃度 (MIC) とよく相関するのはχであった。また, これらの物質とタンパク, 酵素との反応性が抗菌作用におよぼすと予測し, タンパク, 酵素のシンプルなものとして数種のアミノ酸を選び, これらと3-メチルシクロペンタノン類の反応性指標と考えられる電荷移動量 (ΔN) および電荷移動親和力 (ΔE) を考察した。その結果, これらは3-メチルシクロペンタノン類のMICと強い相関があることが判明した。
    五員環抗生物質として知られるメチレノマイシン関連物についても, χ, η, ΔNおよびΔEを比較した結果, 抗生物質として知られるものはこれらの絶対値が大きいことが判明し, 今回得た2, 3-Epoxy-3-methyl-5-methylenecyclopentanone 4も五員還抗生物質として期待できることが予測された。
  • 赤間 和博, 粟井 浩二, 矢野 嘉宏, 徳山 悟, 中野 善郎, 細井 文雄, 大道 英樹
    2000 年 49 巻 6 号 p. 591-603,643
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    1, 2-ビス [(2E, 4E) -オクタデカエイル] -sn-グリセロ-3-ホスホコリン (DODPC) を含有する混合脂質系リポソームのγ線重合の重合機構解明のため, (a) DODPCと1, 2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン (DPPC) からなるDODPC/DPPCリポソーム, (b) DODPC, DPPC, コレステロール (Chol), ステアリン酸 (SA) からなるDODPC/DPPC/Chol/SAリポソームの2種類の混合脂質を調製し, γ線重合の挙動について調べた。各々の系について, 種々のDODPC/DPPCモル比について検討した。また, DODPC/DPPC/Chol/SAリポソームは, リン脂質/Chol/SAのモル比を7/7/2とした。各系のリポソームはエクストルージョン法により孔径0.2μmのポリカーボネートフィルターを通過させたのち, 線量率3.3kGy/h, 4℃でγ線照射により重合を行った。DODPC/DPPCリポソームのモル比5/5, DODPC/DPPC/Chol/SAリポソームのモル比9/1, 8/2, 7/3, 5/5において, 重合速度が増加した。重合度は, いずれの系においてもモル比が5/5のときに, DPPCを含有しないDODPCリポソームと比べ増加した。混合脂質リポソームの安定性に関しては, いずれの系もDODPC/DPPCモル比が10/0から8/2までは凍結融解操作に対する粒径変化がなかった。各系のリポソームのγ線照射による重合挙動を重合速度論的に解析した結果, いずれの系も重合速度の増加が見られたが, 重合機構は同じであった。また, DODPCと非重合性成分は, お互いに不溶であることが示唆された。重合速度と重合度の増加は, DPPCまたはコレステロールの疎水性的な相互作用によりDODPCのコンフォメーションが変化し, 重合し易いように配向するためと推定された。
  • 今栄 東洋子, 鳥居 弘之
    2000 年 49 巻 6 号 p. 605-610,643
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    赤外透過および反射吸収スペクトルが, 5および30mNm-1の表面圧で調製された界面活性アゾ色素のラングミュアーブロジェット (LB) 膜に対して測定された。LB膜内の分子は累積圧に依存して配向することが赤外吸収スペクトルによって示された。紫外可視吸収スペクトルにおいて, トランス配位をとるアゾ色素の吸収帯は5mNm-1で調製したLB膜ではブルーシフトし, 30mNm-1での膜ではレッドシフトした。これはそれぞれの膜内でHおよびJ会合体が形成されたことを示唆する。LB膜内での界面活性アゾ色素分子の配向が議論された。
  • 矢津 一正, 山本 順寛, 二木 鋭雄, 三木 啓司, 請川 孝治
    2000 年 49 巻 6 号 p. 611-615,644
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    高度不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸エイコサペンタエン酸, アラキドン酸, α-リノレン酸, γ-リノレン酸およびリノール酸の各メチルエステル (PUFA) の37℃における空気酸化を, クロロベンゼン均一溶液中およびTriton X-100ミセル水溶液中で行った。PUFAの酸化による基質減少速度は, 均一系溶液中では不飽和度の増加にともない増加したが, ミセル中では逆に減少した。酸素吸収量と基質減少量の比が不飽和度の増加にともない1から3.4まで増加したことから, ドコサヘキサエン酸メチルやエイコサペンタエン酸メチルなどのより高度の不飽和脂肪酸メチルエステル由来のペルオキシルラジカルは, リノール酸メチル由来のペルオキシルラジカルに比べより極性が強いと考えられる。ミセル水溶液中でのリノール酸メチルと他のPUFAの1 : 1混合基質の酸化で, PUFAとリノール酸メチルの酸化速度の比は不飽和度の増加にともない増加するのにも関わらず, 基質減少速度の和は逆に減少したことから, より高度の不飽和脂肪酸メチルエステル由来のペルオキシルラジカルは連鎖反応の進行にほとんど関与しないことが示唆された。ミセル中心に存在することのわかっているブチルヒドロキシトルエンのPUFAの酸化に伴う減少速度は, 不飽和度の増加にともない減少した。以上のデータは, より高度不飽和脂肪酸メチルエステル由来のペルオキシルラジカルはミセル中心から界面へ移動し, これにより連鎖停止反応が促進され, また連鎖成長反応が抑制されるため高度不飽和脂肪酸の酸化速度が減少するという考えを支持する。
  • 國枝 博信, 荒牧 賢治, 西村 貴幸, 石飛 雅彦
    2000 年 49 巻 6 号 p. 617-624,644
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    未反応ポリグリセリンを除いたポリグリセリン脂肪酸エステルの水-油中での相挙動を調べ, 自己組織体構造を小角X線散乱法 (SAXS) により調べた。ポリグリセリンの平均重合度が10, 20のラウリン酸エステル (10G*0.7L, 20G*1L) を合成して用いた。10G*0.7L, 20G*1Lは両方とも25℃において水の中ではキュービック相を形成しないが, わずかなデカンの添加によりキュービック相が形成されることが分かった。このキュービック相をSAXSにより解析したところ, 球状ミセルが面心あるいは体心立方格子に配列したdiscontinuousキュービック相 (I1) であることがわかり, 充填しているミセルは完全に球状ではないことが示唆された。デカンの可溶化量の増加とともにI1の熱安定性は良くなる。m-キシレン, スクアランのI1への可溶化量を調べた結果, 前者はデカンより多く, 後者はデカンより少ない。I1へのデカンの可溶化限界を超えるとI1が過剰の油相と共存する2相になる。このとき, I1相中に油を乳化滴として分散させることが可能であり, 油の割合が80%に達する極めて高粘性かつ安定な乳化ゲルを形成することに成功した。
  • 外国製スナックおよび菓子類
    松崎 寿, 青山 稔, 馬場 明, 丸山 武紀, 新谷 〓, 柳田 晃良, 菅野 道廣
    2000 年 49 巻 6 号 p. 625-630,645
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    13カ国で製造された菓子類に含まれるトランス酸含有率を, ガスクロマトグラフィーと銀イオン薄層クロマトグラフィーを併用して分析した。
    総トランス酸含有率はアメリカ (27.1%) が最も高く, 次いでカナダ (22.3%), スイス (18.7%) 及びベルギー (15.0%) であった。オランダ, ノルウェー, スウェーデン及びイギリスの総トランス酸含有率は11~12%であり, デンマーク, フィンランド及びドイツのそれは6~8%であった。オーストラリア及びイタリアの総トランス酸含有率はそれぞれ3.5%及び3.1%であり, イタリアは最低値を示した。
    菓子類に含まれていた主要なトランス異性体はC18 : 1トランス異性体であったが, C20 : 1及びC22 : 1トランス異性体も7銘柄でみられた。
    菓子類の総トランス酸含有率と家庭用マーガリンのそれを比較したところ, カナダ, アメリカ及びイギリスでは菓子類と同程度の値であった。対照的に, ベルギー, デンマーク, ドイツ及びオランダでは家庭用マーガリンよりも菓子類が高い値を示した。
  • 堀越 智, 渡辺 奈津子, 日高 久夫
    2000 年 49 巻 6 号 p. 631-639,645
    発行日: 2000/06/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    河川へ廃棄された非イオン界面活性剤であるノニルフェノールポリエトキシレート (NPE) は, 生分解により毒性が強く, 水に難溶性の内分泌かく乱物質ノニルフェノール (NP) 中間生成物が生成する。本研究では二酸化チタン光触媒を用いたNPEやNPの光酸化メカニズムについて研究を行った。これらの光分解における表面張力の変化, TOC変化, CO2ガスの発生量, FT-IR, NMR, GC-MS, 光散乱によるTiO2粒子への吸着状態などを検討した。分子軌道法を用いて, OHラジカルの攻撃位置やTiO2表面への吸着シミュレーションを行い, 実験結果と比較した。TiO2光触媒によりNPEやNPなどが不均一水溶液分散系で分解できることが分かった。またそのメカニズムについても考察した。
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