胆汁酸や肺サーフアクタント (LS) などの生体内界面活性物質の機能と応用が, 特にコロイド界面化学と医学の間の境界領域において研究された。
主なテーマは次のようである。
(1) 胆汁酸塩のコロイド界面化学的性質
均一鎖長を持つ非イオン界面活性剤 (C
10E
8) 水溶液中に種々の割合で胆汁酸塩を混合することによって調製された混合ミセルの形状や構造の変化が, 胆汁酸塩の混合割合に対して推論された。これは, 項目別にまとめられる。
(a) 胆汁酸塩の単独系および (C
10E
8) との混合水溶液に対するCMC値, その構造, 平均会合数およびミセルの疎水度。
(b) 種々の胆汁酸塩のミセル溶液中に可溶化されたビタミンE (VE) のラット小腸管への吸収。
(2) LSの機能や開発に関する研究。サーフアクタントプロテイン (SP) を含んだ人工LSは, TAと名付けられ, 藤原等によってRespiratory distress Syndrome (RDS) 呼吸窮迫症候群RDSの治療薬として開発され, その有効性が認められている。その機構が次のように表面レオロジーによって評価された。
(a) プロテオリピド, サーフアクタントプロテイン (SP-B, SP-C, SP=BC) と, これらとの混合物 (レシチン, パルミチン酸 (PA), エッグホスフアチジルグリセロール (eggPG) を含む) およびLSとしての有効性。
(3) リポソームの基礎物性の研究。
(a) ベンゾイルアセトアニリド (BAA) の互変異性を利用した脂質リポソームの相転移温度 (Tc) の評価とコレステロールの添加効果。
(b) リポソームの2分子膜に及ぼすイオン性および非イオン性活性剤の添加による影響。
(4) 難溶性薬物の水への溶解。
(a) 胆石モデルとしてのビリルビンカルシウムデイスクの溶剤による溶解。
(b) デイクロフェナックナトリウム (DCF) のハイドロトロピック物質間で形成されたコンプレックスによる水への溶解。
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