日本油化学会誌
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  • 上野 實
    2000 年 49 巻 11-12 号 p. 1343-1367,1444
    発行日: 2000/11/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    胆汁酸や肺サーフアクタント (LS) などの生体内界面活性物質の機能と応用が, 特にコロイド界面化学と医学の間の境界領域において研究された。
    主なテーマは次のようである。
    (1) 胆汁酸塩のコロイド界面化学的性質
    均一鎖長を持つ非イオン界面活性剤 (C10E8) 水溶液中に種々の割合で胆汁酸塩を混合することによって調製された混合ミセルの形状や構造の変化が, 胆汁酸塩の混合割合に対して推論された。これは, 項目別にまとめられる。
    (a) 胆汁酸塩の単独系および (C10E8) との混合水溶液に対するCMC値, その構造, 平均会合数およびミセルの疎水度。
    (b) 種々の胆汁酸塩のミセル溶液中に可溶化されたビタミンE (VE) のラット小腸管への吸収。
    (2) LSの機能や開発に関する研究。サーフアクタントプロテイン (SP) を含んだ人工LSは, TAと名付けられ, 藤原等によってRespiratory distress Syndrome (RDS) 呼吸窮迫症候群RDSの治療薬として開発され, その有効性が認められている。その機構が次のように表面レオロジーによって評価された。
    (a) プロテオリピド, サーフアクタントプロテイン (SP-B, SP-C, SP=BC) と, これらとの混合物 (レシチン, パルミチン酸 (PA), エッグホスフアチジルグリセロール (eggPG) を含む) およびLSとしての有効性。
    (3) リポソームの基礎物性の研究。
    (a) ベンゾイルアセトアニリド (BAA) の互変異性を利用した脂質リポソームの相転移温度 (Tc) の評価とコレステロールの添加効果。
    (b) リポソームの2分子膜に及ぼすイオン性および非イオン性活性剤の添加による影響。
    (4) 難溶性薬物の水への溶解。
    (a) 胆石モデルとしてのビリルビンカルシウムデイスクの溶剤による溶解。
    (b) デイクロフェナックナトリウム (DCF) のハイドロトロピック物質間で形成されたコンプレックスによる水への溶解。
  • 武田 徳司
    2000 年 49 巻 11-12 号 p. 1369-1376,1445
    発行日: 2000/11/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    本総説は2000年日本油化学会賞の論文を中心にまとめた。エポキシドの反応を利用して新規な機能性物質およびその中間体の合成法を開発した。エポキシドとハロゲン化合物の反応で, 炭素-ハロゲン結合間にエポキシドが挿入された生成物を得た。エポキシドとカルボニル化合物の反応によって1, 3-ジオキソラン化合物が得られた。化学分解性界面活性剤やα, ω-型などの特殊型界面活性剤を開発した。主要な化学分解性界面活性剤は親油性基と親水基の連結部に1, 3-ジオキソラン環をもつ。化学分解性界面活性剤は使用後, 酸, アルカリやオゾンなどを添加することによって界面活性を失い, その結果生じる油性物質を回収できるので環境に優しい。またこれは乳化重合による高純度の高分子の合成にも有用であった。界面活性剤混合系の物性について検討した。ドデシル硫酸ナトリウム (SDS) -アルキルグルコシド (AG) 系やSDS-アルキルエトキシレート (AE) 系はSDSのナトリウムイオンの解離度がSDS単独系より高い。混合ミセルではSDS-AE系が相互作用をするのに対し, SDS-AG系は相互作用を殆んどしなかった。リポソーム中のプローブの漏れ率は界面活性剤の組成に大きく依存した。
  • 宮澤 陽夫
    2000 年 49 巻 11-12 号 p. 1377-1382,1445
    発行日: 2000/11/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    本総説は2000年度日本油化学会賞の受賞論文による。脂質分子の過酸化は, 食品の栄養価を損なうだけでなく, 多くの生化学反応に関与し, 細胞老化や疾病にも関わる。食品や生体の機能性脂質の酸化損傷を評価するには, 過酸化反応の第一次生成物であるヒドロペルオキシドの検出が欠かせない。これは, 食品の健全性やヒトの健康増進に関する研究を企画する場合の重要な解析技術でもある。1987年に筆者らは, 脂質ヒドロペルオキシドを選択的で高感度に定量する目的で, 化学発光検出-高速液体クロマトグラフ法を開発した。これにより, 食品やヒト血漿の過酸化脂質を脂質クラスごとに分析できるようになった。本法を用いて, 食品油脂の初期酸化ではトリアシルグリセロールのモノヒドロペルオキシドとともにビスヒドロペルオキシドが生成することを確認した。動物では不飽和度の高い魚油などを長期摂取すると, 組織の膜リン脂質が過酸化を受けやすくなり, 抗酸化のためα-トコフェロールの要求量の増えることが明らかにされた。細胞に過酸化脂質が増える第一の原因は, 動物個体自体の加齢・老化であることがわかった。膜脂質の過酸化は, 動脈硬化, 糖尿病, 痴呆症など老化性障害と密接に関わることを明らかにした。
  • 徳岡 由一
    2000 年 49 巻 11-12 号 p. 1383-1390,1446
    発行日: 2000/11/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    界面活性剤による香料の可溶化技術は水をベースとした種々の工業製品に応用されている。しかし, 香料の分子構造は複雑であるため, 香料の可溶化現象を推定することは難しい。本総説では, 香料のミセルへの溶解性および可溶化機構を概説し, 二成分混合香料系の可溶化特性, ならびに界面活性剤混合系および界面活性剤濃厚水溶液系による香料の可溶化特性について記述した。また, 界面活性剤水溶液からの香料の揮発機構および界面活性剤水溶液の相転移を利用した香料の揮発制御についても解説した。
  • EPAの有益な効果
    日比野 英彦, 森田 育男
    2000 年 49 巻 11-12 号 p. 1391-1399,1446
    発行日: 2000/11/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    n-3系高度不飽和脂肪酸 (n-3 PUFA) のEPAやDHAは幅広い多様な有益な作用を示すことが認められている。本総説において筆者らは細胞実験および動物実験における骨代謝促進に対するn-3 PUFA, 特にEPAの有益な効果を示した。
    骨芽細胞は骨形成細胞である, しかしまた内因性の強い骨吸収因子であるプロスタグランジンE2を生成する。それゆえ, 骨代謝促進に対するEPAの効果を明確にするため, 筆者らは骨芽細胞様細胞のMC3T3-E1細胞に対するEPAの効果を検討した。EPAを附加したMC3T3-E1細胞ではカルシウム蓄積とヴォン-コッサ染色を増加したが, DHAでは増加しなかった。
    動物実験で, 筆者らは卵巣摘出ラットと低カルシウム/ビタミンD3給餌ラットでの大腿骨の破壊強度に対するEPAの効果を検討した。EPAの投与は卵巣摘出の効果を無くし骨強度を回復した。
    予備的な疫学調査から, EPAの摂取は加齢による骨重量と強度の損失の予防に有用と思われる。
    これらのデーターと疫学調査から, EPAや海産油脂は加齢-関連骨粗鬆症の予防と改善に対して有益な効果がある可能性が示された。
  • 林 賢治, 岸村 栄毅
    2000 年 49 巻 11-12 号 p. 1401-1406,1447
    発行日: 2000/11/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    オーストラリア産ボラ (Mugil cephalus) の卵塩蔵物とその塩乾物 (カラスミ) の脂質成分を明らかにした。両者の脂質 (TL) 含有率は, 乾燥重量の30.6~31.6%であり, C32およびC34を主成分 (53.1~61.1%) とするワックスエステル (WE : 82.8~84.3%) を含有した。WEの脂肪アルコールは, 16 : 0 (59.3~63.4%) を主成分とする飽和成分 (83.5~86.4%) が特徴的であった。モノエン成分 (11.9~15.0%) はいずれも二重結合位置異性体を含み, 16 : 1n-7 (5.8~9.2%) が主成分であった。また, 15 : 0 (3.1~12.0%) などの奇数炭素成分が存在した。WEの構成脂肪酸は, 16 : 1n-7酸 (34.0~38.8%) などのモノエン酸 (56.1~60.6%) および20 : 5n-3酸, 22 : 5n-3酸, 22 : 6n-3酸などのポリエン酸 (26.6~31.1%) を多量に含有したが, トリアシルグリセリン (TG) では16 : 0酸 (32.9~34.6%), 16 : 1n-7酸 (16.6~22.5%), 18 : 1n-7酸 (7.8~8.7%) が特徴的であった。また, 酸化によるボラ卵塩乾物のTL, WE, TGのポリエン酸の減少は認められなかった。
  • 豊嶋 俊薫, 玉垣 誠三
    2000 年 49 巻 11-12 号 p. 1407-1412,1447
    発行日: 2000/11/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    β-グリシルレチン酸 (GA) のアニオン型誘導体を多数合成し, それらの甘味を評価したところ, GAの20位カルボキシル基 (COOH) と3位の解離型アニオン置換基 (COO-) が甘味に必要であることが分かり, 甘味発現機構を提案した。
  • 基質識別加水分解酵素モデル
    依田 由紀, 竹澤 恒雄, 大勝 靖一
    2000 年 49 巻 11-12 号 p. 1413-1421,1448
    発行日: 2000/11/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    頭部基にメチル基, 疎水基にドデシル基とベンゼン環を含むアルキル基, そしてアルカンジイル基で連結された対称的なビス第四級アンモニウム塩型両親媒性化合物を合成した。アラルキル基はp-ヘプチルベンジル基および8-フェニルオクチル基 (それぞれ対応するアンモニウム塩を “フェニレン型” および “フェニル型” と示す) である。そこで, アミノ酸エステルに対する加水分解活性および基質識別に及ぼす疎水鎖中のベンゼン環の効果を検討した。フェニル型はベンゼン環を持たない対応するアンモニウム塩 (“アルキル型”) に比べ, 特にフェニルアラニンおよびメチオニンエステルに対して高い加水分解速度を示した。一方, フェニレン型の加水分解活性はアルキル型より低く, フェニルアラニンエステルだけを加水分解した。このように, ベンゼン環の位置によって, 加水分解活性および基質識別は著しく異なった。基質の取り込み部位ならびに分子集合体の配向とその形態がベンゼン環の位置の違いによって影響されると考えられる。
  • 岡島 俊哉, 秋山 知子, 河口 忍
    2000 年 49 巻 11-12 号 p. 1423-1431,1448
    発行日: 2000/11/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    トコフェロールおよびカテキン類と親電子性変異原の反応サイトであるオキシラン環との芳香族求電子置換反応の反応性を分子軌道法により調べた。反応物および遷移状態の構造はPM3レベルを用いて求め, 反応の活性化エネルギー (ΔE) は密度汎関数法 (Becke3LYP/3-21Gレベル) を用いて評価した。親電子性変異原の反応サイトであるオキシラン環のモデルとしてエチレンオキシドを選び, トコフェロールおよびカテキン類のモデル化合物との反応性について検討した。トコフェロールは親電子性物質と反応し得るサイトを持つβ, γおよびδ-トコフェロールの三つについてモデル化した。
    三種類のトコフェロールのフェノキシドとエチレンオキシドとの求電子置換反応の律速度段階のΔE値は43-53kJ/molと計算され, 予測される反応性はβ~γ<δの順となった。C-7位でエチレンオキシドと反応するδ型の反応のTSが最も安定でありΔE値が最も低く (+43.3kJ/mol), また, カテキンの反応においてはO-5フェノキシドがC-8位で反応するTSのΔE値 (+40.5kJ/mol) が最も近くなった。これらのΔE値は体温において反応し得るほど十分小さく, 親電子性変異原がトコフェロールあるいはカテキンにより直接捕捉される可能性が示唆された。
  • 金 淑景, 駒城 素子
    2000 年 49 巻 11-12 号 p. 1433-1435,1449
    発行日: 2000/11/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    ポリ (α-ヒドロキシアクリル酸ナトリウム);PHAの複合人工汚染布に対する洗浄性能を, PHA分子量, アニオン界面活性剤 (SDS) およびPHAと構造の類似している高分子;ポリアクリル酸ナトリウム (PA), ポリビニルアルコール (PVA) による洗浄性と比較した。
    水の硬度が高い領域ではPHAはSDSより高い洗浄性を示し, しかも分子量10500までは, 分子量の増加と共に洗浄性は増加したが, それ以上では一定になった。さらにPHAはPAやPVAより高い洗浄性を示した。
  • 渡部 和郎, 中原 東郎, 横地 俊弘, 茂原 静雄, 矢澤 一良
    2000 年 49 巻 11-12 号 p. 1437-1441,1449
    発行日: 2000/11/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    ドコサヘキサエン酸産生スラウストキトリッド, Schizochytrium sp. N1-27株, を用いて, 13C存在比の高い13C標識ドコサヘキサエン酸を調製した。 [1, 2-13C] 酢酸ナトリウムを唯一の炭素源とした培地で115h培養した後, 菌体から抽出した総脂質は培養液1L当たり2.53gであった。総脂質から脂肪酸エチルエステルを調製し, HPLCで分画した。回収率53%で, 化学的純度がほぼ100%の13C標識ドコサヘキサエン酸を得た。この標識ドコサヘキサエン酸の13C存在比はGC-MSから97%以上と推定した。培養液1L当たりの生産量は0.29gであった。副生成物として13C標識ドコサペンタエン酸, エイコサペンタエン酸及びパルミチン酸を得た。このスラウストキトリッドは13C標識ドコサヘキサエン酸及びドコサペンタエン酸の生産に適した微生物である。
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