労働安全衛生研究
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1 巻, 1 号
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巻頭言
特別寄稿
原著論文
  • 高木 元也, 嘉納 成男
    2008 年 1 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2008年
    公開日: 2013/07/02
    ジャーナル フリー
    重要な政策課題である中小建設会社の安全活動の促進には企業経営者の安全意識の向上が不可欠であり,このためには労働災害損失が企業に及ぼす影響の大きさを示すことが有効である.本研究は企業レベルでみた建設現場で発生した労働災害に伴う損失額の計測手法の構築を試みた.国内外の既往文献調査,総合建設会社ヒアリング調査等に基づき,建設業の特性を踏まえた建設現場の労働災害損失項目,損失額算定方法等を設定し,これら損失項目の妥当性の検証等を目的に労働災害損失事例調査を実施した.さらに,建設会社を対象としたアンケート調査を実施し損失項目等の2次的な検証を行った.この結果,仮定した損失項目等は実務者の経験や感覚に照らしても概ね妥当なものであるとの結果が得られた.また,アンケート調査結果からは,多くの企業が労働災害損失額を計測し活用することは必要と考えるが,現状ではその手段も少なく,十分に実行されていない実態が把握でき,実用的な労働災害損失額計測システムを開発することの重要性が確認できた.労働災害損失事例調査からは,労働災害に伴って直接的な損失額は少額な場合であっても,企業は目に見えない多額の間接的な損害を被っていることが明らかとなり,潜在的な労働災害損失を把握するため間接的な損失まで計測対象を広げた本計測手法の重要性が認識できた.
  • 高橋 弘樹, 大幢 勝利, 高梨 成次
    2008 年 1 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2008年
    公開日: 2013/07/02
    ジャーナル フリー
    わく組足場の耐荷性能の評価に関しては,標準わくを用いた足場のように個材座屈により耐荷強度が決まるものについては,建わく単体の圧縮強度を知ることにより,これを組み上げた足場の耐荷強度を推定する手法が確立されているが,簡易わくを用いた足場のように全体座屈で耐荷強度が決まるものについては,建わくや布わくのせん断剛性が足場の耐荷強度に影響を与えることが推測できるものの,これらの関係を定量的,系統的に検討したデータはなく,その耐荷強度を知るためには組み上げた骨組の実大実験に頼らざるを得ない現状にある.本研究では,簡易わくを用いた足場について,建わくと布わくのせん断剛性をパラメーターとして座屈解析を行って簡易わく組足場の耐荷性能の新しい評価手法を検討した.
  • 冨田 一, 崔 光石, 中田 健司, 本山 建雄
    2008 年 1 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 2008年
    公開日: 2013/07/02
    ジャーナル フリー
    既に100/200Vから220/380Vに昇圧された韓国と我が国との電気火災および感電事故を比較して,将来、我が国が低圧の配電電圧として230/400Vが採用された場合に想定される電気安全上の課題について留意点を抽出した.昇圧の進展と電気火災発生件数には相関性が見られ,電気火災の主因である短絡は,その発生過程の究明と防止対策が電気火災防止にとって重要になる.昇圧化後にも老朽設備を使用し続けると,電気火災が発生し易くなるので特に注意が必要である.昇圧の進展と感電死傷者数には相関性が見られない.この要因には,有効な接地方式の選定や漏電遮断器の普及が感電事故の抑制に寄与したことが考えられる.昇圧による電気事故を防止するには,配電方式や対地電圧に応じた適切な接地方式の選定や接地技術の開発,電気設備,漏電遮断器の安全性向上などのハード面の安全対策に加えて,電気安全関連法令の遵守,定期点検の徹底,老朽設備を適切に運用するためにメンテナンス体制の整備などのソフト面での安全管理体制の確立も重要である.
  • 玉手 聡, 豊澤 康男, 高梨 成次, 伊藤 和也, 末政 直晃, 片田 敏行, 田中 剛, 荒井 郁岳
    2008 年 1 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 2008年
    公開日: 2013/07/02
    ジャーナル フリー
    自立式タワークレーンは設置地盤に構築された杭基礎に安定性を依存する構造物である.しかしその設置では短期的な使用を前提に安定性が検討され,一般の仮設構造物と同等に見なされているのが現状である.しかし,自立式タワークレーンは高さが30メートルを超える機種も珍しくなく,その重量は100トンに達する大型構造物である.従って,その安定設置は極めて重要な問題と言える.長尺でトップヘビーなタワークレーンの地震時安定性は地盤と上部構造の相互作用に影響を受けるため,一体的な評価が必要である。しかし,地盤の不安定要因がタワークレーンの転倒に与える影響については未解明な点が多く残されている.そこで本研究では杭基礎で支持された自立式タワークレーンの地震時応答メカニズムの解明を目的に,土質が異なる2種類の地盤において動的遠心模型実験を実施した.その結果,設置地盤の土質はタワークレーンの加速度応答に最も影響を与える要因であり,特に繰り返し載荷に伴って生じる地盤の劣化は重要な要因であることがわかった.さらに,作業中のクレーンに発生する転倒モーメントは,加速度応答ならびに,杭に働く曲げモーメントと軸力に影響を与える要因であることを明らかにした.
  • 明日 徹, 井上 正岩, 原田 規章
    2008 年 1 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2008年
    公開日: 2013/07/02
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,移乗介助動作に関する教育介入が,介助者の下肢・体幹の関節角度や筋活動に及ぼす影響について検討することである.13名の女性被験者(教育介入を実施する介入群:理学療法学科8名,対照群:作業療法学科5名)を対象とした.12回の授業(講義と実技)で構成される教育介入前後において,身長170cm体重55kgの男子学生を被介助者とし,椅子から椅子への単独での全介助による移乗介助動作を1往復行った.左右の上腕二頭筋・僧帽筋・脊柱起立筋・大腿直筋の筋活動を表面筋電図にて,股・膝関節ならびに体幹の屈曲角度を3次元動作解析装置にて評価した.介入群において,膝屈曲角度が介入後有意な増加を示した.股関節・体幹屈曲角度には有意な変化は認められなかったが,介入群では対照群に比べ股関節屈曲角度は大きく,体幹屈曲角度は小さかった.これより教育介入によって,指導として強調された squat lifting 法へ近づく姿勢となったことが示唆された.しかし,筋活動においては,介入群の右大腿直筋のみ有意な増加を示したが,その他の筋は有意な変化は見られなかった.今回の結果から,教育介入により被験者の腰部への負担軽減を明確に示すには至らなかったが,介入群は股・膝関節をより屈曲させて移乗介助動作を行う姿勢を示すようになり,教育効果の可能性が示唆されたといえる.すなわち,教育介入の意義についてさらに検討を深め,教育方法の質的・量的充実を図ることが必要と考えられた.
事例報告
短報
  • 三木 圭一
    2008 年 1 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 2008年
    公開日: 2013/07/02
    ジャーナル フリー
    唾液中クロモグラニンA(CgA)は交感神経系を反映する新たな指標として注目されており,比較的微弱なストレスを反映するマーカーとして,近年報告が散見される.しかしながら本指標は,運動負荷に対し必ずしも有意な上昇を示さないなど従来の交感神経系ストレス指標とは異なる特性を有する可能性も示されている.本報では唾液中CgA濃度の時系列データより本指標の基本特性を明らかにすること,また既存のストレス指標である唾液中コルチゾール濃度,尿中カテコールアミン排泄量との関係を明らかにすることを目的として被験者実験を行った.その結果,唾液中CgA濃度(補正なし)は強固な概日リズムを有する体温と負の相関を示し,指標自身が何らかの経時的変動を有する可能性が示された.運動負荷に応じ,尿中ノルアドレナリン排泄量は有意な増加を認めたが,唾液中CgA濃度における変動は必ずしも明らかではなかった.唾液中CgA濃度は従来の指標とは挙動が異なる可能性が示唆された.
資料
技術解説
  • 日野 泰道
    2008 年 1 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 2008年
    公開日: 2013/07/02
    ジャーナル フリー
    近年,耐用年数を迎える橋梁が出始め,耐震補強工事が数多く行われるようになってきた.これら補強工事では,重量が1トン近くに達する金物を数多く取り扱う現場も見られ,このような金物の搬入や取付に際し,つり足場をその仮置き支持台等として利用する必要性がでてきた.しかしつり足場は,作業員の作業床として主に利用されてきたものであり,積載荷重が小さいとはいえない重量物を仮置きする場合は,別途安全性を検討し直す必要がある.この点,重量物支持用として使用されるつり足場は,従来のものより断面積の大きいチェーンを利用するのではなく、一般には従来品を複数本使用する方法で組み立てられている。そこで本技術解説では,そのような重量物用つり足場の基本性能を明らかにするため,同一箇所に2本のチェーンを配置したものを対象として静的加力実験を実施し,その許容荷重および破断荷重について検討を行った.
    その結果,隣接するチェーン同士でチェーン長に相対的な差がある場合、引張降伏前で各チェーンの負担荷重値が著しく異なる場合があることを明らかとした.そしてこのような場合、つり足場全体としての最大荷重(各チェーンの負担荷重値の合計の最大値)も小さくなり,とりわけ全長の短いつり足場でその影響が大きいことを示した.
研究紹介
  • 崔 光石
    2008 年 1 巻 1 号 p. 73-76
    発行日: 2008年
    公開日: 2013/07/02
    ジャーナル フリー
    近年,生産現場では,塗装,冷却,洗浄など可燃性液体の噴霧工程が多く行なわれており,さらに,予期しない液体の漏洩,放出に伴う突発的な噴出も発生している。それに伴って起こる静電気災害の防止対策の確立が求められている。本報では噴霧液体の着火試験装置と漏洩噴出模擬実験装置を試作し,様々な条件において液体漏洩噴出時の静電気による着火危険性を調べた。試料は,灯油,デカン,キシレン,スチレンの低引火性液体,一部の実験では安全性や長時間,大量に使用することを考慮して,水道水を用いた。着火性(MIE)を調べた結果,噴霧状液体は,引火点と関係なく,室温において10mJ以下で着火する。特に,スチレンの場合,4mJという小さい値を示した。MIEは噴霧空間内における着火源の位置に大きく依存し,最も着火し易い領域が存在する。模擬実験装置での実験結果では,フランジ接続部やドレインバルブの締め付け不良,パイプにあいたピンホールなどから液体が噴出した時に,帯電量は液体の種類,ガスケットの材料,噴出孔の大きさなどによって大きく変化する。いずれの場合も,水の帯電量が灯油に比べて1桁大きい。今回の実験では比電荷量及び電界値は静電気による危険なレベルではない,等が明らかとなった。
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