労働安全衛生研究
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1 巻 , 3 号
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巻頭言
特別寄稿
原著論文
  • 上野 哲, 澤田 晋一
    2008 年 1 巻 3 号 p. 189-196
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/12/25
    ジャーナル フリー
    消防士の暑熱ストレスを高める原因の一つに防火服着用による身体からの放熱量の低下が挙げられる.そこで本研究では,熱伝達性が高くなる防火服の条件を探すため,サイズ,材質,作業ズボンの長さを変えて,熱伝達性の指標である顕熱抵抗を運動サーマルマネキンで測定した.サイズは,M,L,LLの3種類,材質はメタアラミド,パラアラミド,ザイロンの3種類,ズボンは半ズボンと長ズボンの2種類を用いた.その際,防火服ばかりでなく,実際の消防士の服装に合わせるために,活動服を着せた上から防火服や手袋,長靴をマネキンに履かせた状態でも測定した.またマネキンの立位静止状態に加え,歩行状態での防火服の顕熱抵抗を測定した.防火服のみの場合は,立位静止状態ではサイズによる顕熱抵抗の有意な差はなく,部位ごとの顕熱抵抗は衣服内の空気層が厚い臀部や体幹部が高かった.歩行時ではLLサイズの防火服の顕熱抵抗が有意に小さかった.サイズが大きいため,衣服の内側と外側との空気の入れ替わりが大きくなったためと考えられる.活動服の上から防火服を着せると,防火服のサイズが大きくなるほど顕熱抵抗が高かった.作業ズボンの長さを短くすると,立位静止,歩行状態とも下腿部の顕熱抵抗が減少したが,全顕熱抵抗はほとんど変わらなかった.暑熱ストレスに関して活動服の長ズボンを半ズボンに交換する効果は少なかった.
  • 山口 篤志, 本田 尚, 辻 裕一
    2008 年 1 巻 3 号 p. 197-203
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/12/25
    ジャーナル フリー
    プラントの配管や圧力容器の接続部に使用されているフランジ継手用ガスケットには,従来石綿製品が多用されてきたが,2006年に施行された労働安全衛生法の改正により石綿を0.1%超える製品の製造及び使用が禁止となった.ここで,主に高温で用いられるガスケットをはじめとした一部のシール製品は代替が困難として2009年まで継続的に使用することが認められている.これら継続して使用が認められているシール製品の代替化において重要なのは,高温におけるシール製品の特性値の解明である.近年,さまざまな非石綿ガスケットが製造されているが,高温下における非石綿ガスケットの特性値はあまり解明されていない.本研究では,常温におけるガスケットの漏洩試験であるJIS B 2490を高温に拡張すること,及び100℃以上のアプリケーションにおける石綿ジョイントシートガスケットの代替化を目的に,プラントの運転時を想定した非石綿シートガスケットのシール性能の評価を行った.その結果,両ガスケットにおける高温シール性能の違いを明らかにするとともに,高温に拡張したシール性能試験の有効性を示した.100℃以上の高温下における両ガスケットの高温シール性能は“漏れがないとみなせるレベル”であった.
  • 吉田 吏江, 小川 康恭, 松本 由紀, 毛利 一平
    2008 年 1 巻 3 号 p. 205-209
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/12/25
    ジャーナル フリー
    女性の健康状態を研究する際には女性ホルモンの分泌状態を変数として加えることが重要であるといわれている.発がんを考えた場合も女性ホルモンには促進作用があるのでその影響を考慮する必要がある.体内酸化的ストレスマーカー尿中8-hydroxy-2’-deoxyguanosine(8-OH-dG)は発がんリスクの指標としてよく使われているが,先行研究においては女性の性周期を変数として扱った研究はまだない.そこで,尿中8-OH-dG量の増減には女性ホルモン量が関係しているか否かを研究することは,女性において増加しているがんの予防対策にとって重要であるばかりではなく産業現場における女性の発がん要因曝露によるがん罹患を予防するためにも重要な課題と考えられる.本研究では,女性において性周期の時期毎に尿中8-OH-dG量の平均値を算出し,その値に変化があるか否かを検討した.対象は某会社事務職員205人で,定期健康診断日の朝,事前配布の質問票を回収すると共に聞き取りを行い基本情報を得,尿試料を入手した.その後,尿中8-OH-dG,エストロジェン(E2),コチニン,クレアチニンを測定した.解析対象は,女性で,性周期の情報があり,喫煙経験がなく,ホルモン作用のある薬を服用中でない者93人(平均年齢34.4 歳,22~56歳)であった.体内E2濃度が高い黄体期と低い月経期においては尿中E2量も同様の関係を示したが,尿中8-OH-dG量を比べたところ,黄体期では4.1 ± 0.6 μg/g creatinine,月経期では3.0 ± 0.4 μg/g creatinineであり,統計学的には有意でなかったが黄体期で酸化的ストレスレベルが高いことが疑われた.
  • 高橋 弘樹, 大幢 勝利, 高梨 成次
    2008 年 1 巻 3 号 p. 211-218
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/12/25
    ジャーナル フリー
    足場に関しては,労働者の安全を確保するため,労働安全衛生法に関連した法規制がされている.建わくの補剛材に関しては,わく組足場の耐荷強度を保障するため,法令により,その寸法が定められている.しかし,床付き布わくのせん断剛性に関しては,法規制はなく,研究事例もあまりない.わく組足場が座屈する場合,床付き布わくのせん断剛性が,わく組足場の耐荷強度に影響を及ぼすと考えられるが,その性能は明らかになっていない.本研究では,筆者が過去に行った研究を参考にして,わく組足場の耐荷強度に関する評価式を示した.更に,建わくと床付き布わくのせん断剛性をパラメーターとして,わく組足場の座屈解析を行い,示した評価式が妥当であることを確認した.
  • 梅崎 重夫, 清水 尚憲, 濱島 京子, 木下 博文, 平沼 栄浩, 宮崎 浩一, 石坂 清
    2008 年 1 巻 3 号 p. 219-229
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/12/25
    ジャーナル フリー
    統合生産システム(IMS)は,複数の機械が協調制御された自動化システムである.しかし,自動化と言っても,段取り,運転確認,トラブル処理,保守・点検,修理,清掃などの際は,作業者が統合生産システム内に進入して作業を行う必要がある.このときに,人間と機械の協調が不適切であると,両者が誤って接触して人身災害が発生する.したがって,統合生産システムでは,人間と機械の協調の失敗を事前に予測して回避する適切なリスク低減策を必要とする.このため,本論文では,人間と機械の協調を作業者の作業領域と機械の可動部の動作領域間の空間的な協調制御問題として捉えることによって,統合生産システムにおけるリスク低減プロセスの検討を試みた.このプロセスでは,従来の機械で問題となっている(1) 人のライン内への進入だけでなく,(2) 人による機械の誤った再起動操作,(3) 複数の人が同時にライン内に進入する供連れ,(4) ライン内を複数の小領域に分割したときの人の領域間移動なども危険状態として考慮する必要がある.しかし,危険状態が数多く存在すると,安全要求事項の抽出や制御システムの安全関連部の構築には困難を極める.そこで,設計者などが後述する様式1から様式4の総括表を埋めるだけで,比較的簡単にシステム設計に必要な安全上の要求事項を抽出できる方法を提案した.また,リスク管理区分,保護方策区分,危険点近接作業などの新たな概念を導入することによって,統合生産システムにおけるシステマティックなリスク低減プロセスの解明を試みた.この方法にしたがって,あらかじめ安全性が立証されたモジュールを組み合わせてシステムを構築するならば,安全性の立証(認証)が容易となり,安全システム構築時の生産性向上策としても有効と考える.以上の成果は,統合生産システムに関連する規格であるISO11161の見直し作業にも活用できる.
  • 切川 卓也, 永田 勝也, 村岡 元司
    2008 年 1 巻 3 号 p. 231-237
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/12/25
    ジャーナル フリー
    静脈施設における事故は減少傾向を示しておらず,安全な施設設計・操業が求められている.そこで,筆者らは静脈施設における安全・安心システムの構築目指し,新たな安全性評価手法としてSAD(Safety design Analysis with Database)を提案する.本手法はリスクを確率論的な被害額と定義し,既存のリスクアセスメント手法にはない,施設のリスクを定量的に網羅可能であり,かつ事故・トラブル・ヒヤリハット事例データベースと連携させることで評価を簡便にできるという特長を有する.本稿ではSADによる施設の安全性評価の方法を示すとともに,溶融発電設備を持つ個別施設を対象として,SADを用いた施設の安全性評価を実施し,その結果をATM(Accident Tracing Map)で表示するとともに,安全向上策について検討した.
  • 鷹屋 光俊, 芹田 富美雄
    2008 年 1 巻 3 号 p. 239-244
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/12/25
    ジャーナル フリー
    迅速に有害金属濃度を把握する方法として,可搬型のエネルギー分散蛍光X線分析がある.本研究では,蛍光X線分析法をより多くの現場に適用させるために,現場で,簡便な機器,操作で試料を濃縮し,分析感度を向上する方法を研究した.試料の濃縮方法として,熱収縮プラスティックシート上に粉じん粒子を捕集した後,プラスティックシートを熱収縮させることにより,表面面積あたりの粉じん粒子濃度を上昇させる方法を用いることとした.プラスティックシートを家庭用オーブントースターで140℃程度まで加熱し,熱収縮させ,試料の表面面積濃度を濃縮することにより,蛍光X線強度の向上を試みた.その結果,金属を含む溶液を塗布した試料,衝突型粉じん捕集装置を用いた試料,ろ過捕集した粉じん粒子を転写した試料について,いずれも感度の上昇を確認した.また,現場での蛍光X線分析によるスクリーニングと併用して行う実験室での精密分析に,レーザー気化誘導結合プラズマ質量分析(LA-ICP-MS)を用いることの可否についても併せて検討した.
調査報告
  • 大西 明宏
    2008 年 1 巻 3 号 p. 245-249
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/12/25
    ジャーナル フリー
    高齢者の階段からの転落事故の増加しており,とりわけ降段時の事故が多いことから対策が急務となっている.本研究は従来の研究で階段利用時の体幹の前屈角度が階段寸法に依存することが明らかとなっていることを基に,階段利用時にバランスを崩しやすい動作初期を対象に高齢者が異なる速度で降段した時の体幹前屈角度の変化について検討した.体幹前屈角度は男女共に歩行速度が速くなると減少していた.この体幹前屈角度の減少は降段時に不安定姿勢にならないようにするための補償動作であると考えられた.体幹前屈角度の減少は女性で顕著に見受けられたが,女性は急いだ降段において筋力の低さによる影響で身体のコントロールのしにくかったことや危険に感じる度合いが高かったために補償動作として顕著に表れたものと考えられた.また体幹前屈角度は1歩目より2歩目で大きくなったが,動作の加速期であり,2歩目の方が移動距離は約2倍に相当することが影響したと考えられた.以上の結果より,2歩目以降の定常動作に至るまではバランスを崩しやすい局面であり,階段利用時には注意が必要な局面と示唆された.
資料
技術解説
  • 小嶋 純
    2008 年 1 巻 3 号 p. 267-269
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/12/25
    ジャーナル フリー
    アーク溶接時に発生する高濃度の金属粉じんへのばく露は技術的に対策が困難なため,新規じん肺有所見者数に占める溶接作業従事者の比率は依然として高い状況にある.しかし溶接粉じんの有害性に対する認識には未だ不足が見られ,今後,同作業場における粉じん濃度測定の必要性がより高まると予想される.溶接作業者の粉じんばく露の実態を正確に把握するには,場の測定を主体とする従来の作業環境測定法では不十分なため,個人サンプラーを用いたばく露濃度測定を行うべきだが,溶接作業の場合はこの個人サンプラーを溶接用遮光保護面の内側に取付ける必要がある.一般的な個人サンプラーは作業者の襟元などに装着するように造られているため,本報では同サンプラーを遮光保護面の内側に固定する簡易な方法と用具を紹介する.
研究所通信
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