労働安全衛生研究
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2 巻, 2 号
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巻頭言
特別寄稿
原著論文
  • 松本 由紀, 小川 康恭, 吉田 吏江, 大場 謙一
    2009 年 2 巻 2 号 p. 79-83
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    我々は,尿試料への反復凍結解凍負荷が8-hydroxy-2’-deoxyguanosine(8-OH-dG)の安定性へ及ぼす影響を検討した.使用保存試料は102試料(男85名,女17名,年齢22歳~79歳)であった.尿中8-OH-dG濃度の測定はHPLCによる二段階分離法にて測定した.初回凍結解凍尿と2回目凍結解凍尿の比較では(n=82),尿中8-OH-dG濃度はそれぞれ5.4±2.8ng/ml,5.2±2.8ng/mlであり対比較で有意な差は認められなかった.回帰分析では,xを初回凍結解凍尿中8-OH-dG濃度,yを2回目凍結解凍尿中8-OH-dG濃度とすると,y=0.97x-0.04(R2=0.91,p<0.01)であった.次に,初回凍結解凍尿と3回目凍結解凍尿の比較では(n=20),尿中8-OH-dG濃度はそれぞれ5.9±5.0ng/ml,6.2±5.1ng/mlであり,これも対比較で有意な差は認められなかった.回帰分析では,xを初回凍結解凍尿中8-OH-dG濃度,yを3回目凍結解凍尿中8-OH-dG濃度とすると,y=1.0x+0.29(R2=0.96,p<0.01)であった.本研究結果より,尿中8-OH-dG測定においては保存尿試料の反復凍結解凍は3回までであれば値が安定であることが示された.
  • 高梨 成次, 大幢 勝利, 高橋 弘樹
    2009 年 2 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    強風等により,足場が倒壊する災害が,多く発生している.足場は水平方向には不安定な構造物である.その対策として,壁つなぎで足場を建設中の建築物等と連結し,水平安定性を確保している.強風による足場の倒壊災害の多くは,この壁つなぎの破損に起因すると考えられる.そのため筆者らは,すでに壁つなぎ材の強度に着目した実験的研究を実施している.それによれば,既存の壁つなぎ材の強度は十分に高いが,それらの設置時に施工誤差が発生することによって,安全性が低下する可能性が高いことを示した.本論では,それらの壁つなぎ材がALCパネルに固定された場合の引張強度と圧縮強度を実験的に調べた.その結果,アンカーの強度は引張強度,圧縮強度ともに壁つなぎ材の強度に比べて著しく低いことが分かった.そのため,足場の壁つなぎをALCパネルに固定する場合には,壁つなぎ材の強度の他,アンカーの強度を考慮して,壁つなぎの数量を増すなどの配慮が必要であることが分かった.
  • ―運転管理業務のための参照モデル―
    島田 行恭, 北島 禎二, 武田 和宏, 渕野 哲郎, 仲 勇治
    2009 年 2 巻 2 号 p. 91-98
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    化学プラントの安全管理は研究/開発,設計,建設/工事,運転,保全活動を通じたプラントライフサイクルエンジニアリングの考えを基に実現されるべきである.一方,プロセス産業における事故の多くはプラント運転中に発生しており,プラント運転に関する業務の標準化や安全管理活動の体系化が重要な課題とされている.化学プラントを対象としたエンジニアリング業務の体系化としては,設計及び保全に関する業務モデル構築が行われているが,設計と保全の2つの業務を結び付け,労働安全問題の主体となる運転管理業務のモデル構築については取り組まれていない.本論文ではプラント運転管理のために実行すべき業務を体系化した化学プラントの運転管理業務モデルを構築する.運転管理業務としてどのような機能を実行すべきかをモデルとして表現するためにIDEF0形式を用いた.マネジメント機能を陽に組み込むために,PDCA(Plan,Do,Check,Act)サイクルとそれぞれの業務実行を支援するための資源・情報・基準類の提供(Provide Resource)の関係を明示したテンプレートを提案する.このテンプレートを基本として具体的なプラント運転管理に関する業務を分析し,業務の位置付け,情報の流れ等のあるべき姿を運転管理業務のための参照モデルとして提案する.この参照モデルは労働災害防止を目的とした化学プラント安全運転管理業務モデルの基礎となる.
  • 伊藤 和也, Timpong, S., 豊澤 康男
    2009 年 2 巻 2 号 p. 99-106
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    一般的に溝掘削工事は長手方向の2次元断面であるが,曲部やマンホール施工箇所および管路の布設換え工事では,隅角部を有するような溝掘削形状となる場合がある.このような隅角部を持つ溝形状による安全性の定量的な判断については,検討されていないのが現状である.そこで,隅部を有する溝掘削に関して,遠心模型実験および3次元有限要素解析によって安全性を検討した.その結果,隅部の角度が90度までは安定係数が高くなるが,90度よりも大きな場合には安定係数に差が見られないことが分かった.すなわち,隅部が90度以下の隅角部が存在する場合には溝の安全性は通常よりも低減することが示された.
総説
  • 児玉 勉, 山隈 瑞樹
    2009 年 2 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    静電気放電が着火源となったと推定される爆発・火災は粉体投入,集じん,液体流動,噴出などで多く発生している.可燃性物質を取り扱うプロセス・設備は多かれ少なかれ静電気による爆発・火災の発生危険性を有するためリスクアセスメントが必要である.その際に参考となるのが,静電気安全対策・用品に関する規格・標準である.静電気に関する国際標準化はIEC TC 101(静電気)が中心となって取り組んでおり,国内規格については国際規格との整合が推進されている.フレキシブルコンテナについては,静電気的分類のための試験標準がIEC規格となり,これが翻訳されJIS化された.現在は内袋の使用規定を追加するなど,実際の使用状況に対応するIEC規格の改正原案が審議中である.履物については,電子デバイス保護用の要求・試験標準との整合を図りつつ,着火防止用帯電防止靴のJIS 規格の改正原案が作成されている.粉じんの最小着火エネルギー試験方法については,IEC規格に整合しつつ,国内で実績のある試験方法も可能とする団体規格の原案が作成されている.
資料
  • ―ツールを利用した労働災害の中期的傾向の考察―
    木口 昌子
    2009 年 2 巻 2 号 p. 113-120
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    既存の統計データから労働災害発生状況の中期的傾向を業種小分類別に簡便に表示するツールを開発し,これに基づいて第10次労働災害防止計画期間(平成15年度~平成19年度)における労働災害発生状況の評価を試みた.その結果,製造業や建設業といった労働災害防止の重点業種では順調に災害が減少している反面,社会福祉施設において災害発生件数が急増しているほか,自動車製造業における事業場規模別構成の激変など,労働者を取り巻く社会経済情勢を反映したと思われる事象も認められた.また,期間中の災害発生状況を評価する上で,平成17年度に通信業の災害件数が急増したことを考慮すべきであることも明らかになった.さらに,今後の安全衛生対策を検討する上で必要と思われる統計情報についても提言を行った.
  • ―人間機械協調技術の視点からの労働災害防止対策の提案―
    濱島 京子, 梅崎 重夫, 清水 尚憲
    2009 年 2 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    第三次産業で使用される機械設備では,作業者が危険区域に進入して行う段取り,トラブル処理,保守,点検,修理などの作業が存在する.これらの作業に対しては,固定式ガードの適用は困難であることから,危険区域内における人と機械の共存・協調を前提とした新たな安全技術の開発が不可欠である.そこで,第三次産業における死亡労働災害を分析し,人間機械協調技術の視点から根本原因を分析した.その結果,死亡労働災害の防止に有効な要素技術は,広域空間内を自在に移動する複数の人と機械の存在検知技術,人体と多種多様な製品や処理対象物との識別技術,および広域空間内を自在に移動する機械の遠隔制御技術や遠隔非常停止技術であることが明らかとなった.これらの要素技術の開発では,EUで進められたASSISTORやKoSeProなどの研究開発プロジェクトが参考になると考えられる.
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