労働安全衛生研究
Online ISSN : 1883-678X
Print ISSN : 1882-6822
ISSN-L : 1882-6822
3 巻, 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
巻頭言
特別寄稿
原著論文
  • 岡村 隆一
    2010 年 3 巻 2 号 p. 93-101
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    1995年1月,欧州連合として整合,統一された欧州機械指令98/37/ECに端を発した機械安全規格が国際標準機械安全規格となり,WTO/TBT協定(WTO:World Trade Organization:世界貿易機構,TBT:Technical Barriers to Trade:技術的貿易障壁)加盟国は自由流通の阻害要因を取り除く世界共通規格として国家規格に整合し,地球規模での定着が加速されている.国際標準機械安全規格はISO/IEC Guide51の階層構造に沿い,機械系はISO規格,電気系はIEC規格として体系化されている.その中で,現代の機械は殆どが電気を駆動源とした制御で動き,電気安全としての感電/電気火災防止以外に,機械全体の安全監視と異常発生時の危険回避は電気制御でしか対応出来ないのが現実であり,機械安全は電気安全技術の力なしでは達成出来ない事は自明の理である.本稿は先ず機械安全に対する日本の実情を把握した上で,日本の製造業界が国際標準機械安全規格を導入する意義と,機械安全を達成する手段としてのリスクアセスメント手法も交えながら,国際電気標準規格を軸に,特に製造業界が求めている安全な機械を具現化する一つの手法として,国際電気標準規格を導入した標準化の提案と,実施例からその効果を挙げて考察する.
  • ―掘削面の勾配と高さの基準制定に至る歴史的背景―
    伊藤 和也, 豊澤 康男, 前 郁夫, 高橋 章浩, 竹村 次朗, 日下部 治
    2010 年 3 巻 2 号 p. 103-110
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    掘削工事における労働災害の大部分は,土砂崩壊による災害である.その防止対策の重要性は古くから認識されており,1965(昭和40)年の労働安全衛生規則の一部を改正する省令において,掘削面の勾配と高さの基準等が定められ,現在に至るまで引き継がれている.本報では,国内の各機関で用いられる掘削面の勾配と高さに関する規制・設計基準について調査を行い,特に,掘削面の勾配と高さの基準である労働安全衛生規則第356条・357条について,制定された歴史的背景の調査を行い,また理論的背景についても幾つかの数値解析手法により考察を行った.
  • 土屋 政雄, 秋山 剛
    2010 年 3 巻 2 号 p. 111-118
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    目的 職場において精神疾患による休業の増加が問題となっている。それぞれの企業でメンタルヘルスへの対策が整備されつつあるが、こうした対策が従業員の休業、退職、再発、復職などの就労予後とどのように関連しているかについては明らかになっていない。本研究では、企業の健康管理対策の整備状況と就労予後指標の関連について検討した。
    方法 全国から無作為に抽出された10,000社の企業を対象に質問票を郵送し、1,361社から回答があった(回答率13.6%)。このうち、私傷病に関する病気等休暇・休業制度があり、欠損のない171社を解析の対象とした。正社員数、各企業の健康管理対策の実施、就労予後(休業、退職、再発、復職)の人数についてたずね、ロジスティック回帰分析を行ないこれらの関連を検討した。
    結果 すべての就労予後指標において、それぞれ6-12個の企業対策実施との有意な正の関連が見られ、企業規模を調整したあとも3-5個の企業施策が有意な関連として残った。
    考察 メンタルヘルスへの健康管理対策を行なっている企業は、休業、退職、再発の割合も多かったが、対策の実施が事例の発生を高めているとは考えにくい。これらの対策の影響は、該当事例の発生を適正に把握できている段階にとどまっているとの解釈が妥当である。復職の割合が多く見られた対策の実施とも合わせて、本研究により今後企業が行なうべき健康管理対策について示唆が得られた。
総説
  • 井澤 修平, 小川 奈美子, 原谷 隆史
    2010 年 3 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    心理社会的ストレスは職場において問題となっており,その生理学的な評価方法の一つとして唾液中コルチゾールが注目されている.本稿では,日常場面において唾液を複数回採取する手順を取り上げ,それによって評価できるコルチゾールの3つの指標(一日分泌量,傾き,起床時反応)の特徴や心理社会的ストレスとの関連を概説した.3つの指標は,一日の中のコルチゾールの分泌リズムをそれぞれ反映するものであり,また異なった性質のストレスをそれぞれ反映していると予想される.こういった特徴や現場での採用可能な手段を考慮して,唾液中コルチゾールを有効に用いることが職場の心理社会的ストレスの評価にあたって重要と考えられる.
短報
  • ―粉体塗料を試料とした試料調製―
    久保田 久代, 鷹屋 光俊, 芹田 富美雄, 甲田 茂樹
    2010 年 3 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    ナノマテリアルのうち,製造量が多いカーボンブラックと金属酸化物は,ゴムや合成樹脂の添加剤として用いられていることが多く,これらの材料にナノマテリアルが含まれているかどうか不明である場合も多い.製造者からの情報がない場合でも,ゴムや合成樹脂中にナノ材料が含まれているかどうかを判定する方法を開発するために,試料として粉体塗料を用い,粉体を直接および,包埋切片として電子顕微鏡観察を行うための方法を開発した.電子顕微鏡観察の結果,ナノ材料を含む合成樹脂材料では,粉体内部だけではなく,表面に突出してナノマテリアルが観察された.本試料調製法は粉体塗料中に含まれるナノ粒子を確かめることのできる有効な方法であることを確認した.
調査報告
  • ―自律的管理のためのばく露濃度の推定―
    村井 政志, 馬場 左起子
    2010 年 3 巻 2 号 p. 129-136
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    化学実験室のような比較的狭い作業場では室内中央等にリアルタイムモニター及びパッシブサンプラーを設置して有害物をモニタリングすることで,低濃度ばく露作業場と高濃度ばく露作業場のスクリーニングが可能となり,種々の面から高濃度ばく露作業の問題点が確認できる.ただしリアルタイムモニターとしてVOCモニターを利用する上ではパッシブサンプラーによる併行測定を実施して混合ガス補正を行う必要がある.また,ばく露評価に用いる濃度として,作業環境測定基準に基づく測定を実施している場合は第2評価値等を,リアルタイムモニターによる測定を実施している場合は各種平均値を,それぞればく露濃度の推定値として使用することにより,リスクアセスメント等の自律的管理に利用できる可能性がある.
  • 日野 泰道
    2010 年 3 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    我が国では,台風や地震等の自然災害が毎年発生するため,それに伴う災害復旧工事も毎年行われる。災害復旧工事は,平時の工事と比較して,緊急性などの特別な工事条件が存在するため,十分な仮設設備を準備・設置することが困難となる場合がある。ゆえに安全な作業を行うためには,そのような工事環境を想定した安全対策を事前に準備しておく必要がある。ところが,災害復旧工事における労働災害の定量的な分析は,あまりなされていないため,その災害防止対策も,十分に整備されているとはいえないと考えられる。特に大規模災害の復旧工事の経験が乏しい地場中小建設業者では,そのような環境下での安全対策立案のための適切な情報・ノウハウが整っていない場合があり,安全対策の不備による労働災害の発生が懸念される。そこで本研究は,過去に発生した災害復旧工事における災害発生状況について定量的な検討を行い,安全対策の基礎資料を提供することを目的とした。検討の結果,災害復旧工事の災害種別には,建築工事と土木工事で大きな違いがあることがわかった。土木工事では,墜落災害に加えて建設機械に起因する災害や土砂崩壊災害など,典型的な災害は数種類あることが分かった。一方,建築工事では,典型的な災害としては墜落災害が挙げられ,特に死亡災害の約9割を占めている事が分かった。そこで本報では,建設工事において最も発生件数の多い墜落災害を取り上げ,土木工事と建築工事に分けて,その災害発生原因等の特徴について更に整理を行った。
資料
  • ―Vモデルに沿った規格要求事項の明確化―
    木下 博文, 井上 正也, 川崎 健司, 梅崎 重夫, 平沼 栄浩, 川池 襄, 宮崎 浩一
    2010 年 3 巻 2 号 p. 143-153
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    ISO11161は単体機械の安全性に関する標準ではなく,複数の機械を組み合わせた統合生産システムの安全性を定めた標準である.ISO11161は2007年にIMS(統合生産システム)に対する国際規格として発行されたが,様々なインタフェースの規定など統合生産システムの安全性を規定する標準として必要な要件が欠けており,そのままでは現実的に使用できるレベルではなかった.この標準が市場で使用されるようになるためには,ISO11161において欠如した要件を追加するか,この要件をまとめた他の文書を作成して補うことができるアプリケーションガイドのようなものが必要である.このため,社団法人日本機械工業連合会では,この問題を検討するために統合生産システムWGを発足させて検討を進めてきた.本資料は,以上の検討を踏まえ,ソフトウエアの品質管理モデルであるVモデルに沿って,規格要求事項を各設計フェーズ及び評価フェーズに階層分けして明確化する方法を提案する.
feedback
Top