労働安全衛生研究
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7 巻 , 1 号
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特集 社会の動向と労働衛生
特集総説
  • 永井 道人
    2014 年 7 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/13
    ジャーナル フリー
    我が国では,金融商品取引法の法定開示制度のもと,上場公開企業は毎期決算日後3か月以内に投資家の投資判断材料に資する有価証券報告書を作成し開示する.有価証券報告書上絶対的記載事項の対象でない「労働安全衛生」に言及している日本の企業・事業者数は,上場公開企業3,000社超のうち100社超程度で,その割合は約3%に過ぎない.その開示内容を見ると,非財務情報とはいえ企業間比較に資する情報を極力開示したくない理由もあり,労働安全衛生分野の内容は乏しく,開示姿勢も消極的である.一方,労働分野における企業の社会的責任(CSR)の風土・文化・価値観が既に醸成されている米国及び欧州では,それを配慮する機関投資家の存在もあり,事情は一変する.日本企業の労働安全衛生に係る情報開示は,過去の雇用形態及び労働慣習に従い,また労働分野でのCSRの議論も起こることなく,これまで我が国にてクローズアップされて来なかった.今後金融資本市場の国際化と会計基準の国際的な収斂(企業の国際会計基準の導入)に伴い,労働安全衛生に関する事業者の取組みは,財務情報もしくは非財務情報の形で否応なく実態に応じた適切な開示が求められ,企業・事業者の「より労働者保護」の記述観が必要となる.本論文では,日本企業の意外な盲点であり,看過されてきた労働安全衛生分野の開示状況を,欧州企業と比較しながら現状とその背景に触れ,関連する諸課題の紐を解きながら,最後に将来に向け考え得る方策を論じる.
  • 生田 孝
    2014 年 7 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/13
    ジャーナル フリー
    いわゆる「新型うつ病」が近年世間に広まり,産業保健の現場でも「新型うつ病」の社員にどのように対処すべきか,多くの企業で喫緊の問題となっている.しかしながら,精神医学的に見ればいわばこれは「ゴッタ煮」概念であり,そこには,疾患としてのうつ病や軽度の精神病,神経症,ある種のパーソナリティ障害,適応障害,怠業や逃避行動,あるいは健常者における一過性の不適応行動まで含まれており,学問的な信頼性と妥当性を有した疾患概念ではない.しかしながらそれは,いわば現代日本の時代精神を反映している.その意味で「新型うつ病」は,極めて流動的であり,数十年の時間スパンに耐えうるかどうかは疑問である.その内実を知るには,精神疾患の成因論的視点が不可欠であり,少なくとも当該者の対応には,経験を積んだ精神科医による詳細な生活史の把握と成因論的(つまり,心因性・内因性・外因性の)見方,および状況因と性格因的視点が不可欠である.
  • 高橋 正也
    2014 年 7 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/13
    ジャーナル フリー
    労働者の安全と健康を確保するためには,労働の量的および質的側面の改善が必要である.現在でも,長時間労働の削減や職場の心理社会的環境の改善に向けて,多くの努力がなされている.このような職場の労働条件の向上に加えて,職場以外における過ごし方,特に余暇,を適正にすることは,労働安全衛生の水準をさらに高めるのに有益であると期待されている.最も基本的な余暇は終業後から次の勤務までの時間である.欧州連合の労働時間指令に示されているように,この時間間隔の確保はなにより重要であり,そこで行われる休養や睡眠の充実に不可欠である.同時に,労働に費やす時間の減少にもつながる.一日ごとの余暇活動の中でも,量的および質的に充分な睡眠は労働者の安全,疲労回復,健康維持に必須であることが実証されている.一方,週休二日制であれば,週末に二日間にわたる休日が得られる.こうした一週ごとの余暇を適切に過ごせると(例えば,長い朝寝を避ける),疲労回復には一定の効果がある.ただし,週内で蓄積した睡眠不足による心身への負担を完全に解消するのは難しいことに留意する必要がある.さらに,良好な睡眠を長年にわたってとれない状況が続くと,高血圧,心疾患,糖尿病,肥満などの健康障害が起こりやすくなるばかりか,筋骨格系障害や精神障害などの理由で早期に退職せざるをえない確率が2~3倍高まることが示されている.多くの労働者では,一生の中で労働者として過ごす時間はほぼ半分を占める.一生涯の生活の質を高めるためにも,労働時間の中,そして外の要因(余暇と睡眠)が最適化されなければならない.この課題を達成するには,行政,事業所,労働者個人それぞれの層で,余暇の見直しと根拠に基づいた実践が求められる.
原著論文
  • 山田 丸, 鷹屋 光俊, 小倉 勇
    2014 年 7 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/13
    ジャーナル フリー
    ナノマテリアル取り扱い現場でのエアロゾル計測法の検証のため,多分散凝集粒子を連続して発生させる簡易なシステムが望まれている.粉体取り扱い時の粉じん飛散量を評価する手法として,ボルテックスシェーカーにより試験管内のテスト試料を振動撹拌して試料の飛散性を評価する方法(ボルテックスシェーカー法)が提案されているが,本研究では,ボルテックスシェーカー法をナノマテリアルの連続発生システムとして用いた場合に,どのような発生挙動を示すか検討した.試料には,代表的なナノマテリアルである二酸化チタンナノ粒子(P25)を用い,発生濃度および粒径分布とその時間変動を測定した.その結果,ほとんどの粒子が100nm以上の凝集体として発生することが確認された.微小粒子(サブミクロンサイズ)領域に関しては,時間とともに発生濃度が減少しても粒径分布の形状は維持し,撹拌の状態を改善する目的でステンレスビーズを試験管に加えると,初期の濃度と粒径分布の形状が数時間維持されることを確認した.一方で,粗大粒子(ミクロンサイズ)領域では,初期の濃度を保ったまま長時間発生し,ビーズを加えると,粒子数濃度は増加した.以上の発生傾向を明らかにし,大量の粒子を必要としない粒子カウンターの性能試験やナノマテリアル捕集法検討等への応用が可能であることを示した.
  • 山口 さち子, 中井 敏晴
    2014 年 7 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/13
    ジャーナル フリー
    本研究では,磁気共鳴画像装置(MR装置)運用上の安全の認知度を問う調査票を実施し,MR装置の安全な運用の手立てとなる,医療従事者の間でのリスクコミュニケーションの方向性について検討を行った.調査対象は,医療技術安全教育セミナー2011講義参加者246人を対象とし,MRの安全に関する記述に対する認知度を4段階で評価した.その結果,設問20個全てにおいて診療放射線技師(N=51)はその他医療職(N=190)より高スコアを示し,かつ統計的有意差が観察された(p<0.001,t-test).また,その他医療職においては,MR検査を受けた経験があればある程度MR検査に関する安全知識も持ち合わせていた.因子分析の結果3因子が検出され,Factor1:「検査に関する安全の認知度」,Factor2:「磁界に関する安全の認知度」,Factor3:「MR装置に関 する安全の認知度」と命名した.因子ごとの下位尺度得点を,職業別,MR検査を受けた経験の有無別で比較すると,いずれの場合においてもFactor2が最も高得点を示したが(Tukey-kramer,p<0.001),それ以外の因子は診療放射線技師以外では認知度が低かった.また,検査を受けた経験による認知度への影響は限定的に観察された.MR装置運用時のトラブルは時に重大な人的災害を引き起こす可能性があることから,このようなMR装置の利用になじみの薄い医療系職員の安全意識の特性を踏まえたリスクコミュニケーションや安全トレーニングの取り組みが求められる.
技術解説
  • 長谷川 也須子
    2014 年 7 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/13
    ジャーナル フリー
    産業化学物質の呼吸器毒性を評価するために,実験動物を用いた呼吸器毒性試験が実施されている.国際的な毒性試験ガイドラインでは吸入ばく露装置を用いた試験が推奨されているが,装置は非常に高価であり,被験物質を大量に消費するため,装置が整備されていない研究機関では実施が困難である.そのため吸入ばく露試験の代替法として気管内投与が用いられている.この方法では実験動物の気管に被験物質を直接注入するため,吸入ばく露と比較して安価で容易に投与が可能である.しかしながら,気管内投与は試験研究機関ごとに投与手法が異なるため,試験結果の比較が困難となる.本稿では気管内投与の結果に影響を与える因子について述べるとともに,労働衛生研究における気管内投与の有用性について記述する.
研究所通信
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