労働安全衛生研究
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9 巻 , 1 号
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巻頭言
原著論文
  • 市川 紀充, 谷口 和彦
    2016 年 9 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2016/02/29
    公開日: 2016/03/03
    [早期公開] 公開日: 2015/11/19
    ジャーナル フリー
    感電死亡災害は,労働安全衛生法および労働安全衛生規則が1972年に制定されて以降,減少傾向を維持しているが,これまでに年間ゼロ件になったことは一度もなく,国内外ではさらなる防止策の検討が求められている.例えばキュービクル内の狭隘な場所で作業する際,その場所に適した絶縁用防具を使用できないことが原因で,感電災害が発生することもある.このように狭隘な場所でも使用可能な絶縁用防具の設計指針の検討が求められている.本研究では,充電部の防護だけでなく,活線近接作業時に感電の危険性のある充電部を確認しながら作業できる絶縁用防具の設計に指針を与えることを目的として,AC絶縁用防具の基礎的検討を行った.実験研究では,狭隘な場所でも使用できる絶縁用防具の設計に指針を与えるために,二種類の絶縁体からなる絶縁用防具の耐電圧と使用電圧に関する基礎的なデータを得ることができた.本研究で得られた成果は,今後発生する可能性のある感電災害の防止に役立つといえる.
調査報告
  • 廣川 空美, 大脇 多美代, 大平 哲也, 伯井 俊明
    2016 年 9 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2016/02/29
    公開日: 2016/03/03
    [早期公開] 公開日: 2016/01/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,大阪府下の精神科専門医療機関における職場のメンタルヘルスに関する相談や職場復帰支援のサービス提供についての実態を調査し,産業医資格の有無や心理の専門家の存在の有無との関連性について検証する.2013年に大阪府下の医療機関470件を対象に調査票を郵送し,調査協力に同意の得られた215件から記入済み調査票を回収した(回収率45.7%).看護師(63.7%)に次いで,心理の専門家として臨床心理士(46.5%)と精神保健福祉士(34.0%)が存在する医療機関が多いことが示された.産業医資格を有する医師が在籍している医療機関も48.4%存在していることがわかった.職場復帰支援(リワーク支援)に取り組んでいる医療機関は19.5%存在し,現在サービス提供はしていないが将来的に取り組もうと考えている医療機関も17.7%存在していることがわかった.産業医資格を有する医師の在籍により,本人の同意があれば事業場の者との面談や,情報提供依頼への対応が可能,リワーク支援サービス提供の実施率が高くなっていることが示された.心理の専門家の在籍により,カウンセリングや女性のメンタルヘルス相談,リワーク支援サービス提供及び将来的なサービス提供の割合が高くなることが示された.専門医療機関が職場のメンタルヘルスに関するサービスを提供するためには,産業医資格を有する医師の在籍と,心理の専門家の在籍が関連していることが示された.
資料
  • 山隈 瑞樹
    2016 年 9 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 2016/02/29
    公開日: 2016/03/03
    [早期公開] 公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    国内では,労働安全衛生法により,防爆電気機器は電気機械器具防爆構造規格(昭和44年労働省告示第16号)に基づく型式検定に合格したものでなければ使用することはできない.この型式検定は,実際には,労働安全衛生総合研究所が発行する三つの技術指針,すなわち,「防爆指針(ガス蒸気防爆)」,「防爆指針(粉じん防爆)」および「国際整合防爆指針」によっている.そのうち,「国際整合防爆指針」が平成27年8月に改正され,「国際整合防爆指針2015」となった.この改正においては,各防爆構造をそれぞれ「編」に分冊化し,新たに,樹脂充塡防爆構造“m”,非点火防爆構造“n”,容器による粉じん防爆構造“t”,および特殊防爆構造“s”を追加したこと,粉じん防爆構造を型式検定の対象としたこと,機器保護レベル(EPL)を採用したことなど多くの修正および追加がなされており,製造者および使用者の双方に抜本的な変革を求めるものとなっている.
  • 大幢 勝利
    2016 年 9 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2016/02/29
    公開日: 2016/03/03
    [早期公開] 公開日: 2016/01/29
    ジャーナル フリー
    建設業における労働災害は,墜落によるものが最も多く発生しており死亡災害の約4割を占めている.その中でも,足場からの墜落災害が最も多く発生しており,労働安全衛生規則やガイドライン等により,従来からその対策は重点的に実施されている.本報では,最近の足場からの墜落災害防止対策について述べるとともに,平成27年7月に施行された改正労働安全衛生規則の概要について,労働安全衛生総合研究所が厚生労働省の検討会に協力して実施したアンケート調査結果等を交え解説する.
  • 茅嶋 康太郎
    2016 年 9 巻 1 号 p. 27-29
    発行日: 2016/02/29
    公開日: 2016/03/03
    [早期公開] 公開日: 2016/01/22
    ジャーナル フリー
    平成27年12月1日に,新たに「ストレスチェック制度」が施行される.メンタルヘルス対策の一次予防に資することを主な目的として,労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査を実施すること等を事業者の義務とする制度である.メンタルヘルス対策に取り組んでいる企業の割合は年々増加し,すでにストレスチェックを実施している企業もあり,導入後の普及と効果については期待が持てるが,現在十分なメンタルヘルス対策を行えていない企業にとっては不安や問題点も多いと想像される.そこで,これまで行われてきたメンタルヘルス対策とどう違うのか,これからどのようにこの制度を運用していけばいいのかという視点で,筆者が嘱託産業医を担当していた事業所で,これまでに「職業性ストレス簡易調査票」によるストレスチェックを実施したことのある事業所を事例として提示して解説する.A市役所では,人事課と産業医が連携して,メンタル不調事例への対応を中心にメンタルヘルス対策を実行してきた.復職後のフォロー(三次予防),早期発見・対応(二次予防)を行うことにより病休者は徐々に減り,事例を積み重ねることにより人事や職制の対応能力が向上し,また人事異動後の職場不適応や人間関係のミスマッチを解消することにより,職場環境の改善にもつながった.B社では,2年に1回ストレスチェックを実施しており,高ストレス者を抽出し面談を実施している.過去に面談によりメンタル不調者の早期発見ができて,事後措置を行った結果,発病を未然に防ぐことができた.制度導入後は高ストレス職場の職場環境改善活動も必要であると思われるが,この事業場へは外部サービスとして産業医と心理職をセットで派遣しており,心理職の活用も期待できる.ストレスチェック実施後の職場環境改善活動については,いきなりストレスチェックから職場環境改善活動へは敷居が高いので,事例発生による場当たり的対応から,早期発見,未然に防ぐ根本的な職場改善へ進化していくほうが自然であろう.したがって,ストレスチェック制度導入をきっかけに,労働者の健康管理,衛生管理活動を行っていく土壌を醸成していく姿勢が肝要である.
  • 小野 真理子
    2016 年 9 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2016/02/29
    公開日: 2016/03/03
    [早期公開] 公開日: 2016/02/03
    ジャーナル フリー
    平成28年6月から,一部の化学物質についてリスクアセスメントが義務化される.これまでは,規制のある物質について作業環境評価(測定)を行って作業場の管理を進めていたが,規制対象外の化学物質のリスクアセスメントについては,企業の自主性に委ねられた部分が大きかった.今回の法改正の後は,化学物質を扱う主体となる人達が,有害性・危険性,それに対応する管理方法に関する情報を共有し,責任を持って化学物質に向き合うことが求められる.リスクアセスメントは必ずしも,現場の濃度測定を実施しなくても可能な部分もあるが,当研究所の環境計測管理研究グループではばく露測定の技術開発・応用を中心に研究を行っていることから,最近の実例としてナノマテリアルのリスクアセスメントを紹介し,リスクアセスメントについて考える.
技術解説
  • 大谷 勝己, 三浦 伸彦
    2016 年 9 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2016/02/29
    公開日: 2016/03/03
    [早期公開] 公開日: 2016/01/19
    ジャーナル フリー
    重金属による生殖障害事例はローマ帝国の時代から知られたことであった.近年では,1960–70年代にイスラエルや米国で発生した薫蒸剤のジブロモクロロプロパンによる生殖障害事例の集団発生は,当時の労働安全衛生分野における生殖毒性試験の重要性を喚起した.さらに,1995年に,主に半導体の洗浄剤として用いられていた2-ブロモプロパンの職業的ばく露による極東アジアで起きた生殖障害事例は,当時発生した内分泌撹乱化学物質の問題と相まって,労働安全衛生分野のみならず,毒性学的にも雌性ばかりではなく雄性生殖毒性試験の重要性を再認識させた.筆頭者は,科学技術庁(現文部科学省)振興調整費(H10–12年度),生活・社会基盤研究のうちの生活者ニーズ対応研究『内分泌攪乱物質による生殖への影響とその作用機構に関する研究』の一環として「雄性生殖毒性評価のための効率的な精子毒性試験の開発」を担当したことがきっかけとなって,労働安全衛生分野における精子の分析法の活用に取り組むことになった.そして,従来型の精子分析法(精子数,精子運動能,頭部を中心とした精子形態解析)は機械が高額であったり簡便でなかったりする点で普及性の乏しい面があったり,化学物質の特性に応じた分析法には必ずしもなっていなかったことがわかった.そこで,新しい手法・簡便法の開発や,新しい指標の導入開発,変法的用法などを駆使して解析することになった.その過程を技術面から時代をおって解説する.
研究紹介
  • 上野 哲
    2016 年 9 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2016/02/29
    公開日: 2016/03/03
    [早期公開] 公開日: 2016/01/14
    ジャーナル フリー
    衣服を構成する生地の物理的性質だけでは,着衣の温熱特性を予測することは不可能であるため,温熱特性の計測には人と同じ形状をしたサーマルマネキンが使われる.現在,環境評価やモデル計算との関連等の広い分野でサーマルマネキンは応用されている.本研究紹介では,労働安全衛生総合研究所の清瀬地区にあるサーマルマネキンを使った2つの研究成果を紹介する.一つは,防火服の暑熱ストレス評価のためにサーマルマネキンを使って行った顕熱抵抗測定した研究である.歩行により顕熱抵抗は減少し,サイズ・材質によって減少の割合は異なった.次は,同サーマルマネキンを使って,スウェットスーツ上の水分蒸発部分における表面温度を正確に測定することで潜熱抵抗測定の高精度化を行い,測定技術を向上させた研究である.マネキンの埋め込み温度センサーで測定した表面温度を使用すると潜熱抵抗が過大評価されることがわかった.
2016年投稿論文索引
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