労働安全衛生研究
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9 巻 , 2 号
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巻頭言
調査報告
  • 野蝼 直人, 鈴木 輝夫, 崔 光石, 山隈 瑞樹
    2016 年 9 巻 2 号 p. 55-60
    発行日: 2016/10/21
    公開日: 2016/11/07
    [早期公開] 公開日: 2016/07/19
    ジャーナル フリー

    本研究では,振動型電界センサによる空気輸送粉体の帯電量計測の有効性について調べた.実験は,実規模の粉体空気輸送装置のサイロ内の輸送配管の側壁に振動型静電界センサを,この配管出口下方には粉体捕集網付きファラデーケージを取り付けて行った.粉体の流量は0.4 kg/s,粉体の速度は10.6 m/sの条件下で,輸送粉体が配管側壁に形成する電界強度および電荷量の同時測定を行い,その相関関係について調べた.この時,輸送粉体の帯電量は,イオナイザの印加電圧を変えて調整した.その結果,振動型静電界センサで測定された輸送粉体が配管側壁に形成する電界強度は,輸送粉体の電荷量と比例関係にあることがわかった.また,振動型静電界センサで実測した輸送粉体が配管側壁に形成する電界強度と,ファラデーケージで実測した電荷量から算出した電界強度は同程度であり,振動型静電界センサを用いた輸送粉体の帯電量計測の有効性が確認できた.

  • 濱島 京子
    2016 年 9 巻 2 号 p. 61-72
    発行日: 2016/10/21
    公開日: 2016/11/07
    [早期公開] 公開日: 2016/07/19
    ジャーナル フリー

    労働安全分野において望ましい安全を達成するために,欧州型機械安全制度の導入を望む声がある.労働安全は,リスク全体を俯瞰したうえで,リスクの回避,低減,移転,保有などのリスク対応にて,リスクを管理することを基本とするシステムであり,機械安全は,リスクを個別に低減することを基本とするシステムである.そこで,リスクマネジメントの観点より,機械安全制度を労働安全におけるリスク低減策と位置づけることで,制度を運用する方法を提案する.このための理論的枠組みに,リスクマネジメント原則ISO 31000:2009を使用する.このマネジメント内において,現場の労働災害防止対策の妥当性を確認する活動が必要となることを示す.なお,このマネジメントの目的は,自主的な安全衛生管理活動を支援する社会環境を整えることであり,事業場で実施されるリスク対応のための手段を,社会制度等で整備することである.ここでは,制度や施策の不確かさをリスクとして扱うことが求められるが,この考え方は従来の労働安全でのリスクの捉え方とは異なる.そこで,事業場を取り巻く社会環境の不確かさを扱う分野をマクロ労働安全とし,従来の,事業場単位で実施される自主的な安全衛生管理活動での不確かさを扱う分野をミクロ労働安全として,区別することを提案する.

  • 湯川 尚一郎, 藤本 知美, 湯川 元美, 浅川 冨美雪, 嶋田 照雅, 久保 喜平
    2016 年 9 巻 2 号 p. 73-78
    発行日: 2016/10/21
    公開日: 2016/11/07
    [早期公開] 公開日: 2016/08/05
    ジャーナル フリー

    目的:動物看護師を対象とする,小動物診療施設内での放射線防護と放射線教育についての報告はなされていない.よって現職の動物看護師を対象に放射線に関する基礎的な知識・理解,放射線防護を正しく理解し実施できているかについて調査を実施した.

    対象と方法:各種動物看護師向けセミナー会場において,本研究の趣旨に協力の意思を示した現職の動物看護師255名を対象とした.最終的に230名を解析対象とした(有効回答率:90.9%).

    結果:「X線撮影補助時に被曝の影響に不安を感じるか」に対し,「不安を感じる」と回答した者は45%であった.「放射線と放射能の違い」「放射線の種類」という放射線の基礎的な知識についての質問に半数以上が「理解していない」「知らない」と回答した.「個人線量計を毎回着用している」と回答した者は半数に満たず,「個人線量計で自分の被曝量を把握している」と回答した者は30%未満であった.

    考察:動物看護師を対象に行われた今回の調査で,放射線の知識・理解不足等が認められた.また放射線防護に関する管理体制については早急な対策が必要である.今後,動物看護師に対してさらに詳細な調査を行い,対策を検討し,小動物診療施設における産業保健活動のより一層の向上を目指す必要がある.

  • 齋藤 剛, 濱島 京子, 芳司 俊郎, 木村 哲也, 清水 尚憲
    2016 年 9 巻 2 号 p. 79-89
    発行日: 2016/10/21
    公開日: 2016/11/07
    [早期公開] 公開日: 2016/07/19
    ジャーナル フリー

    機械災害防止に関わる行政施策でリスクアセスメントの普及が強く推進されているが,リスクを評価・判断するうえで公に受け入れられ統一された基準はまだ確立されていない.このため,リスクアセスメントの結果導かれる対策は,リスクアセスメントを実施する者の主観に依存し,その妥当性については必ずしも担保されない.本研究では,この問題を考察し,一事業場内の自主的労働安全衛生活動の範囲で回避するには限界があり,よって,最新の機械安全国際規格や他事業場等での成功事例に精通した第三者が機械のリスク低減状態を個別具体的に確認する仕組みが必要であることを示し,これを「妥当性確認」と定義した.そして,リスクアセスメントに基づく機械安全を日本に先行して推進してきた欧州4ヵ国を対象に調査を行い,リスクアセスメント結果の妥当性をいかに担保してきたかについて各国の実態を日本国内での場合と比較した.その結果,現在の国内の社会制度の枠組みで妥当性確認に相当する活動を実施するとすれば,労働基準監督機関が行う監督指導業務での実施が考えられることを示し,そのうえで,①機械安全に関わる法規制と機械安全国際規格との関係を明確にし,両者が強く結びつく方向へ整備すること,②監督指導業務を通じて知り得た災害の未然防止に成功した好事例について情報を収集し,広く一般へ公表・展開を図ることの2点を特に検討すべき課題として抽出し,提言としてまとめた.

  • 前田 光哉
    2016 年 9 巻 2 号 p. 91-102
    発行日: 2016/10/21
    公開日: 2016/11/07
    [早期公開] 公開日: 2016/08/11
    ジャーナル フリー

    2011年の東電福島第一原発事故の教訓を踏まえ,厚生労働省においては,今後仮に原子力発電所に事故が発生した場合に備え,労働者が緊急作業に従事している間の被曝線量の管理について検討した.検討の基本的な考え方は,①ICRPの正当化原則,②緊急被曝限度の考え方,③原子力災害の危機管理の観点,④ICRPの最適化原則に基づくものであった.

    厚生労働省は,検討結果を基に2015年8月に改正電離則を公布した.改正の内容は,①特例緊急被曝限度の設定,②特例緊急作業従事者の限定,③被曝線量管理の最適化,④特例緊急作業従事者に係る記録等の提出等,⑤緊急作業従事者の線量の測定及びその結果の確認,記録,報告等の5点である.

    また,特例緊急被曝限度の設定に当たっては,数多くの文献レビューの結果に基づき検討したが,同様に低線量被曝の文献レビューを行った食品安全委員会及び低線量被曝のリスク管理に関するワーキンググループの検討結果を紹介するとともに,最近の低線量被曝に係る主要な文献の内容を紹介した.

    今後,放射線作業に従事する労働者の線量管理方策を検討する場合は,高線量の急性被曝だけではなく,低線量の慢性被曝による健康影響を考慮に入れる必要がある.それに備えて,長期的に労働者を追跡した疫学研究を積極的に推進していく必要がある.

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