作業療法
Online ISSN : 2434-4419
Print ISSN : 0289-4920
39 巻, 2 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
巻頭言
  • ─誰にどんなメッセージを届けたいですか?─
    髙橋 香代子
    2020 年 39 巻 2 号 p. 131
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー
    「臨床・教育・研究は,作業療法士としての責務である」と恩師である故 淺井憲義先生に幾度となく諭され,私もこれまで研究活動に従事してきた.読者の中にも「作業療法士たる者,きちんと研究もしなければ」という責務を感じている人も多いだろう.しかし,「どこから始めたら良いのかわからない」という人も多いのではないだろうか.
学術部報告
第53 回日本作業療法学会学会長講演
  • 東 登志夫
    2020 年 39 巻 2 号 p. 136-141
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー
    作業療法士を取り巻く情勢の変化に対応するため,作業療法のエビデンス構築に向けた研究活動の活性化が急務となっている.本稿では,それらの情勢に触れた上で,我が国の作業療法士による研究活動の現状と,日本作業療法士協会が発刊している学術誌に掲載された論文や,作業療法に関係した国際誌の分析結果等をもとに,いくつかの課題を列挙した.そして,それらを改善するための方策として,日本作業療法士協会員各位が現状の作業療法を取り巻く情勢に危機感を持ち,現在の自分の状況からワンステップ上の目標に向けて行動を起こすことを提言した.
研究論文
  • ─新潟県における実態調査から─
    北上 守俊, 本間 雄太, 斎藤 しづか, 諸橋 繭美, 安中 裕紀
    2020 年 39 巻 2 号 p. 142-152
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー
    障害福祉領域でのリハビリテーション(以下,リハ)専門職は,地域包括ケアシステム構築の観点からも支援ニーズが高まっている.本研究では障害福祉領域において施設責任者が考えるリハ専門職の必要性を明らかにする目的でアンケート調査を実施した結果,54.6%が「必要である」と回答し必要な職種は作業療法士が78.9%と最も多くを占めた.事業別では生活介護と生活訓練が就労系サービスに比べ有意に高い結果となった.必要性を感じない理由では「人員配置・報酬の問題」などがあがった.これらの問題を解決するためには,他の専門職へ障害福祉領域におけるリハ専門職の専門性や独自性を伝えていくこと,さらには効果検証も急務の研究課題であると考えられる.
  • 高木 雅之, 其阿弥 成子, ボンジェ ペイター
    2020 年 39 巻 2 号 p. 153-161
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,地域在住中高年者に対する活動日記を用いた集団プログラムを試行し,効果を検討すること,および対象者からプログラム評価を得ることである.地域在住中高年者29名に週1回90分,計4回のセッションを実施し,活動日記を毎日記入することを依頼した.その結果,作業に対する満足度,生きがい感,生活満足度がプログラム開始時に比べ終了時に有意に向上し,効果量は中程度以上であった.プログラムの出席率と満足度は高く,プログラム内容は対象者の参加意欲を引き出すものであることがわかった.本プログラムは,地域在住中高年者が作業の満足感を高め,生きがいを感じられる生活を送ることに貢献することが示唆された.
  • 唐渡 弘起, 徳田 和宏, 竹林 崇, 佐々木 庸
    2020 年 39 巻 2 号 p. 162-169
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー
    当院では脳卒中後の麻痺手に対し,課題指向型アプローチ(TOA)とTransfer packageおよび機能指向型アプローチ(IOA)とTransfer packageのプロトコルがある.今回,これらの差について報告する.対象はTOA+Transfer package群7名とIOA+Transfer package群6名でそれぞれの上肢機能(FMA)および麻痺手の使用行動(MAL/AOU,QOM)について比較検討した.結果,FMAは有意な変化を認めなかったが(p=0.18),MALはTOA群がIOA群に比べ有意な変化を認めた(MAL AOU:p=0.04,MAL QOM:p<0.01).よって,TOAは同じTransfer packageを実施したとしても,より効率的に練習で獲得した機能を生活に転移できる可能性が示された.
  • 〜計量テキスト分析による構造の把握〜
    赤堀 将孝, 亀山 一義, 宍戸 聖弥, 松本 圭太, 谷川 和昭
    2020 年 39 巻 2 号 p. 170-179
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,地域連携を視野に,地域に関わる専門職種が抱く作業療法士の認識を明らかにすることであった.質問紙調査により,作業療法士という職種についての自由記述をKH Coderを用いて分析した.結果,地域包括支援センター職員から見た作業療法士の認識には「人」,「作業」,「生活」の3つがあった.さらに,法の定義を基準にした認識や他のリハビリテーション専門職との違い,認知症を有する人の支援を行う職種,望む生活を支援するといった認識などが階層的な構造を示していた.以上から,地域包括支援センター職員との関わりでは,生活動作だけでなく対象者の「その人らしい」生活を支援する視点が必要となることが改めて確認された.
  • ─混合研究法を用いて─
    古桧山 建吾, 京極 真, 織田 靖史
    2020 年 39 巻 2 号 p. 180-189
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,信念対立を経験したリハビリテーション専門職がマインドフルネストレーニングを実践することでたどる主観的体験の変化と,リハビリテーション専門職の信念対立に対してマインドフルネストレーニングがどのような影響を与えるかを明らかにすることである.対象者は,8週間のマインドフルネストレーニングを実践した.質的研究で対象者の主観的体験の変化,量的研究でマインドフルネストレーニングの効果を検証した.結果,対象者の信念対立の心理的側面は改善するが,信念対立そのものは改善しなかった.以上から,信念対立の問題には,マインドフルネストレーニングと信念対立解明アプローチを併せて対応する必要があると考える.
  • 横井 安芸, 石井 良和
    2020 年 39 巻 2 号 p. 190-201
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー
    本研究では「高齢者の生活期リハビリテーションに携わる作業療法士のコンピテンシー項目(案)」の自己評価尺度を開発する目的で信頼性・妥当性を検討した.調査対象は,生活期リハビリテーションに従事する作業療法士とし,得られた363名の有効回答について,回答の偏りを確認後,探索的因子分析を行った.その結果,本尺度は30項目5因子構造であることが推察された.この予測をもとに共分散構造分析を実施したところ,適合度指標CFI=.921,RMSEA=.055で良好な構成概念妥当性を有していることが確認された.また,信頼性はCronbach’s α=.79〜.95で内的整合性が保たれていることが明らかとなり,本尺度は十分な信頼性・妥当性を有していることが示された.
  • 〜運転再開可否判定の予測に向けた基準値の検討〜
    大熊 諒, 渡邉 修, 帯刀 舞, 岩井 慶士郎, 安保 雅博
    2020 年 39 巻 2 号 p. 202-209
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,自動車運転再開可否判定とドライビングシミュレーター(以下,DS)による結果との関連性を検討することである.経験に基づいた判定だけでなく,より客観的なデータに基づいた評価を実施するために,後方視的にDSと運転再開可否判定の結果から基準値の算出を試みた.対象は,脳損傷後に当院を受診した運転再開希望者50名(運転再開群27名,運転非再開群23名)であった.DSの下位検査項目について群間比較を実施しカットオフ値を検討した.カットオフ値が算出されたのは誤反応合計,発進停止合計,全般合計,判定得点合計であった.3つ以上カットオフ値を上回った症例は,非再開と判定される精度が78%であることが明らかになった.
実践報告
  • 小野 健一, 藤原 大輔, 川上 孝行, 金山 祐里
    2020 年 39 巻 2 号 p. 210-216
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー
    認知症の人とその家族介護者への支援は,両者の在宅生活を維持するために重要である.今回,訪問作業療法場面で,認知症高齢者と家族介護者2組に対し,共作業支援尺度を用いた共作業支援プログラムを実施した.共作業支援尺度から提案された改善したい共作業への作業療法介入を行った結果,認知症高齢者のBehavioral and Psychological Symptoms of Dementia(以下,BPSD)の重症度と,家族介護者のBPSDから生じる介護負担感,共作業継続意志得点の改善が,2組共に見られた.両者の行う共作業への介入により,家族介護者の共作業の遂行能力が改善し,結果として両者にとって,より満足のいく在宅生活につなげられる可能性が示唆された.
  • 野口 佑太, 伊藤 真里奈
    2020 年 39 巻 2 号 p. 217-222
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー
    軽度認知障害を認める透析患者に対して,記憶機能や注意機能などを必要とするワーキングメモリ課題として知られるN-back課題を,透析中に実施した.その結果,3ヵ月間課題を実施することが可能であり,記憶機能や注意機能の向上が得られた.さらに,日常生活場面でもメモを使用せずに買い物が可能になり,頭が働いているような感じがするなどの良い変化を感じることができた.また,認知機能に影響を与える可能性のある血液検査値においては,介入前後で著明な変化が認められていないことからも,今回の介入が有効であったことが示唆された.
  • 堀本 拓究, 徳田 和宏, 安川 嘉一, 竹林 崇
    2020 年 39 巻 2 号 p. 223-230
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー
    脳卒中地域連携パスに付随したCI療法連携表を作成し運用を開始した.急性期から回復期までCI療法を継続し関わった事例について報告する.事例は70歳代女性,左被殻出血を発症し入院翌日リハビリテーション開始となった.開始時FMA 4点,FIM(運動/認知)13点/16点,21病日CI療法を導入し,詳細な内容をCI療法連携表に記載して転院となった.回復期ではCI療法連携表の内容を参考に介入し,71病日よりCI療法を実施した.結果,FMA 62点,MAL(AOU/QOM)4.7点/4.7点,FIM(運動/認知)83点/35点まで改善した.CI療法連携表による情報共有から共通概念のもと介入することは,機能回復やADLが獲得できる可能性をもった取り組みと考える.
  • 林 良太, 黒田 健治, 田中 宏明, 稲富 宏之
    2020 年 39 巻 2 号 p. 231-238
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー
    本報告の目的は,自傷行為を繰り返すうつ病患者に対して,多職種協働の中でストレス対処行動獲得のために実施された作業療法の効果を検討することである.症例はうつ病患者で,自傷行為がストレス対処行動として用いられていると考えた.多職種協働の介入目標を「自傷行為の減少」として,作業療法では,新しいストレス対処行動の獲得,ストレス要因の改善,ストレス要因に対する症例のとらえ方に介入した.その結果,自傷行為は減少し,新しいストレス対処行動の獲得を認めた.多職種協働の中で,ストレス対処行動の形成化,ストレス要因の改善,認知的柔軟性を獲得し,日常的に実践可能となるような介入により自傷行為の減少に繋がる可能性が示唆された.
  • ─25の事例報告─
    村仲 隼一郎, 島田 浩輝, 植田 友貴, 水野 健, 大石 實
    2020 年 39 巻 2 号 p. 239-247
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー
    本研究は,高齢者の摂食・嚥下障害事例報告の作業療法実践を分析し,今後の作業療法のあり方について考察するとともに,当該分野における作業療法の専門性確立の一助とすることを目的とした.文献検索の結果,25件が分析対象となりアブストラクトテーブルを作成した.また,介入内容は出現頻度順で示しICFで分類した.その結果,心身機能・構造では17種類,活動と参加では8種類,環境因子は5種類の介入内容に分類された.一方で,個人因子に対しての明らかな作業療法実践はなかった.したがって,今後の摂食・嚥下領域における作業療法のあり方は,心身機能・構造に偏重しすぎず,個人因子に十分に配慮した作業療法実践の必要性が示唆された.
  • 村上 元, 森元 隆文, 三浦 由佳, 池田 望
    2020 年 39 巻 2 号 p. 248-254
    発行日: 2020/04/15
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー
    今回,地方都市において,“誰でも参加できるSST”を当事者と協働で実施する経験を得た.経過の中で,医療・福祉の枠外で立場に関係なく誰でも参加できるという場の構造の不安定さと,それ故に起こったトラブルやその前兆への対処など様々な課題はあったものの,その場に継続的に,かつ主体的に参加して新しい仲間づくりを行う者も多く存在した.このことから,医療・福祉の枠を超えて作業療法士が地域において実践を試みることで,当事者・家族を含む地域住民の健康やつながりの構築に寄与する可能性が示唆された.一方で,その実践には,運営スタッフとプログラムが開催される地域の支援者とのつながり,当事者との協働が必要と考えられた.
feedback
Top