認知症患者および軽度認知機能障害患者を対象としたリハビリテーションにおける目標設定に関する既存の知見を,スコーピングレビューを使用して分析した.PubMed,MEDLINE,ProQuest,CINAHL,Web of Science,Scopusから得られた33編の適格論文を精読した結果,意思決定支援ツールや介入パッケージ・理論を適応させる研究や,介護者の関与を促進させる研究が抽出された.しかし,重度認知症患者を対象とした報告は限定的であり,今後は重度認知症患者に対する目標設定のさらなる検証や,認知症特有の意思決定支援ツールの開発の必要性が示唆された.
【目的】終末期がん患者に対する作業療法士の実践自己評価尺度(Self-Rating Scale of Occupational Therapists for Terminal Cancer patients;以下,SROT-TC)の基準関連妥当性を検討すること.【方法】終末期がん患者に関わる作業療法士を対象とし,郵送法にてSROT-TCと対象者の作業療法実施状況と作業機能状況について回答を求めた.【結果】有効回答数は106通であり,SROT-TCと作業療法実施状況に中等度以上の有意な相関を認めた(r=0.417~0.523).【結論】SROT-TCは一定以上の基準関連妥当性がある.
今回,上位頚髄後索に多発性硬化症を再発し,利き手である右上肢の表在および深部感覚が脱失した症例を経験した.症例の感覚障害は免疫吸着療法で改善したが,治療経過において静的2点識別覚や立体覚の障害を認め,手指の巧緻動作が拙劣となるUseless hand syndromeを呈していた.作業療法では,手の機能を細分化した能動的な感覚再学習と,実生活に汎化を促す介入を実施した.治療効果に合わせて,感覚障害に対するアプローチを行うことで,免疫吸着療法開始3週間で,スムーズに実用的な右上肢機能を再獲得することができたと考えられた.