作業療法
Online ISSN : 2434-4419
Print ISSN : 0289-4920
43 巻, 6 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
巻頭言
  • ─失敗は成功のもと─
    中島 そのみ
    2024 年 43 巻 6 号 p. 725
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル フリー

    作業療法士1年目から,同期数名とアドバイザーとしてご協力いただいた大学の先生とで始めた月1回程度の事例検討会が30数年継続している.近年はコロナ感染症の対応ためオンラインで開催していることもあり遠方からの参加者も増え30名弱での開催となっている.若いセラピストは事例発表の経験の場,指導的な立場にある方は後輩指導の経験の場,グループワークでは年代を越えて意見を出し合う場など,それぞれの立場にあった学習機会となっている.しかし,当初から変わらないことは自ら積極的に発表を申し出る人が少ないことである.これは「事例をまとめ発表すること」に否定的なイメージを持っている方が多いためと思われる.

原著論文
  • 桑野 友美, 山田 翔太, 横山 一樹, 沢田 実保, 稲田 充
    2024 年 43 巻 6 号 p. 727-733
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は, 頸椎症性脊髄症(以下, CSM)患者におけるPurdue Pegboard Test(以下, PPT)を用いた巧緻機能検査の有用性を検討することである. 方法は, CSM患者41例の簡易上肢機能検査, PPT, 10秒テスト, 握力, JOAスコアを評価し, PPTとの関係性を後ろ向きに調査した. また, PPTのカットオフ値を検討した. PPTは各検査と高い相関関係を認め, カットオフ値は25.5(個), AUC=0.77, 感度=0.96, 特異度=0.56であった. PPTは短時間で行えるCSMの有用な検査と考えられカットオフ値は偽陽性率を考慮した上で巧緻障害のスクリーニングとして活用できることが示唆された.

  • 小島 弘行, 小林 幸治
    2024 年 43 巻 6 号 p. 734-745
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル フリー

    介護老人保健施設でボランティア活動を行ってきた10名の後期高齢者の活動継続プロセスを質的に明らかにすることを目的に, 面接データを修正版グラウンテッド・セオリー・アプローチに準拠し分析した. その結果, 38概念, 14サブカテゴリー, 5カテゴリーが生成された. 活動継続プロセスは, 【活動開始の経緯】により活動を開始し, 【ボランティア役割により高まる自尊感情】と【活動への参加による生活の充実化】の相互作用, およびボランティア個人と組織でその時々にみせる【経時的変化に対応した活動継続方略の選択】を用いて継続するための対応を重ね【長期的活動が可能になる環境】に支えられながら活動を継続するプロセスと表された.

  • ─作業療法士の食事支援による行為分析から─
    濱本 尊博, 藤本 幹
    2024 年 43 巻 6 号 p. 746-754
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル フリー

    本研究は, 認知症高齢者の食事行為の自立を促す作業療法士(以下, OT)のプロセスを明らかにすることを目的に, 自立した食事行為に至った経験のあるOTを対象に面接を行い, 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用い, アルツハイマー型認知症に限定し分析した. その結果, OTは認知症高齢者に対して【その方に合った食事しやすい環境を作る】ことや【気持ちの安定を図る】ようにしていた. この両者の安定が図られたうえで【使える能力を最大限に活かす】取り組みをしていた. 認知症高齢者自身を中心とし, その方ができることを尊重しながら, その方に合わせた関わりをすることで自立した食事行為に繋がる要因となることが示唆された.

  • 片岡 紗弓, 岩田 美幸, 寺岡 睦, 小林 隆司, 京極 真
    2024 年 43 巻 6 号 p. 755-763
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル フリー

    自閉スペクトラム症児(以下, 児童)が学校生活にて体験した主観的な困り感を作業機能障害の観点から検討することを目的に, 構造構成的質的研究法とSteps for Coding and Theorizationを用いて児童4名を分析した. その結果, 〈学校規定による環境や行動制限〉と〈社会情勢による経験の剥奪〉の作業剥奪, 〈作業活動時と時間感覚のバランス〉と〈作業とその意味のバランス〉の作業不均衡, 〈他者と自己の経験比較による無力感〉と〈集団内での疎外感〉の作業疎外, 〈交流する他者に認められない価値〉と〈マイナスな経験による自罰意識〉の作業周縁化が生成された. 学校全体との協働にて児童の作業遂行を支援することが, 作業療法士の役割として重要であると考えられた.

  • 小手川 耕平, 大塚 開成, 河口 万紀子
    2024 年 43 巻 6 号 p. 764-772
    発行日: 2024/12/15
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル フリー

    本研究は, 作業療法学生の臨床実習における高次脳機能障害の理解度と実践能力の自己評価の変化を把握するため, 実習前後で同一の学生にアンケート調査を実施した. その結果, 多くの学生は臨床で対応頻度が高いとされる症状を有する対象者を実習で経験したと答えた. また, 学生は実習を経験することで, 高次脳機能障害の説明や対処における全般的な自己評価に変化がみられた. 特に, 実習で症状への対応を経験したと答えた学生は, 経験がないと答えた学生と比較して, 有意に理解度と実践能力の自己評価が高い傾向がみられた. したがって, 臨床実習は学生の高次脳機能障害の各症状に対する実践能力の向上に直接的につながっていることが示唆された.

実践報告
第43巻総目次
第43巻著者別索引(五十音順)
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