作業療法
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巻頭言
  • 白濱 勲二
    2024 年 43 巻 5 号 p. 605
    発行日: 2024/10/15
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル フリー

    医療・社会保障分野だけでなく,労働力人口の減少や教育現場などに大きな影響が予測される2040年まで,あと16年しかない.中央教育審議会が2018年に発表した「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」では,2040年に18歳人口が88万人まで減少するとしていたが,2023年の発表では82万人になると予測を修正しており,少子化のスピードが加速している.一方,高等教育機関への進学率は上昇を続け,2023年では84.0%(大学57.7%,専門学校21.9%,短大3.4%,高専4年次1.0%)となっており,多くの高校生が高等教育機関への進学を希望している.

原著論文
  • ―作業療法士の語りからみる作業の用いられ方の意義解明―
    丸岡 ちひろ, 池田 公平, 笹田 哲
    2024 年 43 巻 5 号 p. 607-613
    発行日: 2024/10/15
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル フリー

    作業療法士が急性期脳血管障害者に対してどのように作業を用いているのか作業療法士の語りから明らかにすることを目的に質的記述的方法を用いて研究を行った.結果,【患者を全人的存在として認識する】【患者が作業療法プログラムや介助を受けやすくなる】【作業療法士が患者に変化を起こす】【患者の未来像を描く】の4つのカテゴリが明らかになった.急性期の作業療法士は,疾病治療中心の環境の中で見えにくくなっている患者の視点を持ち,患者を全人的存在として捉えていた.また,具体的な作業を経験することで作業療法士や患者に今後の見通しを与える形で用いられていた.

  • ―BERTopicによる分析―
    鈴木 哲理, 鈴木 久義
    2024 年 43 巻 5 号 p. 614-621
    発行日: 2024/10/15
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,学術誌『作業療法』の投稿論文に対し,自然言語処理を適用し,現代の作業療法学研究のトピックを量的に検討することである.対象は38巻から42巻2号までの学術誌『作業療法』に掲載された原著論文の論文要旨とした.論文要旨に対し,テキストのトピックを抽出できるBERTopicにより,研究トピックとその時系列変化を抽出した.結果から質的研究,尺度開発,脳卒中患者の退院後の日常生活動作の能力,修正CI療法の効果,地域高齢者の健康と作業参加の5つのトピックが抽出された.質的研究と尺度開発の2つが現代に特有なトピックであり,その他3つに関しては過去から共通する研究トピックであることが示唆された.

  • ―質的研究―
    今岡 泰憲, 丸山 祥, 片岡 みさき, 山本 大貴, 畑地 治
    2024 年 43 巻 5 号 p. 622-629
    発行日: 2024/10/15
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪で入院した患者が呼吸の状態に配慮した作業遂行の習得に関してどのような経験をしているかを明らかにすることである.研究参加者は,COPDの急性増悪で入院した11名である.方法は,再帰的テーマティック分析による質的研究とした.結果,COPD患者は【損なわれていく健康状態と喪失体験】や【病態によって生じる感情・思考】から【呼吸の状態に配慮した作業遂行の価値】を見出し,【自身の試行錯誤に基づいた問題解決行動】を実践していた.また,【医療従事者による学習の支援に関する経験】【学習機会へのアクセスの困難さ】に関しても語られた.

  • ―アンケートによる予備的調査研究―
    那須 識徳, 石橋 裕, 生田 純一, 小林 隆司
    2024 年 43 巻 5 号 p. 630-637
    発行日: 2024/10/15
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,後天性脳損傷後の運転中断に至る意思決定要因の違いが作業参加に与える影響について,アンケート調査による予備的研究を実施した.対象は,後天性脳損傷者26名とし,運転中断を自分の意思で決定した者(自己決定群)と医療者や家族から決定させられた者(第三者決定群)に分け,両群の作業参加状況を比較した.その結果,第三者決定群では「やりたいこと」と「やる必要があること」に有意な得点の低下を認め,運転ができないことで日常生活の多くの活動で不便さを感じる傾向が確認された.後天性脳損傷後に自動車運転を中断した場合,意思決定要因の違いにより,その後の作業参加状況に及ぼす影響は異なる可能性が示唆された.

  • ~多施設調査における利用者本人の主疾患別の比較~
    川田 智尋, 中村 泰輔, 湯口 翔太, 佐竹 真次, 佐藤 寿晃
    2024 年 43 巻 5 号 p. 638-644
    発行日: 2024/10/15
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル フリー

    訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)を利用している利用者の主介護者である家族の,介護負担感(J-ZBI_8)に関連する要因を疾患別に検証するため,多施設において調査を実施した.利用者とその同居家族に対して質問紙調査を実施し,結果,家族の介護負担感には訪問リハに対する期待の一致率が有意な負の相関を示した.また,その相関の強さは疾患ごとに異なった.本人と家族の間の訪問リハに期待する内容の異同が,家族が感じる介護負担感を推定する際の手がかりになりうることを示唆する.また,その関連性は疾患別に異なり,本人の主疾患によっては家族の介護負担感に対して相応の配慮が必要と考える.

  • ―予後予測に基づいた生活行為目標を設定するために―
    松本 幸樹, 加藤 拓彦, 澄川 幸志, 田中 真, 牧野 美里, 瀧澤 克己, 髙見 彰淑
    2024 年 43 巻 5 号 p. 645-652
    発行日: 2024/10/15
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル フリー

    【目的】脳梗塞患者における回復期病院退院時認知および運動FIMを急性期から予測できるか検討した.【方法】対象は急性期病院から回復期病院に転院した脳梗塞患者115名とした.方法は回復期病院退院時認知および運動FIMと急性期病院のデータとの関連を重回帰分析で解析した.【結果】認知,運動FIMの各モデルの寄与率は53.9%,59.2%であり,回復期病院退院時の認知,運動FIMの関連因子として,どちらもリハ開始時のNIHSS,年齢および既往の認知症の有無,リハ開始から2週後までのOT実施時間が抽出された.【結論】回復期病院退院時認知および運動FIMは急性期から良好な予測ができる可能性が示唆された.

  • 小枝 周平, 沼本 数馬, 三上 美咲, 佐藤 ちひろ, 斉藤 まなぶ
    2024 年 43 巻 5 号 p. 653-661
    発行日: 2024/10/15
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル フリー

    A市の5歳児発達健診受診者233名を対象に発達障害に関連する各種症状や行動の特徴が人物画の発達にどのように関わっているかを調査した.人物画発達には,JMAPの人物画の採点基準を採用した.調査の結果,JMAPの人物画の判定には,WISC-Ⅳのワーキングメモリー指標,性別,SDQ-Tの向社会的な行動,DCDQの合計得点の順で関連していることが明らかになった.本研究結果より,WISC-ⅣワーキングメモリーのIQが85未満,男児,SDQ-Tの向社会性の得点が男児4点・女児6点未満,DCDQ得点が47点未満である児はJMAPの人物画の判定で赤・黄の判定をとるリスクが高くなることが示唆された.

実践報告
  • 久原 義浩, 有島 善也, 窪 昌和, 福田 秀文, 小倉 雅
    2024 年 43 巻 5 号 p. 662-668
    発行日: 2024/10/15
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル フリー

    長母指伸筋腱再建術後に新型コロナウイルス感染症に罹患したことで入院個別リハビリテーション(以下,リハ)を継続できなくなった症例に対して,代替手段として20日間の遠隔リハおよび看護師とのチームアプローチを実施した.結果,長母指伸筋腱再建術部の再断裂や癒着を防ぎ,母指機能(母指指節関節自動伸展角度24°)を維持できた.最終評価では母指指節関節自動伸展角度20°, Hand20で15項目の日常生活動作の改善が得られた.以上より,長母指伸筋腱再建術後に通常の入院個別リハの代替手段として実施した遠隔リハおよび看護師とのチームアプローチが,母指機能や主観的評価の改善に寄与した可能性が考えられた.

  • 大草 直樹, 久木﨑 航, 木村 遼哉, 大野 勘太
    2024 年 43 巻 5 号 p. 669-678
    発行日: 2024/10/15
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル フリー

    橈骨遠位端骨折後の患側上肢の日常使用を促進するための意思決定支援ツールとしてADOC-DRFを開発した.ADOC-DRFには,生活場面における上肢の使用場面が描かれたイラストが,術後経過週数ごとの運動負荷量に準拠して配置されており,イラストの選択を通して患側上肢の使用場面の検討を行う.本研究では,12名の患者を対象にADOC-DRFを使用した作業を基盤とした実践の有効性について検証した結果,身体機能や患者報告式アウトカムにおいて介入前後で有意な改善が認められた.ADOC-DRFを使用した作業療法士を対象としたアンケート調査においても,臨床有用性について高い満足度が得られた.

  • ―作業と機能に着目し目標の段階付けを行った事例―
    森口 咲紀, 山口 理恵, 平田 篤志, 竹内 健太, 友利 幸之介, 竹林 崇, 島田 真一
    2024 年 43 巻 5 号 p. 679-685
    発行日: 2024/10/15
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル フリー

    近年,リハビリテーションの実践において,本人の意志決定を伴う目標設定が重要視されているが,目標設定から介入に至るまでのプロセスを提示している報告は少ない.今回,我々は書字の獲得を目標としたものの,その介入に躊躇し目標の修正が必要となった脳卒中片麻痺事例を経験した.その事例に対して,①作業の意味的分析,②動作分析,③Goal Attainment Scaling(GAS)を用いて目標の再設定と段階付けを行い,上肢機能の改善と作業の実現を支援した.本報告は,作業療法目標の再設定が必要となった事例に対して行った評価と目標設定の具体的な方法を明らかにして,臨床の一事例としての結果を考察するものである.

  • ―手指機能と日常生活動作の改善に関する一症例報告―
    殿内 優斗, 片岡 裕貴, 掛川 泰朗, 楠田 耕平, 磯野 理
    2024 年 43 巻 5 号 p. 686-693
    発行日: 2024/10/15
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル フリー

    ギランバレー症候群(Guillain-Barré syndrome: GBS)において,手指の関節拘縮が機能回復後のADLに影響を及ぼすことから早期対応が重要となる.今回,両手指屈曲拘縮を呈したGBS患者の1事例に対して,2種類のスプリントを用いた上肢装具療法を実施した.結果,手指のROM拡大を促進させ,手指機能及びADL自立度が向上した.GBSにおいて上肢装具療法が有効である可能性が示唆された.

  • 岩崎 竜弥, 坂本 昌紀, 秋山 武和
    2024 年 43 巻 5 号 p. 694-700
    発行日: 2024/10/15
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル フリー

    急性期脳卒中者の結髪動作と料理の再獲得を目指し,生活行為向上マネジメントと修正CI療法を併用した作業療法を実践した.その結果,結髪動作を再獲得し,上肢機能,日常生活活動(以下,ADL)は臨床的に意義のある最小変化量を超える改善を示した.その後,生活目標と課題を回復期に引継ぎ,料理を再獲得できた.本介入で急性期から望む活動や参加を促進できることが示唆された.意味のある合意目標を支援者で共有し,適切なプログラムを切れ目なく行えたことが主体的な生活へ行動変容を導けた可能性がある.また,急性期作業療法は対象者の望む上肢機能獲得,ADL自立を図り,生活目標と課題を次の支援者に引き継ぐ役割が重要と考える.

  • ―児童思春期精神科病棟における作業療法―
    南 庄一郎
    2024 年 43 巻 5 号 p. 701-707
    発行日: 2024/10/15
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル フリー

    今回,筆者は児童思春期精神科病棟において,学校のストレスなどから自傷行為に及ぶ女子高校生に関わる機会を得た.本介入では,対象者が興味関心を示す作業を基に自己肯定感と自己効力感を醸成し,このうえで自傷行為に及ぶ状況を明らかにした.また,自傷行為防止プランを用いて対象者が自傷行為に及ぶリスクを軽減した結果,高校の復学に繋げることができた.本介入から,作業療法士は具体的な作業を通して対象者の自己肯定感と自己効力感を醸成し,対人交流技能やストレス対処技能など復学に向けて必要な技能を向上し,様々な対処行動を示したプランの作成などを通して自傷行為に至るリスクを軽減することで復学を支援できると考えられた.

  • 吉原 理美, 田中 創
    2024 年 43 巻 5 号 p. 708-712
    発行日: 2024/10/15
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル フリー

    【目的】「高次脳機能障害と自動車運転」と題するガイドブックを作成し,本ガイドブックを用いた教育機会が安全運転相談・臨時適性検査受検率向上に寄与するか明らかにすることを目的とした.【方法】本ガイドブックの利用なく運転評価を受けた脳損傷患者77名,ガイドブックを利用した93名に郵送式アンケートを実施した.【結果】非利用群では運転再開者26人中12人が安全運転相談・臨時適性検査を受検したが,14人は未受検だった.利用群では42人中38人が受検しており,利用有無で受検率に有意な差があった.【結論】ガイドブックを用いた教育機会の提供は,脳損傷者の運転再開に必要な手続きの遵守に寄与することが示唆された.

  • ―自閉スペクトラム症児に対する自分研究の実践―
    倉澤 茂樹, 立山 清美, 田中 善信, 小笠原 牧, 塩津 裕康
    2024 年 43 巻 5 号 p. 713-720
    発行日: 2024/10/15
    公開日: 2024/10/15
    ジャーナル フリー

    高等学校の通級指導を利用する自閉スペクトラム症の生徒に対して,認知行動療法を基とした自分研究の適用を試みた.結果,1年後の子どもの行動チェックリスト(本人用)は規則違反的行動が臨床域から正常域へ,不安/抑うつ,引きこもり/抑うつ,注意の問題が臨床域から境界域に改善した.また,クラスメイトとのトラブルが減り,教員とのパートナーシップが形成された.自分研究は生徒の自己理解を深めるだけでなく,支援者の理解を促すことが想定され,高等学校の通級指導への作業療法介入として有用であることが示唆された.

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