作業療法
Online ISSN : 2434-4419
Print ISSN : 0289-4920
44 巻, 1 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
巻頭言
学術部報告
総説
  • ─スコーピングレビュー─
    木村 優斗, 早﨑 涼太, 久木﨑 航, 髙橋 啓
    2025 年44 巻1 号 p. 6-14
    発行日: 2025/02/15
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル フリー

    【目的】脊椎圧迫骨折事例を対象とした作業療法の実践に関する既存の知見を,スコーピングレビューを用いて分析した.【方法】医中誌Web, CiNii, PubMedによる検索を行い,選定基準によりスクリーニングを行った.【結果】適格論文は13編であり全て事例報告であった.使用されていたアウトカムは身体機能や認知機能,精神機能,ADL, IADL, QOL,目標設定・作業に関する評価,包括的評価の8つの項目に分類された.主な作業療法の実践内容は,事例が望む作業に焦点を当てた介入であった.【結語】今後は報告数の増加や作業に焦点を当てた介入の効果の検証が期待される.

原著論文
  • ─研究知見の知識伝達と実践活用による知識の橋渡しの効果─
    小川 真寛, 白井 はる奈, 西田 征治, 坂本 千晶, 米山 智彦
    2025 年44 巻1 号 p. 15-23
    発行日: 2025/02/15
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル フリー

    【目的】作業療法領域では,研究で創発された新しい知識の橋渡しをする研修会や講習会が多くみられる.しかし,どのような教育することが臨床実践に効果的か調べた研究は少ない.そこで本研究では,活動の質評価法(A-QOA)の講習会とその後の臨床実践の自己評価による教育効果を検証した.【方法】75名の作業療法士を対象に,2日間の講習会の受講とその後の実践でA-QOAの20回以上の経験による教育効果を調べた.【結果】臨床実践能力は,講習会後の実践期間に多くの調査項目で有意な向上が確認された.【考察】実践的学問である作業療法領域では,知識の伝達に留まらず,実践での活用ができる形式の教育が効果的と示唆された.

  • 新屋 徳明, 阿野 菜々美, 田中 翔太, 山内 康太
    2025 年44 巻1 号 p. 24-32
    発行日: 2025/02/15
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル フリー

    橈骨遠位端骨折における疼痛と機能的および心理的要因との関連性は散見されているが,患側上肢の使用状況とこれらの関連性をみた研究は見当たらない.本研究は,橈骨遠位端骨折患者の術後早期における患側上肢の使用状況と機能的および心理的要因との関連性,そして術後2週時点における患者の状態と3ヵ月後の慢性疼痛との関連性を検討した.その結果,PDASはPSEQとHand 20はNRSと中等度の相関関係を認めた.しかし,慢性疼痛の有無における検討では関連性は認められなかった.このことから,橈骨遠位端骨折患者は術後早期より日常生活における患側上肢の使用状況が高いほど,自己効力感が高くなる可能性が示唆された.

  • 岩崎 純平, 會田 玉美, 山田 孝
    2025 年44 巻1 号 p. 33-42
    発行日: 2025/02/15
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル フリー

    【目的】地域在住高齢者に対する作業の価値調査票(以下,QOVE)を開発することである.【方法】先行研究を参考に作業の価値に関する質問項目を作成し,内容妥当性を確認後,地域在住高齢者を対象にQOVEを用いた調査を行った.【結果】189名を対象とした探索的因子分析の結果,5因子15項目が抽出され,モデル適合度指標はCMIN=151.836/DF=80<2, GFI=.907,AGFI=.860,CFI=.953,RMSEA=.069,Cronbach's α係数はα=.79~.89であった.【結論】妥当性と信頼性を確保したQOVEが作成され,地域在住高齢者の作業の価値を調査することが可能になった.

  • ─遂行機能障害の簡易評価尺度に着目して─
    河野 正志, 内田 翔子, 湯淺 琴美, 柴田 健寿, 木曽谷 武
    2025 年44 巻1 号 p. 43-50
    発行日: 2025/02/15
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,Rey複雑図形摸写課題を用いた遂行機能障害の簡易評価尺度における統合失調症患者の特徴を明らかにすることである.統合失調症群と健常群を対象に,本評価尺度の成績における群間比較,さらには他の評価との関連について検討した.結果,統合失調症群の本評価尺度の成績は,健常群に比べ有意に低下し,BACS日本語版のロンドン塔検査や実生活を評価した作業遂行特性評価表の複数の項目との間に有意な中等度の正の相関を認めた.統合失調症患者は遂行機能の低下により本評価尺度の成績低下を認める可能性が考えられた一方で,臨床で本評価尺度を用いる際には,他の評価と組み合わせて遂行機能を捉える必要性が確認された.

  • ─フレイルと日常生活活動の満足感に着目して─
    金山 祐里, 小野 健一, 大岸 太一, 池知 良昭, 遠山 和倫
    2025 年44 巻1 号 p. 51-58
    発行日: 2025/02/15
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,要支援高齢者発生の予測因子を探索的に示すこと,ADL満足感を調査することである.要支援高齢者,健康高齢者に対し,身体的フレイル(改訂J-CHS基準),精神・心理的フレイル(GDS15),社会的フレイル(NCGG-SGS),ADL自立度と満足度(BI, SSADL)を調査した.要支援高齢者発生の予測因子は,年齢,改訂J-CHS基準,NCGG-SGSが抽出され,要支援の有無を判定するカットオフ値は年齢が83.5歳,改訂J-CHS基準とNCGG-SGSが1.5項目であった.健康高齢者に比べ要支援高齢者はADL満足度が低かった.本研究の結果は要支援高齢者発生予防の一助になると考える.

  • 澤田 辰徳, 山田 愛理, 友利 幸之介, 大野 勘太, 長山 洋史
    2025 年44 巻1 号 p. 59-68
    発行日: 2025/02/15
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的はリハビリテーション職種の職務満足度と離職リスクとの関係について明らかにすることである.理学療法士職務満足度尺度(Physiotherapist Job Satisfaction Scale: PJS)を用いて調査した.理学療法士,作業療法士,言語聴覚士1,701名が本研究に参加し,1年後には167名の離職者が出た.職種間でPJS項目に有意差がみられた(p<0.05).また,PJSの「仕事に対する価値観」や「仕事内での挑戦」などの項目で有意な離職リスク比が算出され,各職種で異なる傾向がみられた.本研究は離職リスクには職種特異的な傾向があることを明らかにし,離職防止の一助となることが示唆された.

  • ─4 症例のインタビューによる質的研究─
    末次 亮平, 池田 拓郎, 長谷 麻由, 後藤 純信
    2025 年44 巻1 号 p. 69-77
    発行日: 2025/02/15
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル フリー

    脳損傷後に自動車運転を中止した対象者4名に対して,運転中止後の外出頻度への要因を検討する目的で半構造化面接を行い,Steps for Coding and Theorization(SCAT)を用いて分析した.その結果,外出頻度への影響要因として,「外出の手段と目的」「人との関わりと地域環境」が抽出できた.一方で外出困難な場合には家庭内での役割や楽しみを再構築することにより,新たな生きがいを持って生活していることがわかった.このことから,自動車運転中止後の支援として代替手段の提案や役割や楽しみの再構築に対して個別的な介入を行うことや,外出支援につながる地域づくりへの取り組みも重要であると考えられた.

実践報告
feedback
Top