都市計画論文集
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37 巻
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  • 他のイスラーム地域の都市との比較から
    鶴田 佳子, 陣内 秀信
    2002 年 37 巻 p. 901-906
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    イスラーム地域の都市の中心部にはバーザールと呼ばれる商業空間が広がっている。商業空間には、商業機能だけでなく多様な機能が含まれ、活気あふれる都市の核をなしている。こうした都市の核となる商業空間の構造を分析することによって、イスラーム地域、とりわけトルコの都市の特徴を把握することが本稿の目的である。本論で対象とするトルコの3都市は、いずれも緑豊かな木造文化圏に属す都市であり、城壁の内側に高密、かつコンパクトに形成されたアラブ都市に比べると、建物と建物の間の隙間や前庭、外庭、広場といったオープンスペースが多くとられ、全体としてゆったりとした景観を見せていることが特徴として抽出された。
  • 塚田 伸也, 湯沢 昭
    2002 年 37 巻 p. 907-912
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,前橋市を事例に住民に最も身近な存在である小公園を対象に住民アンケートを実施し,因子分析,重回帰分析,共分散構造分析を適用することにより,小公園の評価構造の知見を得ることを目的としたものである。その結果,小公園に”施設特性”,”環境特性”,”安全特性”といった個性や特徴が存在しており,特に”生長した樹木と開放された空間”,”遊具やトイレのグレードアップ”,”敷地の形状や広さ”の要因が,住民の満足度に影響を与えていることが明らかになった。
  • 保護者の立場に着目して
    清水 正人, 松本 直司
    2002 年 37 巻 p. 913-918
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では水景施設において子供を同伴する保護者の立場に着目し、保護者の居場所、子供と保護者のとの位置関係、水景施設に対する保護者の評価、要求を調査することにより、水景施設の計画、設計条件を明確にすることを目的とする。名古屋市内の水景施設を対象に行なった観察調査、アンケート調査の分析の結果、「保護者の居場所」「保護者と子供の位置」「保護者の施設評価と整備要求」に対して特徴が見られ、水景施設の計画、設計条件として、水景施設で子供を水遊びさせる場合、保護者の座る、話す、見守る等の行為が行なわれる場所の居心地を良くすることの重要さが明らかになった。
  • 都市域における生態的ネットワーク計画の構築のための基礎的研究
    一ノ瀬 友博
    2002 年 37 巻 p. 919-924
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    都市域における生態的ネットワーク計画のための生物生息環境評価手法を確立することを目的として研究を行った。研究対象地域は、兵庫県西宮市南部の都市域とし、対象生物としては鳥類を選択した。対象地域内の都市公園20ヶ所において、1999年12月から2000年2月の越冬期の間に、点センサス法を用いて鳥類の分布調査を行った。鳥類の種組成をTWINSPANを用いて公園緑地を分類し、分類・回帰樹木によって鳥類の分布に影響を及ぼしている環境要因を分析したところ、公園緑地内の植緑被面積、公園の周囲500m以内の植被率、低木層と高木層の植被率が重要な環境要因であることが明らかになった。
  • 小谷 拓也, 十代田 朗, 羽生 冬佳
    2002 年 37 巻 p. 925-930
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、全国有力5紙の社説とリゾート専門誌の記事及びそのタイトルをもとに、総合保養地域整備法(リゾート法)制定以降のリゾートに関する言説の変遷を分析した。得られた知見は以下の通りである。(1)37社説にみる論点は6点に分けられ、総括的には、リゾートの意義や整備の方向性よりもリゾート開発、リゾート法について論じられる傾向が強かったといえる。(2)専門誌426記事にみる論点は10点に分けられ、“これから何をつくっていくか”から“でき上がったものをどう運営していくか”に徐々に論点が推移していったといえる。(3)多くの専門家は問題点を十分認識しそれを指摘しているものの、対症療法的な提案以外は具体的・実践的解決策は少ない。
  • 藤井 美波, 横張 真, 渡辺 貴史
    2002 年 37 巻 p. 931-936
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    江戸の農地は,生産される作物と江戸市中から排出される下肥等の廃棄物を介する物質循環の媒体役として,また多様な生物の生息地として,自然環境を活かした都市形成に寄与していたとされている。しかし,このような評価は定性的な史料によるもので,江戸の農地の空間的実態については定量的には明らかにされていない。本研究では,江戸時代末期の江戸の土地利用に関する図面や文献資料にもとづき,農地の分布実態を定量的かつ即地的に解明した。その結果,農地の分布形態は,農地の種別,存在する地形,集塊の度合いにより4類型に区分できることが分かった。また,各類型の分布特性と農業生産状況及び下肥等の施肥状況との関係について考察した。
  • 小山 環, 十代田 朗, 津々見 崇
    2002 年 37 巻 p. 937-942
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文の目的は都市農村交流活動がどのように類型化され、農村がどのように展開させてきたのかを明らかにすることである。結論としては、1)既存調査から都市農村交流事業を整理し9メニュー・27細項目が得られた。2)都市農村交流は「マーケティング型」「むらおこし型」「子供受入れ型」「ふるさと提供型」の4タイプに類型化される。3)都市農村交流の展開の仕方は「平均増型」「'80増型」「'90増型」「少数型」といった増減タイプによって異なる。4)都市農村交流の展開方法と効果との関連を分析することにより、都市農村交流はある程度の取組み数とバラエティを保ちながら取組みのタイプに応じて展開させていくことが高い効果につながる要因であることがわかった。
  • 渡辺 貴史, 横張 真
    2002 年 37 巻 p. 943-948
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    平成4年(1992)制定の改正生産緑地法の内容に示されるように,近年都市農業の計画的振興が重要視されている.首都圏の一部の地方自治体では,改正生産緑地法が制定される以前から,自治体独自の都市農業振興施策を実施してきた.地域特性に即した施策づくりが求められる今,これら自治体の都市農業振興施策の実施実態を解明することは,都市農業振興施策の確立に向けた重要な研究課題と考えられる.都市農業の振興にとって,都市内農地の周辺に居住する都市住民の農業に対する理解の獲得は重要である.そのためには,都市農業に都市住民を積極的に交えることが必要であり,地方自治体の積極的な介入が求められる.そこで,本研究では,首都圏地方自治体を対象に都市住民を交えた都市農業振興施策の実施実態を解明した.
  • 富山県五箇山相倉集落を事例として
    荒井 崇浩, 十代田 朗
    2002 年 37 巻 p. 949-954
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、農山村としては比較的早くから観光地化してきた五箇山相倉集落を事例として、1)農山村伝統集落としての従来の空間的特徴と空間的変容を把握2)住民、観光客等使用対象者に着目して集落空間の使われ方の変容を分析3)観光地化による弊害、特に屋敷地無断立入を取り上げその実態と住民の意識・対策及びその変化を明らかにすることを目的としている。その結果、相倉の観光的発展過程は1期:観光前期,2期:滞在型観光客受入期,3期:通過型観光客急増期に区分でき、集落空間は伝統的生活システムに基づき構成されていることがわかった。空間使用者に着目し空間の使われ方を4つに分け変容を捉えると、1期は[日常空間][非日常空間]しか存在せず、そこに2期以降[宿泊客空間][観光客空間]が重なり、3期の[観光客空間]は概ね[オモテ空間]で、[ウラ空間]は[日常空間]として利用され続けている場合が多いことがわかった。観光客の屋敷地無断立入は[混雑度]に最も関連しており、2→3期では立入への住民対策増加や意識悪化が認められた。無断立入に対する住民意識は従来から[非日常空間]であった[オモテ空間]に対する許容度が高いが、[日常空間]であった[ウラ空間]では守ろうとする意識が強く働いており、不特定の観光客の流入が生じる集落内の観光動線やアピールする観光資源を選定する場合、伝統的な空間の使い方に配慮した計画の必要性が指摘できた。
  • 小林 史彦, 川上 光彦, 倉根 明徳, 西澤 暢茂
    2002 年 37 巻 p. 955-960
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    金沢市三茶屋街の全居住世帯を対象とする調査票を用いた留置き自記式調査により、居住世帯の町並み、住環境、観光に対する意識の違いを、町並み景観保全施策開始以前・以後来住世帯間で比較し、町並み景観保全施策の社会的影響について考察することが本研究の目的である。明らかになった点は以下のとおりである。1)居住世帯の過半数を戦後来住世帯が占める。2)世帯の主たる就業者の就業地は地区外就業が多い。これは茶屋街にとって新しいライフスタイルである。3)町並み景観保全施策開始後に来住した世帯は、開始前来住世帯よりも町並み景観保全、観光、伝統文化の振興、住環境整備に対して肯定的である。
  • 白川村荻町を事例に
    黒田 乃生, 羽生 冬佳, 下村 彰男
    2002 年 37 巻 p. 961-966
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    今回の調査の結果として、観光客の周遊ルート以外にも、景観のポイントの存在が確認できた。さらに、観光客の認識している地区の姿は住民に比べて合掌造りを大きく据えて花などを入れた景観に特徴が見られるのに対し、住民は茅葺の建物と田、水路と石垣など特徴となる要素の組み合わせもさまざまであり、建物は観光客に比べ小さく捉える傾向にあった。 これらのことから、現在の表層的な観光形態では来訪者に提供されている視点は地区の主役である合掌造りの建物を見物するだけのものに偏りがちであることが確認された。住民の認識からは、茅葺の建物だけではなく、他の要素も含めた総体的なものとして地区の景観を提供する視点が今後必要であることが示唆される。現在観光客にはあまり把握されていない景観ポイントをルートの中に配置すること、そうした「見せるため」の景観ポイントと対象を設定し、「見せるため」のしかけをつくることで今後、現在の周遊型の観光客に地区の一元的ではない視点を、ふれあい型志向の観光客には多様な体験を提供することが可能になると考えられる。
  • 岐阜県の白川郷、中国黄山市の西逓村を例として
    周 永広, 陳 怡平, 川上 洋司, 本多 義明
    2002 年 37 巻 p. 967-972
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    観光開発に関する既存研究は、景観計画・設計、観光需要と観光市場、まちづくりなどの視点からの研究が多く、観光開発における関係主体の役割分担と運営体制の視点からの分析はあまりなされていない。さらに、集落型観光地に対しては、こうした観光に対応した利益配分・波及効果についての具体的研究はみられない。本研究では、岐阜県の白川郷、中国黄山市の西逓村の日中2つの世界遺産集落をとりあげ、両者の観光開発体制の比較を通して、両国の集落型観光地における観光形態の共通点、開発体制の特徴と違いを明らかにする。
  • 蓮香 文絵, 大澤 義明
    2002 年 37 巻 p. 973-978
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,山の見え方と校歌分布との関係を,学校からの山の見え方の数学的な分析により把握することである.校歌には,地域の自然環境が多く謳われ,特に,高い山や形容が特異な山は地域のシンボルとして地域の文化に根付いている.本研究では,山の見え方と山が最も高く見える範囲を示すモデルを設定する.そして近い山よりも,高く見える山を校歌に謳うことを示す.
  • 嘉名 光市
    2002 年 37 巻 p. 979-984
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    1.はじめに(1)研究の背景と目的(2)既往研究からみた本研究の位置づけ(3)研究の方法2.三輪山とその形象について(1)三輪山について(2)著名眺望点と比較視点の抽出(3)三輪山の形象分析3.山頂部周辺の形象について4.地性線による形象について5.まとめ
  • 今野 久子, 堀 繁
    2002 年 37 巻 p. 985-990
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、領域空間内部に位置する城山の地形的特徴を定性的・定量的に把握する目的で行った。城山47例を「独立丘型城山」(38例)、「台地端部型城山」(9例)に分類し、城山高さと底面積に注目してそのスケールと特徴を明らかにした。  1)独立丘型城山は、0.3-121.0(平均20.6)m、1.8-46.8(同8.8)haで、比較的高く(平均36.6m)高い程広い「自然地形タイプ」(52.6%)と、比較的低く(同2.8m)高さと広さの関係が無い「人工城山タイプ」(47.4%)に類別できた。前者は30m程と決して高くなく、高さと広さのバランスある丘の地形をそのまま活かした城山、後者は微高地に手を加え自在な広さに築いた城山であった。低い或いは狭い独立丘型城山25例の76.0%が海、川等に守られる様な周辺地形にあった。特に低い城山は低湿地の中でも僅かな微高地を目利きし人工的に築かれたと考えた。一方、極く高い城山は要害山とするという城山スケールに応じた使われ方の特徴があった。  2)台地端部型城山は、13.1-68.6(平均30.2)m、2.9-50.0(同8.9)haで、多くが独立丘型自然地形タイプの広めの城山とほぼ同スケールであった。台地は広く(同256.4ha)、城山より低いがしっかり立上がり(同21.9m)、台地の中でも谷津・小丘で一定の高さ・広さに区切られた所が城山となっていた。   3)以上、城山は、独立丘や台地を利用し、台地上の微地形も巧みに活かして立地していた。城山が低いものは周辺地形に拠っていた。総じて城は、自然地形を自在に活かして立地し、微地形までを目利きして城山が形作られていた。
  • 那覇市における実践を通じて
    中農 一也, 鳴海 邦碩, 澤木 昌典
    2002 年 37 巻 p. 991-996
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    行政アーバンデザインは、全国画一的な都市づくりから地域の個性を活かした地域環境に相応しい都市づくりに変えようとする意識のある自治体が主体的に取り組んできたものである。1971年の横浜市を皮切りに、1980年代から全国的な広がりを見せ、多くの自治体に「都市デザイン室」や「都市景観課」などの行政アーバンデザインを推進するセクションが組織化され、主に都市景観条例を制度的根拠として、個性的なまちづくりが展開されてきた。しかしその一方で、根拠法の脆弱さや行政の厚い縦割りの壁などのシステム上の理由などから様々な課題も抱えている。「都市型社会」へ移行する21世紀において、都市の再構築が各自治体において最重要課題となっており、ますます行政アーバンデザインの積極的な取り組みが求められている.また、近年、特定非営利活動促進法の制定等のように市民主体のまちづくりへの大きな潮流が見られ、一部の自治体において、既に組織の再編や新たな条例制定等の動きがあり、今後、行政アーバンデザインの取り組み方やシステムの見直しが一層進むことが予想される。本研究は、筆者の一人が直接的に携わった沖縄県那覇市都市デザイン室の実践を通して行政アーバンデザインの現状と実態を明らかにし、全体的な実践システムの問題点と課題の考察を行うことを目的とし、今後求められる行政アーバンデザインのあり方についての知見を得る。
  • 千葉県柏市景観形成ガイドラインの事例
    宮脇 勝, 北原 理雄
    2002 年 37 巻 p. 997-1002
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本論は、千葉県柏市の景観条例に基づく景観形成ガイドラインの策定プロセスについて解説したものである。柏市の景観形成ガイドラインの特徴は、次の3点にまとめられる。1)景観条例の適用範囲を市内全域のすべての構造物としていること、2)景観区域区分を都市計画法の用途地域区分に一致させていること、3)新市街地開発予定地域における景観形成ガイドラインにおいて、すべての建築タイポロジーに対応してマトリクス表記を採用していることが挙げられる。本論のアプローチは、歴史的な市街地がさほどない一般市街地における景観ガイドラインの策定手法として考案されたものである。
  • 和田 幸信
    2002 年 37 巻 p. 1003-1008
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、パリを事例地として看板の規制手法を明らかにした。フランスでは日本でいう屋外広告物は、店舗に設置する看板、前方に店舗のあることを知らせる予告看板、店舗とかかわりのない場所に設置される広告に区分される。 看板は、建物に水平な看板、建物に垂直な看板、屋根に設置される看板、地上に設置される看板の4種類に区分される。パリでは広告を規制するために設定された、広告規制区域、広告拡張区域、広告禁止区域それと一般市街地など7区域ごとに、4種の看板の規制が行われる。
  • 大和郡山市環濠集落の調査から
    金田 直子, 明智 圭子, 増井 正哉
    2002 年 37 巻 p. 1009-1014
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    This study reveals the changes in the historic water utilization environment focusing on ditch and irrigation pond, using 32 ditch-encircled settlements in Yamatokoriyama City as the subject, and analyses its tendency and background. First of all, all the settlements were explored and the surviving conditions and maintenance status were surveyed. As a result, it was found that the historic facilities for water utilization survived in many settlements, despite some transformations in its forms. Also, the hearing survey to the settlements' representatives regarding on the transformation details indicated that administrative policy influenced the drastic change in water utilization environment, rather than settlers' demand to improve for modern living convenience.
  • 吉住 優子, 舟橋 國男, 木多 道宏, 李 斌
    2002 年 37 巻 p. 1015-1020
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    島原市における現在へ受け継がれる湧水利用のしくみについて、人々と湧水との付き合い方、維持管理が時代毎に形を変えながら現在に引き継がれているその変容プロセスと、城下町として発達した武家地の水系をはじめとする町人地、農村地、魚村地等それぞれの地区毎の特徴やそこで培われてきた社会的ルールを捉える事を目的とし研究を行った。その結果、資源共有について地区ごとの特徴を捉える事ができた。(1)藩士屋敷は空間構造が変化しても管理体制が共有されていた為利用が維持され続けた。(2)足軽屋敷は用途の統一によって資源の共有が図られた。(3)上の原地区は町内の住民活動により湧水が維持管理されていた。(4)船津地区はデザインの明確さや用途の掲示等により規則の共有を促していた。_(5)_島原市では雲仙普賢岳噴火災害後、地域団体が湧水をまちの資源として見直し始め、市全体での資源利用の秩序や場所毎の在り方の指向を提示するようになった。
  • 井沢 知旦, 浦山 益郎
    2002 年 37 巻 p. 1021-1026
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    この論文は、一級河川五条川を対象に、住民組織と自治体とがパートナーシップを組んで河川環境を改善し、管理運営している事例の分析を通じて、公共空間の公共一元管理から地域共同管理・運用への移行の可能性を明らかにしたものである。結論は次の通りである。(1)身近な川の環境改善に向けて市民有志が取り組み始めたことを契機に、(2)目的的組織を立ち上げ、広く市民を巻き込んで活動し、実績を積み上げていく中で、市民と行政の信頼を得、(3)住民組織と行政のパートナーシップによって、河川管理者に、地域の要望をつきつけるだけでなく、自らの企画力と行動力で公共空間の整備および管理・運用に関わる高い活動力を認知させることが可能となった。
  • 支払い意志額関数の説明要因の分析
    土田 真理子, 永井 護
    2002 年 37 巻 p. 1027-1032
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では、CVMに基づき、貴重な動植物が生息する非利用価値の高い水辺環境を保全する活動への支払意志額と、その支払意志額に対する住民意識について論じる。宇都宮市では、ため池として利用されていた鶴田沼の貴重な自然環境を保全する活動を行っており、アンケート調査によりこの保全活動に対する支払意志額と住民意識を得る。支払意志額と住民意識は2つの手法を用いて分析する。第一に、ランダム効用モデルを用い支払意志額を分析する。第二に、共分散構造分析を用い住民意識の構造化を図る。この結果、保全活動への参加意志の決定と支払意志額の決定の間には構造に違いが見られ、非利用価値は必ずしも支払意志額に反映されないことがわかる。
  • 川上 正倫, 仙田 満
    2002 年 37 巻 p. 1033-1038
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、建物の作り出す環境と周辺環境がもたらす空間の取り合い方に関する評価、つまり空間の「おさまり」の評価を良くすることは重要であると考える。おさまり感の評価構造の一端を明らかにし、各要素の特性を考察した。「おさまり」の評価は、環境要素-関係要素-感覚要素からなる下位評価構造を単位として、複数の下位評価構造によって成立していることを示した。下位評価構造を関係要素によって分類した結果、構造的、形態的、質的環境、意味的の大きく4つの環境認識のパタンを得ることができた。おさまり感の良い・悪いは両極的な心理尺度ではないことが、環境要素と環境の認識パタン、感覚要素などをみることで確認できた。
  • 村上 正浩, 鵤 心治, 中園 眞人
    2002 年 37 巻 p. 1039-1044
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,3次元街路景観モデルを用いたシミュレーションを通して,街路空間の視覚的な景観特性を検証することを目的としている。研究の手順は次の通りである。まず,山口県宇部市の中心市街地を対象地域として設定し,景観構成要素を基に,対象地域の3次元街路景観モデルを構築した。次いで,視点場として3方向及び4方向交差点を270地点選定し,続いて4つの評価指標を設定した。そして,構築したモデルを用いて,街路空間の視覚的な景観特性を分析し,その分析結果を基に,街路景観の特徴を次の4つのグループに分類した。さらに,各グループの特徴を基に,グループ毎に,景観に配慮した整備案を提示した。
  • 藤居 良夫, 酒井 裕一
    2002 年 37 巻 p. 1045-1050
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    街路は都市景観の主要な構成要素であり,街路景観は都市における住民の生活環境の質的向上に大きな影響を与えている。本研究では街路景観を構成する5つの景観要素を変動要素として選び,画像処理を用いて8種類の景観画像を作成し,景観評価実験を行った。従来の景観分析においては評価実験結果に対して主に因子分析などが用いられてきたが,ここでは景観評価の因果関係を導くために,各景観要素の効用を定量化できるコンジョイント分析と柔軟なモデル構成力を備えもつ共分散構造モデルの2つの分析手法を用いて街路景観評価の分析を試みた結果,景観分析に対する各々の手法の有用性と有効性が確認された。
  • 角 真規子, 齋藤 潮
    2002 年 37 巻 p. 1051-1056
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、都市空間の近代化により、街路における歩行者空間が周辺の空間との関係の中でどのようにレイアウトされたかを明らかにするものである。東京都保管の史料を用い平面図から断面図をおこし、旧東京市15区を対象に、帝都復興事業完了後の街路について断面構成要素を抽出し、その組み合わせにより街路断面の多様性を整理する。本研究の結論は次のようになった。まず、5種類の断面構成要素が得られ、その組み合わせにより断面構成は9通りに分類できる。次に、構成要素自体の効果による歩行者空間の空間的特徴が得られた。特に、周辺が自然的環境のときその街路断面構成は個性的なものとなる。
  • ヒートアイランド現象の緩和を目的として
    渡邊 浩司, 高橋 洋二, 佐土原 聡, 尾島 俊雄, 望月 明彦
    2002 年 37 巻 p. 1057-1062
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    都市の中心部では、ヒートアイランド現象が深刻化している。例えば、東京の夏季の気温は、過去100年間に1.8℃上昇している。ヒートアイランド現象の要因として、都市排熱が大きく関与していることが指摘されている。本研究は、ヒートアイランド現象を改善するための建物排熱処理管路システムを提案し、その費用対効果を評価する方法を提案することを目的とする。さらにそれを適用したケーススタディとして、東京の中でも都市排熱が集中している丸の内、大手町、有楽町を取り上げた。結論として、提案したシステムによるエネルギー消費や二酸化炭素の削減効果は、システムの建設コストと比較して、長期的観点から有効であることがわかった。
  • 李 海峰, 高橋 洋二, 佐土原 聡, 渡邉 浩司, 尾島 俊雄
    2002 年 37 巻 p. 1063-1068
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    地球や都市環境問題への関心が高まる中で、ヒートアイランド等の都市気候に関わる熱環境問題が重要な都市問題として注目を集めている。本研究では、GISデータを活用したヒートアイランド数値シミュレーション評価システムを用い、建物排熱が集中する東京駅周辺6km四方をケーススタディ地区として取り上げ、冷房排熱への対応によるヒートアイランドの緩和効果を検討することを目的とする。
  • 西村 正志, 大澤 義明
    2002 年 37 巻 p. 1069-1074
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    この論文は,ごみ焼却によって発生するダイオキシン類と収集車が出すNOxについて着目し,両者の排出量が最小となる広域圏設定及び立地問題について,それを同時に決定するヒューリスティックな繰返し方法で非線形整数計画法を定式化した。実際に,ある県のごみ処理広域化計画について広域圏設定及び立地問題を解き,その結果を評価した.そして,その計画案よりもダイオキシン類とNOxについて,パレート最適であるいくつかの代替案を示すことができた.
  • 原科 幸彦, 持木 克之
    2002 年 37 巻 p. 1075-1080
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    環境配慮をより進めるため計画・政策段階で行う戦略的環境アセスメント(SEA)の導入が検討されているが、国レベルよりも地方自治体の方が総合的な政策対応がなされるので、導入可能は高い。そこで、地方自治体における導入状況とその要因を分析した。郵送法により47都道府県と12政令市の全てに調査を行い、さらに、特徴的な自治体には面接調査も行った。その結果、川崎市、東京都、三重県では準SEA制度が導入され、埼玉県では初のSEA要綱が作られるなど、導入の動きが確認できた。自治体における判断を分析した結果、多くが代替案の比較検討はSEAの不可欠な要件であると考えており、そのためには情報公開が基本であると認識していることなどが明らかになった。
  • 宮川 智子, 中山 徹
    2002 年 37 巻 p. 1081-1086
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、アメリカの工場跡地等汚染のある土地の土壌汚染対策と再開発を連携して行った事例における住民対応に焦点をあてて10事例に対する調査を行った。アメリカは、連邦法と州法に基づいて土壌汚染対策を行っているが、その際、都市計画や住民と連携した計画決定等にも関連して対策を行っている。本研究は、工場跡地等の土壌汚染対策と再開発のプロセスにおいて法的な対応と法的に規定のない対応の双方を関連づけることを目的としている。結果から、全体的な対策は法的な規定によって行われていながらも、法的に規定のない住民への対応についても重要視して対応していることがわかった。また、住民への説明会の実施や住民の存在がより一層の住民の参加を促していることが明らかになった。
  • 小樽市・函館市・酒田市・釧路市を事例として
    本田 陽子, 横内 憲久, 岡田 智秀
    2002 年 37 巻 p. 1087-1092
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    The puropose of this research is to reveal details of the spread of waterfront development to the surrounding urban space. Through status examination of waterfront development in four cities, this research bought the following findings: (1)Content of waterfront development spreading to the surrounding urban space (surrounding development) is of two kinds: "building design" ad "development concept." (2)Waterfront development that utilizes historival failities reaches extensive areas around the deveelopment spots. (3)To promote the spread, it will be important to impement institution of scenery ordinances, beautification of urban roads, and other administrative measures/undertakings in areas adjacent to the place of waterfront development.
  • 松本 玲奈, 瀬田 史彦, 大西 隆, 城所 哲夫
    2002 年 37 巻 p. 1093-1098
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    地方分権の流れに従い、地域には様々な面で競争力が求められつつあるが、既存の試みの多くは一過性のイベント開催にウェイトが置かれ、今地域に最も求められている「地域の経営」という視点が欠落しているように見受けられ、こうした背景から、これまでの地域開発やまちおこしに対して「地域マーケティング」的視点導入の必要性がさまざまな場面で論じられてきている。そこで、本論文では、まず企業の行っている製品マーケティング戦略との比較を通じて地域マーケティングの手法を構築し、次にケーススタディを通してこの手法が単なる観光客誘致や商業目的のものではなく地域の問題点を見据えての本質的な地域改善戦略と成り得ることを示し、さらに本格的な適用に向けて手法そのものの改善点について考察するものとする。
  • ケミカルシューズ産業地・神戸市新長田駅北地区東部を事例として
    久保 光弘, 土井 幸平
    2002 年 37 巻 p. 1099-1104
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    ケミカルシューズ産業地における震災復興まちづくり地区を事例に、「産業観光」(消費者との交流による産業地の活性化を目的とするまちづくりのコンセプト)の取り組みについての研究を行った。その結果、次に示す知見を得た。1.「産業観光」は、町ぐるみのまちづくりであり、産業地を良いイメージを変え、地域の活性化を促す。2.「産業観光」の取り組みは、消費者のニーズに対応できる産業構造を促進する。3.「産業観光」を推進するためには、NPOなどの組織が必要である。
  • 中上 亜沙子, 大坂谷 吉行
    2002 年 37 巻 p. 1105-1110
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、シンガポールの住宅政策とニュータウン開発の分析から、21世紀型ニュータウン(Punggol 21)の背景、開発計画の内容、特徴、従来型ニュータウンとの違い及び今後の課題と展望を明らかにした。国民が快適な時間と空間を享受する場としてウォーターフロント開発が重視されている背景を受け、新しいウォーターフロント型ニュータウン開発が計画された。21世紀型ニュータウンの特徴は、(1)多様化した住宅ニーズへの対応、(2)住宅供給における民間との役割分担の調整、(3)コミュニティの再構築、(4)精神的なゆとりの提供である。高齢化社会に備えて計画段階から居住環境のバリアフリー化と高齢者対応型住宅の供給を進めることが課題である。
  • ファイサルバード環境改善プロジェクトを中心にして
    モハマド アティク ウル ラハマン, 坂野 達郎
    2002 年 37 巻 p. 1111-1116
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    パキスタンの諸都市は、高い文盲率、インフラ整備の遅れ、低所得等多重の社会経済的問題を長い間解決することができなかった。独立後50年の開発計画の歴史は、非効率な官僚制のトップダウン型計画が無力であったことを示している。一方、近年国際援助資金は、コミュニティの参加を支援条件として課すようになってきている。しかし、長い間に培われた政府に対する不信感は、両者のパートナーシップを非常に困難にしている。ファイサルバード地区環境改善プロジェクトは、貧困にあえぐ地域住民が50_%_開発費を負担することで、プロジェクトの立案、コスト計算、事業の発注、実施、事業完成後のメインテナンスの全ての計画段階において政府と対等の立場に立って開発が行われたパキスタン初の事例である。本研究は、プロジェクト参加者へのインタビュー調査と現地視察により、当該プロジェクトの評価を行い、その成功の原因を明らかにし、他地区への普及の可能性について考察する。
  • 韓国デグ市における塀崩し運動を事例として
    金 奉暻, 小浦 久子
    2002 年 37 巻 p. 1117-1122
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、韓国のデグ市で、市民団体と行政が協働して行っている「塀崩し」運動の実態を通して、敷地内空地の開放による生活空間に及ぼす効果を明らかにすることを目的とする。そして、次のような結論を得た。1.塀崩しによって開放される空地を緑化することは、都市の中での緑地空間を確保し、通りのアメニティの向上や緑豊かな都市環境づくりに寄与している。2.塀崩しは、高い塀がつくる閉鎖的な町並みに代わり、道に対して開放的な町並みを形成し、子供の遊び、近隣との付き合いができる町の居場所づくりに寄与している。3.良くデザインされた美しい緑のある空間を、韓国人は「庭」として認識する。しかし、マダンで行われていた生活行動のうち、洗濯物の乾燥や子供の遊び、近隣との立ち話などは維持されていることが分かった。4.塀崩しは、敷地と道路の関係や敷地内空地の社会的役割を変化させる。
  • 韓国ソウル市・仁寺洞地区を中心に
    郭 東潤, 北原 理雄
    2002 年 37 巻 p. 1123-1128
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2017/11/07
    ジャーナル オープンアクセス
    韓国では、1970~80年代に経済発展を基盤とした都市政策によって良好な歴史的景観が失われた。1990年代後半から、経済優先の都市政策で生じた都市問題への対抗策として市民運動による「住民主体の環境づくり」が進められつつある。本研究は、仁寺洞地区の歴史的環境保存をめぐる住民運動の展開過程及びその特徴、さらに住民と市民団体、行政間の関係(パートナーシップ)を明らかにする。こうした事例研究から歴史的環境づくりにおいての住民参加のあり方と、参加においての改善方案を探ることが本研究の目的である。
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