都市計画論文集
Online ISSN : 2185-0593
Print ISSN : 0916-0647
ISSN-L : 0916-0647
39.1 巻
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 太田 敦史, 中出 文平
    2004 年 39.1 巻 p. 1-10
    発行日: 2004/04/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、全国地方都市圏での鉄道新駅設置実態を明らかにするとともに、市街地拡大経緯と新駅設置による公共交通サービス圏域の拡大に着目し、市街地と公共交通体系の斉合性の変化を検証した。新駅設置実態より明らかとなった、都市圏毎の傾向の相違を反映した南東北・北陸の6都市圏を対象に、市街地と公共交通サービス圏域の空間的斉合性の変化を見ると、市街地拡大は鉄道沿線を必ずしも指向しておらず、斉合性を減じていることが明らかとなった。一方、新駅設置によるサービス圏域の拡大が、斉合性向上に寄与している実態を明らかにしたが、サービス圏域拡大を大きく上回って市街地が拡大していることから、公共交通体系を踏まえた土地利用計画の重要性が浮き彫りとなった。
  • 瀬田 史彦, 金 昶基, 頼 深江, 大西 隆
    2004 年 39.1 巻 p. 11-19
    発行日: 2004/04/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    高度の経済成長を達成したアジア諸国に特徴的な、地域格差是正を目標とする国土政策と、その実現手段としての産業立地政策との矛盾について、「開発主義」と呼ばれるアジア諸国特有の政体との関係から論じる。まず、タテマエとして均衡ある発展を唱える国土政策と、ホンネとして産業集積の集中を目指す実際の産業立地政策が矛盾する原因や背景について整理し、その性質を仮説の形で示す。次に、仮説で示したような性質が実際に観察できるかについて、日本・韓国・台湾・マレーシア・タイの5カ国の国土政策及び主要な産業立地分散政策やそれらに対する主要論者の見解をまとめる形で、検証する。
  • パキスタン生活環境インフラ整備事業における3つの参加型開発アプローチの比較による
    モハマド・ アティク・ウル・ラハマン, 坂野 達郎
    2004 年 39.1 巻 p. 20-30
    発行日: 2004/04/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    途上国において、コミュニティが自力で資金調達を行い近隣区レベルで道路や下水といった生活環境インフラの整備をおこなった事例は数多く報告されている。R. D. Putnam 及びF. Fukuyama 等の社会関係資本論に依拠すれば、小地域においては、伝統的な社会関係をベースにして、住民同士の密なコミュニケーションと相互信頼があるため、地域としての協力行動が容易であるためと説明できる。しかし、複数地域にまたがる道路や下水幹線の整備は、地域を越える住民同士の自発的協力が困難なため、政府の関与が必要になる。他方で、政府主導のトップダウン型計画の有効性に対する疑問から、近年国際開発援助資金は、コミュニティの参加を支援条件として課すようになってきている。しかし、D. G. Squires が指摘するように、政府とコミュニティのパートナーシップでは、情報や権力の非対称性があるため、両者が対等の関係を維持することが難しい。対等でない関係からは、相互不信が生じやすい。また、開発援助資金が援助国の事情でストップすると資金的にはもちろんのこと、元来コミュニティの参加に熱心ではない途上国政府はパートナー関係から離脱し、プロジェクトは構造的に不安定になっている。本研究は、パキスタン生活環境インフラ整備事業における3つの代表的な参加型開発アプローチとしてOrangi Town におけるコミュニティ主導の開発事例、Orangi Town を模倣した3地区での開発事例、Faisalabad 地区環境改善プロジェクトをとりあげ、調査・評価レポートをもとに現地調査を行い、各アプローチの有効性の検証を行った。その結果、政府と対等の立場に立つパートナーシップが、政府とコミュニティの信頼の構築に寄与する制度枠組みとして有効であることを明らかにした。
  • 谷口 興紀, スニール・バーブ セレスタ, 榊原 和彦
    2004 年 39.1 巻 p. 31-40
    発行日: 2004/04/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    大阪府南部河内長野市の路傍祠の分布を調査し、調査データを地理情報システム(GIS)に入力して、地理情報データベース化し、路傍祠の空間的分布の特性を分析している。路傍祠の割合は、(1)神道系、21%、(2)仏教系74%、(3)それ以外5%である。所在地は、道路際に45%ある。向きについては、特に優先する方角はない。80%は、屋根をもつ。74%において、生花が供えられており、人々による維持管理の割合が非常に高い。1954年以前の旧市街地には多く、それ以後の新市街地などには、やはり少ない。旧市街地でも、直径600mの空白地帯が所々見られることなどを図で示す。地蔵と塞の神との習合が、この市において特異である。
  • 堂免 隆浩, 坂野 達郎, 中野 章洋
    2004 年 39.1 巻 p. 41-49
    発行日: 2004/04/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    東京都大田区田園調布地区は、資産家が多く居住する郊外住宅地である。そのため、資産価値上昇のために進んで街並み維持につながる建築行為が実施されていると考えられる。これに対し本論文では、田園調布地区において他者の貢献による街並みは借景とし自らは街並みを維持しない新規の建築行為が多く存在していることから、田園調布地区が潜在的に社会的ジレンマ状況にあることを確認した。また、住民自ら私的協定を締結し協定違反行為をコントロールするために段階的仕組みを工夫するとともに、違反者の協力性向に応じた説得の方法を採用していることを明らかにした。これらの取り組みにより、田園調布地区の街並みはシステム崩壊直前でなんとか維持されていると考えられる。
  • 加藤 仁美
    2004 年 39.1 巻 p. 50-55
    発行日: 2004/04/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、市街地環境の形成に大きな影響を及ぼすと考えられる確認型総合設計制度の適用にあたり、各特定行政庁の対応、都市計画審議会における審議内容等を明らかにし、地域の実情に応じてどのような対処がなされたかを把握することを目的とした。その結果、都市部においては、本制度による周辺環境への影響が危惧されて当面の適用が見送られ、一方で容積緩和を必要としない地方都市や郊外部の行政庁において適用した行政庁が多いこと、各都市計画審議会では、法改正から施行までが短期間であったことを反映して、市街地環境への影響や都市計画との整合性等に関する審議が十分になされたとは判断しがたい実態が明らかとなった。
  • 東京都市圏を対象とした検討から
    谷口 守, 阿部 宏史, 松中 亮治, 清岡 拓未
    2004 年 39.1 巻 p. 56-61
    発行日: 2004/04/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    近年の大都市圏における郊外化やモータリゼーションの進展、情報発信量の拡大などにより、行政上の地域範囲と認識上の地域範囲が必ずしも合致しなくなっているケースが多くなっている。この現象は、相対的な力関係が変化しつつあるすべての隣接する都市や地域の間で観察できると考えられる。本研究では、大都市圏が表す認識上の地域範囲はどのような特徴や規模をもって変化しているのか。このような問題意識に基づき、大都市圏が表す認識上の地域範囲を定量的に把握するとともに重回帰分析による要因分析を行う。
  • 五味 義治, 笹谷 康之
    2004 年 39.1 巻 p. 62-67
    発行日: 2004/04/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、総合計画の施策のマネジメントに有効と考えられるIT、コミュニティプラン、進行管理の施策ツールを対象として、自治体アンケートを行った。各種ツールは導入されてはいるが、総合計画とツール群との統合的な連動は、不十分だった。総合計画の推進における先進的な自治体を「総合マネジメント型」「ITマネジメント型」「準総合マネジメント型」「コミュニティ重点型」の4タイプに類型化できた。総合計画の施策のマネジメントには、自治体の特性に応じて、コミュニティ重視と、IT重視と、これら両者を結びつけた多面的なツールの統合化の、3つの方向性を見出すことができた。
  • 自治体に働く建築職女性の現状
    小伊藤 亜希子, 上野 勝代, 中島 明子, 松尾 光洋, 室崎 生子
    2004 年 39.1 巻 p. 68-73
    発行日: 2004/04/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    女性が仕事を続け、責任ある地位にも昇級し、女性の視点を生かして建築・都市計画分野の仕事に貢献するための条件を探ることが、本研究の目指すところである。本稿は、都道府県の建築・都市計画分野における建築職女性の進出状況の量的な把握と女性の働く職場環境の実態を明らかにした。近年、当分野で働く女性が増加し働く環境も改善されつつあるが、昇級に関しては今なお男女差が存在し、女性が責任ある地位につき能力を発揮できているとは言えない。一方、家庭と仕事の両立に奮闘している女性が、家庭生活の中で身につけた細やかな生活者の視点が、主に住宅設計に関わる分野で発揮されることが期待されていることがわかった。
feedback
Top