都市計画論文集
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39.3 巻
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  • 日野市都市マスタープラン策定における合意形成支援
    錦澤 滋雄, 原科 幸彦
    2004 年 39.3 巻 p. 1-6
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、都市マスタープラン策定における計画枠組みづくりへの住民参加方法論としてワークショップに着目し、通常の自由参加によるワークショップだけでなく、相対的に代表性の高い公募の市民委員によるワークショップを活用した東京都日野市を事例として実証的な分析を行った。具体的な論点として、地域割と計画づくりのプロセス設計について取り上げ、その合意形成過程について整理を行い、政治学における二つの規範的な代表観を踏まえて、市民委員の果たすべき役割に着目し、そこでの意義や課題を分析・考察した。その結果、情報収集の役割では、個別地域だけでなく市全体に関する情報を収集し、さらにアウトリーチ活動によりワークショップに参加しなかった住民からの意向も収集したことを確認した。また、地域合意促進の役割では、複数案の作成や市民委員自らの説明を通して合意を形成していったが、唯一の案に絞り込むことができていなかったことを示し、「決め方」についての合意の必要性を指摘した。さらに計画への反映の役割では、地域住民の個別意向だけでなく、市全体の利益にも考慮して計画に反映していること、などを明らかにした。
  • 林 真希, 十代田 朗, 津々見 崇
    2004 年 39.3 巻 p. 7-12
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は大分県一村一品運動を対象に、特産品の特徴とどのような差別化・魅力づくりをしている産品が売上増加しているか、を明らかにすることを主な目的とする。売上データの分析、アンケート調査、ヒアリング調査を行い、以下の結論を得た。.特産品の売上増加には生産面の要因に加え、流通面、 PR活動面での影響が増加しつつある。一方、産品間の競合や後継者不足の解消は各地域の抱える重要な課題といえる。.同一の品目が複数の市町村において特産品となっているケースが多く見られる一方で、特産品と認識されるエリアは市町村域内にとどまっているケースが半数以上見られた。産品の独自性が失われていることを、きちんと把握できていない実態が伺われる。.生産・保存や名称の統一については、「近隣市町村」で連携することにより売上増加が見込まれる。これは集出荷面での効率化や、市場での競争力強化が可能になるためと考えられる。.特産品セット販売は、販売方法自体が差別化につながり、売上増加との関連が強い。また、地域限定生産の特産品をセットに組み込むことや、販売時に利活用方法を紹介したりすることで売上増加が見込まれる。
  • 坂入 威郎, 十代田 朗, 津々見 崇
    2004 年 39.3 巻 p. 13-18
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、過疎地域における地域情報基盤の持続的な活用策について有益な示唆を得ることを主目的としている。アンケート調査、ヒアリング調査等を実施した結果、以下の5点が結論として導出された。1)過疎型 CATVは、「担当職員不足」「システムの老朽化」「番組のマンネリ化」が問題となっている。2)システムの特性により付属システムを4タイプに分類。1つ以上導入している過疎型 CATVは 36あり、平均 3.1である。3)過疎型 CATVの自主放送は4タイプに分類。「住民ニーズ充足型」は付属システムの導入にも積極的である。また「住民ニーズ充足型」「住民配慮型」では自主放送による地域内変化を行政サイドが感じている。「住民疎遠型」では行政内部の取組み、「住民配慮型」は住民利用に資する施策が多く行われている。4)自主放送開局と付属システムの時間的関係から展開過程をみると7パターン存在。開局と同時に付属システムを導入し、以降導入なしというパターンが多い。5)地域情報基盤を持続的に活用するには、住民の関心が得られるような取組みを市町村の趣向を加えて展開することが重要であることが例示された。
  • TV娯楽番組として放送される農村モデルにおける立地地域の住民と製作者の意識を通して
    田原 潤一, 後藤 春彦, 山崎 義人
    2004 年 39.3 巻 p. 19-24
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    農村はそれぞれの地域が長い歴史の積み重ねを経て、今の姿に至っている。そこには先人たちの日常生活に対する知恵やその複雑な仕組みなどが蓄積されている。現在それらが徐々に消滅しつつある状況の中で、奥深い農村文化を紹介・継承する方法が求められている。その方法としてモデルを用いた表現方法が考えられる。モデルは本物を保護しながら広く伝えることができ、また、抽象的で空想的なイメージを付け加え、幅広い人に興味を持ってもらうことができるなど有効である。しかし、同時に事実を歪めるといった危険性も併せ持っている。そこで、モデルを利用して農村文化を表現しているものの中で、現在大きな反響を呼んでいるといえるテレビ番組の企画の農村モデル Aを事例として取り上げ、立地地域の住民と制作者の農村モデル Aに対する意識の違いを明らかにし、最後に今後の農村文化の情報発信におけるモデルの利用のよりよいあり方と可能性について考察を行なう。
  • 宮崎県西米良村を事例として
    岡崎 京子, 後藤 春彦, 山崎 義人
    2004 年 39.3 巻 p. 25-30
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、地域づくりなどの活動が各地で盛んに取り組まれ、住民が地域社会を見つめなおし、自ら地域づくりに携わっていくことの重要性が再認識されつつある。これらの活動を定着させ、快適な地域環境を保っていくためには、それを継承していく若い人材が求められる。宮崎県西米良村の平成6年以降の転入者数は全国平均の約2倍にあたる。その背景には自治体の取り組みの他にも、複数の転入要因がある可能性が高いと思われる。本研究では西米良村の Uターン者増加の複数要因と、それらの要因の変遷を明らかにすることを目的とする。
  • 富山市を事例として
    杉井 勇太, 大村 謙二郎
    2004 年 39.3 巻 p. 31-36
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、新規出店者を商店街に取り込んでいくことが中心商店街活性化において重要であるとの観点から、富山市中心商店街を対象に、業種構成の変化から店舗の受け皿としての中心商店街の変容を明らかにするとともに、新規出店者に対するアンケート調査から出店理由、出店上の問題点について明らかにした。中心商店街における店舗構成は 1963年当時、現在と比較して偏りなく多業種が混在していたが、徐々に衣料品・身の回り品への偏重がみられるようになってきた。一方、中心商店街で減少が目立つ業種は、郊外型商業集積エリアが受け皿となっていることが確認できた。また新規出店者は中心商店街の状況を厳しいものと判断した上で出店し、営業を続けていることが明らかとなった。今後郊外へ展開する意向を示す経営者もいるが、中心商店街での立地優位性が確保されているこうした業種を定着させていくことが必要である。また店舗の賃料に関して、不動産業者は地価から想定される価格より値を下げて貸しているものの、空き店舗は解消されない状況にあり、出店者と不動産業者間に認識のずれが生じていることが明らかとなった。
  • 宮嶋 慶一, 十代田 朗, 津々見 崇
    2004 年 39.3 巻 p. 37-42
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、地域の個性や独自性のある「情報環境」を構築するために、情報に関する地域特性や各都道府県の相対的な優位性や類似性を検討し、及び地域独自の情報環境のあり方の検討手法について提示することを目的とする。「情報」「情報環境」「情報メディア」に関する種々の指標データと統計的手法、さらに地域特性指標を加味した結果、以下の結論を得た。.都道府県の情報地域特性を【情報環境利用特性】【民間系の情報基盤整備・ツール普及】【公共系の情報基盤整備・ツール普及】の3視点で明らかにした。.各視点の【総合力】上位は、【情報環境利用】では各地方ブロック中枢都市を抱える県、【情報基盤整備・ツール普及(民間系)】では2大都市及び北陸地方、【情報基盤整備・ツール普及(公共系)】では北陸・甲信、山陰・四国の一部、と都道府県の優位性には違いがみられる。.都道府県の情報地域特性は、【情報環境利用】【情報基盤整備・ツール普及(民間系)】【情報基盤整備・ツール普及(公共系)】それぞれ各5つに分類される。.【利用度】と【整備度】の差による課題を整理し、それを元に都道府県独自の情報環境のあり方の具体的な検討手法を示した。
  • 三寺 潤, 本多 義明
    2004 年 39.3 巻 p. 43-48
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、鉄道利用は減少の一途をたどっている。一方、社会環境の変化とともに、地方鉄道に求められている役割は多様化してきている。本研究では、地方鉄道の再生のために効果的な駅周辺地区の整備方策を導き出すことを目的とする。本研究で得られた成果を以下に示す。1)鉄道の利用特性に加え、現況の駅周辺地区の土地利用状況などを用いてクラスター分析等を用い現況分析を行った。類型化の結果、研究対象とした 79の駅周辺地区を5つのグループに分類し、それぞれの特性を明らかにした。2)インターネット調査を用い、駅と周辺施設の連携がなされているかどうかの評価を行った。連携に対する評価は相対的に低い結果となった。3)3つのプロトタイプの設定を行い、それぞれのタイプに効果的に働く交通と土地利用の関連施策を導き出した。
  • 宇都宮市を事例として
    小俣 元美, 大村 謙二郎, 有田 智一
    2004 年 39.3 巻 p. 49-54
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、地方都市の中でも近年、商業環境が大きく変化している宇都宮市の中心市街地を対象として、商業と業務を合わせた空き床の実態や課題について明らかにし、そこで用いる各空き床指標について考察することを目的とする。最初に、宇都宮市中心市街地の近年の状況を概観した上で、階数、規模、従前用途などの空き床に関する特徴や傾向を分析した。そして、空き床の状況を考慮しつつ、空き床に関する指標を用いた通りごとの考察を行うとともに、地域ごとの空き床度を示す「まちの空室率」の試算を行った。結論として、当該中心街における空き床は、大型店の閉店に加えて事務所などの業務機能の退去によるものも相当数あること、また、空き床は貸す意思のある空き床の他に、市場に出ない空き床が存在し、その発生は地区で偏りがあることなどの知見を得るとともに、本研究で提案し取り上げた各空き床指標についての考察を行った。
  • ワシントン州GMHBでの審議結果に基づく考察
    西浦 定継
    2004 年 39.3 巻 p. 55-60
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本論では、米国ワシントン州の州成長管理制度を分析対象として、広域計画制度運用における計画課題を明らかにした。分析対象は、準司法的行政機関である Central Puget Sound Growth Management Hearings Boardに持ち込まれた請願である。分析方法としては、1)単純集計により全体傾向を見る、2)キーワードの相互関連性を見るために分類する、3)2)で得られた分類において特徴的な請願を抽出し定性分析する、である。結果としては、1)請願の中で最も多く取り扱われたのが都市成長区域である、2)都市成長区域の設定に関連してインフラ整備と郊外部のあり方が問われた、3) GMA運用において公共参画が数多く取上げられている、が明らかになった。
  • 都道府県アンケートとケーススタディによる分析
    花輪 永子, 野澤 千絵, 大西 隆
    2004 年 39.3 巻 p. 61-66
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,市町村に対する都道府県の役割の観点から,区域 MPの策定過程,及び区域 MPと市町村 MPの内容の関係性を把握することにより,区域 MPの策定過程における都道府県の市町村に対する役割の実態を明らかにする.研究方法は,区域 MPの策定状況や策定段階での都道府県の役割の実態を明らかにするための都道府県へのアンケート調査,素案・案を含む 40都道府県の区域 MPに記載された内容の分析,及び区域 MPと市町村 MPの内容の関係性を解明するための,素案・案を含む各 MPの計画内容の比較,及び県・市町の担当者へのインタビューである.結果,一部の事例では市町村の要望が尊重され,区域 MP策定段階での多様な主体の参加や区域 MPの内容での部門間調整が実現していること,市町村に一定の行政能力があれば,市町村への関与を縮減したいと考える県が多い一方で,現実的には市町村の人材・技術が不足などの理由により県が後ろ盾として積極的に支援している事例があること,及び,単独都市計画区域の区域 MPでは広域的調整は十分になされていないが,任意の広域 MP,広域都市計画区域の区域 MPでは,広域的調整を十分に行っているが,市町村が関心が低いことが明らかになった.
  • 豊田市を対象にしたSLIM CITYモデルの応用
    中道 久美子, 谷口 守, 松中 亮治
    2004 年 39.3 巻 p. 67-72
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,多様な地区を町丁目レベルで網羅的にカバーし,徹底的なデータ収集に基づく地区類型化を通して都市におけるコンパクト化政策を評価するためのシステムである SLIM CITY(Smart Layout Indicators to Materialize Compact City)について,その実用性を確立することを目的とする.このシステムの基本的構造は既に先行研究で開発されているが,本研究ではさらに調整的改良を加え,実際に一般の都市(豊田市)に対して適用を行う.シナリオ検討の結果,コンパクト政策および都市活動の分散化による影響を多様な評価項目にわたって把握することができ,さらに公共交通改善の影響も明らかになった.そして, SLIM CITYの評価システムとしての実用性を検討し,その安定性を明らかにすることができた.
  • 京都市まちづくり条例を事例として
    姥浦 道生
    2004 年 39.3 巻 p. 73-78
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    環境にやさしいコンパクトな都市形成を行うためには、商業施設についても都市計画的観点から適切な立地コントロールを行う必要性がある。そこで本研究では、自治体レベルで商業施設の立地コントロールを行っている事例として京都市を選択して、京都市まちづくり条例及び商業集積ガイドプランの運用実態を調査し、その特質、効果、課題を摘出することにより、条例を通じた自治体レベルの大型商業施設の立地コントロールの効果及び課題を明らかにすることを目的とした。結論としては、開発コントロール制度が、事前確定的な具体的基準に基づく開発コントロールと、個別的開発審査手続を通じた開発コントロールの折衷型になっているという特質を示し、また主としてロードサイドにおける5,000m²規模の開発や、既成市街地辺縁部における3万m²規模の超大規模開発の抑制に効果があったことなどを明らかにした。また一方で、立地コントロールの対象及び内容の限定性、ゾーニングの緩さ、開発審査内容の不明確さ・不十分さ及び判断基準の不明確さ、審査結果の「全か無か」性、等の課題があることを指摘し、その解決策をそれぞれ提示した。
  • 茨城県つくば市・土浦市を対象として
    北崎 朋希, 大村 謙二郎
    2004 年 39.3 巻 p. 79-84
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、地方都市における市街化調整区域において、商業系施設の立地が増加傾向にある。これは、市街化調整区域における現行の土地利用規制制度の実効性が低下しているのではないかと考えられる。そこで本研究では、商業系施設の立地動向と立地特性を解明し、制度の運用状況を比較することによって、市街化調整区域における商業系施設に対する土地利用規制制度の実効性を検証することを目的としている。研究対象地域としては、地方都市のなかでも商業活動が活発で、郊外化の要因が強い茨城県つくば市・土浦市を対象として、土地利用規制制度の実効性を検証した。その結果、統計的分析において、1号許可の拡大化・1号許可と8号許可との混在化・既存宅地制度や10号ロ許可における大規模商業系施設の立地によって、市街化調整区域においても比較的容易に、様々な商業系施設の立地が可能となっていることを明らかにした。また、即地的分析によって、1号許可・8号許可の立地条件・集積条件の許可運用基準が緩いことや、10号ロ許可における市街化促進性の判断の困難さによって、市街化調整区域において無秩序な商業集積地がいくつも形成されていることを明らかにした。
  • 新潟県内の都市計画区域マスタープランで定める白地地域等の土地利用方針の市町村案を対象として
    松川 寿也, 岩本 陽介, 中出 文平
    2004 年 39.3 巻 p. 85-90
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、計画白地の土地利用コントロールを意図した市町村土地利用計画の提示のあり方を検討することを目的とする。その結果、混合地域及び特定地域といった開発想定地を広く指定した自治体が見られ、それが農用地区域に広く依存して指定されたことが確認された。その背景には、農用地区域を対象として将来市街地を位置づけた策定自由度の高い市町村マスタープランが影響していたが、一方では、個別の開発意向・開発計画が優先されたことによる市町村マスと整合しない白地方針が確認され、これらがその提示に影響した結果、土地利用コントロールを意図した白地方針が将来の市街地拡大を提示する方針図に変容したことが確認された。そのため、こうした不適切な提示を防止する一定のルールづくりが必要と考える。
  • 板橋区基本構想ワークショップおよび区民意識意向調査を事例に
    樋野 公宏, 小島 康太朗
    2004 年 39.3 巻 p. 91-96
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、計画提案主体の代表性確保に焦点を当て、総合計画策定過程において多くの自治体で採用されている住民参加手法であるアンケート調査を活用し、計画提案主体が代表性を高めるための手法を実証的に検討した。計画提案主体に対し多数の住民が参加可能なアンケート調査結果を情報提供することで、その関心テーマが全体的視点を獲得する方向に変容することを明らかにし、計画提案主体の代表性向上の可能性を示した。また、以下の実証的知見も得られた。当事者数が少なく、アンケート調査ではニーズ把握が困難な項目について、関心の高い市民活動団体から情報提供を行うことで、 WS参加者の関心を喚起できた。 WSについて、参加者の多様な発意を期待して、計画提案に盛り込むテーマを事前に設定しない方式を採用したが、アンケート調査結果で示される住民ニーズを反映したテーマ構成を実現できた。本研究で用いた、アンケート回答者の関心テーマ分析手法は、多様な分野の施策を体系化する総合計画の策定過程において、住民の意向を把握する有効なツールとなるだろう。
  • 司馬遼太郎『街道をゆく』における文章構成の分析から
    山崎 隆之, 十代田 朗
    2004 年 39.3 巻 p. 97-102
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、司馬遼太郎『街道をゆく』というテキストを分析対象として、作者が記述したと思われる地域イメージを抽出し、「旅の実体験」「歴史的知識」の記述からなる文章構成に着目しながら、情報発信者(作者)による地域イメージの表現手法の分析を行った。その結果、旅の経過における多数の地域イメージから地域の全体像(全体イメージ)を記述する“体験型”と、様々な知識を展開してひとつの地域イメージへ至る作者の思考過程を記述する“知識型”という2つの文章構成のタイプがあり、それがテキストの中で複合的に用いられていることが明らかとなった。この“体験型”と“知識型”の文章構成を作者の思考過程の記述であると考えると、それぞれが“創造性を得るための思考プロセス”として言及されている「発散的思考」と「収束的思考」に相当すると考えられ、「発散的思考」と「収束的思考」が組み合わされることで“創造性”をもつように、『街道をゆく』はその文章構成において、地域を“創造的”に捉えるテキストとなっていたといえる。
  • 小林 優介, 石川 幹子
    2004 年 39.3 巻 p. 103-108
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、都市計画及び緑地計画に活かしていくために、ノードとリンクにより森林のネットワークを分析する手法を提案することを目的とする。この目的のために、セルオートマトンの手法を森林の連結性の分析に応用し、 Fowlerと Littleの地形分析のアルゴリズムの手法を森林のノードとリンクの抽出に応用した。そして、森林パッチ内及び森林パッチ間のネットワークの分析のために、横浜市戸塚区舞岡町及び吉田町の森林を対象に、この手法を用いた。その結果は以下のとおりである。1)本手法を用いることにより森林ネットワークのより重要なパスの抽出が可能であることがわかった。2)本手法は他の手法と比較した結果、森林の詳細なネットワークの把握に有効であることがわかった。
  • 浮世絵風景画での夜景表現の分析からの考察
    原 行宏, 久野 紀光, 斎藤 潮
    2004 年 39.3 巻 p. 109-114
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、江戸後期から明治初期で、人々が感じていた夜景らしさ(夜景に向けられた関心)がどう変化したかを明らかにすることを目的とする。この目的達成のために、まず、その時期に描かれた浮世絵風景画での夜景表現がどう変化したかを明らかにし、その夜景表現の変化の意味を考察する。その際に、浮世絵風景画の夜景に描かれている景観要素の描かれ方の違いに着目して分析を行う。そのような分析により、次のような結論を得た。江戸後期では、夜景らしさは昼景との景観要素の様態の違いにあるとされていたのに対し、明治初期では、物的環境や慣習などの変化により、夜景らしさは昼景との景観要素の明暗の違いにあるとされるようになったということが言える。
  • 名所の魅力要素・空間構成の分析を通じて
    羽生 冬佳
    2004 年 39.3 巻 p. 115-120
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、江戸期を通じて成熟していった伝統名所および時代を経て新しく登場する新興名所について、両者が有していた魅力要素とその変遷、および魅力要素が落とし込まれている空間の特性、および両者の比較により名所空間の成立を規定している思想の変貌を明らかにするものである。伝統名所が成熟していく過程で多くの名所は魅力要素の多様化を見せているが、その際に中心となる核要素から周辺要素へ、加えて集客が賑わい空間という新たな魅力を成立させ、それがさらなる魅力となっていった。こうした賑わい空間は名所内部へと入り込むベクトルが働いており、名所の微地形や宗教的な仕掛けがそれを区分けする境界として働いていた。一方、新興名所の中には、核となる要素が他の名所の周辺要素として発生したものがあるが、これは伝統名所の内部で起こった成熟の過程が広域的に発生したとも考えられ、全体的には名所空間の発展過程と捉えられる。加えて、伝統名所で成熟の結果備えていった魅力要素を計画的に当初より有する名所もみられ、伝統名所での成熟のノウハウを名所整備の手法として展開するに至ったと言える。
  • 馬木 知子
    2004 年 39.3 巻 p. 121-126
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    外濠の改築・埋立は、汚水が停滞しているという衛生上の問題を解決することを動機としつつ、明治 30年代後半頃からは埋め立てて地積を得ることが目的となっていた。明治前半には、かつての景勝地である溜池に地景の回復への関心もみられたが、明治20年代以降の埋め立てでは、外濠の地景は議論の対象になっていない。他方、「風致」や「美観」のもとに、植栽や建築物による都市の装飾、埋立後の街の構想など、外濠を無用化したあとに建設する施設によって、近代都市の風景をつくることを徐々に指向するようになっていた。新しい都市風景をつくることに傾倒しつつある都市建設において、近世以来人々が価値を見いだしてきた地景が解釈される契機となったのが弁慶橋問題だった。弁慶橋問題は、地景を積極的に解釈しようとしない建設者側と、地景を都市風景として体験し価値を見いだしてきた人々の、風景の捉えかたのずれが、埋立計画によって明確に認識されたことで発生した。そのずれに対して、地景を保存し、同時に近代都市に具備すべき施設を得る、公園化という方法は双方の風景の捉えかたを肯定する、一つの有効な解決策であったと評価していいだろう。
  • 谷戸地域の「道」を対象として
    森 貴規, 横内 憲久, 岡田 智秀
    2004 年 39.3 巻 p. 127-132
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、海と緑に囲まれた横須賀市において、特徴的な地形である谷戸の景観保全のために、谷戸の景観特性とその視覚構造を明らかにするものである。このため、本調査では、谷戸に関する文献調査と現地踏査ならびに図面分析を行った。その結果、横須賀市の谷戸らしさである3つの要素『(三方を囲む)丘陵、谷戸低部内の宅地、海の存在』を捉えるとともに、8つの景観特性(谷戸の枝道、谷戸脇の道、谷戸つなぎの峠など)を明らかにした。さらに、視覚構造を分析することにより景観特性の客観性を確認した。
  • 谷本 あづみ, 久野 紀光, 斎藤 潮
    2004 年 39.3 巻 p. 133-138
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本論は、明治後期に鎌倉の谷戸地形に設けられた別荘に着目し、これらの別荘立地場所の地形に対する一定の傾向と種類を抽出し、別荘立地選定における地形的要因とその意味の一端を明らかにすることを目的とする。以上の目的を踏まえ本論では、1)別荘立地場所における谷の規模や、各地形要素からの距離を測定することによって、地形と別荘立地場所との平面的位置関係の傾向を捉える(定量的分析)。2)各別荘からの周辺地形の見え方の特徴・バリエーションを把握する(定性的分析)。という2段階の作業を行った。分析の結果、谷戸における別荘の立地選定には、地形と自らとの位置関係を巧みに操作することによって、複雑に入り組み捉え所のない空間の中から一定の自己領域を括り出し、さらにその中で自分がどこにいるのか、というトポロジーを獲得しようとする構造が存在することが明らかになった。
  • 河和 知子, 中井 検裕, 中西 正彦
    2004 年 39.3 巻 p. 139-144
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    我が国の戦後の都市基盤整備の過程では、地域固有の街並みや自然よりも経済効率性が重要視されてきた。今後道路整備が進む上で、行政内部の計画策定過程の問題点を把握する必要がある。本研究では、地域資源として樹木を取り上げ、自治体に対するアンケートとヒアリングを通して、東京都内の計画策定における樹木の位置づけを考察した。結論は以下の通りである。1)柔軟な計画が戦後の事例にあまり見られない。2)道路事業の細部の計画が現行の費用対効果の考え方では評価されない。3)自治体や部署間における意見照会が十分に機能していない。4)現行の保護樹制度が継続的保存手段とはなっておらず、効果が薄いことが明らかになった。
  • 京都府花折断層周辺の神社を事例として
    是澤 紀子, 堀越 哲美
    2004 年 39.3 巻 p. 145-150
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、京都市街地を通過する花折断層南部の周辺地域を取り上げ、地震情報としての活断層を含む自然環境の条件と、信仰の場としての神社の立地との関係性を探ることによって、立地場所の地形地質的要素が神社とその周辺における景観の様相に及ぼす影響を把握し、景観整備のための景観形成を評価する指標を探ることを試みた。神社立地の頻度分布において活断層付近の神社は、活断層沿いに分布する様相を呈していることが示された。地形と地質の構成を検討した結果、活断層周辺の神社景観を形成する自然環境の表出は、基盤岩と被覆層という地質条件により区別できる可能性が考えられ、地形的特徴となる断層崖の地質のうち隆起した被覆層は、神社立地と自然環境との関わりを考察する上で、両者のインターフェースかつ指標であると推察される。このような自然環境条件の指標は、その土地固有の自然と文化により構成されるものであり、建造物と一体化した神社の周辺環境すなわち景観を保存整備していく上で重要である。
  • 環境管理のためのプライベートビーチの制度化と先進自治体からみた実現可能性
    山崎 正人, 横内 憲久, 岡田 智秀
    2004 年 39.3 巻 p. 151-156
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究はプライベートビーチを活用した民間が主体の海岸環境管理を提案するものである。調査は、3つの自治体(沖縄県恩納村・千葉県成東町・京都府網野町)へのヒアリング調査を実施した。その結果、本提案を制度化するための要件として、民間の収益確保と環境管理の実効性を促すためには、海浜地の排他的利用の権利が契約等によって担保される必要があることを明らかにした。
  • 籾山 真人, 十代田 朗, 羽生 冬佳
    2004 年 39.3 巻 p. 157-162
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、広域集客型エリアの商業的特性や空間特性を捉える試みの一つとして、「都市情報誌」において単独でエリア特集を組まれる等注目度の高い 28エリアについて、エリア内の町丁目単位での商業特性、また商業特性とメディアでの取り上げられたイメージとの関連について明らかにすることを目的としている。その結果、(1)商業統計業種細分類は、業種の広域性によって、「I.広域業種」「II.その他広域業種」「III.近隣業種」「IV.その他広域業種」の4つに分類されたこと、(2)業種構成比によるタイプ分類の結果、28エリアに含まれる町丁目は、「 a.広域バランス型」「 b.ファッション・雑貨中心型」「 c.食中心型」「 d. 近隣バランス型」「e.近隣ファッション埋没型」の5つに分類されたこと、(3)赤坂を除けば、「広域性の高い業種タイプ」の町丁目は連携し、一つの町丁目群を形成、周縁に「近隣性の高い業種」が拡がっていたこと、(4)青山・銀座・お台場・赤坂では、異なる特徴を持った商業集積がエリア内で見られたこと、(5)都市情報誌に登場するエリアのキーワードは、エリアを構成する町丁目の業種タイプ数と相関があったこと、などを明らかにしている。
  • 田中 尚人, 秋山 孝正
    2004 年 39.3 巻 p. 163-168
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,地方都市における良好な都市景観形成を目指して,都市景観評価にエキスパートシステムの適用を行ったものである.景観の変容が激しい地方都市を対象として,景観整備事業の際に専門家に代わり景観評価および景観整備に対するアドバイスを行うための都市景観評価システムの構築を行った.都市景観行政の現状を調査し,次に都市景観の構造を定義して評価論理を構築した.評価システムでは 126個のルールを使用し,最終評価項目は「構造物の意匠性」,「視覚的な調和性」,「立地の風土性」の3項目である.景観評価結果として,評価得点と評価プロフィールを提示することができる.また,推論過程をトレースすることで,評価結果の要因を探ることができ,改善案を容易に検討することができる.最終的には都市景観整備の実務に即した具体的アドバイスを提供することができる評価システムが構築された.
  • カンパーニア州政府の広域方針、ナポリ県の風景計画、ポッツォーリ市のマスタープランの整合性
    宮脇 勝, 武内 和彦, 鹿野 陽子
    2004 年 39.3 巻 p. 169-174
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は、イタリアの地方分権法(1990年)以降における国、州政府、県、基礎自治体のプランニング体系を明らかにするものである。特に、従来紹介されてこなかった南地方の代表例としてカンパーニア州を事例に取り上げ、州政府の広域計画 PTR、ナポリ県の広域調整計画 PTCP、カンピ・フレグレイ地域の自治体が連合した総合プログラム、基礎自治体のマスタープラン(ポッツォーリ市、2002年ナポリ県承認)のゾーニングの特徴を解説している。特に、近年歴史性とともに、ランドスケーププランニング(風景計画)の作成が重要視されており、州政府の方針、県のプランニング、基礎自治体の取り組みが特徴的である。本論の結論では、州政府、県、基礎自治体および連合体、それぞれのレベルでの計画内容を収集、ヒヤリングし、計画体系の整合性と現状の課題を明らかにしている。
  • モンペリエ都市圏共同体を中心に
    岡井 有佳, 大西 隆
    2004 年 39.3 巻 p. 175-180
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    1999年フランスで創設された都市圏共同体は、都市整備をひとつの権限とする、基礎自治体間での広域行政組織のひとつである。この論文は、フランスの広域行政組織の変遷を概観し、都市圏共同体の制度創設の背景と仕組みについて言及した上で、都市計画行政における役割を明らかにするとともに、モンペリエ都市圏共同体を例として、都市圏共同体の現状と課題について考察を行った。この研究から、生活圏である「都市圏」すべてのコミューヌによる都市圏共同体の設立には課題を残すものの、「都市圏」を単位とする都市圏共同体は、都市計画の決定主体であるとともに、中央政府と契約行為を行う「都市圏契約」という実現手段と独自の財源を持つことから、都市整備行政において重要な役割を担っていることがわかった。
  • 都市再生に向けたまちづくりの背景と現在的諸相
    川崎 興太
    2004 年 39.3 巻 p. 181-186
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、都市再生に向けたまちづくりの背景と現在的諸相を把握するための事例調査であり、過去 30年間にわたる東京都中央区のまちづくり施策の変遷について、大きくは2期に区分しながら分析している。戦後一貫して減少していた定住人口が底を打った平成9年前後までの第1期においては、定住人口の増加及び住宅供給の促進に向けたまちづくり施策が実施された。国によって都市再生政策が実施された時期にあたるそれ以降から現在に至る第2期においては、業務・商業機能の再編と良質な住宅の供給誘導に向けたまちづくり施策が実施されている。
  • 函館市を対象として
    渋谷 敬一, 小林 隆史, 大澤 義明
    2004 年 39.3 巻 p. 187-192
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,都市夜景の俯瞰景を評価する分析手法を提案する.一つ目の手法は,量的要素として,眺望地点からの市街地の立体角を計測する.二つ目は質的要素で,車のヘッドライトや街灯といった光のラインが見えるかどうかを考え,対称とする道路総延長に対する光のラインが見える割合を可視率として計算する.これら二つの手法を用いて,函館の夜景を 1975年から 2000年にかけて5年間隔,計6時点を分析した.先ず,代表的な夜景スポットである函館山山頂からの夜景は,十分な立体角を有していること.次に,市街地の拡大が,函館市街地郊外から函館山を望む裏夜景と呼ばれる,新たな夜景スポットを生み出したことを立体角から示した.最後に,近年の建物の高層化が光のラインの可視率を減少させていること,また防火対策による街路拡幅が結果として連続的な光のライン生成に役立ったこと,街灯整備が可視率上昇に効果的であることを定量的に論じた.
  • 前橋市の総合公園を事例として
    塚田 伸也, 湯沢 昭
    2004 年 39.3 巻 p. 193-198
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,大公園の利用に着目し,歴史や文化財,既存の樹林などのポテンシャルが有効に施設緑地として活用されている前橋市の大室公園を事例に利用特性,満足度における評価構造,利用で得られた心理的効用及び再利用への評価の影響を階層的かつ定量的に研究を進めたものであり,以下の知見を得ることができた。大公園の利用実態調査を行い,地方都市圏における公園利用者の入退利用時刻,誘致圏及び滞在時間の実態を把握した。また,利用施設毎に利用率と満足率を調査することにより施設利用の特性を概観した。園内でのアクセスや公園の有する緑のポテンシャルが大公園の総合満足度に特に影響を与える要素であり,設計から管理に至るまでトータルに捉えた快適性を実現することが有効であると考えた。利用時における意識動機と利用を通じての評価(再利用意識),公園の総合満足度,諸活動の評価,心理的な価値を階層的に捉えた大公園の総合評価構造をモデル化し,各要素間の影響について定量的に把握することができた。
  • 赤坂 信
    2004 年 39.3 巻 p. 199-204
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    史蹟名勝天然紀念物保存法時代から 2004年現在の文化財保護法で指定された名勝は 326件、そのうち 169件が戦前の 1922-1937年の 16年間に集中している。こうした状況の社会的背景や名勝保護をめぐる議論を整理し、考察する。急増する名勝の指定件数に対してその対象の保存・維持に手がまわらない状況があり、保存・維持を具体的に実現させるためのプログラムを早急に用意するべきだという提言や史蹟名勝天然紀念物保存法の役割はもはや終わったとする解体論まで登場した。名勝指定が大正末期から昭和初期にかけて集中し、しかも名勝の「公園、庭園」のカテゴリーが戦前に4割以上(現在までの総指定件数の)がすでに指定されていたことは特筆に値するが、また逆に名勝の意味するところが「公園、庭園」のカテゴリーに重点的に担わされてきたことを示すものである。ランドスケープの保護に法的根拠を集中的に与えていた時代に何を「名勝」としていたかが歴然としてくる。そこに名勝保護と公園事業が関連づけられる背景がある。
  • 鎌倉市神戸川を事例として
    山下 英也, 片桐 由希子, 石川 幹子
    2004 年 39.3 巻 p. 205-210
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    自然と共生する流域圏が、近年の大きなテーマとして注目され、流域や都市における環境のマネージメント手法の確立が課題となっている。一方、流域は広域に及ぶ大河川の流域から小河川の流域、さらにそれを構成する小流域と様々な流域のスケールが存在する。本研究では、緑の基本計画などに対応する詳細なスケールにおいて、小流域を枠組みとした緑地環境の変遷をGISを用いて解析することを目的とした。詳細な分析を行うため、小流域図、土地利用図、現存植生図といった、基礎的な図面データの整理を行った。1954年と 2000年の土地利用図から樹林地の増減傾向を把握し谷戸の環境特性との関係を考察した。また、各地目の変化量から小流域の都市化の傾向や緑地の分布特性について把握するため、クラスター分析により小流域を類型化した。次に、類型ごとの緑地の特性を把握するため、類型ごとの植生比率を分析し、緑地の質について傾向を把握した。
  • 金 賢, 西井 和夫, 佐々木 邦明
    2004 年 39.3 巻 p. 211-216
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、富士五湖地域における観光地 ITS構築に向けて,周遊行動に着目した情報利用に関する調査に基づき周遊行動と情報利用実態の把握を行う.さらに,情報利用特性データに対してクラスタ分析の適用と数量化 I類による周遊行動と情報利用との関連性を分析することを目的とした。その結果アクティビティ・アプローチ調査によって得られた周遊行動データと,周遊行動の各活動における情報利用ダイアリーデータの収集により,情報利用と周遊行動の関係を把握をすることを目的とした.その中で,情報利用の特性データに対してクラスタ分析を適用して,性質の異なるグループの抽出を行った.また,数量化 I類分析を用いて,周遊行動における訪問スポット数や滞在時間といった周遊特性と情報利用の関係を明らかにした.
  • 空間的・時間的側面から見た生活行動
    井上 由梨, 後藤 春彦, 村上 佳代, 田口 太郎
    2004 年 39.3 巻 p. 217-222
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    これまで、我が国の観光地の多くは観光資源、観光施設単体での集客に特化し、日常生活の空間や施設を地域資源と見なさず、まち全体での集客を行っていくという意識に欠けていた観光地が多くあった。近年国土交通省では観光振興方策を新たに出し、地域住民全体が観光客と互いに交流しあい、共に楽しむことが可能な観光を振興していく必要があると提言している。温泉観光地を生活の場とする住民は、観光客の多いの夏場・冬場には道や外湯の混雑により、日常生活に大きな影響を受けている。住民と観光客がまちをどのように利用しているのか現状を把握し、生活者側からの視点で観光を捉え直すことは重要な課題である。
  • 横浜シティガイド協会を対象として
    今井 亮輔, 中井 検裕, 中西 正彦
    2004 年 39.3 巻 p. 223-228
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    都市観光において観光資源をわかりやすく示すことは重要である。多くの都市で観光資源を観光者にわかりやすく示すために、それをつなぎルート化しているが、行政の設定した既存の観光ルートは必ずしも魅力的とは言えない。そこで本研究では効果的な観光ルートのあり方を考察することを目的とする。そのためにまず地域住民の視点から観光資源を捉えている観光ボランティアガイドに注目して、観光者のその都市の経験の違いによって、ガイドルートをどう変えているか見ていき、さらにガイドの経験の違いがガイドルートの設定に与える影響を考えていく。本研究の結果、都市を初めて訪れた観光者に関しては、既存の観光ルートで十分対応できるが、その都市に来たことのある観光者には観光ボランティアガイドのように地域住民の視点から見た観光資源を盛り込んでいて、歴史性などテーマ性がある観光ルートの設定が必要であることがわかった。
  • 鎌倉市中心市街地を事例に
    大澤 昭彦, 中井 検裕, 中西 正彦
    2004 年 39.3 巻 p. 229-234
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、地域の景観を阻害する建物高さを巡り、各地で紛争が起きている。本研究では、鎌倉市中心市街地において景観保全を目的とした高さ制限を行ったときに利用できなくなる床面積とそこから得られる収益である機会費用を個別敷地ごとに詳細に算出し、高さ制限に伴う社会的なコストを定量的に明らかにした。また、機会費用は、敷地条件(前面道路幅員、敷地面積)や立地条件によって大きく変化し、道路斜線制限等の影響により機会費用は道路幅員と敷地規模に比例する傾向が見られたが、幅員によっては道路斜線制限が機会費用を増加させる要因にもなり得ることも明らかとなった。さらに、高さ制限に伴う機会費用を低減するための手法の効果を検証し、道路斜線制限と前面道路幅員による容積制限の緩和は、超過する敷地の機会費用をある程度低減できることが確かめられた。
  • 都心業務地大阪船場地区を事例として
    Lee Hosu, 嘉名 光市
    2004 年 39.3 巻 p. 235-240
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では大阪を代表する都心業務地である船場地区を対象に、建築物ファサードに用いられるガラスの利用実態を把握し、ガラスの他にない特性である透過性と反射性によって街並み景観に出現する視覚像について考察した。その結果、.建築物に用いられるガラスのファサード構成比は建物階数に相関があり、ガラスの種類は建物規模や道路幅員規模等に関係していることが明らかになった。.透過効果は首振り角度が小さい方が現れやすく、ガラスに近接する商品や広告が視覚像としてあらわれるケースが多く、反射効果では建築物や塔屋などガラスから距離を置いたものやガラスによる反射効果を考慮しない通常の街並み景観における自然視野内で視認しにくい空が視覚像として多い事がわかった。.建築物間距離および建築物に設置されているガラスの角度と視点位置の関係をモデル化し、出現する反射効果の構成要素とその位置関係を確認したことで、透過・反射効果の活用によって船場地区のような D/Hが小さく小規模な間口で複数の建築物による街並み景観においても、開放性や奥行き感を意図的に生み出すデザインの可能性を示した。
  • 高秀 賢史, 高岡 耕子, 永井 護
    2004 年 39.3 巻 p. 241-246
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    地方都市において、中心市街地を活性化するために種々の方策が検討されている。その中で「イベント」や「祭り」は重要な手法のひとつとして位置づけられてきている。従来、催し物の経済的評価は来訪者の消費行動に着目して、地域乗数等を用いて地域経済に与える影響を計測するアプローチがとられてきている。宇都宮市においても一年間を通して30以上の「イベント」や「祭り」が中心市街地で開催されており、公共空間の整備や維持管理、地元コミュニティや商店街の対応等、それらの催し物に焦点を当てた街づくりが課題となっている。しかし、催し物の改善を図るためには、その効果を定量的に分析し、正確に把握した例は少ない。本研究は地域特性を特に反映する「祭り」を対象として、来訪者が受ける社会的便益の定量的な計測方法を扱っている。さらに二つの性格の異なった祭りを事例として、祭りの魅力の構成要素と来訪者層の関係から来訪者の受ける便益の違いを説明すると共に、提案する方法論の適用性を確認する。
  • ミチゲーションを導入した志木市自然再生条例を中心として
    宍倉 正俊, 横内 憲久, 岡田 智秀
    2004 年 39.3 巻 p. 247-252
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、わが国でミチゲーション( mitigation)を普及させるために、埼玉県志木市における現行制度の運用実態と、その課題点を明らかにするものである。そこで、「志木市自然再生条例」を中心に、文献調査、関連機関へのヒアリング調査を実施した。その結果、事業用地の取得が主たる課題であることを捉え、解決へ導くための方向性を示した。
  • 千代 章一郎, 横山 尚
    2004 年 39.3 巻 p. 253-258
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、都市観光景観の史的変遷の問題を考察するため、とくに広島市における定期バス観光案内の眺望対象の変遷過程を定期観光バス事業開拓期(昭和 29年~昭和 47年)について復元することを目的とする。ガイドテキストと元バスガイド2名へのヒアリングによる分析の結果、都市景観形成に関わる2つの結論を得た。すなわち、1)戦後復興期における都市整備によって、新奇性の高い施設が観光景観に組み込まれる。2)その一方で、事業開拓期においては、とくに瀬戸内海という伝統的な眺望対象に対する説明形式が多様化していく。
  • 青森県弘前市における「看板建築」を事例として
    齋藤 亮, 後藤 春彦, 佐久間 康富, 上原 佑貴
    2004 年 39.3 巻 p. 259-264
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は青森県弘前市における看板建築を対象にする。看板建築においてファサードの境界と、住宅と商店の境界部分に着目し、そこで、住み手がどのような意識で改築をおこなったのかを明らかにする。その結果、以下の3つが明らかになった。ファサードに対する意識が変化したこと。住宅と商店の境界変化は商業的要因が大きく関係する。2境界の変化は同時期に起きている。
  • 一連の日照権闘争と国立のまちづくりを踏まえて
    内田 雄造
    2004 年 39.3 巻 p. 265-270
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    (株)明和地所の国立マンション建設をめぐる民事訴訟で 2002年 12月に東京地裁の判決がなされた。裁判所は、国立大学通り周辺に居住する原告に対し、「景観利益」の発生と当該マンション建設によりその利益が損なわれることを認め、建築基準法に適法な当該マンションについて、私法上の合法性を欠いていると認定し、建築の一部分の取り壊しを命じた。本論では、この問題を考察し、.ローカルルールをまちづくりに活用すること、.景観をまちづくりの価値として尊重すること、.まちづくりにおけるデュープロセスの重視の必要性、などを論じた。
  • ヘッセン州の農村地域発展プログラムを事例に
    飯田 恭子, イプセン デトレフ, ズスト アレクサンダー, 高野 公男
    2004 年 39.3 巻 p. 271-276
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、多様で自立した地域が形成される可能性が見られるドイツの農村地域の事例として 1992年に設置されたヘッセン州の農村地域発展プログラム( Programm zur laendlichen Regionalentwicklung in Hessen)を取り上げて、草の根的な住民プロジェクト群を公益的な地域発展協会によるマネージメントで EUと州政府がサポートする仕組みを考察した。プログラムは、地域発展の可能性に門戸を広く開き、公平性よりも自発性と多様性及び発展性を重視していた。異なる資源や視点を包含する各地域では、住民や多分野の職業人、企業や組合などの地域発展の機動力となる人々や組織が自発的にアイデアを出し、個性的なプロジェクトを展開していた。プロジェクトの担い手は、自らの活動が地域に与える影響や効果に視野を広げており、アイデンティティをもちながら自立した地域を発展させる可能性が感じられた。しかし、地域政策全体では集約化と合理化にむけたハード整備中心のプログラムが同時進行し、いくつもの矛盾した選択肢が共存している。地域政策の方向性を見極めて政策の総合性を築くことが今後の課題だろう。
  • 松村 茂久, 岩田 鎮夫
    2004 年 39.3 巻 p. 277-282
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、ホーチミン市における都市計画マスタープランに基づく都市開発の規制・誘導システムに焦点を当て、その運用実態及び問題点を明らかにし、同時に移行経済体制下のベトナムにおける、これらの問題点に対処するための方策について考察を行うものである。約2年に及ぶ現地での調査の結果、ホーチミン市の都市計画マスタープランは、首相承認後5ヵ年以上が経過した現在、市政府が意図したようには有効に機能していないことがわかった。また、マスタープランの実効性が極めて弱いものとなっている要因としては、 (1)関連する法制度の不備、 (2)非効率的な開発の許認可プロセス、 (3)行政の能力不足、 (4)都市計画マスタープランの技術的な問題などが確認された。
  • 村山 顕人, 小泉 秀樹, 大方 潤一郎
    2004 年 39.3 巻 p. 283-288
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    都市空間計画の策定は、都市の現在そして未来の状況を見据えながら、市民、企業、政府、その他団体等の多様な主体の都市空間に対する要求を将来像として整合的・統括的にまとめ、その実現手段を確保する取り組みであり、既成市街地の更新においても重要な役割を果たす。日本における計画策定作業の展開に寄与すべく計画策定技法の探究を進めるためには、多くの事例の分析を積み重ね、計画策定作業を支える技法を特定・体系化することが望まれよう。本研究では、その初歩として、1980年代米国諸都市の代表的なダウンタウン・プランの1つであり、計画策定作業の3つの側面(「現状分析・将来予測」、「空間構想・空間構成」、「合意形成・意思決定」)が認識されるダウンタウン・シアトル土地利用・交通プラン策定の事例を取り上げ、計画策定作業全体を構成する作業単位を把握した上で、各作業単位の内容を記述・再現し、適用された計画策定技法の存在を示すことを目的とした。本研究の成果は、今後進めるべき個々の計画策定技法の探究の出発点となり得る。
  • 住み手主体の持続型住環境管理システム構築のための研究
    齊藤 広子
    2004 年 39.3 巻 p. 289-294
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    ○齊藤広子(明海大学)持続型社会に対応した居住者主体の住環境管理システムを構築するために、アメリカ HOAの役割とそれを支える法制度を明らかにしている。カリフォルニア州ではHOAはコモンスペースの管理、私有空間の管理、レクレーションの提供などを行っている。それを支える社会的体制として、1.組織に法的根拠があり、2.存立から開発許可と連動し都市計画・都市経営制度の中で位置付けられる。3.組織構成員になることは土地に付随した権利であり、不動産制度によりその組織の存立・維持が保障される。4.宣言の登録、組合運営などに関する州法の整備、パブリックレポートの発行等の直接的な行政対応があり、5.情報開示による不動産取引のための市場整備という間接的な行政対応、6.管理担当者の教育制度の充実という支援体制、以上がある。日本においても持続型社会に対応した住環境管理システム構築には上記の点の検討が必要である。
  • デュッセルドルフ市・エコトープ・ヘルドを事例として
    山口 美貴, 大村 謙二郎
    2004 年 39.3 巻 p. 295-300
    発行日: 2004/10/25
    公開日: 2017/08/02
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、デュッセルドルフ市のエコトープ・ヘルド( Oekotop Heerdt=以下 OeH)を研究対象として取り上げ、行政と市民がどのような係わり合いを通じて計画内容を具体化・修正しているのかを明らかにし、わが国における市民発意による提案型都市計画への示唆を得ることを目的とする。本研究の成果としては、計画関連文書の分析及び現地ヒアリングにより、以下のことが明らかになった。1)行政は、計画内容が具体化していない段階で市民の意見を収集したことにより、地域ニーズに柔軟に対応し、それを計画に反映させることができた。また、計画構想案策定の段階で提案実績のある市民団体とパートナーシップを築くという行政の積極的な姿勢が見られた。2)提案主体である市民団体は、大学機関との協働することで提案内容の専門性を高めることができた。また、協会に登録し会則を設けたり、民間企業から金銭的な援助を受けることで、継続的な活動を可能にした。3)計画策定を通じて結成された市民団体が、計画策定終了後も行政とのパートナーシップのもとに地域で活動を続けており、計画実現の上で重要な役割を担っていた。
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