都市計画論文集
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40.1 巻
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  • 杉田 早苗
    2005 年 40.1 巻 p. 1-8
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、近代東京の公園計画の計画図面を分析対象に用い、公園計画の量的・地理的な配置特徴を定量的に把握した上で、計画図面と当時の計画標準との関係の変遷を明らかにすることを目的としている。研究の成果は次の2点である。1.初期には計画図面と計画基準が大きく異なっていたが、大・小公園ともに計画図面と計画標準が合致する計画へ変化した。この過程において、小公園は計画図面に示されなくなるが、計画図書に示された数量は計画標準を十分に満たしていた。終期には広大な緑地が計画されたことにより、公園総面積が計画標準に比して大きく不足していた。2.計画標準が洗練されるとともに理想的配置を実現した大公園と、計画図面上から消失する小公園が考察されたが、その後は大公園も消失する方向性にあった。
  • SRU法及びUH法に基づく策定・承認プロセスとレンヌ地方の市町村間協力の事例
    河原田 千鶴子, 宮脇 勝
    2005 年 40.1 巻 p. 9-20
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究はフランスで2000年12月に制定された「都市の連帯と再生に関する法律:SRU法」の中心的な改革点である広域統合計画SCOTにおける市町村間の協力体制に着目している。市町村間の連携を自治体主導で強化するシュベヌマン法(1999)により36,700の市町村をまとめるフランスの経験は、市町村合併を推進する我が国でも注目されるべき事例であると思われる。そこで、本研究はSRU法による都市計画法典の改正に基づくSCOTの法的解釈と特徴を踏まえ、レンヌ市広域圏で現在作成中のSCOTについてその市町村間協力に着目し、現地調査を行った。最も重要な法的解釈による特徴は「SCOTなくして開発なし」を原則としていることで、現地調査のレンヌでは国の意図する対象範囲ではなく、市町村間のまとまりを尊重した結果として「レンヌ地方le pays de Rennes」という括りでSCOTが作られることとなっていることが明らかになった。
  • 金 甲星, 金 成振, 李 太鉉
    2005 年 40.1 巻 p. 21-29
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    1960年代より、ソウル都市圏(SMA)において人口の集中化が高まっている。韓国政府はソウル都市圏(SMA)の住宅不足を緩和させる目的で住宅ユニットを供給している。しかしながら、有識者、研究者は、その住宅供給の取り組み自体が周辺地域からソウル都市圏への人口流入を誘因しているとの見解を示している。本研究では、Granger-Sims因果性の仮説テストと連立方程式モデルを用いて、住宅供給と人口集中化の因果関係について洞察を得ることに主眼を置いている。本研究では、住宅供給が人口流入を誘発しさらに住宅の増加を促すという関連が明らかとなった。ソウル都市圏への過剰な人口集中を回避する為には、現状の供給側の視点に立った住宅不足の解決策としての住宅政策は再考するべきであるとの示唆を得た。
  • 垣内 恵美子, 林 岳
    2005 年 40.1 巻 p. 30-39
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    芸術的ガラスの販売と歴史的建造物保存を目的に1988年に設立された第3セクター(株)黒壁は、1995暦年産業連関表による経済波及効果推計により、黒壁目的の観光客によるガラス購入、近隣商店での消費、駐車場利用や宿泊で直接消費額約15億円、2次効果まで含めると約23億円を滋賀県全体にもたらしたと考えられる。一方、黒壁の財務分析の結果を見れば、利益率を向上させ、競争力を維持するためには、ガラスの芸術性を高めるためにより大きな投資が必要である。したがって、従来黒壁が行ってきたまちなみ建造物保存は、黒壁の活動で裨益する近隣商店街、地域コミュニティや、長浜市との連携、共同負担によって行われる必要がある。
  • スリランカ・コロンボの事例を通して
    プレマクマーラ D.G.J.
    2005 年 40.1 巻 p. 40-50
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、途上国の都市貧困分野においては、所得・消費水準のみでは人びとの福祉を測定するには不完全であること、さらには、貧困層自身の観点を貧困概念の基礎とすべきであること、等が主張されている。本論は、このような新たな観点から、コロンボにおいて参加型調査方法を導入し、過去の行政調査の諸前提を批判的に振り返り、貧困理解をとらえ直す試みである。貧困層自身による貧困概念は多様であること、しかし最も基本的にはフォーマルな制度や資源や意志決定からの排除が重視されていることが、明らかになった。したがって都市貧困の行政的な定義は、経済的・物質的側面に止まらず、制度的・社会的な側面を取り入れるとともに、定義や調査項目・方法そのものに貧困者の声を反映させていく「プロセスにおける参加」を保つことが、重要となる。
  • 安藤 陽介, 横田 敬司, 吉川 徹
    2005 年 40.1 巻 p. 51-59
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文の目的は、マルチエージェントシステムによって、空き家の発生と集積および空地の商業への影響を考慮して都市衰退を分析することである。都市システムのモデルは縦横20個、計400個の正方形のセルの集合体とし、セルに空地、産業、住宅、商業エージェントが立地する。これらのエージェントは、相互作用と地代によって計算されるリクエストあるいはポテンシャルによって生成、消滅が決定される。さらにコンヴァージョン費用、人口増減、空き家の集積の影響、地代の変化を付加的要因とする。結果として、空き家は都市周辺部に発生し、空き家の集積は都市衰退を激化させ、空地と商業の間の正の影響はスプロールをもたらす。
  • 計画論からみる米国最高裁レイク・タホ判決の意義
    西浦 定継, 大西 隆
    2005 年 40.1 巻 p. 60-68
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    2002年4月23日、長年に渡って争われてきたタホ・シエラ(Tahoe-Sierra)裁判に対して連邦最高裁が判決を下した。判決では、地域環境保全の目的で施行されたモラトリアム(moratorium)がテイキング(taking)にあたらないとして合憲と判断された。この判決は、テイキングをめぐる裁判の長い歴史において、環境保全規制の合憲性を認め、計画の意義を深めたと言われている。本論では、米国のレイク・タホ(Lake Tahoe)判例から私有財産権と計画システムのあり方について考察し、合理的アプローチで構築された広域計画システムが合憲性を支えることを論じた。
  • 中国西安市の南大街における沿道建物高さシミュレーション
    張 天〓, 佐藤 誠治, 姫野 由香, 小林 祐司, 金 貴煥
    2005 年 40.1 巻 p. 69-76
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では、街路に鐘楼と城壁の2つの歴史的建築物を持つ中国西安市南大街の沿道建物高さに着目、沿道建物の高さを影響区ごとに変化させ、評価実験を行った。高さの組み合わせによって生じる街路景観が人々の心理評価にどの様な影響を与えるかを明らかにすることで、研究対象地域において望ましい建物高さの組み合わせの導出を行った。評価実験の際、被験者がよりリアルな体験を得やすく、評価がしやすいといった理由から、CGを用いたVRシステムによる評価実験を行っている。
  • 大内 裕子, 中園 眞人, 鵤 心治
    2005 年 40.1 巻 p. 77-84
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    地方都市中心市街地の空き家の増加問題にあたり、本研究は空き家の借家活用の必要性と可能性を検討することを目的としている。山口市の歴史的中心市街地である大殿地区を対象として、土地利用と建物更新状況の変化を調査分析し、1995から2001年(6年間)の駐車場・空地・空き家の増加を確認した。また1995年の居住世帯データから世帯属性を調査した結果、研究対象地区は高齢者世帯が多いことから将来的に空き家の増加が予測され、今後は空き家ストックの有効活用方策が必要とされる。さらに、当地区では伝統民家の戸建持家を借家に転用する事例の存在も確認された。
  • 久保 勝裕, 林 梢子, 石田 眞二, 寺澤 淳司
    2005 年 40.1 巻 p. 85-90
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    市街地再開発事業では、事業後も同一場所での居住や営業の継続を希望しても、必ずしも全権利者がそれを実現できないという問題が指摘されてきた。本論では、地方都市の駅前再開発事業を対象に、再開発時と現在までの2つの時点の営業権利者の動向を分析し、再開発事業以降の長期的な営業継続の実態を明らかにした。その結果、現在までの長期的動向において、 (1) 再開発ビル内で営業を継続しているのは全権利者の約3割である、 (2) 借家権者には廃業が多く、再開発ビルに残留した後に転出して、廃業したのは借家権者のみで見られる、等を明らかにした。
  • 京都市、神戸市、荒川区の地域別特性を中心にして
    金 胄錫, 高見沢 実
    2005 年 40.1 巻 p. 91-96
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    連担制度(密集市街地型)は接道や敷地規模などの問題を含んでいる密集市街地の整備において、ある区域の安全性や居住環境の向上と維持等を目標に、集団的合議・計画に基づいて、一般建築基準を緩和適用する規制誘導手法として運用されている。また、既存空間構造を生かしながら建て替えを促進する修復型整備制度とも言える。この論文は制度適用をより円滑にするための方案を探すため、京都・神戸・荒川区の制度運用基準を比較し、全体的に事例が出ない理由を制度基準の内容を現場の状況に合わせて検討した。また、特に事例が出た京都市に着目して、運用上の工夫やをその理由を調査・分析した。それをまとめ今後の制度の方向を提示したものである。
  • 寺澤 淳司, 久保 勝裕, 石田 眞二, 白木 里恵子
    2005 年 40.1 巻 p. 97-102
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    過疎地域への新規転入者は、各々が明確な目的を持って転入した場合が多く、従来からの地元住民よりも冷静に地域の実態を把握していると考えられる。本論では、まず北海道における地域圏の実態を把握し、その枠組みの中で過疎自治体への転入者の動向を概観する。更に、それらの多様な転入経緯の把握によって、過疎自治体における生活や就業の可能性を考察した。その結果、8つの転入タイプの存在が確認された。例えば、転入地を就業の場として捉えているタイプの存在は、特に中核都市に近接する過疎自治体にとって、新たな転入者像になりえる可能性を持つと考えられる。
  • 秋田県の市町村合併に着目して
    児玉 覚, 村木 美貴
    2005 年 40.1 巻 p. 103-108
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、地方分権化における地域福祉サービスのあり方を、市町村合併に着目して評価・検討することを目的とする。具体的には、サービス供給主体である市町村及び社会福祉施設から見た、福祉・介護分野、特に老人福祉における市町村合併・広域行政の実態と、広域圏・市町村合併を行う地域・単独市町村という異なる行政レベルで今後の課題を明らかにし、公的サービスがいかなる役割を担うかを論ずる。結果、広域圏では、均一なサービス提供のための計画策定、運営において、福祉・介護分野における主体の一元化を行うこと、合併を行う地域は、行政と民間のファシリテーターとして市町村が役割を担うこと、単独市町村ではPFI等を用いて総合的に福祉・介護サービスを展開することの重要性が明らかとなった。
  • 都市計画の構造転換についての理論的探求に向けて
    川崎 興太
    2005 年 40.1 巻 p. 109-120
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、都市計画の構造転換の実相を理論的観点から探究するための基礎研究として、第二次世界大戦後のアメリカを対象に、都市計画に関連するプランニング理論の変遷を考察することを目的とするものである。本研究を通じて、その目的は一元的な公益に適うものとして同定された目標・価値を効果的・効率的に実現する手段を合理的・技術的に意志決定することから、既存の政治経済的構造に関する批判的解釈活動であるとともに変革的活動であるコミュニケーション活動を通じて、多様な利害関係者間における合意形成、社会的諸集団のエンパワーメント、参加者の知的・社会的・政治的資本の増殖等を行うことへと理論的に転換していることが明らかになった。また、プランナーの役割は、政治的に中立的な立場から実証的・定量的な科学的方法に基づいて包括的なプランを案出することから、上記目的の実現を促すファシリテーター、メディエーター、あるいはイネーブラーへと理論的に転換していることが明らかになった。
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