都市計画論文集
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40.3 巻
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  • ユネスコの生物圏保存地域ロエンにおける事例 『食べて保全』
    飯田 恭子, ズスト アレクサンダー
    2005 年 40.3 巻 p. 1-6
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    ドイツのロエンでは自然保護団体が中心となり、環境共生型の農業で絶滅に瀕した在来家畜の保全活動『食べて保全』を繰り広げ、その波紋が広がり、行政が持続的発展を目指す総合計画を策定し、環境保全型のエコロジー農業が形成する景域環境を将来像に据えた。生産者や飲食店が協力してその将来像の実現を目指し、人体の健康のみでなく環境や生態系や風景をも保全する地産地消活動を展開している。しかし、ロエンの小規模な環境・生態系保全型のエコロジー農業は、一部の見識者を除く、大衆消費者の安くて安全という食べ物に対するニーズに答えられずに伸び悩んでいる。消費者のロエンの産物に対する意識調査では「自らの健康と欲求を満たす食」が望まれ、「持続する地域社会と環境のための農業」への関心が低く、「食べ物」と生産地の「場所性」のつながりを風景に読み取れる人は非常に少なく、保全に関する責任も感じていないことが分かった。消費文明に切り離された食と農の関係を、生産者・飲食店と顧客とのコミュニケーションで、消費者と風景の関係づくりを通して再構築していくことが、ロエンの持続可能な農業と地域づくりの今後の課題であろう。
  • 中心市街地活性化担当部局へのアンケート調査から
    小林 敏樹, 水口 俊典
    2005 年 40.3 巻 p. 7-12
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、公益施設の移転立地動向、跡地利用状況等の把握、行政担当者の意見の考察から中心市街地活性化に向けた公益施設整備の方向性を明らかにした。その結果、以下の知見を得た。公益施設の中心市街地外への立地の比重が高くなっており、逆に、中心市街地内立地の比重が低くなってきていることがわかった。なかでも「市立病院」の中心市街地外への移転、新設が進むと、中心市街地への来街者の減少だけでなく、高齢者、交通弱者への配慮を欠くことなどへの影響が懸念される。また、移転後の跡地利用は多様であり、それを工夫すると、中心市街地の空洞化を加速させる要因となるような移転ではなく、中心市街地活性化に貢献できる移転の可能性があることがわかった。中心市街地活性化に向けた公益施設整備の対応策として、市町村合併を契機とした公益施設の再編、公益施設整備プログラムの整備、公益施設整備への TMOのかかわり、既存施設の有効活用、公共交通ネットワークの充実等が考えられる。
  • 豊川市都市再生モデル事業における評価
    小倉 俊臣, 佐藤 秀樹, 荻野 弘
    2005 年 40.3 巻 p. 13-18
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    中心市街地の整備改善に関する事業と商業等の活性化に関する事業のハード・ソフトにわたる施策が総合的かつ一体的に推進されているが、自治体の多くで、中心市街地活性化基本計画が策定されたものの、計画の実行については、様々な事情により進捗が思わしくない状況にある。特にハード整備は行政主導で実行されるのに対し、継続したソフト対策は、商店街や市民が主導となり、その実施には組織レベルでの合意形成が必要であることもその一因となっている。そこで本研究では、商店街主導で実施している中心市街地活性化のイベントについて、その展開過程とその要因を明らかとし、この過程で設置されたファサードが観光客に与える影響について定量的に分析を行う。また、被験者及び評価者の負担の少ない評価方法を検討し、評価を結論として示すのではなく、一般的にわかりやすく商店街の課題、改善すべき点等について議論するとともに、改善された策(案)を実践するというロールプレイング方式での活性化の合意形成についての試みについて調査する。この結果、効果的な評価方法と合意形成手法について明らかとなった。
  • 浅井 崇志, 山口 容平, 下田 吉之, 水野 稔
    2005 年 40.3 巻 p. 19-24
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    京都議定書の発効により、特に排出量の伸び率の高い運輸部門・民生部門における効果的な対策の導入が急務である。特に日本の大都市では、第2次産業が域外へ移転し、エネルギー消費では民生部門と運輸部門が大半を占めており、都市が起源となる CO2排出量削減のためには、民生部門の対策が重要であることがわかる。本論では業務部門(民生部門のうち住宅以外)を対象に、機器スケールでのエネルギー消費量を地域スケールまで積み上げる構造(ボトムアップ型)の地域エネルギーシステム評価モデルを用いることで、各スケールにおける省エネルギー手法効果を包括的に評価する。特に、地域に存在する既存建物群に着目し、建物ストックの状況によるエネルギー消費量の差、各種省エネルギー手法による効果を定量的に評価する。これによって、地域の省エネルギーポテンシャルを明確にすること、地域の省エネルギーにおける建物ストック改善の意義を明らかにすることが本論の目的である。本報では、大阪市を対象として業務用建物における省エネルギーポテンシャルについての検討を行う。
  • 村木 美貴, 小倉 裕直
    2005 年 40.3 巻 p. 25-30
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、今後の環境負荷低減を目指した都市づくり、なかでも再生可能エネルギーの活用に都市計画が果たす役割を明らかにする。具体的には、既にその取組みが開始している英国、イングランドに着目する。イングランドでは都市圏別の再生可能エネルギー利用の目標値とモニタリングの仕組みが存在していた。広域都市圏の計画は、基礎自治体レベルの計画にも大きな影響を与えていた。研究を通して、我が国においても、再生可能エネルギー開発を含む技術が、都市づくりにいかなる役割を果たすのかを示した指針を都市計画サイドに用意すること、特に開発活動の大きな三大都市圏では、開発に伴う目標値を設定して、積極的に再生可能エネルギーを用いた計画を積極的に進めていくことが、今後のサスティナブルな都市づくりには有効に機能するという結論が得られた。
  • 自動車と住宅への水素併給に関わるエネルギー的検討
    朴 海洋, 小林 敬幸, 加藤 丈佳, 鈴置 保雄, 森川 高行, 葛山 弘一
    2005 年 40.3 巻 p. 31-36
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、燃料電池自動車の燃料供給インフラとして、水素ステーションの開発および実証試験が盛んに進められている。燃料電池車の導入初期段階には、水素供給インフラの整備を加速させるため、自動車だけでなく住宅や商業施設等へ水素を供給するエネルギー供給システムが有効であると考えられる。本論では、エネルギー供給元が一元化した都市構造における定量的なフィジビリティ・スタディを行なうために、ある一定の燃料電池自動車および純水素燃料電池を設置した住宅へ、水素を同時に供給するモデルにおいて、各種エネルギー需要データおよび効率の実プラントデータを用いて、エネルギー消費量削減および二酸化炭素排出削減効果に関する検討を行なった。検討結果よりエネルギー負荷および環境負荷の低減の観点から、水素供給インフラには自動車だけでなく、住宅にも水素を供給するシステムが有効であることが明らかになった。
  • 中道 久美子, 島岡 明生, 谷口 守, 松中 亮治
    2005 年 40.3 巻 p. 37-42
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    人口減少時代を迎え、その中でサステイナビリティの改善が求められる状況下では、都市コンパクト化のような都市構造の改変だけで有効な方策を打ち出すことが難しくなっている。最新のモデル的検討では、郊外居住者の行動変容を伴わない限り環境負荷の低減には繋がらないことが試算されている。つまり個人の交通行動を把握するためには、地区側の条件だけでなくその個人がそもそもどのような行動特性を有するかという観点からの検討が求められている。しかし、わが国の都市居住者のもたらす交通環境負荷が、地区側、および個人側条件をクロスして見た場合、実際どんな値を示しているのかという最も基礎的な情報はまだ整理されていない。そこで本研究では、わが国の地方中心都市全体を対象とし、自動車依存特性を個人属性(行動タイプ)及び地区属性(住宅地タイプ)の両面から実際の数値として整理する。その結果、環境負荷に与える影響は住宅地タイプの違いよりもむしろ行動タイプに依存しており、個人の行動は居住する地区のタイプを変化させるだけでは簡単に転換できるものではなく、個人の属性を考慮し行動変化を促す施策が必要であることを明らかにすることができた。
  • 阿部 成治, 出口 近士, 吉武 哲信
    2005 年 40.3 巻 p. 43-48
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    宮崎市では、都市計画マスタープランを改訂して、店舗面積6万 _m2_という巨大ショッピングセンターが、中核都市の開発許可権限を利用し、都市計画マスタープランを改訂して市街化調整区域に進出した。このような事態は、 1998年にまちづくり3法が登場した頃は、全く想定されていなかったものである。そこで、進出までの経過を追跡し、都市計画制度の運用を検討した。出店表明前には、各種の計画が策定され、郊外に大型店を許容することは困難化していた。しかし、寿屋再開の見通しが立たないとして、宮崎市は出店を認めた。その後の総合計画とマスタープラン改訂では、市は結論を出したとして、その時の資料も出さないまま、「レジャー・交流拠点」が追加され、開発許可が行われた。その後、反対派の審査請求は却下され、大店立地法の手続きでは、指針よりかなり少ない駐車台数が認められている。
  • 連担市街地条例・外部地域条例の運用と外部地域における開発実態を中心として
    姥浦 道生, 丸茂 悠, 川島 和彦, 三島 伸雄
    2005 年 40.3 巻 p. 49-54
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年の我が国の郊外部における土地利用コントロールの最大の課題は、無秩序な開発の抑制と集落の維持という、一見相反する内容の問題をいかにして解決するかという点にある。この点ドイツにおいても、我が国同様、離散的に集落が郊外に広がっている場合もあるため、そのような場合に開発をどのようにコントロールしているのかを明らかにすることが、わが国の開発コントロールシステムおよびその運用の改善に重要な示唆を与えるものと考えられる。そこで本研究では、ドイツにおける郊外部の開発コントロールの運用実態を、特に内部地域条例・外部地域条例という二つの郊外土地利用規制緩和型条例に着目して明らかにし、それにより、ドイツにおいて無秩序な開発抑制を集落維持・活性化をどのように両立させているのかに関して考察を行った。
  • 清岡 拓未, 谷口 守, 松中 亮治
    2005 年 40.3 巻 p. 55-60
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、人間による生活活動の環境負荷に及ぼす影響を定量的に検討することが、都市政策をめぐる重要な局面で要請されるようになってきている。特に持続可能性という観点から、様々な土地利用政策の貢献可能性を提示することは、今後必要とされるにも関わらず、実証レベルでの検討が十分に進んでいない分野といえる。そこで本研究では、従来マクロな観点で導入されていたエコロジカルフットプリントの概念を、市町村レベルの環境負荷指標として用いることのできる分析ツールを提案し、地域毎の政策の方向性を議論するための指標として実際に定量化を試みる。その結果、無秩序な開発や土地利用政策が将来の環境負荷量に及ぼす影響を統計的に明示することができた。
  • シリコンバレー・フェファックス・オースティンの比較考察から
    海道 清信, 村山 隆英
    2005 年 40.3 巻 p. 61-66
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    アメリカにおいては持続的地域発展に関し本来的な役割を有している地方自治体に匹敵する活動を行なっている地域リーダーシップ組織が見出せる。この組織の多くは 1970年代より産業界・行政・大学・市民等のリーダー達が総合的地域経営主体として形成したものであり多様な形態のものが見出せる。その典型的なものが地域振興型 NPOである。この地域振興型 NPOについて「地域リーダーシップ組織」という視点から、その活動実態を明らかにすることが本研究の目的であり、次の3つの視点から検討した。 _丸 1_創設の経緯、 _丸 2_活動内容、 _丸 3_発展過程と主要なリーダー構成員。その結果、 _丸 1_米国における地域経済発展と地域振興型 NPOの関連で3つの典型的都市圏を見出した。 _丸 2_3都市圏の地域経済の発展段階に対応して形成された地域振興型 NPOの主要な目的は、設立母体の利益実現、地域の特定課題の解決、総合的地域経営の3つの分野に分類でき、それに対応し地域振興型 NPOも組織形態も単一分野型、公民共同型、 NPO相互のネットワーク型の3つの類型が見出された。
  • ジョグジャカルタ特別州におけるケーススタディー
    志摩 憲寿, 城所 哲夫, 大西 隆
    2005 年 40.3 巻 p. 67-72
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    東南アジアを含む開発途上国では地方分権化や市民社会への志向を背景として地方政府の政策決定過程への住民の参加はますます重要性を増しており、このような参加を通して住民と行政の双方がエンパワーメントされ、住民と行政の新しい関係性が構築されることが望ましいと思われる。インドネシアにおいても、特に地方政府に大幅な権限の移譲がなされた 1999年の地方分権化 2法に基づく地方分権化以降、同様の重要性が指摘されるところである。このような現状をふまえ、本研究はインドネシア・ジョグジャカルタ特別州における事例研究を通して、インドネシアの年次開発計画策定過程における参加に対する地方政府の取り組みを検討し、住民と行政の新しい関係性が構築されるプロセスを考察するための礎とするものである。本研究を通して、年次開発計画策定家庭全体に関わる問題点、年次開発計画策定過程における住民の参加に関わる問題点及び参加の問題点に対応した県・市の取り組みを具体的に指摘された。
  • マスタープランのプランナー、都市計画決定手続き、市民及び各種団体への公示に着目して
    宮脇 勝
    2005 年 40.3 巻 p. 73-78
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、まず第一に、イタリアの都市計画法( 1942年)に基づくマスタープランなどの都市計画制度の普及について研究したものである。政令に基づき、 1954年に 100の自治体が、 1971年には 4022の自治体がマスタープラン策定の義務を持っていたが、今日までに地方分権の下で、全国 8104の自治体の約 96%までに普及が進んだことが明らかにされている。マスタープランの内容も、日本との違いが明らかにされていて、例えば、マスタープランにセットされるゾーニング区分に基づいて建築物許可制を行っていることや、マスタープランの案をつくるプランナーの制度、マスタープランの決定には、市議会の決議採択と、州政府または県の承認が必要となるなどである。結論として、都市計画決定手続きにおけるプランナーや市議会の重要性を報告している。
  • 台北市の「社区規劃師」制度を事例として
    張 翠萍
    2005 年 40.3 巻 p. 79-84
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、台北市の「まちづくり」活動を支援する仕組みとしての「社区規劃師」制度の実態を明らかにすることを通して住民主体の「まちづくり」の展開に資することを目的とする。行政資料の分析・整理、現地観察調査を行い、以下の結論を得た。 1)社区規劃師の支援によって、身近な生活環境を官民協働で取組んでいる「地区環境改造計画」の提案数と入選数が大幅に増加した。また、その入選数の半分以上は「社区規劃師」との協働によって地区住民団体が独自に提案したものであった。その結果、地区における環境空間が目に見えるように向上、利用者の好評を得た。「制度」は、一定程度の効果があったと言える。 2)都市と大学の連携で地域環境を創出するという視点から、大学に人材と設備活用の支援を求め社区規劃服務センタ -を十二行政区に設置したというユニークな手法は、示唆に富む。 3)社区規劃師の若手人材及び「社区権能」の育成教育は、物的空間整備や「ものづくり」以前に「ひとづくり」を重視するものとして評価に値する。一方、縦割の弊害をなくすため行政内部の支援体制づくりが不可欠であるが、さらに地区レベルへの自治体内分権が次の政策課題となる。
  • 三鷹市基本計画改定でのe コミュニティカルテの運用を事例に
    真鍋 陸太郎, 村山 顕人, 小泉 秀樹, 大方 潤一郎
    2005 年 40.3 巻 p. 85-90
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    参加型まちづくりでは、広く市民に情報提供を呼びかけることや、市民間での情報交換を促して情報の質を高めることが重要であり参加手法の1つとしてインターネットを用いることは一般的になってきている。インターネット上の地図と関連付けた掲示板も活用されるようになってきたが、このことにより情報の質や議論の展開がどのように変化するかについては明らかになっていない。本研究ではインターネット地図型掲示板を、位置情報を付加できるインターネット上の情報コミュニケーション技術としてとらえ、収集・蓄積される情報や展開される議論の特徴を明らかにすることを目的とする。なお、本研究では、 2004年に東京都三鷹市で行われた「eコミュニティカルテ」の実験を対象として分析をおこなう。本研究の結論として、次の2つの特徴を得た。1つは、インターネット上の地図に収集・蓄積される情報は発言の方法が異なるいくつかの「機会」によって特徴が異なり、それらはお互いの短所を補完しあうということ。もう1つは、位置情報を付加することで収集・蓄積される情報は具体的なものとなり、議論は空間的関係という論点を持って展開するということである。
  • 群馬県伊勢崎市を事例として
    橋本 隆, 湯沢 昭
    2005 年 40.3 巻 p. 91-96
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    この論文の目的は、市町村合併後の都市計画区域の地域格差と住民意識の関係を明らかにすることである。研究の着眼点は、都市計画と都市構造と住民意識の3つの関係を定量化することである。分析を行った都市は、既に市町村合併した群馬県伊勢崎市である。住民意識の分析においては、住民意識調査の結果を用いて因子分析と共分散構造分析を行った。分析の結果、都市計画と都市構造と住民意識の3つの関係には、密接な関係があることが分かった。この論文は、これらの分析結果を発表し、都市計画区域の再編の一助とするものである。
  • 都市の形状と交通基軸パターンがバランス・メカニズムに与える影響
    本間 裕大, 栗田 治
    2005 年 40.3 巻 p. 97-102
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、人々の購買行動が商業施設の発展・衰退に与える影響を時空間的に分析することを目的とする。 Harris-Wilsonのバランス・メカニズムでは、ハフ・モデルを用いて、小売業における需要と供給の吸収均衡を詳細に分析している。本研究では、都市形状・交通機軸パターンの 2つの側面からバランス・メカニズムの一般化を図る。具体的には、扇形都市、放射・環状道路網を想定したうえで、商業の集積地点がどのように変化するか考察を行った。また、モデルの有効性を確認するため、東京圏・日本列島の分析への応用を試みた。本分析は、現実における都心や都市の形成に対するひとつの説明原理になると考える。とくに日本列島における分析では、新幹線の敷設プロジェクトをモデルに組み込むことによって、大量高速輸送機関が空間構造へ及ぼす影響も議論した。
  • 鵜飼 孝盛, 栗田 治
    2005 年 40.3 巻 p. 103-108
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、都市内の 2地点間の距離により決まるような相互作用に基づき、ある種の都市活動が、都市内にどのように分布するかを数理的に記述することである。そのような分布を得るために、領域内の任意の地点から影響を及ぼしうる距離や時間の限界としてみなされるような閾値を用い、 1または 0の値をとる隣接関数を定義する。この隣接関数を用いて、連続的な都市平面を含むいくつかのモデルに適用可能な定式化を行い、実際に計算を行う。その結果、都市の大きさと閾値の比によって集中と分散が生じることが示される。また、隣接関数が特別な条件を満たす場合においては、アクティビティ分布が時間圏域の面積に比例することを示す。
  • ウィルソンのエントロピー最大化法の一般化とその応用
    栗田 治, 本間 裕大
    2005 年 40.3 巻 p. 109-114
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    この論文では、ウィルソンの二重制約付きエントロピー最大化による空間相互作用モデルを一般化し、トリップ途中の立ち寄りを扱えるモデルを追求する。古典的なエントロピー・モデルが発生制約と集中制約にしたがって導出されることは周知であろう。本研究では、これに立ち寄り制約を追加することによって、 2つのタイプの空間相互作用モデルを提案する。我々の空間相互作用モデルは都市計画における幾つかの実際的な事柄に応用することができる: (i)3重制約の下でのトリップ分布の推定; (ii)空間相互作用の下での都市施設への立ち寄り客数の推定。
  • 吉田 直樹, 北詰 恵一
    2005 年 40.3 巻 p. 115-120
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、都市緑地面積とその空間関係の双方を考慮した都市緑地政策の評価を行うことを目的とする。このため、2階集塊性指数と住民のアクセシビリティを組み合わせた新しい統合指標を開発し、その他の既存の指標と併せて、ケーススタディとして、大阪市の区別の都市緑地政策に適用した。その結果、 (1)集塊性指数が、実際の都市における緑地政策にも適用できること、(2)生物の観点から見た都市緑地整備の効率性を評価することができること、 (3)その効率性とアクセシビリティの双方の観点から、区別に都市緑地分布をパターン分けできること、 (4)それらの統合指標が、生物と人の両方の観点から行われる都市緑地政策を明示的に評価できること、がそれぞれわかった。
  • 尾崎 尚也, 大澤 義明
    2005 年 40.3 巻 p. 121-126
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    市町村合併協議において重要かつ必須な協議項目の 1つに本庁舎の位置がある。本庁舎の位置は行政サービスの利便性と直結し、地域の代表場所というイメージもあり住民にとっても関心の高い話題である。しかし、合併協議においてこの議論が紛糾し破談になる場合もある。そこで、本研究では人口と位置から算出される総移動距離最小化問題(ウェーバー問題)をもとに既存の市町村役場がウェーバー問題の端点解となるための人口条件を求め、その条件から庁舎の地理的優位性を定義し、地理的優位性と本庁舎決定位置との関係を実際の合併協議の結果から数量的に示す。その結果、旧市町村が合併後人口の過半数であれば地理的状況に関係なく端点解となることを証明した。また、端点解になる市町村がある、すなわち地理的優位な市町村があれば、本庁舎となりやすいことを合併データから示し、地理的優位性が本庁舎位置決定に対して重要な役割を果たすことを数量的に明らかにした。
  • 筑波研究学園都市を対象として
    菊地 穂高, 腰塚 武志
    2005 年 40.3 巻 p. 127-132
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では自転車と自動車の走行時間と駐車時間に関するモデルを作製し、現実の場であるつくばセンターから半径5kmほどの圏域で各地点ごとに、センターまでの所要時間を計算したものである。駐車場の混雑度や自転車の定常スピードによって多少の変化はあるものの、所要時間に関して自転車が優位となる地点を明らかにすることができた。これによるとごく普通の状況で人口の半分が自転車の優位な地点に住んでいることが明らかになった。また、つくばは広い範囲にペデストリアンデッキが張り巡らされているが、この効果もデッキのある無しで計算することができ、現状では2万人ほどの人がデッキの効果を享受していることが明らかになった。
  • 渡部 大輔
    2005 年 40.3 巻 p. 133-138
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、都市内の道路網を点と線の連結関係で表現し、各道路辺について交差点間の近接性から構築される近接グラフを用いて評価する。まず、規則的な点分布における近接グラフを構築することで、各種の格子状道路網との関係を明らかにし、特に正方格子状道路は相対近傍グラフ( RNG)で構築されることが分かった。道路網形態を評価する点と線の数や長さを用いた指標( GTPと CF)を用いて、規則的道路網と日本国内の主要都市における道路網の比較を行い、六角格子での RNGに比較的性質が近い。そして、数値地図 2500を用いて各都市の道路網データにより近接グラフを構築し、道路辺と一致するグラフ辺を抽出した。つくばセンター地区における結果から、格子状道路網の多くの部分では RNGで構成されていることが多く、幹線道路や地形などでパターンが崩れている箇所で近接グラフ以外の辺が必要となることが分かった。さらに、一致する辺の数を構成比率として定義し、構成比率を用いて各都市間比較を行い、格子状道路の多い地区は相対近傍グラフの構成比率が高いことが分かった。これは、構成比率と GTPが比例の関係が見られることからも確かめられた。
  • 京都都市計画道路新設拡築事業における理念の考察
    木川 剛志, 古山 正雄
    2005 年 40.3 巻 p. 139-144
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    日本の都市は近代化の流れの中でそれまでとは大きく変容した。本稿の目的は、この“近代化”が何を意味したのかを、京都を事例として分析し、考察することにある。この目的のため、京都の時代ごとの都市形態の解析、京都都市計画道路新設拡築事業に見られた計画意図の分析を行い、それらを比較した。この比較により、京都の形態が近世から近代へと変容する際には西大路通りの整備事業の影響が強いことがわかった。しかし、この変容は当時の市当局の意図したものではなかったことが計画意図の分析から見出された。計画意図は、環状道路を新設することにより京都を放射状都市へと変容させることであったが、京都の近代化はそれまでの都市の中心部に並立する形で周辺部に形態上の中心を作ることにより実現され、この意図と効果には乖離があったと言える。本稿の結論として、京都における近代化は脱中心性と均質化の流れの中で起こったことが示される。
  • 増山 篤
    2005 年 40.3 巻 p. 145-150
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    この論文では、ある地域に関して連続量の空間分布が与えられたとき、ごく妥当ないくつかの条件を満たすように、可能な限り属性値の均質な部分領域に分割する方法を提案する。まず、第一に、既存の均質部分領域への分割方法に関するレビューを行う。第二に、均質部分領域への分割方法が満たすべき条件について考える。そして、既存方法が、そうした条件を十分に満たさないことを示す。第三に、上の条件に沿う方法の提案を行う。具体的には、まず、均質部分領域の中心となるべき点を抽出し、それらの間に隣接関係を与えたネットワークを構築する。そして、そのネットワークの切断を行うことによって、地域分割を行う方法を提案する。第四に、数値例を用い、メッシュデータを対象として上の方法を実行する計算手続きを示す。最後に、今後の課題について述べる。
  • 安藤 朝夫
    2005 年 40.3 巻 p. 151-156
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は直線上で隣接する 2自治体が、典型的な迷惑施設とされるごみ処理施設を個別に建設する問題を考える。処理施設を遠隔地に置くと負の外部性を減らすことができるが、遠距離輸送を賄うために高い税金を払う必要がある。数値解析の結果、モデルの解として得られる都市形状は、パラメータや外生変数の組み合わせに応じて 1ないし 4の住宅地区を含む。モード間の推移は非連続的に生じるため、通常の比較静学分析によって定性的な性質を導くことは困難であり、幾つかの性質を統計的仮説の形で記述することで結果の普遍性を担保することを考える。さらに処理施設の立地点の組み合わせを動かすことで、社会的に最適な立地点についても検討する。
  • 古山 正雄
    2005 年 40.3 巻 p. 157-162
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿の主題は、地域構造を表現するネットワークの一つである近隣木を取り上げ、その長さの上限値と下限値を理論的に考察し、さらに実用的な長さの推定式を導出することである。本稿で得られた結果は次の 3つに要約できる。結果1「頂点数Nが 20個未満のとき、近隣木は第一近隣辺と第二近隣辺で構成され、第三近隣辺が使用される可能性はきわめて低い」結果2「一辺1の正方形内にN個の点がランダムに一様分布しているとき、近隣木の長さの上限値は 0.695√N以下と推定できる」結果3「一辺1の正方形内にN個の点がランダムに一様分布しているとき、近隣木の長さの実用的推定値は 0.666√Nである」
  • GISを用いた調査と分析
    羽鳥 洋子, 岸本 達也
    2005 年 40.3 巻 p. 163-168
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、集合住宅における居住用途以外の複合・混在の実態について明らかにすることを目的とする。本研究では、集合住宅に居住以外の目的で利用されている部分が混在している現象を「用途混合」と呼ぶ。そして用途混合の空間的な分布をゼンリンおよび東京都のデータから GISを用いて可視化し、また統計的な分析を行うことにより、その特徴と実態を明らかにする。 2章で GISを用いたデータベースの作成法について述べ、 3章で東京 23区全体での用途混合の空間的な実態の分析を行う。さらに地域を限定して、一定エリアの用途混合の実態を詳細に分析する。4章では、限定した地域について駅からの距離、用途地域、事務所建築や商業建築の分布と用途混合の相関などについて分析し実態を把握し、用途混合の特徴を明らかにする。 5章で本稿のまとめと今後の課題を述べる。
  • 脳波・血中生理活性物質・主観的印象評価の組み合わせによる評価
    仁科 エミ, 大橋 力
    2005 年 40.3 巻 p. 169-174
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    著者らはさきに、自然性の高い環境音に豊富に含まれている可聴域を超える高周波成分が都市環境では大幅に欠乏しており、それが現代病の引き金を引く基幹脳の活性低下を導く可能性を見出した。このことから、高周波成分を豊富に含む熱帯雨林性の森林環境音を市街地環境音に電子的に補完することによって基幹脳の活性を適正化し、都市の病理を克服するという都市情報環境改善の方略が展望される。これを具現化するために著者らは、熱帯雨林の環境音を市街地環境音に補完して、その生理・心理的効果を計測する実験を行った。その結果、ストレスフリーの指標であり脳基幹部の活性と高い相関関係にある脳波α波が増大するとともに、ガン抑制効果やウィルス感染防止効果をもつ血液中のNK細胞活性や免疫グロブリン類の活性が上昇し、ストレス指標となるアドレナリンが低下するなどのポジティブな生理的効果と、環境の快適性が全般的に高まるという心理的効果とが見出された。これにより、著者らの都市情報環境改善方略は、大きな支持材料を得たと考えられる。
  • 横松 宗太, 小林 潔司
    2005 年 40.3 巻 p. 175-180
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、公共による自然災害の被災者への個人的補助の拡充と、災害保険の機能の向上が同時に進行している。本研究では災害リスク下の家計の動学的消費モデルを定式化して、代表的な住宅再建支援制度の下で家主が災害保険に加入する誘因や、被災後の居住地選択、持家・借家選択について分析した。分析の結果、住宅再建補助は低年齢の家主によって利用され、家賃補助は高齢の家計に適用されることがわかった。また家賃補助の一部は最終的に借家の家主に帰着することがわかった。よって賃貸住宅を再建する最も低い年齢層の家主は、住宅再建補助と家賃補助の双方の利益を得る可能性がある。また、住宅支援制度は被災地からの人口流出を抑止する効果をもつ。その一方、住宅再建補助は災害保険行動に負の影響を与えることが確認された。
  • 確率的都市モデルにおける平均場理論の適用
    青木 義次
    2005 年 40.3 巻 p. 181-186
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    青木により提案された確率論的都市モデルは熱力学分子モデルによく類似している。この類似性に注目し、熱力学におけるエントロピー、自由エネルギーに相当する概念を都市モデルに導入した。とくに、都市の安定均衡状態は、自由エネルギーに相当する F関数の値が最小化されるところで達成されることを示した。これらの概念と統計力学の平均場理論を用いることで、都市の均衡状態に関し、パラメータの値によって安定均衡状態がひとつの場合と二つの場合がありうることが分かった。後者の場合では、規制誘導・補助等の都市コントロールにより都市のパラメータが徐々に変化させたとしても均衡状態は不連続的に変化する場合もあることが判明した。この事実は、都市全体の活性化・沈静化が都市制御上重要であることを示している。
  • 宮川 雅至
    2005 年 40.3 巻 p. 187-192
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では施設とそのアクセスとしての道路網を一体として考えることで、施設閉鎖・道路閉塞が都市に与える損失を評価する。格子状の都市を想定し、施設閉鎖・道路閉塞による損失の大きさを最寄り施設までの移動距離の増分という共通の指標で理論的に把握する。まず、 1箇所の施設が閉鎖されたときと道路網上の 1箇所が閉塞したときの距離の増分を比較し、道路閉塞が都市に及ぼす損失は施設閉鎖による損失の高々 25%であることを示す。また、複数の施設や道路が閉鎖される場合には、閉鎖施設や閉塞地点が近いときの方が遠く離れているときよりも大きな損失が生じるという相乗効果が生まれることを確認する。さらに、施設閉鎖と道路閉塞が同時に発生した場合についても距離の増分を求め、閉鎖施設の近くの道路が閉塞した場合に損失が大きくなることを明らかにする。
  • 奥村 誠
    2005 年 40.3 巻 p. 193-198
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、地区ごとの将来の年齢階層別人口を予測する方法を提案することを目的とする。すでに整備、公開されている国勢調査地域メッシュデータの中には年齢階層別人口の情報が含まれているため、年齢階層別生残率を用いて自然増減を予測することは可能であるが、小地域の社会増減の予測方法は確立していない。小地域になれば、コウホート (同時出生集団 )ごとの社会増減率は安定的でないことや、データ量が膨大になることから、市町村レベルの予測で使われているコウホート変化率法を適用することが難しいためである。そこで本研究では、コウホートごとの変化量を因子分析により集約し、より少ない要素にまとめて安定的に捉えるとともに、その因子得点の時間的推移を説明するベクトル自己回帰モデルを作成することにより、入手可能なデータを最大限に活用して社会増減の予測を行う方法を提案する。広島市とその周辺の 626個の 4次メッシュ(1辺約 500m)に予測手法を適用して手法の有用性を確認する。
  • 進修小学校での先行的実践授業からの考察
    嶽山 洋志, 中瀬 勲
    2005 年 40.3 巻 p. 199-204
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    過疎化、少子高齢化が進む多自然居住地域では、都市からの移住者も含めた地域づくりの担い手をいかに創出していくかが課題であり、多自然居住者に対する地域づくりへの意識啓発の方法が求められる。本研究では、GPS搭載携帯電話と Web-GISを連動させた、地域づくりに関わる意識啓発のための新たなシステムを構築し、進修小学校での実践をもとに、被験者の意識変化についてイメージマップを用いて検証を行った。結果、お年寄りと児童の調査データが Web-GIS上に瞬時に可視化され、その違いを一目で認識できることで、これらのシステムは児童の主体的な気づきの促進に貢献することが確認できたとともに、わずか2日の調査活動で 172地点の地域情報が獲得されたことから、多くの地域資源を短期間で発掘するツールとしても有効であることがわかった。
  • 河上 牧子
    2005 年 40.3 巻 p. 205-210
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、阪神大震災以後のまちづくり政策や都市政策における計画理論について、「地域力」と「ソーシャル・キャピタル」について概念や規範理論の視点から論述したものである。まず第一に、2つの概念、規範理論の変遷などについて理論整理を行うことで、これらの概念や理論の枠組みについて述べた。第二に4つの都市政策事例を比較検討し、その特徴を把握、考察した。以上から次の2点を結論として提示した。第一に、「地域力」と「ソーシャル・キャピタル」の規範理論の概念は、正確には都市政策に反映されていない事例がみられ、それぞれの政策においてオリジナル性をもった援用がなされている現状にある。 第二に、これらの概念は、規範理論の変遷から未だ理論的にも未確定な要素が多いことが窺え、言葉だけが流行りの理念として政策に援用されるのではなく、地道な理論研究と実践の現場においてさらに実証検証される必要がある。
  • 安藤 太地, 奥 俊信, 森 傑
    2005 年 40.3 巻 p. 211-216
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    札幌市における小学校の約 40%が都市公園と隣接しており、このような小学校と都市公園の隣接状況を活用していくことは、学校教育または地域活動の観点から非常に有効である考える。 本研究の目的はこのような隣接状況を、 1)札幌市における小学校と都市公園の隣接配置の計画意思を把握すること 2)小学校と都市公園の隣接パターンを分類すること 3)小学校に隣接している都市公園の利用実態を調べること、という 3つの観点から調査分析を行うことである。そして、研究の結果以下のような特徴がみられた。 1)札幌市ではもみじ台地区でのみ隣接配置の計画意思が確認された。 2)隣接パターンは都市公園の規模によってパターン傾向が異なる。 3)隣接パターンと公園利用者の利用実態との関連性をみつけた。
  • 旧都市計画法との比較を通して
    高田 寛則, 後藤 純, 渡辺 俊一
    2005 年 40.3 巻 p. 217-222
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    1936年、台湾総督府は内地日本の旧都市計画法(1919:以下、旧法)を母法とした台湾都市計画令を立案した。共通する都市計画技術を基本構造とする旧法と台湾都市計画令を比較することを通して、台湾都市計画令の特徴及び台北市での運用・実施段階での成果を分析することは、日本の都市計画史研究上も大きな意義がある。本研究では、当時内地で発行された資料や現地での調査を基に、第 6次市区計画及び台湾都市計画令を旧法との相違点、その背景・意図等の視点で比較し、台湾都市計画令の特徴を明らかにしている。それらは、 (1) 旧法上の議論を踏まえた制度的先進性、 (2) 伝統・風土の考慮を背景とする特殊性、 (3) 植民地統治による私権の制限を背景とする特殊性にまとめられる。また、内地では郊外地の整備が後追い的になったのに対して、台湾では先行的にコントロールできた点は、内地の失敗の克服という点で最も際立った特徴である。
  • 中野 茂夫
    2005 年 40.3 巻 p. 223-228
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は、戦時下、国家的見地から、軍需工場用地造成のために実施された新興工業都市計画について、旧多賀町を事例として検討するものである。多賀町では、日立製作所の多賀工場建設にともなう住宅地造成のために、都市計画が策定され、その事業化にあたって新興工業都市計画事業としての多賀土地区画整理事業が実施された。新興工業都市計画事業の典型的な特徴は、大規模な工場用地造成のため、強制的に土地区画整理事業が実施されたことにあるが、多賀町では、それに先行して工場用地の買収がおこなわれていた点で大きく異なっていた。
  • 商工業者の立地動向に着目して
    田中 傑
    2005 年 40.3 巻 p. 229-234
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は京城の中心地である鍾路通り地区を対象に、 1923_から_40年時点の『京城商工名録』を用いて商工業者の立地状況とその変遷の実態を分析した。その結果、これまで観念的な認識に止まっていた鍾路通り地区における用途分布が実証的に把握できた。これには、インフレで京城商工名録の収録基準が相対的に低下したためか、小規模な業者まで収録できたことが大きく寄与した。また、商工業活動の営業継続状況を分析したところ、時代の流れに応じて品目や商売形態を修正したり、あるいは不動産事情を反映した営業所を移転したりしていた実態が明らかになった。これらは、鍾閣一帯の繁栄した都市空間の形成と表裏の関係にあった。
  • 五島 寧
    2005 年 40.3 巻 p. 235-240
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、京城市区改正と朝鮮神宮の関係について、官庁街と神社が補完関係にあり、植民地都市の基軸となる目抜き通りが両地区を結ぶように意識的に整備された、とする主張を検証した。街路や主要施設の建設経緯の分析を通して「都市軸」形成が体系的マスタープランに基づくと考えがたいことを示し、さらに鎮座地決定の時点では「都市軸」と参宮道路は接続されていないことを証明した。本研究では、京城で官庁施設と神社を結ぶ都市軸が意識的に整備されたとする主張は、植民地都市計画に対する過大評価の一種とする結論を得た。
  • 西口広場から西口通路への名称変更問題を通じて
    西成 典久
    2005 年 40.3 巻 p. 241-246
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では、都市計画思想としての“広場”に着目する。 1969年新宿西口広場は人々が集まり互いに交歓し、社会にむけて情報発信する場となった。これは、計画側にとって予期しえない出来事であった。警察が西口広場を西口通路と名称変更することで、結果的に人々の行為を規制した。これら一連の出来事が当時の新聞紙面を賑わした。これら西口広場での人々の行為や議論を分析することで、当時の都市における“広場”について以下3つの側面が浮き彫りとなった。 1)「西口広場」という名称を「西口通路」と変更することは、西口駅前は通行のための空間である、という単一機能を明示し管理することであった。名称変更がかえって、機能を明確に捉えきれないという“広場”の側面を照射したことになる。 2)公園との対比において、“広場”は不特定多数の人々が離合集散する(交通の結節点)という側面が照射された。当時はそれが駅前にあって公園にはない性質であることが浮き彫りとなった。 3)日比谷公園での集会の失敗を通じて、“広場”が施設化され管理された既成の空間ではなく、集まった人々の自発的な行為によってはじめて意味を持つという側面が浮き彫りとなった。
  • 真田 純子
    2005 年 40.3 巻 p. 247-252
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、東京緑地計画作成の理論的背景を明らかにすることを目的とした。東京緑地計画協議会は 1924年のアムステルダム国際都市計画会議でのグリーンベルトに関する決議を契機として発足したと考えられている。しかしながら実際には、 1932年の協議会発足当時、都市の拡大を防止するための環状緑地帯に対する認識が薄かったこと、協議会が最初に作成した景園地計画はパークシステムと地方計画、森林公園の考え方に影響を受けていたこと、当時「緑地」という言葉は、都市化をせき止める非建築地域としての意味ではなく、休養の場、行楽の場としての自然の地、という意味で使われていたことを明らかにした。
  • 長浜とならまちにおける比較研究
    野嶋 慎二, 松元 清悟
    2005 年 40.3 巻 p. 253-258
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、長浜とならまちの中心部及びその周辺で発信型店主の生活に着目し店主特性とその住まい方、及びそれらの立地動向を明らかにすることである。得られた知見は下記の通りである。 1)近くに居住して発信する人は、ならまち 8件、長浜 7 件と多く、まちなか居住者は発信してまちに活力を与える担い手であると共に、発信はまちなか居住の利点の一つと考えられる。 2)発信した後、交流や意欲やゆとりなど生活の質の向上が指摘され、まちなかでの、あるいはまちなかを活用した多様な住まい方が明らかになった。 3)発信型店舗の立地動向は、長浜ではまちづくりの進行と共に生まれているのに対し、ならまちでは発信型店舗の特性に適した雰囲気を持っており、創作活動などの表現をする人を刺激する環境を持っている。またこれに適した環境は、かならずしも人通りの多い場所に限られず、住宅の多いその周辺でも適している。
  • 広島アジア大会を事例として
    植木 久美, 十代田 朗, 津々見 崇
    2005 年 40.3 巻 p. 259-264
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、都市の将来像を描く際に「国際化」をコンセプトとする例がみられる。広島市では、平成6年の広島アジア大会開催を機に、全公民館が主体となり「一館一国・地域の応援事業」を実施した。本研究では (1)「一館一国事業」の変遷と (2)市民レベルの国際交流活動を継続する上での課題は何か、それをクリアするためのポイントは何か、を明らかにすることを目的とする。主な結論は次の通り: 1. 現在も活動を続けるものが多少みられ、「一館一国事業」には一定の成果が認められる。それらは、5タイプ、 15項目に分かれ、各活動を行う方法に関するオプションは 4つある。 2. 「援助系」活動の実施率は低いが継続的に取組まれる傾向にある。 3. 援助系活動は他の援助系に繋がる循環構造がみられ、交流系は次なる活動への展開への足がかりとなり易く、講座系は講座内容への興味、個人的趣味による参加の傾向がみられる。 4. 参加者や資金の不足といった運営上の課題に対する対応の違い、また興味や目的意識と活動タイプとの関係、それらを結びつけるキーパーソンの存在が、結果的に現在の活動形態を規定してきたのではないか、と推察される。
  • 諸星 智章, 加藤 仁美
    2005 年 40.3 巻 p. 265-270
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、大正 8年の都市計画法及び市街地建築物法の成立から、昭和 45年の建築基準法改正に至る建築形態規制の変遷において、絶対高さ規制の廃止及び容積率制が全面的に適用された背景等を明らかにすることにより、市街地コントロールに有効な形態規制のあり方を検討する素材を得ることを目的としたものである。当時の建築雑誌、国会建設委員会議事録、建築行政担当者所蔵史料等の建築法制関連史料を収集・整理、分析を行なうことにより、以下の点が明らかとなった。 (1)大正 8年の市街地建築物法の絶対高さ 100尺・65尺という数値規定に科学的根拠はなかった。 (2)容積率制全面適用への改正の背景には、東京都や経済・建築・都市計画各界からの土地の高密度利用等への強い要請があった。
  • 鹿内 京子, 常田 千夏子, 石川 幹子
    2005 年 40.3 巻 p. 271-276
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    21世紀を迎え、世界各国で川を取り込んだ新しい複合都市空間に向けた都市再生が行われてきている。江戸期より、川と沿岸に存在した河岸は公有地であり、街と密接につながり、その機能は商業、防災など多岐にわたっていた。しかし、下町河川の多くは第2次世界大戦後に埋め立てられた。本研究の目的は川と河岸の消失過程を詳細に調査し、多様な公共空間の資産が継承されていることを検証し、今後の貴重な財産の運用方法、保全する制度や政策の検討に重要な示唆を与えることである。対象地は埋め立てられ、実体の無い桜川とそれに隣接して存在する北桜河岸と南桜河岸の2河岸とした。川と河岸は、江戸期に創設されて以来、これまで400年間保持されてきた財産であり、河岸地は明治時代には基本財産として位置づけられ、21世紀に残存する貴重な社会的共通資本であり、住み続けられる快適な都市を創造するためにも重要な意味をもっている。東京の下町の川および河岸の体系的研究を行う上で、埋め立てられた川と河岸の分析は、不可欠であり、本研究の意義は、この点にある。
  • 中島 直人
    2005 年 40.3 巻 p. 277-282
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    石原憲治は本日本都市計画学会第五代会長を務めた都市計画学者で、農民建築研究のパイオニアでもあったが、同時に我国で 1920年代に開始された都市美運動の立役者でもあった。石原は主に都市美協会の常務理事として、 1925年の都市美研究会設立から 1981年の社団法人都市美協会の解散まで、都市美協会の運営の中枢を担い続けた。石原の都市美論の要諦は、都市美を視覚的な美に限定せず、生活環境の改善問題として幅広く捉える広義性、また、都市美を過去の労作の蓄積として捉える歴史性にあった。そして、「総合美」、「企画性」、あるいは「住み心地良き健康な都市」といった諸点を通して、都市計画との密接な関係を主張し続けたのである。
  • 1930年代の土地利用計画運動が与えた影響
    秋本 福雄
    2005 年 40.3 巻 p. 283-288
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    土地利用計画は都市計画の延長上にではなく、主として農業、林業における建設的な政策の探求から生まれた。 1930年代初頭、農務省農業経済局のルイス・グレイは、大量の限界農地を転用するために、全国的な土地利用計画事業を開始し、農業経済学者らは土地を調査し、目録を作成し、分類し、最適の用途を判定した。その間、都市計画家は都市計画から地域計画、州計画へと領域を拡大したが、土地利用計画という概念は導入しなかった。この論文は、カリフォルニアの郡計画の計画家ヒュー・ポメロイが、1930年代、郡地域制を合理的に制定するために、土地利用計画の概念を導入したことを明らかにしている。その後、 1940年代、都市計画では、地域制の改定、都市再開発事業のために土地利用計画を作成するようになった。
  • 松原 康介
    2005 年 40.3 巻 p. 289-294
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、ハブスの近代化とハブス事業の創始、そして各都市における展開を考察し、ハブス事業の歴史的意義を明らかにする。旧市街のハブスとは、高密集積した住宅や店舗を物理的に長く存続させたと同時に、公的施設の維持・運営をも担い都市社会の成熟に寄与した仕組みであり、物件と施設からなる一つの都市組織を伴うものであった。保護領政府は、制度の簡略化と国家による一元的な管理を中心とした改革を実施したが、その結果、物件と施設の結びつきは間接的となった。保護領時代のハブス事業は、旧市街の再生や郊外地の建設といった、その時々の喫緊の課題への対処として立案されたものが多く評価に値する。また、ブ・キジザット通りやフナ広場のように、新市街や郊外地の建設といった大きな都市計画の粗さを修繕するような要衝でも実施された。ハブスは、急速に拡大・変容する市街地を内的に組織化することで、独自の近代化を可能としている。ハブス事業はその枠組みを準備したと言える。
  • 鳩山 紀一郎, 藤原 裕樹, 岩永 陽
    2005 年 40.3 巻 p. 295-300
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2017/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、 PDCAサイクルの考え方による継続的な協働型まちづくりスキームを提案し、世田谷線沿線地域を対象として、地域発案型まちづくり団体である「世田谷線とせたがやを良くする会」を通じてこれを試行することによって、まちづくり手法において継続性と協働性が重要であること、本スキームによって参加者間の意識共有化効果がなされることを検証することを目的とする。結果として、継続性と協働性の重要性を確認できたとともに、点検地図などを利用した本スキームを通じて短時間ではあるが参加者間で意識が共有化されることが確認できた。今後は、一般住民へのアンケートなどを実施しつつワークショップを継続し、特に関心の高かった世田谷線の魅力向上方策を中心に具体化し、実施計画を行う予定である。近年、地域発案型のまちづくり活動団体を各地で登場している一方、行政側でも地方分権の構想が本格化しつつあり、自治体の自主性と自己決定能力が問われる時代になりつつある。従って今後は住民と行政が協働し、継続的に方策を検討し実施しては評価・診断を行っていくという構造が、まちづくり活動に一層必要なものとなると考えられる。
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