本研究は、平成15年に東京都中央区銀座地区において導入された「銀座ルール」の制度体系と初動的実績を考察することを目的とするものである。銀座ルールとは、賑わいの連続性を確保しながら建築物の更新を促進すること等を目的として、基本的には附置義務の量しかコントロールし得ない駐車場附置義務制度について、まちづくりの観点から敷地の大小による役割分担を定め、地区単位で隔地駐車場制度を活用するローカルルールである。銀座ルールは、その目的が長期間にわたる建築物の建て替え等に伴って漸進的に実現される制度であり、施行期間や適用件数から言って未だ体系的な評価を行うことはできないが、本研究を通じて以下の3点が明らかになった。第一に、銀座ルールは、小規模敷地に対しては、附置義務駐車場の隔地附置を容易にすることで土地の高度利用化を促進しており、賑わいの連続性を維持継承しながら土地利用や駐車に関する諸問題を解決する上で一定の効果を発揮している。しかし第二に、都条例に基づく台数以上の附置義務駐車場の敷地内附置が課された大規模敷地では、建築物の更新の低下率が顕著であり、銀座ルールは更新阻害要因にもなっている。これらの結果として、第三に、小規模敷地での建築物による隔地附置駐車場台数と、大規模敷地での建築物に確保されたその受け皿となる駐車場の台数は、アンバランスな状況にある。
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