都市計画論文集
Online ISSN : 2185-0593
Print ISSN : 0916-0647
ISSN-L : 0916-0647
41.3 巻
選択された号の論文の177件中1~50を表示しています
  • 箱根地域を事例として
    古谷 知之
    2006 年 41.3 巻 p. 1-6
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,時空間クラスタリングとハイブリッド階層クラスタリングを組み合わせた時空間データマイニング手法を提案し,携帯型位置情報端末を用いた観光行動動態のクラスタリング分析を行った.観光行動動態の相関性を考慮した,個人属性と観光動態の相関性を考慮したクラスタ数の自動検出方法も用いた.箱根地域での日帰り・宿泊観光客を対象とした観光行動調査を行い,提案した手法を適用した.分類の結果,日帰り客は18クラスタ,宿泊客は24クラスタに分類された.その結果,観光客の宿泊形態に応じて,「何時台にどのような属性の人がどのような観光地点に立ち寄る傾向があるか」という程度ではあるが,個人属性の組み合わせに応じて観光動態が多様であることを明らかにすることができた.更に,個人属性・観光動態のタイプによって,情報媒体・観光情報利用が特徴付けられることも示された.観光行動動態のクラスタリング結果から,観光行動動態や情報媒体の利用傾向に応じて,観光客ターゲット毎に混雑情報やルート情報を観光施設情報とともに提供することの有効性が指摘されたといえる.
  • カラー画像を用いた街路景観の評価
    鬼束 瑞菜, 三宅 諭
    2006 年 41.3 巻 p. 7-12
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、2通りの方法を用いて、カラー画像による街路景観の評価を行った。1つ目の方法として、ゆらぎ理論を用いた定量評価を行い、つ目の方法として、SD法と因子分析を用いた心理評価を行った。各評価を行った後に、それらの関連性について分析した。その結果、定量評価では、樹種の違いが評価に影響を与えること、心理評価では、樹種の違いと幅員の違いが評価に影響を与えることが明らかとなった。また、定量評価でのゆらぎ値が-1の値に近づくほど、心理評価での因子得点が高い値を得る傾向がみられた。
  • 金 賢, 西井 和夫, 佐々木 邦明
    2006 年 41.3 巻 p. 13-18
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,富士五湖地域を取上げ,観光客の情報利用と周遊行動のデータを用い,それらの因果構造について仮説を設けて仮説検証を行った.まず,周遊行動中における情報利用の程度は空間特性といえる訪問エリアと共に,周遊行動開始時刻,帰宅行動開始時刻,地域内の総滞在時間といった時間特性などへ肯定的な影響を与えている因果構造が明らかになった.次に,観光客の属性と旅行形態などの変数は地域認知度に直接影響を与え,その一方で情報利用と周遊行動には地域認知度を介して間接的に影響を与えていることがわかった.またこれらの結果から,既存の周遊行動のモデルの同定化に対しては,観光客の情報利用そのものをダミー変数などで考慮する枠組みではなく,スケジュール段階で情報利用に対する地域認知水準と周遊行動中に利用する情報利用程度を定量化する必要性が確認できた.
  • 阪井 清志
    2006 年 41.3 巻 p. 19-24
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    LRTは、地球環境への対応、高齢者などのモビリティー確保などの観点から注目を集めているが、2004年に、フランスにおいては、国のトラム整備に対する補助が削減され、イギリスにおいても、路線の整備に関する国の補助採択が取り消されたところである。本論文は、各種文献や両国政府提供資料から収集したフランス、イギリス、日本のトラム導入都市の特性、トラム運営状況に関するデータを比較することにより、日本の都市及びトラムの状況を分析するとともに、英仏両政府へのトラムに対する補助削減または取消の背景に関するヒアリング結果、地方自治体ヒアリング結果から、各国のトラム路線の課題や成功要因を比較することによって、日本においてトラムを導入する際の留意点をとりまとめたものである。
  • 名古屋市における交通エコポイント社会実験から
    佐藤 仁美, 倉内 慎也, 森川 高行, 山本 俊行
    2006 年 41.3 巻 p. 25-30
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    モータリゼーションや自動車依存型の都市構造によって引き起こされる交通渋滞や環境問題等を解決するためには公共交通の利用促進が不可欠である.本研究は,ポイント制度を公共交通利用に対して適用した,新たなTDM施策である「交通エコポイント」について,名古屋市にて行われた社会実験の概要およびその結果を報告する.さらに,望ましい交通エコポイントシステムに関する知見を得るために,市民が望むエコポイント施策のサービスレベルについての分析を行った.社会実験の結果から,交通エコポイントにより交通行動が変化し,また,参加者の受容性は極めて高いことを確認した.サービスレベルに関する分析では,何らかの還元サービスは必要であるが還元率はそれほど重要ではなく,また,自治体による環境活動の代行など,交通エコポイントを通じて環境改善に貢献することを望んでいることなどが明らかとなった.
  • 長野市中心市街地中央通りの交通社会実験を事例として
    柳沢 吉保, 高山 純一, 轟 直希
    2006 年 41.3 巻 p. 31-36
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、長野市をはじめとする多くの地方都市の中心市街地では、モータリゼーションの進展により、自動車利用の増加と大型小売店舗の郊外への進出によって、来街者が減少傾向にある。市街地の活性化には、中心市街地の魅力向上のための商業施設の再生に加え、来街者の市街地内回遊行動を支援するシステムの導入が急務である。本研究では、それぞれトランジットモール実施規模が異なる平成16、17年の長野市中心市街地回遊行動実態調査に基づき、(1)トランジットモールの導入規模が回遊行動範囲と回遊トリップ数に与える影響を分析し、トランジットモールの最適規模の決定要因を検討する。(2)来街者の来街主要目的に基づき、市街地内での目的構成パターンを明らかにする。(3)市街地内での駅、バス停、駐車場などの選択要因を明らかにし、活動拠点までのアクセス交通手段の整備や、活動拠点から市内主要施設までの歩行環境整備方策の決定のための要因について考察する。(4)市街地内移動距離と回遊トリップ数との関連、トランジットモール導入による道路交通条件が回遊行動特性に与える影響を分析とする。
  • 土江 憲弘, 近藤 光男, 渡辺 公次郎
    2006 年 41.3 巻 p. 37-42
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、高齢者と身体障害者を対象とした鉄道駅施設のバリアフリー化の価値を、直接的利用価値とオプション価値として、算出することである。はじめに、鉄道駅施設のバリアフリー化に対する支払意志額(WTP)を調べるために、アンケートを用いた調査を行った。次に、指数関数型の需要関数を仮定することによって、平均支払意志額を推計した。その結果、高齢者を対象とした鉄道駅施設のバリアフリー化においては、直接的利用価値として算出したエレベーターの設置とエスカレーターの設置が最も高い値となった。障害者を対象とした鉄道駅施設のバリアフリー化においては、オプション価値として算出されたエレベーターの設置が最も高い値となった。
  • 藤居 良夫, 佐竹 わか菜
    2006 年 41.3 巻 p. 43-48
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,地方都市では,地方鉄道の利用者が年々減少してきて,鉄道の存続が困難になってきている。しかし,鉄道は地域住民の足として不可欠な移動手段であり,また,観光振興の一助として,各種環境問題への対策方法としても重要である。今後,鉄道をどのように運営していくかは,地域社会における課題である。本研究では,富山県高岡市と射水市(旧新湊市)間を運行する万葉線を対象に,沿線の地域住民に対してアンケート調査を実施し,選択型コンジョイント分析を用いて,鉄道利用の施策に対する限界評価額を試算して,今後の施策を考察した。その結果,車両の冷房完備に対して住民は最も高い評価を示し,また,運賃の値下げや運行間隔の短縮に対しても評価していることがわかった。
  • 茨城県日立市を事例に
    葛西 紘子, 山田 稔
    2006 年 41.3 巻 p. 49-54
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年高齢化が進行に伴い、高齢者の閉じこもりを防止し、健康な生活を送ることができる環境が必要とされている。そこで実際の高齢者に求められる移送サービスとはどのようなものなのか、また日常生活ではどのような交通手段を選択し、支援を必要としているのかを具体的に把握する必要がある。茨城県日立市の塙山学区の高齢者を対象とた意識調査の結果、高齢になり移動が困難になったとき利用できる交通機関が限られる地方都市では、日常の買い物時の外出諦めが多く、外出意欲の潜在化が起こりやすいことが明らかとなった。そのため常時利用できる日常的な高齢者向けの移送支援サービスが必要である。
  • 林 光伸, 湯沢 昭
    2006 年 41.3 巻 p. 55-60
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    地方都市においては,バス事業者の撤退に伴い公共交通の空白地帯が発生している。その対策として,行政は,市町村乗合バスを運行しているが,バス利用者の減少を食い止めることは出来ない状況にある。近年,各地域で運行され始めたものの一つにデマンドバスがある。デマンドバスは従来の路線バスの特徴である定時・定路線型から,利用者の需要に応じて時間と路線を柔軟に対応したサービスを提供することが可能である。本研究は,今後デマンドバスの導入を計画している多くの自治体が直面するであろう課題について調査検討を行ったものである。具体的な内容としては,デマンドバスの運行実態と運行経費に関する検討。デマンドバス利用者の需要予測とデマンドタイプ別の評価である。以上の検討結果,時刻非固定,路線非固定(ダイナミックタイプ)の導入が利用者と事業者にとって効率性が高いことが明らかとなった。
  • 高橋 清, 根本 敏則, 味水 佑毅
    2006 年 41.3 巻 p. 61-66
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    一般に、バスターミナルは駅前広場を構成する一要因であるが、形状は駅構内及び駅前広場設計の全体構成に強く依存しているため、設計面における自由度は低い。 そこで本研究では、バスターミナルのコンパクト化の概念の整理を行い、その概念を用いて渋谷駅東口バスターミナルを対象に整備代替案を設定し、整備効果について仮想市場評価法(CVM:Contingent Valuation Method)を用いた定量的評価を行った。さらに、渋谷駅東口バスターミナルを対象に、その概念を用いた整備代替案を設定し、代替案における整備効果について、評価項目を選定し、CVMにより定量的評価を行った。その結果、算出した便益は市場財と比較して、ほぼ同額であることが明らかとなり、非市場財の効果を計測し、整備効果を分析することが重要であることを示した。
  • 柿本 竜治, 辻 泰明
    2006 年 41.3 巻 p. 67-72
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,熊本市の北部に位置する植木町を中心としたバス路線群のバス乗降調査を実施し,その結果をバスサービスの供給水準や利用実態を表したバスネットワーク図に示した.バスサービスの供給量と利用実態をバスネットワーク上に表現し比較することで,乗客の少ないリンクやサービス過剰なリンクの抽出が簡単になり,現在のバスサービスの需要と供給のバランス状態の地域分布の把握が容易になった.そして,そのバスネットワーク図を用いて対象バス路線群の再編の方向性を示した.また,利用実態を通して複数市町村に跨る赤字バス系統への現在の補助分担方法の問題点を検証した.運行距離で補助負担を按分する現行制度では,補助負担額の大きさと路線維持の価値の間で乖離が生じている可能性を指摘した.地域を貫通することになる複数市町村に跨る系統の中間に位置する市町村内で運行区間が長くなると補助負担に偏りが生じる可能性があり,それに対し,系統の始終端の市町村は路線の存在価値に対して低い補助負担額しか担っていない可能性を示した.
  • 岸 邦宏, 佐藤 馨一
    2006 年 41.3 巻 p. 73-78
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    わが国の地方都市では、モータリゼーションの進展と都市の郊外化により、中心市街地の空洞化が進んでいるところが多い。このことについて、公共交通指向型都市開発の考え方に基づいて、路面電車やLRTを生かしたまちづくりが注目されている。札幌市の路面電車は、利用者の減少によって厳しい経営状況にあり、存続か廃止かについて議論され、札幌市長は2005(平成17)年2月、存続させることを表明した。この表明を受け、札幌市では路面電車の活用方策についての検討が進められている。路面電車の利用者数は、サービスレベルとともに、沿線地域の交通の発生・集中に起因する。つまり、沿線地域の土地利用が有効になされていることが重要である。しかし、札幌市は都市の郊外化に伴って、住宅の空き家率、オフィスの空室率が高く、必ずしも有効な土地利用であるとは言えない。本研究は、沿線地域の土地利用の効率化が、札幌市の路面電車の利用促進に与える影響を明らかにすることを目的とする。特に、空き家・空室に着目し、効率的に有効活用ことで路面電車の利用促進にどの程度寄与するかを明らかにするものである。
  • 高山 純一, 中山 晶一朗, 小松 良幸
    2006 年 41.3 巻 p. 79-84
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は道路整備の成果を評価するための時間信頼性の指標を示し,様々な道路整備パターンに適用し時間信頼性の評価を行うことである.本研究で扱う時間信頼性指標とはOD間の旅行時間の分散(不確実性)を用いたものである.交通需要の変動を考慮した時間帯別均衡配分モデルを用いて各ODに関する時間信頼性を計算する方法を提案した.仮想のネットワークにおける数値計算を通して,道路整備前の時間信頼性と道路整備後の時間信頼性指標を比較し,道路整備による信頼性の向上を検証した.
  • 東京圏都市鉄道経路選択行動データを用いた事例分析
    加藤 浩徳
    2006 年 41.3 巻 p. 85-90
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,通勤目的交通を対象として,交通時間と交通時間節約価値との関係を分析することを目的とするものである.まず,居住地選択行動を考慮に入れた個人の時間配分モデルを定式化した.次に,定式化されたモデルを用いて,理論的に交通時間と交通時間節約価値との関係を分析した.交通時間節約価値には,DeSerpa(1971)の定義を用いた.比較静学分析の結果より,両者の関係は効用関数形に依存し,一般的な関係を導くことが困難であることが判明した.そこで,効用関数を非線形関数として近似した上で,実証的に両者の関係を分析することとした.東京圏の通勤目的の都市鉄道経路選択行動データを用いて,離散選択モデルから分析を行ったところ,ある一定の交通時間以下の場合には,交通時間の増加と共に交通時間節約価値は減少するが,一定以上の場合には,逆に増加することが明らかとなった.
  • 平成12年度京阪神都市圏パーソントリップ調査データを用いて
    花岡 和聖
    2006 年 41.3 巻 p. 91-96
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、焼きなまし法を用いたPT調査データの拡大補正法を提案することである。そして、その拡大補正した結果の精度および有効性について、PT調査で用いられている層別拡大法との比較から評価し検討する。本研究で得られた知見は、以下のようにまとめられる。1)焼きなまし法による拡大補正結果は、層別拡大法の制約である性別年齢階級別統計表と高い精度で一致した。2)焼きなまし法は、交通行動パターンを規定する上で重要な従業地・通学地を制約条件に考慮することで、従業地・通学地についても高い精度で拡大補正を可能とした。すなわち複数の制約条件を拡大補正に加えることで、PT調査データの多面的な偏りへの対処が可能となった。3)制約に考慮していない変数についても、焼きなまし法は層別拡大よりも良好な適合精度を示した。制約以外の変数については、制約変数との関係性が強い場合に高い精度が期待できることが示唆された。以上の結果を通じて、PT調査データの偏りを拡大補正する手法として、焼きなまし法は高い有効性を有することが確認できた。
  • 張 峻屹, 藤原 章正, 桑野 将司, 杉恵 頼寧, 李 百鎭
    2006 年 41.3 巻 p. 97-102
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では世帯居住地選択における集団意思決定メカニズムに着目し,軌道系公共交通沿線への居住促進を念頭に,広島市アストラムライン沿線住宅への転居意向をSP調査によって調べてみた.転居意向をより的確に把握するために,インターネット調査を活用し,転居可能性のある被験者を効率的に抽出することに努めた.今回のケーススタディでは集団意思決定と個人意思決定で,40%もの世帯において世帯構成員の選好結果が変化することが分かった.世帯の代表的な構成員を選定し,世帯居住行動を調べる従来の調査・分析方法は間違った結論を導く恐れのあることが明らかとなった.居住地選択行動においても,多項線形効用関数を用いた集団離散選択モデルによる集団意思決定メカニズムを表現することの有効性を統計的に確認することができた.アストラムライン沿線での居住を促進するには,アストラムラインの駅近辺に集合住宅の建設を政策的に押し進めることが効果的であることが分かった.
  • 吉村 充功, 亀野 辰三
    2006 年 41.3 巻 p. 103-108
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年では,有料道路の料金の弾力的な運用により,一般道路からの経路変更を促す有料道路社会実験が多く実施されるようになってきている.しかしながら,通勤混雑問題に焦点を絞ると,日本社会では多くの場合通勤費用を企業が負担しているため,料金政策が直接通勤者の行動変化につながらない可能性がある.つまり,通勤者の行動の変化は必ずしも通勤者だけの意志で決定しているとは言えない.そのため,有料道路社会実験でも予想していたほどの十分な経路変更がなされないなどの問題が起こっている.そこで本研究では,企業アンケートを実施し,企業の通勤手当の支給,および通勤支援策の実態を明らかにするとともに,有料道路の料金変更に対して企業がどの程度料金負担の柔軟性を持っているか,またその他のTDM施策を含めた通勤問題に対する取り組み実施実態・意向などを明らかにすることを目的とする.これらの分析結果より,通勤手当として約9割の企業が通勤費用を支給していること,さらに有料道路の料金負担についても13%の企業が支給していることを明らかにした.
  • 小谷 通泰, 山中 英生, 秋田 直也
    2006 年 41.3 巻 p. 109-114
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、神戸市内の有料道路で現在実施中であるオフピーク時の料金割引制度を対象として、ドライバーへの事後調査結果をもとに、導入による利用者の交通行動への影響を把握することを試みる。具体的には、利用者への意識調査結果をもとに割引制度の認知度やその要因を明らかにする。次いで、割引制度実施後の通行時間帯の変更実態を示しその変更要因を分析する。さらに、導入後の通行頻度の変化により利用者グループをセグメント化し、各グループの特性を明らかにする。また、交通量の観測結果から割引制度の実施前後における時間帯別通行台数の変化を示す。そして観測された通行台数の変化と意識調査結果より推定した交通量変化を比較し、両者の関連を考察する。
  • 自由が丘商店街における歩行者調査データ提供による心理効果
    谷口 綾子, 藤井 聡
    2006 年 41.3 巻 p. 115-120
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,商店街における自動車流入規制に反対意向を表明している商店主は,「商店街活性化に対して自動車規制が肯定的な効果を持ちうる」」という事実を十分に認知しておらず,それ故,その事実を認知すれば自動車流入規制,あるいは,歩行者天国施策に対する態度が肯定的な方向に変容する可能性が存在しうるものと考えた.そこで,本研究では,他の文献により報告されている実証データを商店主に提供することで,商店主の歩行者天国への賛否における態度変容がおきるか否かを検証することを目的とした調査,分析を行った.その結果、本研究の仮説が支持されるという結果を得ることができた。本研究で活用した歩行者意識を計測するための歩行者調査,あるいは,そこで見いだされた実証的知見を商店街に提供していくという取り組みは,商店街における歩行者天国の導入,あるいは,見直しにむけた様々な取り組み一つとして,一定の有効性があるものと考えられる。
  • 横山 大輔, 谷口 守, 松中 亮治
    2006 年 41.3 巻 p. 121-126
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は、商業施設(マーケット)までの商業輸送に起因する環境負荷を定量化するフードマイルを起源とした新たな指標であるマーケットマイルを提案する。マーケットマイルは、アーティクルマイル(原産地から商業施設までの交通環境負荷定量化指標)、ショッピングマイル(商業施設からそれぞれの自宅までの交通環境負荷定量化指標)という二つの指標から成り立っている。さらにケーススタディとして、倉敷市に立地するタイプの異なるマーケットにおいて指標を適用する。分析対象マーケットのひとつは都心に立地する地産地消を謳う朝市を、そしてもう一方は郊外大型店である。分析の結果、郊外型マーケットにおけるマーケットマイルは、都心の地産地消型マーケットと比較して約2倍もの数値であることが明らかとなった。さらに、車に依存した買物行動に起因するショッピングマイルの割合は、大きいということを明らかにした。
  • 栃木県をケーススタディとして
    大門 創, 森本 章倫, 古池 弘隆
    2006 年 41.3 巻 p. 127-132
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    我国の道路整備は,戦後から公平性を基軸とした着実な整備の結果,一定の量的ストックが形成されたが,道路整備に関する課題は依然として解消されていない.また,人口減少社会の到来による道路財源縮小や更新時期の到来なども相まって,今後は行政においても効率的な道路整備の必要性に迫られている.住民参加による説明責任や透明性の確保もまた,都市計画において重要課題であることを考慮すると,これからの社会資本整備は,従来までの量的整備システムでは対応することができず,効率性かつ透明性の高い道路行政への転換が急務である.これを受けて,国土交通省では一連の「マネジメントサイクル」を構築することで,「成果主義」を強くした道路行政マネジメントの展開を試みている.これにより,利用者に対するアカウンタビリティの向上が可能になったが,このシステムでは,道路利用者の声が十分に活かされていない,地域のニーズに合うような成果が見えるまでに至ってない,といった問題点が存在する.そこで本研究では,民意が十分に加味できるような,そして地域によって異なるニーズを反映できるような道路行政マネジメントシステムを提案することを目的とする.
  • 森本 章倫, 古池 弘隆
    2006 年 41.3 巻 p. 133-138
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    平成12年6月に大規模小売店舗立地法の施行により立地規制が緩和され、交通環境評価などの一定の基準をクリアすると比較的容易に開発許可がなされるようになった。近年の商業施設開発は大規模なものが多く、それらが立地することで交通環境に及ぼす影響は大きい。特に郊外部は公共交通の利便性が低く、来客の多くが自動車交通に依存することから、開発地周辺部における交通環境悪化が懸念されている。大店立地法の施行から5年が経過し、地方公共団体による運用の過程で新たな課題が見出されたことにより指針の見直し作業が行われ、平成17年10月より「大規模小売店舗を設置するものが配慮すべき事項に関する指針」が改正された。大店立地法旧指針値は全国一律であるが、改定指針では「法の運営主体が地域の実情に応じ、地域の基準を定め、予め公表している場合には、当該地域の基準を用いるものとする」とされ、地域ごとの独自基準で判断できるようになった。そこで、本研究では栃木県を対象に地域特性を反映した基準を作成することで、より県内の実態に即した運用を検討する。特に旧指針との乖離が目立つ交通環境において、栃木県における独自の基準作成を目的とする。
  • 鈴木 美緒, 屋井 鉄雄
    2006 年 41.3 巻 p. 139-144
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    大都市の中小鉄道駅周辺の道路では,歩道に歩行者と自転車が混在し,今後の一層の高齢化社会を考えるとき,歩行者の安全確保が深刻な課題になる可能性は高い.しかし,大都市部には自転車専用道を新たに整備する土地の余裕がなく,自転車を安易に車道で走行させることは自転車の安全確保の点から今後も困難と考えられる.そこで本研究では,自転車の歩道走行を許したままで歩行者の安全を確保するには限界があるとの考えの下,欧米の事例に倣い,物理的な境界ではなく白線などにより車道と分離される自転車レーンの導入可能性を,自転車利用者と自動車利用者の両方の視点から検討した.自転車利用者にはCGを用いたアンケート調査,自動車利用者にはドライビングシミュレータを用いた走行安全性実験を行なった結果,自動車走行特性や選好度の面で,幅員が広くない車道に物理的な境界のない自転車レーンを作ることの有効性が示された.
  • エルファディンク ズザンネ, 卯月 盛夫, 浅野 光行
    2006 年 41.3 巻 p. 145-150
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    ドイツにおける自転車道の整備は、ノルトライン・ヴェストファーレン州の「自転車に優しい市町村連絡会議」加盟の市町村において、1990年代から新しい自転車道路の種類や整備手法等の先駆的な試みによって、面的な自転車道路ネットワークが実験的に整備された。そして、その成果を受けて1997年道路交通規則と同行政命令に、新たな自転車道整備の考え方と自転車の交通ルールが導入された。その具体的な整備にあたっては、「車道の再構成」「交通規制の緩和」「歩道の再構成」による既存道路を前提にした「道路空間の再構成」によるもので、あまり経費と手間をかけない現実的な自転車道ネットワーク整備手法といえる。この自転車道ネットワーク整備手法と案内標識などのサービスによって魅力的な交通システムが整備されたことにより、トロースドルフ市は自転車の交通量を増やしながら、自動車交通を減らした環境にやさしい交通計画を実現している事がわかった。
  • 都市面積と自動車利用距離に注目して
    鈴木 崇正, 室町 泰徳
    2006 年 41.3 巻 p. 151-156
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、まず既存の研究レビューにより都市の人口密度と一人あたりの自動車利用との間の相互関係を再検討した上で、両者の相互関係が都市面積と自動車総利用距離との間の相互関係としても捉えられる点を議論した。次に、メガシティを対象としたパーソントリップ調査データを利用し、都市面積、自動車総利用距離それぞれについて影響を及ぼす要因を検討した。そして、都市面積と自動車総利用距離との間に強い相互関係が生じる原因を検討した。各都市の都市面積と自動車利用距離、およびこれらに影響を与えると考えられる自動車平均速度、自動車分担率との関係を詳細に分析した。結果、自動車平均速度および自動車分担率の上昇が都市面積と自動車利用距離の双方の拡大に寄与していることが明らかとなった。この傾向を抑制するためには、特に速度面で十分な競争力を有する公共交通機関の整備が重要であると考えられる。
  • 桑野 将司, 藤原 章正, 張 峻屹
    2006 年 41.3 巻 p. 157-162
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,公共交通の整備の遅れ,サービス水準の低さなどの問題により自動車交通への依存率が高い地方都市を対象に,世帯の自動車保有・利用行動の把握,および交通システムや土地利用といった都市特性を考慮した世帯の自動車利用の効率性の診断を行うことを目的としている.ここで効率性とは,現在の自動車利用と市場で実現しているなかで最も効率的と判断される状態との乖離度合いを言う.これにより,各世帯が論理上の効率的な自動車利用を行った際の自動車排出ガス削減ポテンシャルの算出が可能となり,環境負荷の小さい都市を実現するための政策オプションの検討に貢献するものと考えられる.地方都市の郊外部である東広島市志和町を対象に,世帯の自動車利用の効率性を計測した結果,調査対象地域での自動車利用効率性は平均で86%であることが明らかとなった.これは,1世帯あたり年間で2,802kmの自動車利用の削減が可能であることを意味する.また,当該調査地域で居住した場合,最低でも1世帯あたり17,000km程度は日常の生活において自動車利用は必要であることが明らかとなった.
  • 辰巳 浩, 外井 哲志, 梶田 佳孝
    2006 年 41.3 巻 p. 163-168
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    ドライバーが最初に訪れた駐車場が満車の際、空き駐車場を探す駐車場探索行動が起こる。この過程で発生する「うろつき車両」は中心商業地における道路渋滞に影響を及ぼすと考えられる。そこで本研究では、福岡市シーサイドももち地区において駐車行動実態調査を実施し、満車時の駐車場探索行動を含む駐車行動の実態を明らかにするとともに、満車時の駐車場探索行動を含む駐車行動モデルを離散型選択モデルの組み合わせ(MNLモデルおよびNLモデル)により構築した。その結果、駐車場選択モデルと駐車場探索モデルでは、採用される説明変数が異なり、それぞれの行動データをもとにモデルを構築する必要があることが明らかになった。
  • 秋田 直也, 小谷 通泰
    2006 年 41.3 巻 p. 169-174
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、都心商業・業務地区において、短時間の駐停車で集荷・配送活動が可能な物流車の利用を対象として、路上荷捌き駐車ベイの配置計画手法を開発することを目的としている。具体的には、まず、路上荷捌き実態調査結果をもとに、物流車の駐停車位置や立寄り建物数、駐停車時間といった路上荷捌き行動実態を明らかにする。その上で、建物ごとの路上荷捌き需要量推計モデル、駐停車時間推計モデル、P - メディアン問題を適用した配置手法を構築し、これらを組み合わせた路上荷捌き駐車ベイの配置計画手法について提案する。そして最後に、ケーススタディエリアにおいて、本配置計画手法を用いた路上荷捌き駐車ベイの配置計画案を作成し、本配置計画手法の有効性を検証する。
  • 宮川 雅至
    2006 年 41.3 巻 p. 175-180
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では高速道路インターチェンジ(IC)の設置間隔を時間圏域を用いて評価する.高速道路が一直線に延び,一般道路上は直線距離で移動できるような単純なモデルを構築し,IC間隔と目的地および最寄りICまでの時間圏域との関係を把握する.そして,時間圏域の性質として,IC間隔の短縮によって目的地までの時間圏域は最寄りICまでの時間圏域に比べてより顕著に拡大することを明らかにする.次に,スマートICの導入によって時間圏域がどのように拡大するのかを観察する.スマートICとはETC専用のインターチェンジであり,導入に向けた社会実験が2004年から実施されている.そして,スマートICの導入効果は,IC間隔が長く一般道路の走行速度が低い地域で大きいことを示す.また,モデルから求めた時間圏域の面積で実際のスマートICの利用台数をある程度説明できることを確認する.
  • 逐次型施設配置モデルを用いた分析
    鈴木 勉
    2006 年 41.3 巻 p. 181-186
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では,逐次型のp -median問題およびフロー需要p -median問題を用いて,高速交通路が最適な施設配置や補足する需要によってできる空間構造に与える影響を明らかにする.結果として,高速交通路の存在は最適配置に影響を及ぼすが,施設利用者数に与える影響の度合はp -median問題よりもフロー需要p -median問題の方が顕著であること,高速交通路は施設を引き付けるが,高速交通路上の移動速度が高速になるとその近辺の施設密度は減少すること,フロー需要p -median問題では,中央の施設ほど多くの需要を獲得するが,高速交通路の存在とその高速化によってその程度は増幅されること,十字状交通路や放射状交通路ではセクターの後背地が扇状になるため,郊外に中央の施設に次ぐ副次的拠点が形成され,全体として施設の階層構造が生じること,格子状交通路や環状交通路の存在は,中央の施設への需要の集中を緩和する効果を持つことなどを明らかにする.
  • 国内観光流動データに基づく分析例
    本間 裕大, 栗田 治
    2006 年 41.3 巻 p. 187-192
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では,日本国内における観光行動に焦点を当て,周遊を明示的に取り扱ったモデルを構築する.具体的には非集計ロジット・モデルを用いて,旅行者の観光地選択行動(すなわち旅行プランの決定プロセス)を定式化する.このときに,1つ以上の観光地に立ち寄るような旅行プランも選択肢に加えることによって,周遊の概念をモデルに組み込むことを試みる.このような複数の目的地を持つ周遊行動の分析には,様々な先行研究が存在する.しかしながら,実際の調査資料を用いた実証的研究は,現段階では不十分である.そこで,本論文では生活圏単位の詳細な国内旅行流動データを基に,旅行者の観光周遊行動の再現を目指す.
  • 適切な水素ステーション数の性質とガスパイプライン形状の数値解
    栗田 治
    2006 年 41.3 巻 p. 193-198
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は都市・地域で燃料電池自動車に水素ガスを供給する“水素ステーション”に焦点を当てる.ここでは,パイプラインが供給する天然ガスを水素ステーションで水蒸気改質し,製造された水素を燃料電池自動車に供給することを想定する(オンサイト燃料改質と呼ばれる方法).適切な水素ステーション数がもつ空間的特性を解明し,水素ステーション同士を結ぶ天然ガスパイプラインの適切な形状を数値的に求める方法を提案したい.
  • 余川 雅彦, 加賀屋 誠一, 内田 賢悦
    2006 年 41.3 巻 p. 199-204
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、地域レベルでの環境容量の総合的な指標として、環境負荷の量を面積として算出することができるエコロジカル・フットプリントを用いた。内生部門を考慮した各産業別のEFを算出するための課題を既存の研究から考察した。具体的には、コンパウンド法との整合性を持たせたコンポーネント法を構築する。次に内生部門を考慮した産業別のEFを算出するための、産業連関分析を試み、金額ベースで算出するための各産業別の原単位を推計した。各土地の区分に分割したEF原単位を用いることにより、各産業間での土地資源のやり取りを把握することができた。そこから、得られたEF原単位をもとに、道内と国内の各産業のEFを算出し、北海道と日本全体の違いを明らかにした。
  • 若江 直生, 吉田 哲, 宗本 順三
    2006 年 41.3 巻 p. 205-210
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、尼崎市産業連関表を独自に作成し、市内の複数の大規模工場15箇所が2000年から5期15年に渡って移転することを想定し、跡地に想定し得る用途が立地した場合の経済波及効果等を推算した。工場移転によるマイナスの波及効果は今シミュレーションで想定した新用途が立地する場合には、移転のみが生じた場合に比べて104,932百万円分、波及効果が増加し、マイナスの波及効果を新規立地の用途によって約9割補填しうることがわかった。新用途の立地では、商業やサービス業、住宅などを想定したため、製造業では5期を通じて生産額は大幅に減少しているが、移輸出率が平均より小さい非基盤的産業のパルプ・紙・紙加工品、出版・印刷では生産額が増加することが分かった。新用途が想定の通りに立地するという保証はないが、市内生産額や生産波及効果が大きくマイナスにならないよう産業や工場の移転の順序を考慮する必要のあることなどが明らかになった。
  • 青木 義次
    2006 年 41.3 巻 p. 211-216
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    現実の都市は同種の用途の土地が連担し、非一様で複雑なパターンとなっている。この非一様な都市の土地利用形態の形成現象メカニズムを探ることが本研究の関心事である。これまで青木により確率論的都市モデルが提案され解析されているが、土地利用が一様であると仮定しての解析しかなされていない。本研究では、一様な状態から僅かにずれた場合に、その後の状態変化により一様状態に戻るか否かを検討し、一様状態から離れて非一様な土地利用パターンの出現する条件を明らかにした。その結果、F関数の2次微分が負の範囲の土地利用比率では、平均よりも高い比率のゾーンと低いゾーンに分解し、非一様な土地利用パターンが形成されることが示された。
  • 李 召熙, 鈴木 勉
    2006 年 41.3 巻 p. 217-222
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文の目的は,1965-2000年の35年間の日本大都市圏を対象として通勤距離の変化動向とその要因を把握することである.結果は以下の通りである.(1)1965-1975年には,全大都市圏における就業者数が急速に増加し,通勤距離の変化率も大きく増加した.特に,三大都市圏においての増加が顕著であった.これは,就業者数の増加による通勤距離が長くなり,大都市圏の通勤圏域が広がったこと,ニュータウン等の住宅団地の計画や開発が要因として考えられる.(2)1975-1985年には通勤距離の増加の伸び率が小さくなったが,引き続き住宅団地の開発,空港等の雇用拠点の開発等による通勤距離の増加が見られた.(3)1985-1990年はバブル期であり,全大都市圏で就業者数の変化率が大きく,常住・従業距離の変化率も増加した.特に,京浜葉,京阪神,中京,北九州・福岡大都市圏での通勤距離の変化率が急増した.(4)1990-2000年は景気が減退し,全ての大都市圏で就業者数と通勤距離の増加率が小さくなり,1995-2000年では,札幌大都市圏以外の大都市圏で就業者数は減少傾向であった.特に,京浜葉,京阪神大都市圏では通勤距離の減少傾向とともに,都心部での常住距離の増加も見られた.
  • 寺木 彰浩
    2006 年 41.3 巻 p. 223-228
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は,地図情報から読み取った情報から実際の状況を推測する手法について検討することを目的として,地図情報上で示される2点間の距離の真の値を推測することを取り上げる.まず2章において本稿で用いる理論モデルについて定式化を行う.3章では理論モデルに基づき,地図情報上の距離からベイズの定理に基づき真の距離を推定する手法を提案し,合わせて推定値の性質などについて概観する.4章では都市計画分野において頻繁に用いられる長さについてケーススタディを行う.最後に5章において本稿で得られた成果について簡単にまとめ,残された課題について整理する.
  • 滋賀県大津市における近代化プロセスを事例として
    木川 剛志, 古山 正雄
    2006 年 41.3 巻 p. 229-234
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    都市は多くの価値基準によって構成されているので、一つの価値基準だけを評価するモデルを用いて分析してもその理解は困難である。それゆえに今日の複雑な都市問題を解決するのは容易ではない。本研究の目的は今日の都市における典型的な課題-中心市街地の衰退-を大津市浜大津地区を事例にして考察することである。この目的のためにスペース・シンタックスを用いて、大津の近世から近代、現在へと至る都市形態の変遷を解析し、その解釈にGlobalモデル、Localモデル、エントロピーモデルを適応した。これらのモデルを用いた分析により、大津の中心市街地はかつての都市構造をそのまま引き継いでいるが、膳所町との合併および周辺部の開発など市域の拡大によってかつての機能を失ったことが見出された。
  • 切田 元, 大澤 義明
    2006 年 41.3 巻 p. 235-240
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,大都市圏でのビルの新築や大規模都市開発などで,近年多く採用されている熱線反射ガラスへの空の映り込みを,数理的モデルによって分析している.始めに二次元で表現される断面モデルを用いて分析を行う.これにより反射した空の視野角(長さ)と視点場の位置,壁面の高さ,街路幅の関係を明らかにしている.次に3次元において反射した空の量を立体角(面積)として定義し,数理的モデルを用いて分析している.また最も単純な街路空間を設定し,3次元の場合での反射した空の立体角と視点場の位置,壁面の高さ,街路幅の関係を明らかにしている.結論として,断面モデルから視点場の位置,壁面の高さ,街路幅などについて反射した空の量と本当の空の量とは,逆の関係にあることを明らかにした.
  • 大庭 哲治, 青山 吉隆, 中川 大, 柄谷 友香
    2006 年 41.3 巻 p. 241-246
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,京都市都心部における京町家まちなみ保全活動を対象に,地域社会の協力意向と個人の協力意向との間に存在する社会的相互作用を明示的に考慮した二項選択モデルの枠組みを用いて,地域住民の協力意向をモデル化するとともに,このモデルによる計量分析を通じて,地域互助による京町家とまちなみの保全可能性について評価した.その結果,京町家まちなみ保全活動に対して,他者の協力率が高いほど,地域住民の協力する選択確率が高くなるという同調効果の存在を明らかにした.このことは,社会的相互作用が京町家まちなみ保全活動の推進力として機能しうるものと考える.また,対象とする19の元学区のうち,16の元学区については潜在的な保全可能性を確保しているものの,梅屋,竹間,醒泉の3つの元学区については確保していないことを明らかにした.
  • 4週間のダイアリー調査とインタビュー調査を通して
    丹羽 由佳理, 大森 宣暁
    2006 年 41.3 巻 p. 247-252
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、特定の相手との私用目的のコミュニケーションに着目し、若者カップルのミーティングと通信との相互作用を明らかにすることを目的とする。東京近辺在住の若者カップル15組に対して、4週間の活動ダイアリーと通信ダイアリーを記録するアンケート調査、および調査期間中の活動場所の地図上への記録とコミュニケーションに対する意識を把握するためのデプスインタビュー調査を行った。その結果、携帯メール利用がコミュニケーションの大半を占め、利用回数の約50%が交際相手とのコミュニケーションであり、一人暮らし、家族と同居、同棲といった居住形態の違いが共に活動する時間や通信回数および活動場所に影響を与えることがわかった。また、一日の満足度と交際相手との活動時間の間には相関関係が認められたが、通信回数との間には相関関係が認められなかった。さらに、通信回数は現状でほぼ満足しているが、ミーティングの回数については現状より増加させたいカップルが半数存在し、交際相手とのコミュニケーションにおいて通信はミーティングの代替機能よりも補完機能が大きいことが確認された。
  • 小林 優介, 安岡 善文
    2006 年 41.3 巻 p. 253-258
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は都市計画及び緑地計画のために、樹林地に対するアクセシビリティとその配置について分析することを目的とする。そのために、本研究ではRAを基にしたFAIとPFAIを提案する。そして、これらの手法を多摩丘陵上の川崎市麻生区・多摩区・宮前区及び横浜市青葉区・都筑区・緑区・瀬谷区・旭区・保土ヶ谷区について、ランドサットTMデータより作成した土地被覆分類に適用した。その結果、以下のようになった。1) RAとFAIは樹林地と市街地の分布を分析するのに有効であった。2) PFAIは樹林地に改変するのに最適な場所を見つけるのに有効であった。3) これらの手法を用いることで、適用した区の樹林地と市街地の分布の特徴を明らかにすることができた。
  • 稲川 敬介, 古田 壮宏, 鈴木 敦夫
    2006 年 41.3 巻 p. 259-264
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では,救急車の最適施設配置問題を考える.ここでは,モデルの基盤として救急車の移動速度を持つ道路網を構築する.この道路網は,主要道路と一般道路という二種類の道路を含む.それぞれの速度は,繰り返し法によって決定される.本研究では,この道路網を用いて救急車システムを評価する枠組みを与える.評価基準は,連続時間型マルコフ連鎖を適用して得られる平均対応時間である.本論文では,このモデルを瀬戸市の救急車システムに応用した二つの計算実験を紹介する.ひとつは既存研究との比較である.道路網を用いることによって,ユークリッド距離を仮定している既存研究とは異なる結果が得られることを示す.もうひとつの計算実験では,先の実験の候補地に4-メディアンを加えて再計算をおこなう.メディアン問題と比較することにより,救急車システムが持つ不確実性について議論する.
  • 田中 健一
    2006 年 41.3 巻 p. 265-270
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    都市施設の最適配置モデルには非常に多くの蓄積があるが,時間軸を考慮したモデルは十分な研究が行われていない.本稿では,人々の時間軸上の行動パターンを考慮した最適配置モデルを提案する.具体的には,就業者が帰宅途中に立ち寄って利用する施設を想定し,施設サービスを利用可能な人数(潜在客数)を最大化する,施設の配置位置とサービス時間帯とを同時に決定する問題を考える.このように時間軸上の最適化問題も含めた施設配置モデルは見当たらない.本稿では,一次元の連続空間の都市モデルを用いて,今後様々な拡張を行うための基礎となるように単純なモデルを構成する.数値例として,いろいろなトリップ密度のもとで潜在客数を最大化する施設位置とサービス開始時刻を示す.
  • 陳 萍, 沈 振江, 川上 光彦
    2006 年 41.3 巻 p. 271-276
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    日本においては、大規模商業施設の郊外立地などにより中心市街地の商業機能などが衰退しているため、多くの都市において様々な都心再生政策が実施されてきている。しかし、都市システムに内在する不確実性と複雑性のため、大規模商業開発や都心再生政策の影響を評価することが難しい。本研究は、マルチエージェントシステム(MAS)を用いて、商業施設の立地に対する規制誘導政策を評価することを試みた。具体的には、商業施設の立地と世帯の購買行動を反映することができるシミュレーション・モデルとして、Shopsim-MASモデルを開発した。このモデルを用いて、商業施設の立地に対する規制誘導施策に対応して、都市圏における世帯の買い物行動をシミュレーションすることにより、商店と世帯の相互作用から発生した買物行動について予測することができ、政策の影響を示し、評価すことができる。
  • 高塚 創
    2006 年 41.3 巻 p. 277-282
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,都市経済学的な側面から中心市街地活性化の意義を検証することである.具体的には,都心部の活動密度を高めることがサービスの質を高め,需給拡大をもたらすという仮説モデルを提示し,その検証を行った.その結果,仮説が支持されたのは,専門的なサービス業や飲食業などに限られた.これらは知識依存度が高く,企業間外部効果が期待される上,需要者の多様性や街の賑わいがサービスの質を向上させる効果もある業種と理解することができる.また,そういった都市密度の効果は,DID人口密度60人/ha以上で現出すると考えることができた.経済のソフト化が進展する中,今後はたとえ地方都市であっても,専門サービス業をはじめとする知識集約的なサービス業が重要度を増してくるであろう.都心部の密度を高める政策が,知的サービス業の育成に寄与し,ひいては当該都市の成長を牽引していく可能性は十分考えられる.
  • 大貝 彰, 郷内 吉瑞
    2006 年 41.3 巻 p. 283-288
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は,防災まちづくりワークショップ(WS)の成果が具体的な防災対策につながる,より有意義なものとすることを念頭に,WS参加者の合意形成に寄与し,具体的な防災対策の立案に役立つ計画支援ツールの一つとして開発を試みてきた防災対策立案支援システムについて報告した。本システムは,WSにおける防災上の課題検討の場面での利用を想定した課題検討サブシステムと防災対策の立案を検討する場面での利用を想定した防災対策検討サブシステム,及び課題と対策のデータベースから構成される。後者のサブシステムは集団意思決定法であるAHPを用いて参加者の思考を支援する。試験的に開発したシステムの実証実験の結果から,本システムがWSに参加する住民の防災上の課題や対策に対する考えの相違を調整しながら防災対策をまとめ,合意形成を図っていく際に有効に機能することを示した。
  • 宮崎市市街化調整区域での開発許可経緯を事例として
    吉武 哲信, 出口 近士, 梶原 文男, 阿部 成治
    2006 年 41.3 巻 p. 289-294
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    宮崎市では平成17年5月に九州最大級の大型商業施設(イオン宮崎SC)が市街化調整区域内で開業した.本施設の立地にあたっては,同市の他計画(総合計画,都市計画マスタープラン,中心市街地活性化基本計画)や,県の市街化区域及び市街化調整区域の整備,開発又は保全の方針(以降,整・開・保)との整合性,周辺市町村との関係,開発許可に至るプロセス等に多くの課題を残した.以上の問題認識に立ち,本研究では,1)既往の研究,公表資料および著者らが収集した資料を踏まえながら,宮崎市市街化調整区域(以降,調整区域)内での大型SC立地許可に至るプロセスを年表として整理し,宮崎市による許可プロセス上の特徴を概観した.次いで,2)特に総合計画審議会(総計審)や都市計画審議会(都計審)と行政事務局との関係に着目し,諮問機関の一般的な設置目的とされているa)民意の反映もしくは行政の民主化,b)行政における利害調整,c)行政の専門化への対応5)の観点を踏まえ,今回の事例における審議会等の課題を抽出した.また,3)以上に基づき,都市政策の「手続き」から見た今後の審議会のあり方を考察し,提案した.
  • 都市計画法34条1号及び8号運用基準による商業系立地コントロール手法を対象として
    北崎 朋希, 大村 謙二郎, 有田 智一
    2006 年 41.3 巻 p. 295-300
    発行日: 2006/10/25
    公開日: 2018/06/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、市街化調整区域における開発許可運用基準による商業系施設の規制・誘導機能の低下を背景として、開発許可運用基準の比較分析と運用状況分析を通して現行の商業系立地コントロール手法の限界と可能性を解明することを目的としている。開発許可運用基準の比較分析では、開発許可担当116自治体の開発許可運用基準を収集したうえで、商業系立地コントロール手法の比較分析と類型化を行った。また、開発許可運用基準の運用状況分析では、72市に対してアンケート調査を行うことによって「商業系開発の実態・開発許可運用基準の運用実態・開発許可運用基準の問題点と課題」を把握した。その結果、近年開発される多くの商業系施設が、本来の目的とは乖離した立地選択や業種業態となっており、現行の開発許可運用基準における商業系立地コントロール手法においては「基準固有の問題」と「基準選定の問題」によって支障をきたしていることが明らかになった。そこで、商業系立地コントロール手法の類型と都市特性・開発規模・問題意識度の関連性を抽出することで、都市特性・開発規模に対応した最適な商業系立地コントロール手法を提案した。
feedback
Top