都市計画論文集
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42.2 巻
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  • 都心周辺低水準居住地の現地改良のための集団的取扱いを中心に
    金 冑錫, 高見沢 実
    2007 年 42.2 巻 p. 1-9
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    今まで、密集市街地の改善のための数多い取組みがあったにもかかわらず、その成果は目立たない状況である。そして、一定の成果をあげている韓国の「住居環境改善事業」制度を考察する。その制度の調査・分析は大きく3つの観点で行う。まず、社会的な位置づけとして制度の導入背景と過程を、制度上の特徴としてインセンティブや支援等の制度内容を、そして、制度運用の特性として関係者役割などを考察する。また、事例分析を通じて、この制度の成果があげられた理由としては多世帯住宅という供給住宅の類型と容積率のインセンティブねらう建築事務所の積極的な役割が重要であったのを明らかにした。
  • 東京都を対象としたケーススタディ
    風見 正三, 原科 幸彦
    2007 年 42.2 巻 p. 10-19
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、先進諸国では、「持続可能な都市(Sustainable Cities)」の実現に向けた様々な取り組みが進められており、「環境指標(Environmental Index)」は、それらの実現ための重要な政策ツールとして注目されている。現在、全国の自治体では、「環境基本計画」の見直しが行われており、その中で提示された環境目標の達成度を測定するための環境指標のあり方や土地利用政策との関係性を明らかにしていくことが重要な課題となっている。本研究は、以上のような背景を踏まえて、都市の持続可能性に関連する指標として「環境持続可能性指標(Environmental Sustainability Index : ESI)」の開発を行うとともに、東京都をケーススタディとして、それらのESIと土地利用実態との関係性について考察を行うものである。
  • ひまわり号を走らせる札幌実行委員会のボランティア活動に注目して
    竹内 奈津子, 森 傑
    2007 年 42.2 巻 p. 20-29
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、現状の移動環境の中で実現されている障害者のための旅行の実態として、中でもボランティア組織による旅行の企画プロセスと旅行当日の活動に注目し、今日において必ずしも十分には理解されていない旅行実現過程で立ちはだかる様々な問題とそれにより強いられている支援者の対応を明らかにすることで、今後の移動環境デザインのあり方を検討することを目的とした。近年、公共施設をはじめとして障害者・高齢者のための移動環境は少しずつ改善されてきてはいるものの、主要な施設へ到達するまでの道路や交通機関などの接続経路においては、まだ数多くのバリアが残されている。バリアフリー化を目的とする現在の法律や条例等は基本的に設計時の仕様を定めたものであり、竣工後の具体的な改善や改修を指導するものではない。理想的には、バリアフリー化に対しては既存不適格のような考えではなく、改修・改築を強制的に求め得る法律の施行が望ましい。
  • りゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館)を事例として
    奥山 忠裕, 垣内 恵美子, 氏家 清和
    2007 年 42.2 巻 p. 30-41
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,新潟市民を対象とした文化施設の評価に関する研究である。その目的は,施設に対する市民の価値構造の分析,仮想市場法による便益計測,文化芸術活動に対する支援主体の分析を主としている。まず,新潟市が合併直後であることから,りゅーとぴあに対する認知等について質問した結果,認知,来館経験等には,旧新潟市内と旧新潟市外の居住者に差があることが分かった。次に,価値構造を分析した結果,非利用価値が大きな割合を示す結果となった。他方,合併直後ということもあり,威信価値については,旧市内と旧市外との間で差が見られた。次に,いくつかの基準のもと社会的総便益を計算した結果,平均値では約10~15億円/年と計測された。最後に,支払意志と支援主体の関係性に関する分析として,相関関係を検定したこところ,支払意志を示したものは,公的支援が望ましいと考えていることが分かった。
  • 東京都新宿区の事例
    河村 茂
    2007 年 42.2 巻 p. 42-47
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、自治体が環境・景観面から建築物の高さ制限を行うにあたり、事前に留意すべき事項を明らかにすることを目的とする。住環境の維持と景観の形成は今日、日本の都市が直面する緊急的でかつ適時な問題である。最近、高さ制限は環境の維持とより良い景観の形成を目的に、建築行為を制御すべく多くの自治体で導入が決定されている。このことからも都市計画(高度地区絶対高さ制限)の決定過程を研究することは有益なことである。本研究では、東京都新宿区を事例にとり、高さ制限の導入過程を詳しく分析・考察することにより、高さ制限導入にあたり事前に留意すべき事項として、既存不適格建築物の扱いとともに地区計画区域と大規模敷地の取り扱いが重要であることを明らかにしている。
  • 新潟市のりゅーとぴあを事例としたAHP分析
    氏家 清和, 垣内 恵美子, 奥山 忠裕
    2007 年 42.2 巻 p. 48-53
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,新潟県新潟市にある複合文化芸術施設『りゅーとぴあ』(新潟市民芸術文化会館)を事例として,2006年1月から2月に実施したアンケート調査データをAHPおよびクラスター分析により検討し、文化芸術施設の諸属性に対する地域住民の評価を明らかにするとともに、属性評価の多様性を分析する。AHPを用いた文化芸術施設の評価を試み、施設に対するニーズの多様性を検討する。AHPは、本来、意思決定プロセスの分析に用いられる手法であるが、多面的な機能をもつ環境質や、交通システムの各属性の評価の際にも応用されている。加えて、AHPでは、各評価項目に対する重要度を個人レベルで計測することができる。これは本稿の目的とする文化施設に対するニーズの多様性を分析するための重要な利点である。
  • 神奈川県大和市の市民提案型協働事業制度を事例として
    後藤 純, 渡辺 俊一, 伊藤 香織
    2007 年 42.2 巻 p. 54-61
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、先進的自治体において、市民提案を基に市民と自治体が協力して新しい公共サービスを創造し、市民主導で提供する取り組みを始めている。本論文は、その最先端事例の一つである神奈川県大和市の協働事業制度を通して、市民提案を新しい公共サービスへと公定化するプロセスについて分析したものである。この研究により、我々は次の3つのことが判った。(1)市民が新しい公共サービスの提案を行う際の提案能力の不確実さ。(2)自治体の既存の公共サービスに関する行政内部情報の不足。(3)市民提案を公定化するためには公共サービスに関する専門的な支援が必要となることである。一方これら課題は、行政と市民の協働事業によって生じた新しい課題であり、従来の行政制度を乗り越えるための挑戦的な課題であると考えられる。
  • 吉川 勝秀
    2007 年 42.2 巻 p. 62-71
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    流域の都市化が著しいアジア等の河川流域では,洪水による被害額も増大しており,治水対策が求められている.本論文では,治水の本質である土地利用の誘導・規制を含む総合的な治水対策について,低平地緩流河川流域である日本の中川・綾瀬川流域およびタイ国バンコク首都圏流域を取り上げ,都市計画的に考察した.この2つの流域での実践というトータルな評価(事後評価)により,今後急激な都市化を経験する他のアジア諸国における土地利用の誘導・規制を含む総合的な治水対策の有効性を示した.
  • 千葉県浦安市を対象とした実証分析
    増山 篤
    2007 年 42.2 巻 p. 72-79
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    この論文では、年齢階級別人口データを用い、千葉県浦安市を対象として、商業・医療施設へのアクセシビリティと高齢者の居住パターンの関係を分析する。第一に、アクセシビリティと人口密度との間の比例関係を仮定した上で、高齢者の商業・医療施設に対するアクセシビリティが距離に応じてどのように変わるかを検討する。その結果、アクセシビリティは道路に沿って測られる距離に応じて、負の指数関数的に減衰すると推定される。第二に、アクセシビリティに比例すると仮定されている人口密度が、高齢者とその他の年齢層ではどのように異なるかを明らかにする。そして、高齢者が商業・医療施設近辺に居住する傾向にあることを示す。第三に、人口密度とアクセシビリティの比例関係が成り立たない場所を見出し、そうした場所の特徴を明らかにする。
  • 公開空地面積率に基づく容積率割増を中心に
    山下 英和
    2007 年 42.2 巻 p. 80-87
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、総合設計制度について、主要な特定行政庁の許可基準等に定める制度的枠組みに対して実現された公開空地面積率や割増容積率等に関する比較分析を行い、当該制度による建築物の誘導効果を検証しようとするものである。各特定行政庁の許可基準等に示される制度設計上は、容積率の割増対象の多様化が進んでいるが、本研究における統計的分析からは、依然として公開空地面積率によるところが大きく、これに対してどの程度の容積率割増を認めるかという制度設計が重要である。例えば、東京都の市街地住宅総合設計は、割増容積率に地域ごとの差を設け、一般型に比してより大きな容積率割増を行った結果、都心部等の高容積かつ高地価の地域でも、一定規模の住宅開発に適用され、住宅供給の促進に貢献していることが確認できた。このように立地条件や建築物の整備内容等に応じて割増容積率にメリハリを付け、戦略的に運用することが効果的と考えられる。
  • 総合的な環境性能評価に示される外部効果の推計を中心に
    山下 英和
    2007 年 42.2 巻 p. 88-93
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、名古屋市内において、建築物総合環境性能評価システム(CASBEE)による環境性能評価を受けた建築物を対象として、環境性能の優れた建築物が周辺市街地にもたらす外部効果について、ヘドニック法を用いて検証するものである。この結果、環境性能が高いと評価された建築物は、一定の範囲内において、建築物の環境性能を総合的に評価する指標である環境性能効率(BEE)の大きさに応じて、周辺市街地に正の外部効果をもたらすことが、統計的有意性をもって確認された。また、総合設計制度の適用を受けた公開空地を有する建築物も影響範囲は限定的であるものの、当該空地面積に応じた正の外部効果をもたらすものであった。しかし、建築物がもたらす外部効果については、単に公開空地を有する建築物に比べ、総合環境性能評価の高い建築物の方が、その影響範囲も広範で、統計的有意性も高いことが確認された。
  • 藤田 祐, 若林 敬造
    2007 年 42.2 巻 p. 94-100
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、公共トラックターミナルのような集約的物流拠点を立地することにより、都市内交通の円滑化をもたらし、環境負荷低減を図ることが注目されている。しかし、施設規模が大きい分、その存在自体が招く周辺地域への環境面での悪影響が懸念される。特に荷物積み替え時に大量に発生する木製廃棄パレットの堆積は、都市景観上の問題のみならず、火災などの地域災害の原因にもなりうる。このような背景から、関東運輸局、日本自動車ターミナル株式会社、東京路線トラック協議会などと協力し、都内4箇所の公共トラックターミナルを対象に、大量に発生する木製廃棄パレットの共同リサイクルシステムを構築した。本研究では、このシステムの概要を紹介し、特にシステムの安定的運用を支えている運送事業者のコスト削減効果、立地地域に対するCO2削減効果を明らかにした。
  • 金沢市における事例研究
    高木 一典, 川上 光彦
    2007 年 42.2 巻 p. 101-110
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究においては、金沢市の市町村MPを事例とし、その内容の表現について、言語学的な分析から、文章構造の特徴とその明確性について明らかにしている。文は意味役割とその自由度の組合せにより4種類にタイプ分類することができ、それらは明確性を有する明示タイプ、曖昧さを有する項明示タイプ及び抽象タイプ、文法の要件を満たしていないことによる曖昧さを有する文法不適格である。金沢市の市町村MPを対象として文のタイプ分類を行うと、曖昧さを有する項明示タイプ及び抽象タイプ、文法不適格である文の合計が市町村MP全体の9割を越えており、市町村MPの非常に多くの文が明確な記述を行っていないといえる。また、都市政策形成における市町村MPの多様な使われ方について分析を行ったところ、事業が進行中の箇所等でも曖昧な文章を用いて記述されており、経年的には、社会情勢の変化に応じて、曖昧な文を解釈しながら弾力的な運用を行っていた。
  • 市街地開発事業指導要綱と第2ゾーン地区計画を事例として
    川崎 興太, 大村 謙二郎
    2007 年 42.2 巻 p. 111-122
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、中央区における市街地開発事業指導要綱と第2ゾーン地区計画の変更に関する経緯について、都心居住にかかわる事項を中心に考察することを目的とするものである。平成19年4月1日までに、指導要綱は昭和60年5月11日に制定(同年6月1日施行)されて以来10回変更されており、第2ゾーン地区計画は平成5年7月16日に制定・施行されて以来6回変更されている。指導要綱と第2ゾーン地区計画の中心的な内容は、一定の関連性を持ちながら大きく変化しており、指導要綱は、住宅附置義務制度からコミュニティ形成やマンション管理といったソフトなものへと変化し、第2ゾーン地区計画は、住宅容積率の緩和による住宅の供給促進から、住宅の質や地区特性に応じた生活環境の向上に向けたものへと変化している。本研究を通じて、今後のまちづくりとその手法のあり方について、まちづくり手法の試行的導入と動態的運用、地区環境の漸進的更新・変容を誘導する制度設計、地方公共団体による積極的な都市空間・環境の管理が重要であることが明らかになった。
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