都市計画論文集
Online ISSN : 2185-0593
Print ISSN : 0916-0647
ISSN-L : 0916-0647
42.3 巻
選択された号の論文の161件中1~50を表示しています
  • 江戸博物誌にみる海浜植物の認識状況と観賞形態
    押田 佳子, 横内 憲久, 岡田 智秀
    2007 年 42.3 巻 p. 1-6
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、海浜植物を通じた人と海浜とのかかわりを明らかにするために、江戸博物誌より江戸時代の海浜植物の認識状況および当時の観賞のあり方を捉えた。その結果、江戸時代に海浜植物は観賞を目的とした園芸品種として人々の生活の中に浸透しており、その他にも薬や食材など生活の糧としてあったことが捉えられた。海浜植物の観賞については、園芸業者の介在や現地から個体を自宅に直接持ち込み、庭のスケールに合わせて植物の姿を愛でる庭先観賞、海浜での雄大な立ち姿や珍しい種などを積極的に植栽したものを愛でる現地観賞がなされていたことが示された。また、この頃の海浜には雑多な種が植栽されたり、園芸のために多くの種が持ち去られるなどの人為撹乱がなされていたことも示されており、今後海浜緑化を行う際には、海浜環境をよく理解した上で、環境にあった種を植栽する必要があることが示唆された。
  • 竹内 智子, 石川 幹子
    2007 年 42.3 巻 p. 7-12
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    東京における水と緑を活かした公園緑地・地域制施策のあり方を再考するため、神田川上流域を対象に、計画思想、法、政策、事業化の手法とプロセスについて精査し、以下の知見を得た。1)水源池、湧水地などの優れた自然環境を有する地域とそれに隣接する台地上の住宅適地においては、計画理念が存続し、施策が重層的に継承・更新され、水と緑のストックが維持されてきた。2)核となる自然資源の周辺に多様な地域制緑地を導入した地域では、今日なお、多様な民有緑地が、広範に維持、継承されている。3)市街地の拡大を防ぐ目的で導入された緑地地域は、1969年に全面的に廃止されたが、その後、緑地地域に残存する緑地を生かし、新たな施策が展開された。これらは、今日、過密都市における貴重な緑地資源となっており、時代の要請にあわせた、新たな施策の展開が必要である。
  • 鈴木 春菜, 藤井 聡
    2007 年 42.3 巻 p. 13-18
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、人々が日常的に利用する店舗に対して持つ愛着に着目した.人々が普段消費行動を行う店舗は居住地に近いことが多く,店舗への愛着は居住地の物質的環境の評価とも考えられ,地域愛着に影響を与えるものと考えられる.地域愛着の存在は,まちづくりや防災計画・景観保全などに影響を与えることが示されており,店舗への愛着の影響とその規定因についての検討は,有益な知見となることと考えられる.このような店舗への愛着の規定因として,本研究では特に各店舗の立地や形態について着目し,日本の3つの地方都市で居住者を対象に質問紙調査を実施し,その影響について検証した.この結果,近くの店舗への愛着と地域への愛着が相関関係にあることを示した.さらに,店舗への愛着の規定因については,商店街や百貨店,小さな店舗といった店舗の形態や,店舗への来訪頻度,店舗の郊外立地が,直接,あるいは店舗での従業員とのコミュニケーションを通じて間接的に,店舗への愛着に影響を及ぼすことを示した.
  • 石河 正寛, 村木 美貴
    2007 年 42.3 巻 p. 19-24
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は観光資源に乏しい一方、中心市街地活性化の必要性の高い都市に着目し、活性化のための一手段としての「食文化」活用の可能性について明らかにすることを目的とする。観光客にとっての目的の一つに、来訪地でこそ味わうことのできる「食」があることから、本研究ではこうした食文化に着目し、それが中心市街地活性化にいかに機能するか明らかにするものである。「食」事業の実施は、来街者の増加と知名度の向上において期待する割合が高いものの、事業導入、継続上の課題の双方において、関係者間の協力関係構築の重要性が明らかとなった。
  • 八女市福島伝建地区を事例として
    石橋 知也, 柴田 久
    2007 年 42.3 巻 p. 25-30
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,高齢者が居住環境において歩行活動を行う上で快適性が得られる質的要件について,散歩という日常的に行われている活動から抽出すると共に,散歩の観点から考える伝統的町並み環境の整備のあり方について検討する.重要伝統的建造物群保存地区に選定され,高齢者居住率が比較的高い八女市福島地区において,高齢者の散歩実態と町並みに対する意識調査を実施した結果,以下の成果を得た.1)福島地区の高齢者の散歩は歩くこと自体を主目的としていること,2)散歩ルートは規模に関係なく単調に形成されながらも,自然景観や道路景観の変化を含めることでめりはりをつけたルート形成がなされていること,3)自然の有無,安全性,道路景観の変化に加えて人々の活動風景や通行量も散歩者に好まれること,4)散歩による歩行活動が町並みに対する意識の変化に影響を及ぼす可能性が示唆されること.
  • 坂東 裕介, 木下 光, 丸茂 弘幸
    2007 年 42.3 巻 p. 31-36
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    阿波踊りのパフォーマンス空間は、利用される公共空間や運営管理、仮設の装置、踊り集団によって一丁廻り期、桟敷及び審査場・競演場期、演舞場期、演舞場・街角踊り期の4つに分けることができる。一丁廻り期、その踊り範囲は、藩政期は町民地、明治期以降は市内全体へと広がった。踊り集団は地域に帰属するコミュニティで形成され、地域の街路や空地で踊った。桟敷及び審査場・競演場期は、阿波踊りが観光化し、踊り手・見手の関係をつくる仮設の装置を作った。このことによって、踊りに「見せる」・「見る」の意識がうまれた。演舞場期は運営組織や管理体制が統一され、さらに阿波踊り全体の規模や個々のパフォーマンス空間を大きくすることができた。また公園や道路整備が進んだことによって、道路以外のパフォーマンス空間も多くつくられた。
  • 大阪・靭公園内外のつながりに着目して
    青戸 良宏, 嘉名 光市, 藤本 和男, 赤崎 弘平
    2007 年 42.3 巻 p. 37-42
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    最近、都市計画分野において、「際」への関心が高まってきている。この空間は、性質の異なる都市空間に関係性を構築し、空間の質を高める可能性をもつ。そこで、本研究は、大阪の代表的な都市公園と市街地の境界部に存在する「際」において、その形成過程や、空間利用、空間構成といったつながりについて分析した。その結果、靭公園の公園際は、建築物敷地と公園が直接接する空間や公園へつきあたる区画道路など、市街地と多様な関係をもつ場所が確認された。そして、その公園際は、近年、飲食店が立地する傾向もみられた。今後の都市計画および公園計画においては、建築物敷地と公園が直接接する空間を意図的に生み出すといった公園際の計画手法を採り入れる可能性がありうる。また、その実現には、相互の良好な関係を保証する管理ガイドラインといったルールの整備も必要となるが、そのためにはより多くの公園際の調査や管理運営上の課題解決等について検討を深める必要がある。
  • 樋口 明彦, 林 慎太郎, 高尾 忠志, 岡本 良平
    2007 年 42.3 巻 p. 43-48
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、唐津市旧城下町地区を対象に城下町建設当時の山アテ景観構造に着目し、それが今日どのような要因により阻害されているかを明らかにし、それら阻害要因が発生した経緯の類型化を行い、さらに山アテ景観を阻害する要因の発生を抑制するには今後どのような取組みが必要となるかについて考察をおこなうことを目的としている。現地調査により唐津市旧城下町地区の多くの街路で周辺に分布する地物に対しての山アテが存在すること、またそれらの多くが近代以降の都市形成の過程で阻害されていることを確認することができた。これらの山アテ景観の保全には現行の高度地区のみでは不十分であり、今後個々の山アテ景観について個別に規制の詳細を設定する必要があるのに加えて、規制の導入について市民の合意を得る必要がある。
  • 福井県越前市五箇地区の和紙産業を対象として
    時岡 壮太, 後藤 春彦, 佐久間 康富
    2007 年 42.3 巻 p. 49-54
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では越前和紙の産地である福井県越前市の五箇地区を対象に、産業空間の利用の変遷を明らかにし、産地の現状を照らし合わせ、現在の産業空間の過不足を整理し、今後の伝統工芸産地の空間マネージメントのための知見を得ることを目的とした。本研究で明らかになったのは以下の点である。・手漉き業は機械漉き業にくらべ併設型が多く、住宅と事業所の位置関係が近い。・産地観光化に関しては景観の悪化が、新規居住者に関しては住宅の不足が問題点となっている。・「技術向上」が1950~60年代に集中しておこっている。しかし1970年代以降は変遷が多様化してる。・手漉き業では「放置」が1970年代より現れており、「生活向上」が1960年代から現在にいたるまで継続している。機械漉き業では「流通対応」が1970年代から増加し、現在にいたるまで継続している。手漉き業では転用型が多いのに対し機械漉き業では追加型の変遷が多い。
  • 松本 邦彦, 柴田 祐, 澤木 昌典
    2007 年 42.3 巻 p. 55-60
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    大都市圏周縁部には農地が多く存在しており、地域環境の維持向上に貢献する多面的機能を有している。そして景観機能からの農地の評価は、それらを計画的に保全する上での一つの根拠ともなりうる。農地景観評価に一般的に用いられる面積等の指標は、農地と他要素との空間的関係や実際の農地の可視性など、実際にその場所に立つことで感じられるミクロなスケールの把握は十分に出来ない。そのため、現在の大都市圏周縁部における農地景観が、農地の他用途への転換により変貌してきたことに着目し、農地転用の際に形成される農地と隣接土地利用とのエッジラインの特性を分析することで、農地景観の特徴を把握し、農地保全に向けた基礎的知見を得ることを目的とした。形成年代、隣接土地利用、実際の農地の可視性などの違いにより抽出した、様々な特徴を持つエッジラインを分析することで、農地面積の増減では把握しにくい、小規模農地の景観価値の評価等を行うことができた。これらのデータから、市街地との空間的関係や景観機能を考慮しながら、地域環境の維持向上のために優先的に守るべき農地の検討ができ、農地の多面的機能に基づく保全計画の作成に資することもできる。
  • 大友 佑介, 笠原 知子, 齋藤 潮
    2007 年 42.3 巻 p. 61-66
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    自由が丘周辺には、行政地域名称として用いられる八雲や、駅名になっている都立大学、駅名であり行政地域名でもある緑が丘などの、駅名や行政地名によって構成される地名があるが、本研究の狙いは、名称にある地名を含んだ建物の立地が、どうやってに徐々に拡大していくかを明らかにすることを目的としている。この研究により、対象地域のほとんどの地名が付けられた建物は、同名の駅名の600m圏、もしくは同名の行政区域内に収まる傾向にあるが、自由が丘は、駅を中心とした半径600m以内の地域や行政区域内以外にも、自由が丘という行政区域のすぐ外側や、既存の自由が丘と名称の付いた建物の近傍、自由が丘駅から高低差を感じることなく歩けるエリアや、自由が丘駅から600m近くにある駅の周辺に広がっていることが明らかになった。
  • 金沢市および京都市を事例として
    伊藤 夏樹, 小泉 秀樹, 大方 潤一郎
    2007 年 42.3 巻 p. 67-72
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年景観整備に対する関心が高まっており、全国で400を超える自治体が景観条例を定めている。さらに自治体の中には自主条例と法定制度を組み合わせた複合型の景観整備を進める取り組みが見られる。本研究では、上記のような景観整備システムを持つ先進自治体である金沢市と京都市を対象に制度の展開過程をもとに全体構造を整理し、その特徴を明らかにすることで今後景観整備を進める自治体への有用な知見を得ることを目的としている。研究の結果、金沢市では自主条例による景観資源保全を積み重ねた地域別・資源別の重層型のシステムが形成され、京都市では法定制度をもとに規制レベルを細分化し、自主条例による規制や助成を付加することで段階的な規制によるシステムが形成されたことが分かった。
  • 山形県高畠町まほろば通りの事例について
    相羽 康郎
    2007 年 42.3 巻 p. 73-78
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は、都市計画道路事業に伴う街並み景観形成において、まちづくり条例にもとづく建築審査会の経験から、審査の役割りなど街並み形成にとって有益な情報を提供することを目的としている。審査会で指摘され変更されたデザインの一覧表から、屋根形態、前面空地のアメニティ、窓やファサードの開放性に関して比較的変更のあったことがわかる。また大規模な2つの敷地における審査過程が検討された。これらの結果から、いくつかの有益な示唆が得られた。すなわち、街並みの雰囲気を現す近代和風といった分かりやすい言葉、初動期に実施された街並み景観シミュレーションを伴うワークショップ、建築士が決定した直後に審査会を実施すること、施主よりも建築士の意見を尊ぶこと、これらの重要性である。
  • 函館市における基準遵守建物による高さ問題を事例として
    松井 大輔, 岡崎 篤行
    2007 年 42.3 巻 p. 79-84
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    函館市では景観条例により建物の高さが制限されているが、基準値より低い建物による紛争が発生しており、基準の緩さを指摘できる。これは函館市に限ったことではなく、全国的に同様の紛争が発生する可能性があり、紛争の構造を分析しておく必要がある。調査により、条例制定時に目標都市像が未確立であることを見逃したことから目標都市像の議論が停止したこと、不満は存在するが紛争まで発展していないことが阻害要因であることがわかった。今後は目標都市像の議論を再開し、継続する必要がある。
  • 山梨県市川三郷町市川地区中央部を対象として
    菊山 幸輝, 大山 勲
    2007 年 42.3 巻 p. 85-90
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、近世から昭和に至るまでの繁栄の基盤を持ち、その間様々な変化によって現状では雑然で無個性に見える細街路景観を持つに至った地方小都市を対象として、細街路の景観の特徴を把握し、都市の歴史的文脈と関連づけて景観的特徴の成因を把握することを目的とした。本研究の結論は以下のものである。本研究の結論は90路線の景観を整理し、13の特徴的な細街路の景観グループを抽出できた。抽出した細街路景観の歴史的文脈を検討し成因を明らかに出来た。結果、明治、昭和中期を境界とした3期の歴史と景観を重ねた結果、近世の基盤を持つ地区の街路とそうではない地区の細街路の景観の違いが特に顕著なことが歴史的文脈を検討することで理解できた。
  • 山梨県市川三郷町市川地区中央部の住まいのガイドラインづくりに向けて
    溝渕 浩平, 大山 勲, 吉川 仁
    2007 年 42.3 巻 p. 91-96
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、現在の町並み景観を構成している複雑化した建築様式を明確にし、さらに建築様式に対する対象地の住民の意識を調べる事を目的とする。本研究の結論は以下の通りである。1)建築物の外観に用いられている複雑化した構成要素(基本的構成要素と付属的構成要素)の特徴を把握した。2)複雑化していた建築様式を戸建て住宅に関しては5つの典型的建築様式及び16の詳細建築様式に分類する事ができ、店舗建築に関しては4つの典型的建築様式及び9つの詳細建築様式に分類する事ができた。3)明らかになった建築様式の分布特性と調査対象地区の歴史的背景との関連性を把握した。4)対象地の住民は伝統的な建築様式を基準に据えて住宅を評価していた。
  • 中世イタリアの都市広場の空間的特徴との比較を通じて
    木下 智康, 西成 典久, 齋藤 潮
    2007 年 42.3 巻 p. 97-102
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    これまでの都市デザイン史上、街路と街路の交差部、つまり交差点は、人が集まり、人がコミュニケーションをとるという点で、重要な場所として位置づけられてきた。しかし近代(特にモータリゼーションが急速に進んだ戦後)に入って、交差部は道路交通上の結節点としての意味合いで捉えられるようになってしまった。そこで本研究は、社交的な場所としての広場に関して、これまで用いられてきた指標を援用することで、交差点の都市広場としての潜在性を測る指標を提示することを目的とする。結論として、その指標を用いて現実の交差点の特徴を記述する。
  • 三重県亀山市関町「関宿重要伝統的建造物群保存地区」を事例として
    松村 有紹, 木下 光, 丸茂 弘幸
    2007 年 42.3 巻 p. 103-108
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は1980年から2006年までのすべての現状変更申請の分析を通じて生活重視型町並み保存における伝統的家屋の現状変更行為の類型と空間構成の変化を明らかにすることを目的とする。以下の3点が明らかとなった(1)伝統的家屋の現状変更行為は3タイプ/8パターンに分類することができる。(2)街道側では、80パーセント以上の主屋が保存されていること。一方では、生活道路側では、たくさんの付属家屋が改築されていること。(3)伝統的家屋の空間構成や主屋は複数回の現状変更行為の影響により消失したケースがいくつかある。
  • 全国における広域的指定都市を対象として
    高橋 智之, 岡崎 篤行
    2007 年 42.3 巻 p. 109-114
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    現在、マンション建設に伴う紛争が全国各地でみられており、建物高さをコントロールする必要性が高まってきている。この論文では、絶対高さ制限を含む最高限高度地区の内容とその指定経緯について、全国における広域的指定都市を対象に、明らかにしたものである。当論文の結論としては、当該高度地区の指定が大半であることや、当該高度地区の指定数が近年増えていることを明らかにした。また2つの指定手法が存在していることや、都市全体の観点から指定することが必要であることも明らかにした。さらに、現況を調査することや町村を支援する観点から都道府県によるガイドラインを策定することが重要であることも明らかにした。
  • 金沢市、倉敷市、萩市の伝統的建造物群保存地区周辺のヘドニック・アプローチによる地価関数の推計
    宮脇 勝, 梶原 千尋
    2007 年 42.3 巻 p. 115-120
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本論は、景観整備の価値を経済的な側面から明らかにする目的で、地価公示及び固定資産税路線価を用いたヘドニック・アプローチによって地価関数を推計している。対象地域として、景観条例や重要伝統的建造物群保存地区に着目し、長い間景観行政が行われてきた金沢市、倉敷市、萩市を取り上げて分析する。分析の結果は次のような概要となっている。1)金沢市全域について、景観規制に係わる要素として、近代的都市景観創出区域のみが説明変数として採用された。2)地区単位で推計した結果、金沢市内の異なる景観規制がかけられた複数地区の比較で、高度地区12m は、伝建地区とともに指定された場合にのみ地価を上昇させており、伝建地区の経済的効果を明らかにした。3)一方、 用途地域などの条件の異なる他都市の伝建地区との比較の結果、倉敷市と萩市の住居系及び商業系地域でプラスの効果が明らかにされている。
  • 小谷野 真由巳, 笠原 知子, 齋藤 潮
    2007 年 42.3 巻 p. 121-126
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、国分寺崖線の二子玉川地区に、明治・大正期に建ち並んだ別邸の地形的立地特性を明らかにすることを目的とする。国分寺崖線は、多摩川左岸の河岸段丘であり、高低差約10-20mの崖が続き、起伏に富んだ地形を有する。明治・大正期において、本地区の崖線の斜面地は、農業用地としては生産性が低く、開拓も困難であったものと考えられる。にもかかわらず、一部の富裕層である政治家や実業家、例えば、田健次郎、岩崎小弥太、清水揚之助、第一銀行倶楽部などが、このような実用価値の低い敷地を取得し、別邸を構えた。本研究では、土地台帳および当時の地形図などの資料を用いることによって、別邸分布が明らかになった。別邸は、崖線の尾根型斜面に分布する傾向がみられた。また、多摩川縁から別邸敷地をみた透視図を作成することによって、開析谷によって台地が分節され、凸型の尾根線を持つ地形のまとまりを見いだした。そして、彼らはこの地形のまとまりと対応した敷地を取得する傾向があった可能性がわかった。
  • 東京都世田谷区東部を対象として
    高野 裕作, 佐々木 葉
    2007 年 42.3 巻 p. 127-132
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、スペースシンタックスという方法をもちいて市街地の景観タイプを把握する方法を検討した。様々な街路パタンからなる地域(東京世田谷区)を対象として、スペースシンタックスのInt-Vという指標による街路構造の特性把握と、現地調査による地区の景観の印象の把握を行った。その結果、地区の景観の印象は、土地利用や建物高さなどの情況を示す用途地域区分と、スペースシンタックスによる街路パタンの特徴を表す指標の値との2軸によっておおよそ把握できることが明らかとなった。
  • 宅地の土地利用及び分割・統合履歴と空間特性の関係
    小林 史彦, 川上 光彦, 松谷 圭祐
    2007 年 42.3 巻 p. 133-138
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    金沢市中心部に残存する歴史的木造家屋が立地する宅地の空間特性を、藩末期土地利用区分と明治以降の宅地分割・統合履歴に着目して明らかにした。研究の基礎資料としては、藩政末期の金沢城下町絵図と都市計画基礎調査データ及び住宅明細図を用いた。過半数の宅地が明治以降に分割された履歴をもち、間口、奥行き、細長比、面積には一定の集中傾向がみられた。間口、細長比、面積は、「平士屋敷等」と「足軽屋敷」、「上屋敷」と「町人地」に類似性があった。前者は間口及び面積が大きく細長比が小さい。後者は間口及び面積が小さく細長比が大きい。「平士屋敷等」と「足軽屋敷」では分割・統合の履歴内容により宅地の形状が多様な展開をみせるのに対し、「町人地」では履歴内容に関わらず間口が狭く、細長比が大きい形状への収束傾向が強い。宅地内家屋配置は、時代が下がるとともにいずれの藩末期土地利用区分でも宅地前面・側面のセットバック率が高くなるが、その度合いには藩末期土地利用区分との関連性がみられ、武士系の土地利用区分では間口や奥行きが小さくてもセットバックする傾向が、「町人地」では間口や奥行きが大きくてもセットバックしない傾向がみられた。
  • 仁科 エミ, 大橋 力
    2007 年 42.3 巻 p. 139-144
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    自然性の高い環境音に豊富に含まれている可聴域上限を超える高周波成分は、都市環境音では著しく欠乏しており、それが現代病の引き金を引く基幹脳の活性低下を導く可能性が見出されている。そこで著者らは、自然性の高い熱帯雨林環境音を高忠実度で記録し、適切な加工の後、それを電子的手段によって市街地に再生・付加することによって市街地環境音の補完を行う構想を、実在の市街地での実装実験によって検証した。熱帯雨林環境音を市街地環境音に付加して再生した時、市街地環境音だけの時と比べて、ストレスフリーの指標であり基幹脳の活性指標でもある脳波α波が統計的有意に増大し、ガンの一次防御効果やウィルス感染防止効果をもつ血液中のNK細胞活性が有意に上昇するのに対し、ストレス性ホルモンを代表するコルチゾールの濃度は有位に低下し、アドレナリン濃度も低下傾向を示した。さらに、質問紙調査法による主観的印象評価実験により、熱帯雨林環境音の付加によって環境の快適性が全般的に顕著に高まる結果が得られた。以上の結果はいずれも基幹脳の活性上昇を反映する現象であり、熱帯雨林環境音の市街地環境音への補完の効果を支持している。
  • コゲラを指標種として
    山田 順之, 島田 知幸
    2007 年 42.3 巻 p. 145-150
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、地域生態系保全手法を議論するために、リモートセンシングを活用した緑地判読とGISを活用したコゲラの生息可能域判定による都市域におけるエコロジカルネットワーク評価手法に関する検討を実施した。都市化の進んだ東京都杉並区を対象として研究を実施した結果、高解像度衛星データおよびレーザースキャナーにより測定した地表面高(DSM)や地盤高(DTM)データを活用することで屋敷林など都市域の小規模な緑地を把握できることが明らかになった。また、高木の連続性と樹高などを条件とするコゲラの生息可能域判定手法の有効性を現地調査により確認するとともに、地域生態系の観点から重要な緑地を認識することができた。さらに、効果的な緑地整備方針を検討するため、コゲラが利用する緑地が減少するケースや新たな緑地を整備するケースなど複数のシナリオを設定・評価する計画検討手法を提案した。
  • 京浜港における水域、護岸・岸壁敷および上屋の利用実態を通じて
    花野 修平, 横内 憲久, 岡田 智秀
    2007 年 42.3 巻 p. 151-156
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、都市港湾における公共空間の新たな利用方策として「賑わい活動」を提案するものである。研究では文献調査とヒアリング調査を行い、公共空間のなかでも先駆的に「賑わい活動」を実施している道路と河川を参考にして、港湾における「賑わい活動」の具体的な実施要件を水域利用と護岸利用と岸壁敷および上屋利用の空間別に検討した。その結果、実施要件として8項目の遵守事項と6項目の条件別の遵守事項と2項目の配慮事項を提示した。
  • 偕楽園を事例として
    金 利昭
    2007 年 42.3 巻 p. 157-157-162
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、代表的な歴史自然観光地でもある茨城県水戸市偕楽園を事例として、まず健常者・軽度歩行困難者・車いす利用者における観光資源保全とバリアフリー整備のトレードオフ意識を明らかにし、次いでこれを基に今後のバリアフリー整備検討手順を提案することである。具体的には、意思決定手法の1つであるAHP(階層分析法)を適用して、偕楽園のバリアフリー整備実施においてどのような点を重要視しているかという評価項目の重要度を明らかにするとともに、健常者と障害者といった立場の違いによる評価構造を比較分析し、今後のバリアフリー整備検討手順を提示した。
  • 山崎 賢悟, 津々見 崇
    2007 年 42.3 巻 p. 163-168
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    同業種の小売商業店舗が高密度に集積する専門店街は、広域的な集客力を有することから、商業地が目標とする姿の一つである。専門店街は、街を訪れる人がいることで活気を維持しており、それが減少すれば衰退する危険性がある。そこで本研究では、成熟した専門店街としての「本の街」神田神保町を対象とし、専門店街の継続的発展に関する知見を得ることを目的とする。本研究の結論は以下の通りである。神田神保町は、古本まつりが始まった1960年頃に『本の街』として成熟したと捉えられる。書店数は1995年以降大幅に増加し、近年は約200軒に達する。1995年以降は一般消費者へのメディア露出が高まっている。書店立地は、かつての線的分布から、面的分布に変化した。成熟後もエリア内外の活発な新陳代謝があることで、専門店街の活力を保っている。成熟期以前から立地する書店と、成熟期以後に立地した書店とでは、基本属性や立地の特徴が異なる。成熟した専門店街・神保町エリアでは、象徴的イメージを保つ界隈と、新しい展開を育む界隈の両方があることで、「本の街」としての位置づけを保ちながら継続的に発展することができてきたと総括する事ができる。
  • 辰巳 浩, 外井 哲志
    2007 年 42.3 巻 p. 169-174
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,現地において実際に景色を見た場合と室内にて現地のビデオ映像を視聴した場合について,その相違点を把握することを目的とする.まず,実際の空間を歩行する屋外歩行実験と室内にてビデオ映像を視聴する室内実験を実施し,アイマークレコーダを用いて両者の視点挙動を比較した.さらに,想起法,選択法,SD法,順位法の4種類のアンケートによる景観評価を屋外歩行実験と室内実験で実施し,両実験結果を比較した.これらの分析から,屋外歩行実験での結果と動画を用いた室内実験での景観評価は概ね同様であることがわかった.しかしながら,室内実験結果と屋外歩行実験結果ではいくつかの相違点があることを把握した.
  • 浦田 興, 平田 富士男
    2007 年 42.3 巻 p. 175-180
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    2003年に指定管理者制度が導入され,現在多くの都市公園で民間事業者による管理運営が行われている.都市公園は様々な活動を伴った市民参加による管理が望まれているが,新たに参入した民間事業者はこれまで市民との連携による管理の経験が充分とはいえず,市民側にも民間事業者に対し不安感を抱いていることが指摘されている.このような中,民間事業者は幅広い市民参画のもと,円滑な公園管理を推進するため市民グループと良好な関係を築くことが必要である.そこで,本研究は民間指定管理者と公園内で活動する市民グループの関係の現状を体系的に把握し,市民グループの民間事業者への評価を加味して,両者が良好な関係を結ぶにあたって役立つ民間指定管理者の取り組みの方向性を明らかにした.その結果,民間指定管理者は市民グループとの関係性から3つのタイプに分類でき,また民間指定管理者の取り組み意識と市民グループの評価にもややずれがあり,両者の意識の差を埋めるべく,管理の段階に応じて行政を含めた3者が積極的に意志疎通を図ることが重要であるとわかった.
  • 御所湖広域公園と花巻広域公園を事例として
    大瀧 英知, 三宅 諭
    2007 年 42.3 巻 p. 181-186
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は指定管理者制度導入のもと、協働による都市公園の管理運営の効果に関しての知見を得るため、岩手県にある御所湖広域公園と花巻広域公園を事例に、協働の枠組みを設定した上で、制度導入の成果として、以下の点を明らかにした。(1)指定管理者には管理能力、利用促進計画、地域連携、実績、費用削減が求められる。地域連携の促進には、公園や地域と関わってきた経緯も重要である。(2)制度の導入は事業に関わる主体が増加した。(3)金銭的補助を受けた場合、対等関係を築き難い。(4)制度導入により効果的な管理費削減が達成され、利用も促進された。以上のことから、都市公園の指定管理者制度は従来の管理委託制度に比べ、経費の削減、利用促進、地域連携の実現につながることが明らかとなった。また、今後の課題として以下の点を明らかにした。(1)活動主体が増加すると、初動期には十分な情報公開が果たされないこと。(2)地域連携を重視しない場合、指定管理者と公園コミュニティの相互の理解が達成し難いこと。(3)一般利用者に浸透していないこと。
  • 那覇市大道小学校区でのリサーチ&アクション
    清水 肇, 阪井 暖子, 小野 尋子
    2007 年 42.3 巻 p. 187-192
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    那覇市の中心市街地にある地区において、コミュニティ計画の活動拠点となる場所を基点として、子ども達が主体となって取り組むコミュニティの改善計画に取り組んだ事例報告である。 本事例は、コミュニティ計画に取り組むNPO等と、設置された自由に立ち寄れる活動拠点(「コミュニティサロン」)に出入りする子ども達が共同で、地域における子ども達の放課後・休日の過ごし方調査、屋外での大人と子どもの行動感圧調査を行い、その結果を踏まえて、地域の路上を活用した遊び場づくりに取り組んだものである。 基盤となる立ち寄り空間の形成、子ども達の認識を裏付けるための調査活動、調査と連動した実践の試みを組み合わせた事例としてコミュニティ計画上、重要な事例と考えられる。
  • 建築士が企画・運営する住まい・まち学習に関する研究
    加藤 浩司
    2007 年 42.3 巻 p. 193-198
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    伝統的建造物群保存地区である福岡県・八女福島伝建地区では、小学生による伝統工法体験が行われている。これは、八女市内の建築士で組織する「NPO法人八女町並みデザイン研究会」が中心となって企画・運営をし、それに地元小学校の6年生が地域貢献活動の一環として参加するという図式で行われている。本稿では、このような八女福島における小学生による伝統工法体験を事例として、次の2点について研究する。(1)主な関係主体の住まい・まち学習に対する姿勢、及び小学生による伝統工法体験の運営方法を調査・提示するとともに、運営上の課題を抽出する。(2)伝統工法体験参加者へのアンケートに基づいて、小学生による伝統工法体験の実施意義について考察する一方、その意義を深めるために必要な課題の抽出を行う。なお、(2)で取り上げる事例は、2006年1月に実施されたK家主屋の土壁塗り体験である。
  • 宮崎県日向市立富高小学校における「日向市活性化塾」を題材として
    辻 喜彦, 出口 近士, 吉武 哲信
    2007 年 42.3 巻 p. 199-204
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究においては、まず総合的な学習の時間を使った富高小学校「日向市活性化塾」をケーススタディとして、まちづくり学習のプロセスの追跡と整理を行った。次に、授業経過の中での子どもたち・関係者たちの意識の変化を整理・分析し、この授業が成功した理由を考察するとともに、本授業による成果が並行した進捗するまちづくり事業への効果について分析するものである。宮崎県と日向市は、都市再生のためのプロジェクトを進めており、街の未来を担う子どもたちに対して街への意識向上のために「日向市活性化塾」を開催した。授業は、街に活気をだすための「夢空間-屋台」を設計、製作、そして実際に使用することをテーマとして子どもたちに提示した。この授業の結果、子どもたちが街へ目を向ける成果が生まれ、関係者から高い評価を得ている。本研究の成果としては、この学習プログラムを通じた子どもたちの成長過程が活性化をめざすまちづくり事業のプロセスと類似していることが明確となった。つまり、このようなデザイン・ものづくり教育は、街に活力を与える効果があると考察できる。
  • 谷 武
    2007 年 42.3 巻 p. 205-210
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    平成10年度に旧建設省の要綱制度として高齢者向け優良賃貸住宅がスタートし、平成13年度に高齢者居住法に基づく法定事業となり、内容も改正された。多くの高優賃では家賃対策補助が実施されており、入居者の負担(入居者負担額)は本来の家賃(契約家賃)よりも減額されている。この入居者負担額は国交省告示で定められている入居者負担基準額に設定されているケースが多いが、これに起因する問題点も多い。そこで、本研究では、全国の高優賃について収集した契約家賃及び入居者負担額のデータ、及び、16都道府県において自治体担当者等を対象に実施したヒアリング調査の結果から、高優賃の入居者負担額算定方法の問題点と今後のあり方について検討を行った。研究の結果、1)従来用いられてきた入居者負担基準額による設定では、立地の差が十分に反映されない問題を抱えていること、2)契約家賃と入居者負担額の差額の大きい住宅があり、補助期間終了後の家賃上昇によって退居を余儀なくされる世帯が生じる危険性が高いこと、3)都市部の自治体を中心に入居者負担額に契約家賃を反映させる方法へと変更してきており、メリットが大きいことが明らかになった。
  • 香川県営住宅を事例として
    小山 雄資, 吉田 友彦
    2007 年 42.3 巻 p. 211-216
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は大規模な戸数削減を伴う再編計画が策定された香川県営住宅を事例として、再編によって転出を余儀なくされる世帯について、現行の計画にもとづいた場合の転居の可能性を想定した。廃止予定住戸に居住している1,740世帯の転居が必要となることを概算した上で、転居先となる県営住宅の空き住戸の分布、および転居先の条件を満たす民間賃貸住宅の市場における位置づけを検討した。その結果、1)県営住宅の空き住戸が受け入れることができるのは転居を要する世帯の3割にとどまり、その転居先は市街地の外縁や他の市町となることが想定されること、2)高松市内における全戸廃止団地の住戸面積と家賃に相当する民間賃貸住宅は現在の市場にみられないこと、3)公営住宅居住世帯の平均的な収入層の家賃負担限度額を世帯人員別に推計したところ、市場家賃にもっとも近いのは2人世帯であること、を明らかにした。これらの結果を受け、転居を要する世帯が入居できる住宅は、県営住宅と民間賃貸住宅を含めても大きく不足すること、転居先が遠隔地となる場合があること、の2点を課題として指摘した。その上で転居先の戸数に見合った削減戸数の見直しを提起した。
  • 福井市郊外4住宅地を事例として
    菊地 吉信, 野嶋 慎二
    2007 年 42.3 巻 p. 217-222
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は,郊外住宅地における居住者の居住選択意向を明らかにすることを目的として,福井市を対象とした調査結果をまとめたものである。主な結論は次のようである。1)全世帯の約7割は住み続け意向である。ただし,必ずしも積極的な理由からだけではない。2)一方,住み替え意向の世帯の多くは,日常生活の不便さ以上に老後の生活に不安を感じている。3)全体として,居住者の住み続け意向は敷地や住宅の規模と関係があり,敷地面積は180m2が境となっている。4)住み続け意向世帯の4割と住み替え意向世帯の6割は,現住宅を子世帯に相続するつもりがないか,または継承に消極的な見方をしている。
  • 後藤 純, 小泉 秀樹, 大方 潤一郎
    2007 年 42.3 巻 p. 223-228
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿の目的は、プロジェクト型の協働のまちづくり制度における意思決定手続きの解明と意思決定の際の論点を明らかにすることである。近年行政政策とまちづくりが重なる部分が大きくなっている。市民ニーズの多様化と行政リソースの不足の前に、市民まちづくりは、ますます重要な存在である。この政策とまちづくりが重なる部分では、近年、行政と市民が適切に役割分担し、協調的に課題解決に取組む協働のまちづくりが増えてきている。従来は、任意の取り組みであったが、市民まちづくりの質的・量的拡大によって、先進的自治体ではその制度化に取組んでいる。これが本稿で扱う協働のまちづくりである。本稿では特に市民イシューと行政イシューの違いに着目し、意思決定手続きのありかたについて考察を行う。
  • 林崎 豊, 藤井 さやか, 有田 智一, 大村 謙二郎
    2007 年 42.3 巻 p. 229-234
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、2003年に施行された「都市計画提案制度」について全国的な運用実態を明らかにするとともに、住民発意型の地区計画提案事例に着目し、地区住民が居住環境の保全を目的として提案制度を利用する際の提案プロセス上の課題を明らかにすることを目的とする。全国調査の結果、運用実績は28件に上るもののプロジェクト開発や用途転換を目的とする企業発意型事例が7割を占め、制度導入時の大きな目的であった、市民による活用はあまりなされていないことが明らかになった。また、事例調査の結果、合意形成から提案手続きに至るまでの提案リーダーへの作業負担の集中が、提案プロセス全体の進行を遅らせる一因となっていること、提案を円滑に進行させるためには合意形成、専門知識・技術、金銭的負担面の課題を克服する必要があることが明らかになった。
  • 長野 基, 饗庭 伸
    2007 年 42.3 巻 p. 235-240
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では東京都内49市区を対象に地方議会と都市計画の関係を都計審への議員参加の実態分析から明らかにする。計量的分析から議会と都計審の人的な重複は自治体によって実態が異なっており、議会と都計審参加議員の政治構造は必ずしも重複しているわけではないことが示される。そして事例調査からは法定都市計画や関係諸政策で首長部局側と議会とは都計審の場以外に常任委員会と会派別勉強会、あるいは個別接触による情報提供というフォーマル・インフォーマル両方のルートを通じて調整が行われるという実態が明らかにされる。都計審を中心とする都市計画過程への議会関与の是非は古くからの論点だが、議会を代表した議員が都計審に参加し、常任委員会や本会議での議論と調整をしながら、議会の意思を都市計画に反映する、とした場合には以上の諸問題を踏まえて都計審への議会からの代表性を実質化するあり方を工夫することが課題となろう。
  • 建物ボリュームコントロールの視点から
    堀 裕典, 小泉 秀樹, 大方 潤一郎
    2007 年 42.3 巻 p. 241-246
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    日本の既成市街地において、地区の特性や住民の意向に合わない規模の開発が多く行われ、マンション紛争をはじめとする建築紛争が多く起こっている事を踏まえ、本研究では建物ボリュームコントロールに着目し、住民主導によるシアトル市のデザインレビュー制度から、参照基準がある場合の個別開発協議の実効性と限界および課題を明らかにし、今後の事前開発協議やデザインレビュー制度の制度設計に関し有用な知見を得ることを目的とした。研究の方法として、協議の議事録と上訴の判決文からの分析を行った。シアトルのデザインレビュー制度では、デザインガイドラインによりよく適応している場合はゾーニングの緩和が可能であり、セットバックや建築スタイル・色彩などは、協議で調整が可能であったのに対し、高さは難しかった。スムーズな建物ボリュームコントロールのキーとなるものは初期段階での建物ボリュームスタディである事がわかった。
  • 堤 可奈子, 小泉 秀樹, 大方 潤一郎
    2007 年 42.3 巻 p. 247-252
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿の目的は、意思決定権限及び財源を委譲している自治体コミュニティ政策を対象として、施策内容と地域住民自治組織による権限及び財源行使の運用実態を把握することで課題を明らかにすることである。近年地方分権が促進されるなかで都市内分権の文脈から地域を代表する組織が重要な論点となっている。また多様な主体によるまちづくりが積極的に展開され、意思決定や事業の実施(1)を担う地域の包括的組織の役割とともに、これら多主体による活動を如何に連携させ、地域全体としてのまちづくりを展開するかが重要となっている。1970年代に開始されたコミュニティ施策もこの時代の流れのなかで、多様な主体の参加による「自治的コミュニティ」の確立を重視する時代を迎えた。先進的な自治体では住民への権限委譲を含めた施策を展開している。本稿では、この権限委譲施策を対象として、地域住民自治組織へ委譲される意思決定権限及び財源と、それらを行使するプロセスに着目し、課題を明らかにする。
  • 金沢、高松、松山の事例から
    城所 哲夫, 片山 健介
    2007 年 42.3 巻 p. 253-258
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、第一に、日本ならびに都市再生への取り組みで先行しているEU諸国における議論を整理することを通じて、都市再生を進めていく上で重要となる社会的意思決定のあり方を理解するための枠組みを提示することである。第二に、提示した枠組みに基づいて日本の地方中核都市における都市再生政策・事業を対象として、ローカル・ガバナンスがいかに形成されつつあるかという観点から読み解き、社会的意思決定の基本的特徴とその課題について考察することである。金沢、高松、松山を対象として事例研究を行い、異なる3つのアプローチ、すなわち、コーポラティズム型計画先導アプローチ、市場志向型プロジェクト先導アプローチ、市民イニシアチブ型アプローチが典型的にみられることを示した。結論として、これらのアプローチのもとでローカル・ガバナンスを構築していくための可能性と課題について考察した。
  • 都築 まい子, 中村 文彦, 岡村 敏之
    2007 年 42.3 巻 p. 259-264
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    再開発は都市にとって不可欠ではあるものの、様々な主体や問題を含み、周辺地域に対する影響が大きいと考えられる、慎重に行われるべき事業である。これまでに様々な手法でたくさんの事例が実施されてきており、既往研究も多いがそれらは手法ごとに行われており様々な手法の事例が横断的に研究されていない。そこで本研究では東京都区部におけるさまざまな手法の再開発の事例を整理しデータベースを構築することにより、周辺地区も含めた現況の把握を行い、再開発の対象地区と周辺地区の地域特性変化を明らかにすることを目的としている。データベース構築にはGISを用い、土地利用現況・建物用途現況のデータから容積率の充足度やその変化に着目し、分析を行った。分析の結果から、再開発の対象地区では、再開発と無関係な地域と比べると、再開発の事前事後で有意に高度利用化や木造住宅の減少し、周辺地区でもそのような傾向を示すことが示唆された。また地域特性の変化をパターン化することにより変化の程度は立地特性と関係があることが明らかになった。
  • 清水 暁史, 村木 美貴
    2007 年 42.3 巻 p. 265-270
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、小規模区画整理への民間事業者の参画の効果を明らかにすることを目的とする。具体的には、これまでに施行された民間事業者による小規模区画整理の実態を従来の区画整理と比較して調査し、それらの周辺地域にもたらす外部効果を推定することにより、民間事業者の参画の効果を分析するものである。実際に施行された民間事業者による小規模区画整理を見ると、自治体が施行した場合よりも低廉な事業費で事業化されており、かつ外部効果の大きなものが確認された。一方で、現行の公共施設整備の要綱及び認可基準に課題があり、公共施設の整備による正の外部効果の確保されていないものもあることが分かった。従って、今後より効率的・効果的に民間事業者の参画を推進するには、より具体的な基準や事前の外部効果の検証、自治体による事業費の補填が必要であると考えられる。
  • 瀧口 勇太, 熊谷 勇輝, 村橋 正武
    2007 年 42.3 巻 p. 271-276
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、住工混在地域においては、工場跡地への戸建て住宅やマンションなどの立地が進展している。これにより、住環境と工場の操業環境の双方にとって悪影響を及ぼす状態に陥っている。そこで、住宅の新規立地に対する規制・誘導が必要となる。本論文では、無秩序な住宅立地の実態とその進行に係る要因を、建蔽率と容積率の変化、土地利用規制状況及び道路特性から分析する。そして、無秩序な住宅立地の要因排除に向けた土地利用施策を提案することを目的とする。
  • 河村 茂
    2007 年 42.3 巻 p. 277-282
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    この論文は、高度地区絶対高さ制限における制度設計上の課題を明らかにすることを目的としている。昨今、建築物の高層化に伴い環境維持の面から高さ制限の導入が進んでいる。しかしながら、建築物の高層化は需要に支えられている面があるので、安易な制限の導入は都市活動を低下させたり、市民生活を阻害することにつながりかねないので、適切な制度設計が求められる。そこで高度地区絶対高さ制限導入の方向を打ち出した東京都を対象に、都内の自治体を事例にとって、導入の背景や目的、高さ制限の仕組み、ここではとりわけ例外措置に焦点をあて、その実態を分析、考察した。その結果、制度設計上の課題として、既存不適格建築物の例外取扱いをふまえた適切な制限高さの設定、また同じ用途地域指定であっても地域毎に実態を反映した制限高さの設定、そして敷地規模に対応した建築基準の設定、が重要であることを指摘した。
  • 非成長時代における既成市街地のアーバンフォームとマネージメントを再考するための事例研究
    川崎 興太, 大村 謙二郎
    2007 年 42.3 巻 p. 283-288
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、東京都中央区銀座地区において平成18年に導入された超高層ビル規制と協議型デザイン誘導手法の導入経緯と制度体系を考察することを通じて、非成長時代における既成市街地のアーバンフォームとマネージメントを再考するための基礎資料を提供することを目的とするものである。銀座の人たちは、超高層ビル建設計画を契機として、銀座の共通的環境価値・共通利益への認識を浸透させ、そしてこれを高めるために、“まちの体格”については銀座ルールの精神を尊重して建築物の高さを56mに限定し、“まちの体質”については指導要綱に基づく事業者との対面形式でのデザイン協議により改善していくという、新たな都市再生の途を選択した。本研究では、銀座の人たちの挑戦を確実なものとするため、今後の検討課題として、第一に、超高層ビル規制に関しては、今回の銀座の件に限ったことではないが、土地利用計画・規制に対するアセスメント技術の開発が必要であること、第二に、デザイン協議制度に関しては、対象範囲の拡大、暫定的な事前協議基準の明示、協議手続の詳細化が必要であることを提起した。
  • 地域制規範と時代の要請の変化に着目して
    岡辺 重雄
    2007 年 42.3 巻 p. 289-294
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    1970年の建築基準法改正により、用途地域の詳細化など、地域制が、ほぼ今日の姿に改正された。しかしながら、最近発見された1970年改正案(1967-68)では、明確な市街地像を措定しそれを実現しうる規制内容を具備するという地域制規範に基づく抜本的改正案が模索されていたことが分かった。結局この案は採用されなかったが、この案を通じて、今日の集団規定の課題も明らかになった。さらに、今日の集団規定をめぐる議論に重要な示唆を与えてくれるだろう。 本研究では以下の3点について、焦点を当てる。1)1970改正案の法制史上の重要性を明らかにする、2)1970改正案に盛り込まれた規制内容を検討し、市街地環境の改善の可能性を探る、3)1970改正案の考え方が、今日の集団規定をめぐる議論にどのように生かすことができるかを考察する。
  • 多様な主体による討議型都市計画に向けて
    近藤 民代
    2007 年 42.3 巻 p. 295-300
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は2001年に発生したワールドトレードセンター同時多発テロ後の再建を対象として、再建に向けての討議型の計画策定プロセス、中間支援組織の役割、そして空間変容を明らかにしたものである。災害後に設立されたロウアーマンハッタン開発公社(LMDC)が港湾公社やニューヨーク州・市、市民団体、専門家による支援団体、市民、遺族などの多様な主体の利害や再建に向けての想いをどのように調整し、それらがどの程度実際の計画に反映されたかを分析している。再建における討議型都市計画を実質的にリードしたのはその役割が設立当初から期待されたLMDCというよりも、中間支援組織であった。再建プロセスを牽引するのに加えて中間支援組織が果たしたもう一つの役割は、LMDCが提示する再建への主原則や青写真・計画案に対する助言、そしてWTC敷地に留まらない大きな視野でみたロウアーマンハッタン地区が目指すべき将来像の検討を行った。複数の中間支援組織が異なるアプローチで空間形成への具体的な提案し、これに数多くの市民の再建へ向けての夢や想いと融合することによって、再建計画の総合性、広域性を大きくすることにつながったことを明らかにした。
feedback
Top