都市計画論文集
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42.3 巻
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  • 佐藤 慶一, 中林 一樹, 翠川 三郎
    2007 年 42.3 巻 p. 601-606
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,首都直下地震等の都市地震の発生が危惧されており,災害後の応急住宅対策においては,供給能力を遥かに超える需要量の発生が想定される.そのような大規模被害に対して,応急住宅対策の事前検討や準備の推進を図る上で,需給関係を詳細に捉えたシミュレーションの構築が望まれる.本研究では,首都圏大震災後の応急居住シミュレーション構築の第一歩として,世帯属性,住宅属性,行政支援を考慮に入れた首都圏広域の住民の応急住宅選択モデルの構築を試みた.世帯状況に応じて仮想的な状況を提示するために,賃貸住宅データベースと連動したインターネット調査システムを構築し,首都圏広域からサンプルデータを収集した.離散選択分析により,住宅喪失世帯の応急住宅選択モデルを構築し,世帯属性・応急住宅属性・行政支援の詳細な条件設定毎に,住宅喪失世帯の応急住宅選択確率の算出を可能とした.
  • 2006年度東京都都市復興図上訓練を通して
    市古 太郎, 饗庭 伸, 佐藤 隆雄, 吉川 仁, 中林 一樹
    2007 年 42.3 巻 p. 607-612
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    東京都は大都市の震災対策として,都市復興図上訓練を1998年から毎年実施してきた.市古ら(2006)はこの訓練実態を事前復興の視点から報告しているが,復興計画形成技法として改善の余地が残されている.そこで本研究では2006年度に事前復興の視点から,改善された点を整理し,訓練成果と参加職員への意識調査から,訓練の現状を分析した.その結果,2005年度訓練と比較して,第1回のまちあるきで整理した空間的脆弱性を踏まえて被害想定図を作成し得たこと,復興まちづくり計画策定手続きにかかるグループ・クエスチョンや訓練時の専門家助言を通して,住民との関係性を踏まえて,84条建築制限,復興地区区分方針,復興まちづくり計画案素案をまとめていくといった訓練の改善効果を論じた.
  • 杉安 和也, 村尾 修
    2007 年 42.3 巻 p. 613-618
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,インターネットを用いて平成18年8月時点での津波ハザードマップの公開状況調査の結果を報告した.津波災害経験の高い太平洋沿岸地域の津波ハザードマップの作成は,都道府県による公開を中心に,市町村も進行しつつあり,平成16年と比較して公開率は約3倍に上昇していた.また津波ハザードマップの中でも,防災マップが全体の3割を占めており,このような理由から,今後は防災マップとして,複数の災害情報とともに津波情報が掲載される形態が増加していくと考えられる.避難活用情報・災害学習情報に共通して,各情報の津波ハザードマップ全体での整備状況は20~30%と低かった.今回調査した津波ハザードマップの情報は,沿岸部の地形情報など津波対策の資料として重要な知見を含んでいる.島国である我が国にとって,これらの情報は貴重な知的資源であり,総合的な津波対策をするうえで,また海外に日本の津波防災技術を提供していく上での重要なデータになり得る.
  • 小池 則満, 乘京 和生
    2007 年 42.3 巻 p. 619-624
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    震災時において、正常に機能している医療機関への負傷者の広域搬送が必要となる。本研究では、ソシオメトリーを用いて震災時における負傷者流動を把握し、その結果より受入れ可否判定、緊急輸送道路の重要度判定する方法を提案し、愛知県へ適用した。その結果、広域的な負傷者流動の予測とともに、緊急輸送道路網を重ね合わせることによって、重要度のランク付けを行うことができた。
  • 熊本市壺川校区における実践的水害避難訓練に関するケーススタディ
    柿本 竜治, 山田 文彦, 山本 幸
    2007 年 42.3 巻 p. 625-630
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,水害に対する地域防災力の向上を目指すために,水害リスクマネジメントの活用に着目し,ワークショップ形式の水害リスクコミュニケーション手法の提案とその実践的研究を行った.熊本市壺川校区を対象としたケーススタディでは,降雨に伴う内水氾濫や坪井川の洪水氾濫に対する水害リスクコミュニケーションを実施し,ワークショップ参加に伴う参加者の防災意識の変化をアンケート調査した.また,実際に校区住民が参加した水害避難訓練を実施し,仮想水害時の住民の避難行動に関する基礎データを取得・分析した.これらの結果より,水害リスクコミュニケーションが,“住民自らが地域を守るという意識の高揚”に有効な手法となることを示した.また,今回のように小学校校区という空間的に数km四方と限定された地域内であっても,想定される内水・洪水氾濫時の氾濫水の挙動は,場所によって大きく異なり,地域の実情に応じたよりきめ細かな防災・減災対策が必要となることが示された.
  • 関川 裕己, 湧川 勝己, 大西 正光, 小林 潔司
    2007 年 42.3 巻 p. 631-636
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,平成16年10月に発生した豊岡市水害における被災家計の実態調査結果に基づき,家計の流動性制約が復旧過程に及ぼす影響について分析する.本研究では,家計の復旧過程を多段階指数ハザードモデルよりモデル化し,マルコフ推移確率により復旧過程を推計する.まず,家計の復旧状態を複数の復旧度で定量化するとともに,家計の流動性制約を考慮した上で,時間の経過により復旧が進展する過程をハザードモデルで表現する.その上で,一定期間を隔てた時点間における健全度の推移関係を表すマルコフ推移確率を指数ハザード関数により表現する.分析の結果,流動性制約に直面している家計では,流動性制約に直面していない家計と比較して,より長期間の復旧過程の遅延が生じている状況が明らかとなった.
  • 都市インフラネットワークの維持・管理に着目して
    氏原 岳人, 谷口 守, 松中 亮治
    2007 年 42.3 巻 p. 637-642
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    今後の厳しい財政的制約や都市環境問題への対応策として,集約型都市構造の再編に向けた効率的な空間利用コントロールの必要性が各所で議論されている.その一方で,集約型都市構造へ再編していく中で,環境負荷の観点から,どのような地区が高環境負荷型であるのか,また今後の人口減少社会という時代の転換期にあって,それら地区での環境負荷がどのように変化していくのかについて明らかにされていない.そこで本研究では,都市整備手法の異なる住宅地を対象に,都市インフラの地区内ネットワーク系施設の維持管理に着目することで,それに伴う環境負荷や都市撤退パターンが環境負荷に及ぼす影響を,EF指標を用いて明らかにした.分析の結果,計画的開発市街地と比較して、スプロール市街地では、都市インフラの維持管理に伴う環境負荷が高い一方で,これらスプロール市街地を計画的に撤退させた場合,同地区におけるリバース・スプロールによる都市撤退と比較して,顕著に高い環境負荷削減効果が得られた.
  • 新宿区における最初期の計画と町丁目区域に着目して
    渡辺 勇太, 後藤 春彦, 関口 信行, 佐藤 宏亮
    2007 年 42.3 巻 p. 643-648
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、都市計画道路による都市空間構成の変化の特性を示すことを目的としている。研究の長期的な展望は、計画地におけるそれぞれの都市の文脈を踏まえた、周辺地域の都市空間の質的向上に資する、今後の都市計画道路の整備方針の視座を得ることにある。新宿区を対象地として選定し、以下を明らかにする。1) 都市計画道路計画地における物理的都市空間の変化の特徴。2) 都市計画道路計画地における地域社会空間の変化の特徴。
  • 西村 智弘, 嘉名 光市, 赤崎 弘平
    2007 年 42.3 巻 p. 649-654
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、近代以降(明治後期以降)の空間的変容に着目して、大阪で浜と呼ばれる、東横堀川の河川沿い空間の変容を分析したものである。主要な結論は以下のとおりである。1)江戸期から明治期にかけて、浜は公儀の土地であり、いくつかの規制の下で借地として利用されていた。2)当時、浜は蔵として利用され、そこには後背の土地との一体的な利用の関係があった。3)時代変遷とともに、土地利用の変化や水運の衰退によりこの関係は弱まっていった。
  • 白木 里恵子, 久保 勝裕, 大垣 直明
    2007 年 42.3 巻 p. 655-660
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    小樽運河周辺では民間企業による転用の連鎖により、建築物敷地内に広く公開された歩行者空間が拡大している。本論では、地域性を活かした共空間の形成手法と複数の整備主体の連携手法の解明を目的とした。その結果、形成手法は、3つの型「継続、開放、除却」に大別された。連携手法は、2つの型「同時協調型、段階協調型」が確認された。
  • 横浜市「いえ・みち まち改善事業」を対象として
    金 冑錫, 高見沢 実
    2007 年 42.3 巻 p. 661-666
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    密集市街地の整備のためには小さなプロジェクトの積み重ねが必要である。住民の発意を促すと共に、状況変化に伴う部分的な計画の見直しは勿論、計画の実現以後の維持・管理、そして次のレベルの改善計画に至る、持続的に地域をマネジメントしていく住民組織が必要であり、その立ち上げや活動を誘導する必要もある。その観点で横浜市の「いえ・みち まち改善事業」(2003年)の運用実態を把握し、密集市街地における進行管理型の住環境整備計画づくりのあり方を考察する。「事業」の視点で個別事業単位での、あるいは段階的な事業方式の評価と課題・成果の抽出を行う。「計画」の視点で「住民参加による計画づくり」、「住民と行政の協働による実践」、「計画の更新」等、従来の整備計画・事業計画策定とは異なる面を中心に、計画プロセス・現状の策定内容を把握し、新たな取り組みの評価を行う。「持続的な住民活動」の視点で住環境の持続的な維持・管理やグレードアップを行う住民活動の仕組みづくり、それを支える制度運用の特徴を考察し、住環境を生み出す主な主体は居住民自らであるという認識で、住民による持続的な居住地マネジメントの可能性を確認する。
  • 秦野市景観まちづくり条例に基づく庭先協定と横浜市地域まちづくり推進条例に基づくまち普請事業から
    秋田 典子
    2007 年 42.3 巻 p. 667-672
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、既に自治体が条例に基づき独自に住民主体の地区レベルの空間整備事業に公的資金を投入している事例をケーススタディとして、その整備内容や空間特性を明らかにし、地区レベルの事業と計画との連携の意義及び可能性について検討することを目的としている。まず、神戸市及び世田谷区のまちづくり条例の制度設計の背景を整理し、初期の条例では地区レベルの計画の実現手段として、住環境整備事業が想定されていたことを示した。次に秦野市景観まちづくり条例に基づく庭先協定と、横浜市地域まちづくり推進条例に基づくまち普請事業を対象に、これらの制度を通じて整備された空間の特性を明らかにした。この結果、住民主体の地区レベルの空間整備には特徴的な共通点が見られることが明らかになった。これを踏まえて、地区レベルの事業と計画の連携の意義及び可能性について検討したところ、主体の支持の確認時期の相違による新たなまちづくりの推進の可能性、事業により地区の課題を解決する柔軟で多様なアイデアや選択肢が生み出される可能性、事業の効果の維持の側面からの地区レベルの計画の必要性が指摘できた。
  • 世田谷区の福祉的環境整備推進地区を対象として
    窪田 亜矢
    2007 年 42.3 巻 p. 673-678
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    福祉的環境を整備するにあたって、法的拘束力による単体建築物等のバリアフリー化という方法論は定着してきた。一方で、総合的な地域福祉を視野にいれた福祉まちづくりの方法論はまだ不明である。先進事例としての世田谷区福祉的環境整備推進地区の分析を踏まえれば、地域の当事者や住民らへの主体性に重きをおく支援によって、地域の物理的・社会的特性に適合した取り組みが促進され、外部の事情による計画や事業の際にも福祉的環境が配慮されることが明らかとなった。そうした地域の主体性を継続し、また拡張していくためには、福祉的環境のミニマムとなる水準を確保すること(経済的支援や強制力のある基準設定)、参加促進の経済的・技術的仕組み(市民活動支援ファンドや都市内分権)を用意しておくことが必要である。
  • 塚原 真理子, 藤田 素弘
    2007 年 42.3 巻 p. 679-684
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    コミュニティ・ゾーン形成事業は、主に住居系地区を中心として、安全性・快適性・利便性の向上を目指して展開されてきた。その既存研究では、「事業前後」の評価について、交通事故や通過速度の実測により整備効果を検証した研究が多かったが、本研究では、「整備後一定期間供用後」の地区を分析対象として、道路満足度だけではなく、景観が改善し地区内の雰囲気が明るくなることによって治安が向上したなどの間接的な整備効果、そして整備デバイス等の維持管理に対する住民意識について分析している。これより、自宅前道路の満足度意識について、特にコミュニティ道路等の整備路線については、道路内の維持管理状況が満足度意識に大きく影響する要因であること、また維持管理に対する住民の参加意向については、コミュニティ道路等整備路線だけでなく、整備路線以外の人も参加しても良い意向があること、また、間接的な整備効果については、コミュニティ・ゾーンの整備が地区内の雰囲気の向上に貢献していると住民が認識していること、さらに維持管理への満足度やその参加意向の向上が、道路満足度だけではなく、間接的整備効果へも強く影響していることが明らかとなった。
  • 東京都江東区における町内会組織を通して
    宗 慎一郎, 杉田 早苗, 土肥 真人
    2007 年 42.3 巻 p. 685-690
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    今日、集合住宅は国民の主要な居住形態となっており、これらが地域に根ざした優良なコミュニティを形成することは必要不可欠なことである。そこで本研究では、コミュニティという集団の最小単位としてその境界が明確に規定されている町内会組織を通して、1町内会の組織変化や区割変化といった歴史的変遷を把握し、2集合住宅による単独自治会と従来の町会との実態の差異と両者間の関わりを明らかにした上で、3集合住宅自治会における地域コミュニティ形成のあり方を考察することを目的とし、その結果以下の結論を得た。1.1965年から現在までに町会の変化は少なかったが、多くの集合住宅自治会が町会の範囲内を切り取る形で発足した。2.集合住宅自治会では、集合住宅独自の問題を解決する活動を行っており、一方で多くの集合住宅自治会が周辺町会との連携していた。3.集合住宅では町会の持つ従来の「共同性」とは異質の新たな「共同性」を有しており、集合住宅自治会では自治会活動を通してこの「共同性」を尊重すると共に、町会と連携して活動することで従来の「地域性」の獲得も図るという、地域コミュニティ形成の新たな形の1つを示唆している。
  • 雨宮 護, 樋野 公宏, 小島 隆矢, 横張 真
    2007 年 42.3 巻 p. 691-696
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    防犯まちづくりが各地で急速に推進されるなか、それに対する批判的な言説も発表されるようになってきた。防犯まちづくりが今後もまちづくりの一種として定着していくためには、こうした批判論とも向き合いつつ、その考え方を再構築することが求められる。本研究では、既存の学術雑誌や評論誌のレビューをもとに、わが国の防犯まちづくりへの批判論を体系的に整理すること、アンケートの分析をもとに、批判論に対する一般市民の態度を明らかにすることを目的とした。まず、121の文献から抽出された142の批判論を分類した結果、それらは 3つの大カテゴリのもとで、「警察国家論」、「監視社会論」、「要塞都市論」などの10の論点で整理された。次に、各論点への賛否を尋ねたアンケートの分析の結果、批判論には、市民の賛同を得ているものとそうでないものがあること、犯罪不安の高まりに伴って、今後賛同を得ることが予測されるものと逆に軽視されるようになっていくものがあることが明らかとなった。今後の防犯まちづくりにおいては、市民の賛同を得る批判論に応えるだけでなく、とくに軽視される批判論に対して一定の配慮が加えられる必要があると考えられた。
  • 交通安全性及び防犯性に配慮した2事例から
    樋野 公宏, 寺内 義典
    2007 年 42.3 巻 p. 697-702
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は日常安全性に配慮した計画的戸建住宅地2事例を対象にアンケートやワークショップ(以下「WS」)を実施し、住民の評価を調べるとともに、調査で明らかにする交通安全上及び防犯上の課題について、共通する解決の方向性を見出すことを目的とする。交通安全性に配慮した設計が行われた青葉台地区では、交通安全性に対する住民の評価も比較的高く、人的要因による危険の指摘や、対歩行者・自転車の危険の指摘が少ないことが分かった。防犯設備を取り入れた十王地区では、その効果に対する期待が大きく、地域の防犯性が高いと評価する住民が非常に多いことが分かった。課題への対策のうち両分野の接点と言えるのは、交通分野における「進入の抑制」と、防犯分野における「領域性の確保」である。スムース横断歩道、ゲート、サインなどは、住民の犯罪不安を緩和するとともに、犯罪企図者等の接近を心理的に抑制することが期待される。この点は、日常安全性に配慮した住宅地の目指す方向性のひとつと言える。
  • 千葉県木更津市を事例として
    吉田 友彦, 小山 雄資, 長谷川 洋
    2007 年 42.3 巻 p. 703-708
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    郊外戸建て住宅地における30歳代から40歳代の新規転入層(特定層)の特徴を分析したところ以下の特徴があることがわかった。すなわち、夫婦と子どもで3人から4人の核家族が多く、他の居住者に比して顕著に世帯人員数が多い。住宅や敷地の規模には差がない一方で、特定層の入居した住宅の居室数は少なめである。同一住宅地内や木更津市内の民間賃貸住宅から転入する者が多い。中古住宅の購入者が多い。市内の就業者が多く、通勤時間は顕著に短い。車の保有台数は多い。実家や親族が近隣に居住し、地域へのなじみから転入する。30歳代の特定層は子どもの通学に関心を寄せている、等である。これらを総括し、今後これらの住宅地において年齢階層の混合を促す施策のヒントとしては以下のことが考えられる。まず第1に、当該住宅地への若年転入候補者は、市内や近隣の民間賃貸住宅に居住する者をターゲットとして絞り込むべきである。第2に、彼らに供給する住宅は部屋数の多いものとし、駐車スペースを充実させたものが望ましい。第3に、小学生を持つ親への配慮をすべきである。第4に、実家や親族が近隣に居住している者が転入する傾向があることを意識する必要がある。
  • 広島市の郊外住宅団地を対象として
    影田 康隆, 戸田 常一
    2007 年 42.3 巻 p. 709-714
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    今後の少子・高齢化・人口減少時代においては,新たな開発に関してはどこにどのようなものが必要かといった優先順位が,また,既存の住宅地においては,いかにその地域を持続・再生させていくかが,今後の日本の都市における大きな課題となっている。そうした課題を踏まえ,本論文は,開発後に一定の時間が経過した郊外住宅地における人口構成の変動から見た住宅団地の持続可能性の評価を行うことを目的とし,人口構成の変化や人口の増減傾向を把握し,郊外に開発されてきた住宅地の人口形態の移り変わりの分析を試みる。分析に際しては,団地ごとの年齢階層別人口と総人口の変化に着目し,団地の持続可能性について分析を行った。結果,人口構成の変化が顕著な傾向にある団地,あるいはそうでない団地に対して,団地ごとの総人口の変化を重ねた上で相対的な位置関係が明示され,持続可能性について団地を分類することができた。
  • 全国における実態と秦野市における事例研究
    立見 紀子, 藤井 さやか, 有田 智一, 大村 謙二郎
    2007 年 42.3 巻 p. 715-720
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、地区計画策定後の地区変化による地区計画変更に着目し、全国的な地区計画変更の実態調査と住環境ニーズの変化により地区計画の変更を行った事例のケーススタディを通じて、今後増加すると考えられる地区計画変更と制度の柔軟な運用について示唆を得ることを目的とする。本研究によって明らかになった点は、以下の通りである。地区計画の変更は全策定数の約半数で行われているが、関連法改正や事業完了等による間接的で事務的な変更が大半を占め、住環境ニーズの変化を受けた地区計画の方針や規制内容の変更は少ない。地区計画の変更には規制緩和型と強化型の変更が存在するが、抑制すべき対象が明確である強化型に対し、緩和型では変更により新たな環境悪化を招かぬよう慎重な検討が必要となる。地区計画変更により規制内容を地区状況に適したものに定め直すことができるが、まちづくりや地区計画について考える機会の創出や住民組織の活性化など二次効果も期待できる。地区ルールとして地区計画を維持するためには、策定時に住民組織を形成し、常に変化する住環境ニーズに対して定期的に話し合う場を持ちながら、必要に応じて適切な変更を行うことが必要である。
  • 橋本 晋輔, 中道 久美子, 谷口 守, 松中 亮治
    2007 年 42.3 巻 p. 721-726
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、コンパクトシティがますます注目されており、わが国では様々な行政主体で推進されている。しかし、特に地方圏の都市において都市は拡散し続けているのが現状である。このような状況の中で、都市コンパクト化を進めるには、まずどのような住宅地で人口の増減が進行しているのかという現在の状況を把握することが必要である。そこで本研究では、地方圏の都市を対象とし、住宅地レベルでの都市拡散の具体的な実態を明らかにすることを目的としている。そのために、住宅地タイプに着目して人口密度の変化や公共交通の整備状況などの住宅地の特性、人口構成変化について分析を行った。分析の結果、地方圏の都市では基盤整備や公共交通の整備など計画性の高低に関係なく低密な住宅地が広がっているということを定量的に明らかにすることができた。
  • 日立市を事例として
    村本 浩一, 藤井 さやか, 有田 智一, 大村 謙二郎
    2007 年 42.3 巻 p. 727-732
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では日立製作所の企業城下町である日立市を事例として、社有施設の整備プロセスを明らかにするとともに、近年進展している社有地の利用転換の実態と今後のあり方についての示唆を得ることを目的としている。戦後からの企業所有の社宅・寮などを中心とした土地・建物ストックの形成過程とその用途転用の実態の調査及び日立ライフへのインタビュー等を実施し、以下の点が明らかになった。1)日立製作所は大規模な社有地を既成市街地内に所有し、90年代から旧社宅地を中心に用途転用を進めており、これが日立市の市街地構造に与える影響は大きい。2)日立製作所では社有施設を事業所単位で保有してきたが、それらの用途転用は実質的に系列会社の日立ライフが担当し、これまでは住宅・商業用途の立地バランスをある程度考慮した用途転用がなされてきた。3)しかし、今後は日立製作所本社レベルで社有施設の再編方針が検討される方向にあり、必ずしも日立市の都市構造に配慮した再利用がなされるとは限らない恐れがあり、行政と企業の協力による土地利用転換方針の検討が現状では不十分である。
  • 水澤 健至, 阿部 俊和, 中出 文平, 松川 寿也, 樋口 秀
    2007 年 42.3 巻 p. 733-738
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、過大な市街化区域編入の実態と基盤整備を目的とした地区計画の関連性を明らかにし、地方都市の拡大市街地への地区計画指定に対して考察することを目的とする。研究の結果、以下のことが明らかとなった。拡大市街地の基盤整備を目的に指定されている地区計画は、土地区画整理事業の割合が低い自治体で指定される傾向にある。また市街化区域内の人口密度が低下しているにもかかわらず、大規模な市街化区域を編入している自治体で指定される傾向が強い。詳細対象都市とした3自治体の事例からも、いくつかの論点を指摘できた。
  • 小川 剛志
    2007 年 42.3 巻 p. 739-744
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、東京23区における事業所と従業員数において大きな増加が見られ、新たな業務地を形成している地区に着目し、その地区が、どのような立地条件の下で形成され、また、どのような企業の集積が進んでいるのか調査・分析を行い、その特性を明確するものである。そして、従業員数の増加の激しい地区を12地区選定した。その地区は都心周辺部、新宿副都心周辺部、臨海部、内陸部の地区である。地区の特性として、交通条件が良いこと、まとまった未利用地があること、開発事業が行われている、そして、大規模なオフィスビルの供給があること。がわかった。また、地区に立地する企業の特性として、既存の業務集積のある都心及び副都心からいてした大企業本社及び関連企業、そして、成長産業であるIT、サービス系企業により集積が生じていることが明確となった。そして、新業務地の形成は、都心部及び副都心の「にじみ出」拡大現象と、業務の「飛び地」的拡大現象が生じており、業務機能の再編が進行している。
  • 長岡市を対象としたケーススタディ
    小池 貴史, 樋口 秀, 中出 文平, 松川 寿也
    2007 年 42.3 巻 p. 745-750
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、長岡市の中心市街地を対象に、特に月極駐車場に着目して駐車場の分布状況と利用状況を明らかにすること、中心市街地に存在する企業およびその従業者が契約する月極駐車場について、現状の利用実態を把握することを目的とする。研究の結果、以下のことが明らかとなった。月極駐車場は駐車場全体の半数以上を占めているが、その利用率は96.6%と非常に高い。企業は料金が高くても会社までの距離が近い月極駐車場を契約する傾向にある。それらの駐車場は、従業者の通勤用が50%、社用車用が30%、来客用が20%である。自分で駐車場を契約している従業者は、会社までの距離を重視しながらも、料金の安い駐車場を契約している。一部の企業や従業者も駐車場の増加を希望していることから、今後、中心市街地の外周部で料金の安い駐車場がさらに増加するおそれがある。
  • 佐藤 和哉, 中井 検裕, 中西 正彦
    2007 年 42.3 巻 p. 751-756
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    防災建築街区造成事業、市街地改造事業、初期段階の市街地再開発事業によって形成された再開発ビルは耐用年数や商業の弱体化など様々な理由から衰退しているものがある。本研究ではこれら初期再開発地区における再々開発の現状を把握、実現までの障害を分析し、対応策を考察した上で、今後行われるであろう再々開発事業への示唆を得ることを目的とする。アンケート調査、ヒアリング、資料から次のような結果が得られた。1. 初期再開発地区は全体として約18%が再々開発されており、自主建替え(優良建築物整備事業含む)が多い。2. 市街地再開発事業地区は高度利用地区の設定などにより事業地区指定の意味は大きく、他2事業より再々開発事業の事業種類、手法に制限を与える。3. 初期再開発地区における周辺市街地の状況が再々開発事業の実現可能性に影響を与える。4. 再開発事業に際しての高度利用地区は相応の理由があれば、制度上では解除することも可能であるが、実現には障害がある。よって、再々開発事業を行う場合、周辺市街地の規模を踏まえた事業を行うべきであり、自ずとそれが影響する事業であるという示唆を得られた。
  • アメリカ・オレゴン州住民投票法案37の意味するもの
    平 修久, 西浦 定継
    2007 年 42.3 巻 p. 757-762
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    アメリカのオレゴン州において、土地利用規制による土地価値の低下に対する補償を政府に義務付けた法案37が2004年に可決した。政府は財政難のため、補償請求に対して、補償金の支払いの代わりに土地利用規制の解除で対応している。補償請求権の移譲可能性を含めいくつか問題が裁判で争われ、結審に至っていないため、法案37の請求に基づく大規模な開発はなされていない。しかし、法案37は、土地利用計画を無力化し、市民参加を否定し、スプロールを促進し、近隣住民の生活に被害を与え、農地や林地を減少させる恐れが大きい。計画の視点から、法案37は、計画の前提に悪影響を与え、計画行為とその内容を否定し、さらにはリスク対策の必要性を喚起する。
  • エアランゲン市における萌芽的取組みを事例として
    姥浦 道生
    2007 年 42.3 巻 p. 763-768
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究ではエアランゲン市を事例として、ドイツにおける自治体レベルの土地利用計画(Fplan)策定時のSEAの内容と手続を調査することを通じてその特徴と課題を明らかにすると共に、わが国の土地利用計画へのSEA適用に関する示唆を得ることを目的とする。結論としては、第一にドイツにおけるSEAの適用段階はわが国の都市マスタープランと比較して内容が相当程度具体化している開発に関して、その立地の検討段階から評価を行っていること、第二に調査内容は環境的側面が中心であり、社会的経済的側面については別の衡量プロセスで評価されていること、第三にエアランゲン市においてはSEAが多段階で行われており、これはSEAの効率的実施に役立つものと考えられること、第四に住民等の参加手続の実施時期にはなお検討課題が残されていること、が挙げられた。
  • 岡井 有佳, 大西 隆
    2007 年 42.3 巻 p. 769-774
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    フランスでは、近年都市の競争力を高めることを目的として、複数の都市地域を協力連携させて経済発展を目指すメトロポール政策が開始された。これは、国がメトロポールを募集し、それに応じる地方が様々な主体とともに計画を作成し、その計画に基づいて国と地方が契約を締結することで事業が担保されるという仕組みであり、国が直接介入してきた従来の国土整備政策とは一線を画するものである。本研究は、メトロポール政策の制度創設の経緯と仕組みを分析するとともに、メトロポール選定の実態を通して、国と地方の協働による国土整備政策の意義と課題について考察を加えるものである。その結果、この協働のシステムは、国にとっては広域的観点から一貫性ある国土整備を実施できると同時に、地域にとっては各地域に適した国土整備を実施することができることから、地方分権下における国土整備手法として適しているといえる。
  • 開発制限区域(グリーンベルト)の調整手法
    朴 承根, 瀬田 史彦, 大西 隆
    2007 年 42.3 巻 p. 775-780
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    韓国では1999年以降、国土及び都市計画制度の改正が行われ、土地利用計画制度の一元化が行われた。また、同時期に広域都市計画が創設されて広域的な調整が図られるようになった。本研究は、韓国の広域都市計画における、グリーン・ベルト調整を中心とした広域調整手法を事例に広域調整のあり方の提示と日本への示唆を目的としている。韓国では、1971年にグリーン・ベルトが登場して都市拡散の防止や環境保護に貢献してきた。しかし、財産権の侵害やその他の問題点が指摘され、一部調整の必要性が台頭したのである。ところが、グリーン・ベルトは複数の市にまたがる場合が多く、調整のためには広域的な合意形成が必要となる。韓国政府はその方法として広域都市計画を選んだ。広域都市計画によるグリーン・ベルトの調整は、科学的な方法を利用することで、客観的な合意に至らせた。このような韓国の経験が、今後の日本の広域調整に参考になるのではないかと思われる。
  • 李 起培, 中西 正彦, 中井 検裕
    2007 年 42.3 巻 p. 781-786
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では韓国の都市基本計画に与えられている「都市計画の指針としての役割」の変遷について考察を行った。韓国の場合、制度化当時の都市基本計画は象徴的な意味が強く、都市計画と連携できる仕組みを持っていなかった。しかし制度変更を経て、現在は都市計画(現法上の都市管理計画)の上位計画として、その立案と決定に整合性も求められている。また、最近の都市計画体系の改編の結果、都市基本計画には新たな役割も期待されている。すなわち、対象の拡大や新手法の登場によって都市管理計画運用者による判断と選択に方向性を明確に提示することが今後必要であり、その視点からみると都市地域と非都市地域に差別化した指針を提示することも考えられよう。今後より有効に「指針」の役割を果たすためには、都市基本計画に幾つかの要件が求められる。策定過程での十分な住民参加や合意、計画書の論理性、図面・文章の適切な表現などである。今後これらに関する検討を行い、より活発な議論を進めることが、都市基本計画研究の課題であると言えよう。
  • 鶴岡市の開発動向と線引き導入に伴う関連施策の運用に着目して
    大西 章雄, 松川 寿也, 岩本 陽介, 中出 文平, 樋口 秀
    2007 年 42.3 巻 p. 787-792
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、区域マス策定により線引きを導入した山形県鶴岡市を対象とし、用途地域の拡大を伴う市街化区域の指定や、開発許可条例の制定といった導入に伴い運用された関連施策の運用実態を明らかにする。加えて、線引き前後の開発動向から線引き導入にともなう影響を明らかにする。これを踏まえて、新たに線引き導入を検討する都市にとって参考となる論点を抽出する。その結果、線引き導入に伴う市街化区域の指定の際には、乱開発が懸念されていた大方の農用地区域には市街化調整区域が指定された一方で、近隣に大規模な残存農地が存在するにも関わらず、非線引きの時点で行われた個別の開発や市民からの根強い開発要望によって一部の農用地区域が市街化区域に編入された。また、新たに制定された3483条例は、山形県内の既存の線引き都市と比べて柔軟に運用されており、非線引きの時点で行われた開発が条例で指定する区域の指定に影響し、農用地区域を包含しつつ集落全域に区域が指定されていることが明らかとなった。更に、線引きの導入後の短期間での検証であるが、線引き導入とその関連施策の運用が開発動向に影響を与えていることが明らかとなった。
  • 松本都市計画区域とその周辺を対象として
    松川 寿也, 岩本 陽介, 中出 文平
    2007 年 42.3 巻 p. 793-798
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、規制格差の是正手法として、開発許可条例運用の可能性を検証する。加えて、格差認識と是正に関する即地的意向を把握し、是正の際の弊害の検証を目的とする。その結果、開発許可条例は他の是正手法より比較して汎用性が高く、実際にその運用に取り組む事例もあり、是正手法としての可能性が確認された。線引き都計区域外縁部の調整区域にある集落は、格差認識を背景とした是正を必要としており、農振農用地を含めた散漫な範囲の緩和を望んでいる集落も存在した。また、無秩序に滲み出す開発は、散漫な緩和区域を形成する素地であることを確認した。
  • 岐阜県美濃加茂市と富加町の事例を通じて
    岩本 陽介, 松川 寿也, 中出 文平
    2007 年 42.3 巻 p. 799-804
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、岐阜県美濃加茂市および富加町での特定用途制限地域の指定事例を通じて、制度制定から約7年が経過した特定用途制限地域を活用した地方中小都市の非線引き都市計画区域の土地利用コントロール策について示唆を与える事を目的とする。美濃加茂市および富加町では、高速道路のインターチェンジ建設を機に、地区住民が周辺の土地利用に対する関心を持ち、規制手法や内容の設定の場面で、積極的な役割を果たして特定用途制限地域が指定された。この事例より、特定用途制限地域は非線引き都市計画区域の用途地域外で地域の実情に合った規制誘導方策として有用であり、特に住民発意の土地利用コントロール策として活用できるという知見を得ることができる。
  • 平賀 敬治, 岩本 陽介, 松川 寿也, 中出 文平, 樋口 秀
    2007 年 42.3 巻 p. 805-810
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は、人口が減少しているにも関わらず用途地域を拡大させている自治体を対象として、用途地域拡大の理由、経緯、用途地域外の開発の動向を調査・分析し、今後の用途地域のありかたを提言することを目的としている。分析の結果、多くの自治体で用途地域が過大設定であったことがわかった。拡大用途地域内部での開発が進まず、さらに郊外での開発が進行していることから、用途地域内で散漫な市街地が形成されている状態にある。そのため今後は、用途地域外での開発を抑制した上で、用途地域内を区画整理事業等によって整備を行い、適正な市街化を促進し、用途地域内の質の向上を図る必要があるといえる。
  • 金沢市を事例として
    高木 一典, 川上 光彦
    2007 年 42.3 巻 p. 811-816
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究においては、各種都市計画実施における市町村MPの望ましい記述を意味役割等の言語的な方法で定め、その記述と実際の市町村MPとの相違から、各種の都市計画を実施する際に行われていると考えられる解釈を明らかにすることで運用の実態を把握した。各種の都市計画の市町村MPにおける記述の状況は、単一具体、複数具体の2タイプに分けられた。単一具体は施策を位置づけやすい抽象的な表現が記述されていた。特に用途地域の方針では、表現に従った適切な解釈が概ね行われていたが、実際の土地利用等によっては、市町村MPと整合しにくい用途が指定されている場合があった。複数具体では、具体的な意味役割が複数記述されており、解釈の不要な記述が含まれていた。この関連記述群には、望ましい記述ではない表現をあえて付記することで市の姿勢を明示しているものが見られた。また、単一具体の中には市町村MP策定以降に創設された都市計画を位置づける単一具体・準用がみられたが、金沢市では新規事業であっても市町村MP当初の考え方を準用しながら運用されていた。
  • 茨城県東海村船場区を対象にして
    乾 康代
    2007 年 42.3 巻 p. 817-822
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    東海村船場区を対象に, 戦後の居住域形成, 混住と居住者のまとまり状況を明らかにし課題を検討した。開発は旧集落, 新規居住域でも進行し, 混住状況は夫々に特徴がみられた。船場区常会は居住者の9.5割が加入する地域の中心的環境管理組織である。ここでは, 地元農家と戦後来住世帯別にまとまりつつ混住に合わせたまとまりの方向へ進んでいるが, 両者のつながりは混住や居住者のまとまり状況によって異なる。地域環境のあり方については, 地元・来住世帯ともに関心をもっており, 開発と住まいづくりへのコントロールが検討される必要があることを示した。
  • 岐阜県の五つの河川流域において
    白井 裕子
    2007 年 42.3 巻 p. 823-828
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    河川流域毎に林種に特徴が見られ、その森林資源に影響を受けた地場産業の進展や衰退といった特徴を岐阜五流域から捉えた。人工杉林の多い長良川流域では、それを生かす木材地場産業が育っていず、優良材が収穫出来ないだけでなく、放置され公益的機能が衰え、災害が発生し易くなっていると推察できた。人工スギ林が長良川に次いで多い揖斐川では製材の過半を外材が占め、地域資源と産業の関わりが薄く、上流部における過疎化と不在村林の比率が最も高い流域であった。飛騨川流域は木材地場産業がさかんだが、持続的ではない。宮・庄川、木曽川は歴史的にも森林資源と産業文化、技能との結びつきが強く、元来流域にあった森林資源を生かし、木材地場産業を発達させた経緯が見られた。宮・庄川の家具木工、木曽川の産直住宅は地域振興で重要な位置を占める。しかし木曽川も含めた岐阜県全体での需給を仲介する製材業の異常な衰退から、資源と産業の持続性は危機的な状態である事が分かり、この林業県岐阜から全国の森林荒廃、木材地場産業の衰退を察することができる。特に人為を加えすぎた流域の山地災害や過疎化など、地域の衰弱が推察される。
  • 愛知県豊橋市の朝倉川育水フォーラムの場合
    浦山 益郎, 相羽 芳樹, 松浦 健治郎
    2007 年 42.3 巻 p. 829-834
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    河川管理者や流域住民と協働して、継続的な河川管理を行っている愛知県豊橋市のNPO「朝倉川育水フォーラム」を取り上げ、地域型NPOがどのようにして河川管理者や流域住民と連携できたのか、また継続的な流域住民の参加をえることが可能なのかという視点から、その実態と特徴を把握することを本研究の目的とする。明らかとなったのは、1)河川管理者の側には地域の意向を反映した河川整備を進めたいという要求、フォーラムの側には河川環境を改善したいという強い要求があったことが、河川管理者と地域の利害一致をみて、両者の連携を進める条件となったこと、2)フォーラムの役員や行政、地区総代会、企業等の代表者が実行委員会を組織して、団体単位で「530大会」への参加を募ったことは、NPOのミッションに共感する人だけでなく、広くコミュニティ意識、環境意識のある流域住民に対する参加の受け皿にもなりえたこと、3)その結果、流域住民の将来の参加意向につながっていると考えられること、である。
  • 1970年~2000年までの日本の全都市圏を対象に
    金 昶基, 大西 隆, 菅 正史
    2007 年 42.3 巻 p. 835-840
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、1970年~2000年までのメッシュデータを用いて、日本の全都市圏の空間構造がどのように変容したのかを、クラーセンの都市発展段階論に基づき分析した。主要な結論は以下のとおりである。第一に、全期間に渡って郊外化がもっとも多く存在しているが、80年代以降は減少傾向にあり、代わって逆都市化や再都市化の都市圏が増加する傾向にある。都市化の都市圏は全期間に渡ってほとんど存在していない。第二に、都市圏は人口増加期には「郊外化」にあり、人口減少期には「逆都市化」や、そこから更に「相対的集中の再都市化」へと順に至る傾向にあると考えられる。第三に、衰退都市圏の都市発展段階の推移を見た場合、郊外部が継続的に純増したタイプと、中心部が継続的に純減したタイプに大きく分けることができる。第四に、人口規模が小さく、非三大都市圏に立地し、高齢化率が高い都市圏ほど、衰退都市圏である傾向が高い。
  • 久留里城下町を中心に
    穂苅 耕介, 郭 東潤, 北原 理雄
    2007 年 42.3 巻 p. 841-846
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    房総城下町は、16世紀末から19世紀初頭にかけて険しい房総丘陵上に建設された、戦国末期の支配要地を拠点的に収斂した防備性の高い都市である。本稿では、千葉県君津市東部に位置する久留里城下町を中心に、その形成過程を辿り、復原した町割を整理するとともに、同様に復原した他の房総城下町と比較・検討することによってその一般性と特殊性を明らかにし、また、その都市プランの特徴が歴史的変容過程を通して、街区構成に及ぼした影響要因を類型的に捉えることにより、都市空間構成からみた位置づけを明確にした。本稿で試みたのは以下の3点である。1)久留里城下町の形成過程を辿り、絵図等の史料と現地踏査に基づく町割の復原。2)既存の資料から都市プランを比較的よく知ることのできる房総4城下町について、同様に町割を復原の上、1)で復原した町割をあわせ、都市空間構成面から比較・検討。3)久留里と他2城下町における用途に応じた各地区を対象に1)、2)で解読した町割の特徴が現況に至るまでの空間構造に及ぼした影響を、地図史料等に基づく変容過程から類型化。
  • 「合併」と「連合」の相違に着目して
    片山 健介
    2007 年 42.3 巻 p. 847-852
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    1990年代に、日本では、都市・地域計画の主体として広域連合制度の活用が期待されたが、その後中央政府により市町村合併が強力に推進された。本論では、都市・地域計画の観点から「平成の市町村合併」を評価することを目的とする。そのために「合併」と「連合」の相違に着目して、(1)圏域、(2)合併前後の都市・地域計画の変化、(3)主体、(4)都市内分権の4つの評価視点を設定した。結論として、(1)では、合併区域は実態の都市圏と整合する形では行われていないこと、(2)(3)(4)ではさいたま市の事例から、広域的観点からの地域整備が行えるようになった一方で、地区レベルの住民の意思の反映等が課題であることがわかった。
  • 北村 幸定
    2007 年 42.3 巻 p. 853-858
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    わが国の教育施設は,戦後の年少人口激増を受けて設置されたものが多いため,教室数は当時考えうる学生数のピークに備えて設置された.ところが,現在のような年少人口の減少局面では,空き教室の増加,休校あるいは廃校などの現象が生じている.これらの施設運営は,国や地方自治体の大きな負担となっており,今後効率的な行政運営を進めるためにも,学校統廃合問題への対応は不可避である.そこで本研究では,学校の統廃合計画策定の際に,児童・生徒に与える影響を歩行負担と廃校となる学校の資産価値を分析し,児童・生徒の負担の最小化と経済効果の最大化のバランスを目指す学校統廃合・学区編成モデルを構築する.また,ケーススタディとして自治体にモデルを適用することによって,最適な学校統廃合・学区編成計画案を示す.
  • 佐藤 遼, 片山 健介, 大西 隆
    2007 年 42.3 巻 p. 859-864
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は、日本の地域間所得格差構造について既往の研究よりも細かい地域単位で分析を行い、地域圏の内側の格差について実態を解明したものである。まず、市区町村単位の平均所得のデータを用いて1980年から2005年までの6時点で各地域圏内の所得格差をタイル尺度により測定した結果、近年特に大都市圏内での所得格差拡大が著しく、それが日本全体の格差拡大にも大きな影響を与えていることが明らかになった。次にそれを引き起こした地域構造的な要因について首都圏を例に分析した結果、人口の増加量が多い市区町村で平均所得も増加している傾向が確認できた。これは1990年頃の地域間格差の拡大時には見られない新しい現象であった。人口の転入超過量とその年齢構成によってクラスター分析を行った結果、特に都心回帰現象に伴う都心部への人口流入量が大きく、郊外部や地方部からの人口を吸収していた。また、地域によって流入している人口の所得階層に差があり、結果として地域間で所得階層による居住地の分化が進み、小さいスケールでの地域間所得格差が拡大していることが明らかになった。
  • 橋本 隆, 湯沢 昭
    2007 年 42.3 巻 p. 865-870
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    この論文の目的は、市町村合併後の都市計画区域の地域格差と財政負担の関係を明らかにすることである。研究の着眼点は、都市計画区域内の都市施設の集積度に応じた財政負担を定量化することである。都市施設の集積度を示す指標は、街路と下水道に関するフーバーインデックスを採用した。分析を行った都市は、既に市町村合併した44市である。これらの市について、主成分分析とクラスター分析を行うことにより、「財政規模」と「集積度」の観点から分類を行った。財政負担の分析においては、分類された都市の財政負担割合を比較した。分析結果によれば、集積度が低い都市は財政負担割合が大きいことが分かった。この論文は、これらの分析結果を発表し、都市施設の集積度と財政負担との関係を明確化するものである。
  • 大規模観光レクリエーション基地開発の展開を中心として
    佐野 浩祥
    2007 年 42.3 巻 p. 871-876
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、これまで国土計画と観光政策との間で十分な調整がなされてこなかった反省から、今後の方策への知見を得るため、逆説的な見地に立って、戦後国土計画と観光政策の策定過程、両者の関係がどのように変遷してきたかを明らかにした。特に、国土計画と観光政策が結合した事例である大規模観光レクリエーション基地開発に着目し、また、両者の調整がうまくいかなかった理由を考察した。実証的な分析の結果、大規模観光レクリエーション基地開発の「選択と集中」を巡り、国土計画と観光政策を整合することが必要であることを細部まで理論的に提示し得なかった計画論的問題、および実質的な整合を阻む縦割り行政の問題が明らかになった。この国土計画と観光政策の融合の頓挫は、以上のような計画論および行政組織上の要因が大きく、この結果、石油危機等の社会情勢ともあわせて、計画の実現を阻んだと考えられる。こうした経験を踏まえ、戦後国土計画と観光政策の融合を阻んできた“縦割り”を乗り越えられるような空間整備の制度設計が望まれる。
  • 神戸市共生ゾーン条例を事例に
    二神 茉莉子, 柴田 祐, 澤木 昌典
    2007 年 42.3 巻 p. 877-882
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、大都市近郊の農村地域における住民主導による地区レベルの計画の先進的事例である、神戸市「人と自然との共生ゾーンの指定等に関する条例」を事例として取り上げ、里づくり計画に位置づけられた都市農村交流に着目し、交流活動の効果と課題を明らかにすることを目的とする。20地区の里づくり協議会会長へのアンケート調査及び交流活動を実施している5地区の住民へのアンケート調査を行い、交流活動の効果と課題について把握した。その結果、里づくり協議会会長は、交流活動の効果として、地域コミュニティへの効果を感じているが、自然環境・生活環境・景観面への効果はあまり感じていない点、住民は、交流活動の効果として、「農業生産性の向上」「地区への経済的効果」「地区内コミュニティの活性化」を感じている地区がある一方で、効果をあまり感じていない地区もあり、認識に差が生じていた点、また、より積極的に交流活動へ参加している住民ほど、多様な側面での効果を感じる傾向があったが、効果を実感できる範囲は、交流活動の担い手の範囲に留まっている点などが明らかとなった。
  • 英国におけるアイアンブリッジ渓谷ミュージアム・トラストを事例として
    石川 宏之, 高見沢 実, 小林 重敬
    2007 年 42.3 巻 p. 883-888
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、先進事例である英国において地域振興のためにミュージアム活動を通して地域遺産を活かす管理運営の仕組みと経営方法を明らかにすることを目的とする。事例研究としてアイアンブリッジ渓谷ミュージアムとテルフォード開発公社、民間非営利組織との関係について議論する。調査はアイアンブリッジ渓谷ミュージアム・トラスト職員と地方公共団体職員に対して聴取りを行った。結論として1)ミュージアムにより引き出された地域遺産の価値付けが、地元住民のアイデンティティや新たな共有意識を高める働きを持っている。2)ミュージアムは、地域社会の課題に寄与する新しいコミュニティや地方公共団体との協働関係を創り出す仕組みである。3)ミュージアムが地域社会への貢献と事業とのバランスを保つためには、一つの財源に依存しないことで安定した経営を可能にすることがわかった。以上のことから日本の地方都市においてミュージアム活動によるエリアマネジメントを展開するためにはNPOを中心とした民間組織を設立し、市民団体が活動に参加できる仕組みや、経営面で企業からの寄付金を得られる制度を設けることが必要である。
  • 松橋 啓介
    2007 年 42.3 巻 p. 889-894
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    2050年までにCO2を大幅削減する低炭素社会に向けた交通ビジョンの構築を試行した結果について考察する。地域別要因別の対策を組み合わせることで、運輸部門CO2を1990年比約70%削減できるビジョンの例を示した。その際、技術的な対策だけでなく、都市計画的な対策も重要であること、特に、低炭素社会を念頭に置いた都市および交通の40~50年先の将来像を地域毎に具体的に検討しておくことが重要であることを指摘した。温暖化影響予測にも不確実性があるため、低炭素社会の到来が不可避とは断定できないが、将来に備えて検討を始めておくことは重要と考えられる。ここで示したビジョンの例や施策案は試作段階の粗いものだが、これを元にして、詳細かつ地域に応じた具体的なビジョンや施策に向けた議論が始められることを期待したい。
  • 明石 正人, 室町 泰徳
    2007 年 42.3 巻 p. 895-900
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、メガシティにおける雇用の空間的分散が、通勤時間、業務効率性、および通勤交通エネルギー消費にどのような効果をもたらしているのか、7都市について分析を行った。本研究の主な結論は、(1)いずれのメガシティも、都心部の外側に複数のサブセンターを形成しながら雇用が空間的に分散していることが確認された、(2)通勤時間については、多極集中型のバンコク、および多極分散集中型の全てのメガシティにおいて、サブセンターの通勤時間は都心部よりも短くなっていることが示された、マニラにおける結果は、雇用が局地的に集中した場合、通勤時間が長くなる可能性があることを示唆していた、分散型のロサンゼルスでは差が小さく、高いモビリティ水準がその要因と考えられた、(3)業務効率性については、いずれのメガシティにおいても都心部が有利であるという結果が得られた、多極集中型のサブセンターは都心の近くに分布しているため業務効率性の低下は少なく、多極分散集中型のサブセンターは都心部や他のサブセンターへのアクセスに時間を要するため、低下が大きいことが示された、などである。
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