都市計画論文集
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43.2 巻
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  • 台東区全域と谷中・浅草を事例に
    北岡 勝江, 宮脇 勝
    2008 年 43.2 巻 p. 1-10
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
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    本論文は、東京で最も寺院が多い地域である台東区を取り上げ、歴史的な寺町の景観を創り出した土地利用特性を分析している。寺史文献資料と88枚の歴史的な地図、3枚の火災保険地図、道路登記名簿に基づき、道路、街区および寺院を地図上にデーターベース化して、その歴史性を詳細に比較分析した。その結果、1)震災や戦災の影響が少ない谷中地区には、江戸時代からのものが集中して残っている。台東区全体で、わずかであるが2%の街区と道路と寺院が、江戸時代のものとして谷中地区に現存している。2)関東大震災の後、区画整理事業により台東区全体の71%の街区が新設され、細分化された。3)寺院は、台東区内に起立した全550寺院のうち、73%が台東区内に現存し、全体の半数近い253寺院(46%)が江戸時代から残っている。4) 地区別の特性を取り上げ、谷中地区と浅草地区の違いを図とデータで示す等、歴史的特性を明らかにしている。
  • 栢木 まどか, 伊藤 裕久
    2008 年 43.2 巻 p. 11-18
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、まず明治以降の東京において試みられてきた都市不燃化策としての防火地区制度が、関東大震災復興期においてどのような変遷を経て結実したのかを検討している。震火災により中心部において甚大な被害を受けた東京において、建築と都市の不燃化は大きな課題となった。そのような背景のもと、防火地区実現のための策として促進された共同建築について取り上げ、「防火地区建築補助規則」にかかる補助金増額申請の記録から、その実態の分析を行った。自営業者の職住一体のビルに貸室を持つ形式が最も普及しており、土地所有者だけでなく借地人による共同建築や、区分所有に関する法制もないままに共用部を持つ建築を実現していたことなど、防火地区における耐火建築化と狭小敷地問題の解決をきっかけに、共同建築という都市建築の一形態が成立していたことは注目に値する。
  • 小売店舗の計画許可を対象として
    明石 達生, 馬場 美智子
    2008 年 43.2 巻 p. 19-24
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
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    コールインは英国における国の関与に関わる都市計画制度の一つである。大臣は地方自治体に代わり開発申請に対する許可の判断を下すことが出来る。日本の常識としては考え難いが、毎年かなりの数の大規模小売店舗の開発申請がコールインされている。そこで、どうして英国では国自らが、個々の開発案件の許可の判断における地方自治体の権限に介入することができるのであろうか、という質問に対して、著者らは解答し具体的な理由を明らかにしようとするものである。さらに著者らは、英国の地方自治体は計画行政を含む子本的な権限を有していないことが最大の理由であることを示し、それは日本とは完全に異なることを指摘している。
  • 伊東市都市計画道路変更決定事件東京高裁判決を素材として
    川崎 興太
    2008 年 43.2 巻 p. 25-33
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、都市計画決定の処分性と計画裁量に関する判例の状況について整理した上で、伊東市都市計画道路変更決定事件東京高裁判決に関する考察を行うことを通じて、今後の都市計画訴訟をめぐる議論に基礎資料を提供することを目的とするものである。本件判決は、基礎調査の結果が客観性、実証性を欠くために現状の認識及び将来の見通しが合理性を欠くにもかかわらず、これに依拠して都市計画が変更決定されたとして、その違法性を判示した。本研究では、本件判決につき、行政庁が都市計画変更決定に関する計画裁量を行使する上での判断過程について密度の高い統制手法を採ったこと、行政庁に適正調査義務とでも言うべき法的義務を義務づけたこと、行政庁に主張立証責任を要求したことに着目して考察した。最後に、本件判決を踏まえつつ、都市計画訴訟制度の再構築に向けた検討課題として、都市計画に関する策定手続を充実させた上で、都市計画決定又は変更決定自体を争えることにする代わりに、その後にはその違法主張を認めないという都市計画に特有の訴訟制度を創設することが検討されるべきであることを提言するとともに、都市計画制度の再構築に向けた検討課題として、基礎調査の充実と都市計画決定に至る判断過程の客観的明示の義務化が検討されるべきであることを提起した。
  • 郷内 吉瑞, 大貝 彰, 鵤 心治, 加藤 孝明, 日高 圭一郎, 村上 正浩, 渡辺 公次郎
    2008 年 43.2 巻 p. 34-40
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
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    本研究は、防災まちづくりを支援するための技術開発として、地域防災力の評価手法の開発を試みるものである。はじめに、既往研究と防災に関する専門家へのヒアリング調査を基に、地域の災害時対応能力を構成すると考えられる評価の視点と項目、指標を設定した。その後、評価構造の階層をISM(Interpretive Structural Modeling)を用いて定量的に構築した。更にAHP(Analysis Hierarchy Process)を用いて、各評価項目の重み付けを行い、地域の災害時対応能力評価のための階層構造を構築した。加えて、DEMATEL法(Decision Making Trial and Evaluation Laboratory)を用いて、地域の災害時対応能力の基礎となる評価項目間の影響関係とその度合を明らかにした。そして、愛知県豊橋市の自治会を対象として、試験的に開発した手法を適用し、この手法により、地域の災害時対応能力の定量的評価が可能であることを確認した。
  • CSR仮説下における最近隣距離法と方格法の比較
    増山 篤
    2008 年 43.2 巻 p. 41-49
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
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    都市計画で用いられるデータのうち、ポイントデータは少なからぬ割合を占める。また、ポイントの空間分布パターンを判別する代表的な分析方法としては、最近隣距離法と方格法がある。この論文は、最近隣距離法および方格法による判別結果が、一般的にどの程度まで一致し、相互に従属な関係にあるのか明らかにすることを目的とする。まず、第一に、二つの分析方法による判別結果が完全に一致するための条件を示す。第二に、モンテカルロシミュレーションによって、この条件が満たされることがあるかどうかを検討する。第三に、二つの分析方法による判別結果は、いくらかは相互に従属な関係にあるが、しばしば異なる判別結果を与えることを示す。第四に、二つの分析方法による判別結果が相互に従属である程度を計量化する指標を考え、この指標は非常に低いものであることを示す。最後に、この論文をまとめ、今後の課題を述べる。
  • 制度の普及性と街並みづくりの実効性の観点から
    鈴木 智香子, 北沢 猛, 西村 幸夫
    2008 年 43.2 巻 p. 50-57
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    一般既成市街地における住民主体の街並み整備を支援することを目的とした制度には、次の2点を兼ね備えていることが重要と考える。1)普及性:制度を多くの住民に使ってもらうこと、2)街並みづくりの実効性:住民が近隣と協調しながら街並みをつくっていくことの実現及び担保、である。そこで本研究は、上記の2点の獲得を狙いとした、先進的かつ運用実績のある戸田市都市景観条例における三軒協定制度を取り上げ、運用実態を分析し、同制度の課題について明らかにすることを目的とした。まず、文献や行政担当者へのヒアリング調査より三軒協定制度の仕組みについて明らかにし、次に住宅形態調査、住民へのアンケート調査、ヒアリング調査を元にしたケーススタディより三軒協定制度の運用実態を明らかにした。最後に、三軒協定制度の課題をまとめ、改善点を提示した。
  • 環状6号線都市計画事業認可処分等取消請求事件判決を素材として
    川崎 興太
    2008 年 43.2 巻 p. 58-64
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
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    本研究は、都市計画法第13条第1項柱書きにおいて都市計画基準の一つとして定められている都市計画の公害防止計画への適合規定の解釈が争点とされた環状6号線都市計画事業認可処分等取消請求事件に関する第1審から上告審までの各判決を素材として、計画間の整合性の原則による都市計画の実体的統制の可能性について考察することを目的とするものである。本研究を通じて、都市計画の公害防止計画への適合規定の法的意味という論点については、これを「公害防止計画で執ることとされている施策を妨げないこと」などと緩やかに解した上記各判決の解釈は、結論的には肯定されるべきだと考えられ、都市計画の公害防止計画への適合規定が都市計画の実体的統制を図る上での有効な法理となり得る可能性は決して高いとは言えないが、その判断基準を具体化・明確化することが期待されるとの結論が得られた。また、旧法下で決定された都市計画への適合規定の適用の是非という論点については、都市計画それ自体の違法あるいは変更義務違背の違法は都市計画事業の認可等に継承されると解した上で、旧法下で決定された都市計画にも公害防止計画への適合性に関する判断がなされるべきであり、都市計画の公害防止計画への適合規定に着目した計画間の整合性の原則が都市計画を実体的に統制する上での有効な法理となり得る可能性は低くはないとの結論が得られた。そして最後に、計画間の整合性の原則による都市計画の実体的統制の可能性を高める上での一つの方向性として、都市計画区域マスタープラン及び都市計画マスタープランを活用することを提言した。
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