本研究は、都市計画法第13条第1項柱書きにおいて都市計画基準の一つとして定められている都市計画の公害防止計画への適合規定の解釈が争点とされた環状6号線都市計画事業認可処分等取消請求事件に関する第1審から上告審までの各判決を素材として、計画間の整合性の原則による都市計画の実体的統制の可能性について考察することを目的とするものである。本研究を通じて、都市計画の公害防止計画への適合規定の法的意味という論点については、これを「公害防止計画で執ることとされている施策を妨げないこと」などと緩やかに解した上記各判決の解釈は、結論的には肯定されるべきだと考えられ、都市計画の公害防止計画への適合規定が都市計画の実体的統制を図る上での有効な法理となり得る可能性は決して高いとは言えないが、その判断基準を具体化・明確化することが期待されるとの結論が得られた。また、旧法下で決定された都市計画への適合規定の適用の是非という論点については、都市計画それ自体の違法あるいは変更義務違背の違法は都市計画事業の認可等に継承されると解した上で、旧法下で決定された都市計画にも公害防止計画への適合性に関する判断がなされるべきであり、都市計画の公害防止計画への適合規定に着目した計画間の整合性の原則が都市計画を実体的に統制する上での有効な法理となり得る可能性は低くはないとの結論が得られた。そして最後に、計画間の整合性の原則による都市計画の実体的統制の可能性を高める上での一つの方向性として、都市計画区域マスタープラン及び都市計画マスタープランを活用することを提言した。
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