都市計画論文集
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43.3 巻
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  • 駅周辺地域の商業機能に着目して
    北山 社, 山田 泰宏, 川島 和彦, 小嶋 勝衛, 根上 彰生, 宇於崎 勝也
    2008 年 43.3 巻 p. 1-6
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    中国・上海市において過去に類を見ない規模で再開発が行われている。近年、軌道交通整備に伴い都市開発の中心が徐々に通り中心から駅中心に移行している状況がみられる。駅周辺で行われている再開発は、経済的な発展や投資回収を最優先としており、各所で同様の再開発がなされている。そのため、商業都市としての持続的発展を望めるような状況にないといえる。これまで、わが国においても経済を最優先した再開発が推し進められた時期があったが、昨今は見直されてきている。本稿では、通り中心から駅中心の都市開発に変化していることを示す。その後、商業機能に着目し、すでに再開発が進められたエリアの再開発実態を明らかにし、発生している問題点・課題を抽出することを目的とする。
  • 練習・制作場所と居住地選択の条件より
    上野 信子, 瀬田 史彦
    2008 年 43.3 巻 p. 7-12
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、アーティスト等の練習・制作場所と住居に求める条件を明らかにし、その結果をもとに彼等を誘致する政策について分析することである。その結果、以下のことがわかった。1)練習場所、住居ともに、安い賃料と交通の利便性が優先的に求められ、個人属性による違いはなかった。2)アートの分野ごとに必要とされる練習場所の条件があった。3)居住地には、都市地域の文化的な雰囲気が求められていた。以上の結果をふまえ、4市(横浜、大阪、京都、神戸)の誘致政策を検討してみると、練習・制作・発表の拠点はあるが、それらと住居のリンクがなく、総合的な施策が不足していることがわかった。
  • 丁 育華, 近藤 光男, 村上 幸二郎, 大西 賢和, 渡辺 公次郎
    2008 年 43.3 巻 p. 13-18
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、我が国では人口減少、超高齢社会を迎える時代にあり、コンパクトシティの構築が要求されている。その中、都心居住の促進は今後の都市づくりに貢献すると考えられる。本研究は、高齢者を考慮し、徒歩で暮らせる都心居住空間を創出するため、都市施設に対する重要度および都市施設までの移動距離に対する満足率に着目し、住民の視点から都市施設に基づく居住環境を評価するための評価指標、および評価モデルを作成した。そして、作成した評価モデルを地方都市に適用し、現状の居住環境を評価した。その結果、都心に近い地点の方が高く評価されていることが判明した。
  • 加知 範康, 加藤 博和, 林 良嗣
    2008 年 43.3 巻 p. 19-24
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、市街地の居住環境の空間分布を定量的に把握するために必要な詳細情報を、汎用空間データを用いて比較的安価に抽出することを可能とするシステムを開発した。システムを実都市に適用し、現状分析を行った結果、次の知見を得た。1)街路環境等の人工的環境については、特に中心部で高く、郊外では自然的環境が高いことが把握できた。2)同じ郊外地域においても、その広がり方によって居住環境にもたらす影響が違い、特に景観や土地利用の観点からは計画的開発のほうが有効であることが把握できた。3)ライフスタイルの異なる居住者間の価値観に相違があること、すなわち、居住地と選好する地域とが一致しているグループがある反面、居住地と選好する地域とにギャップが存在するグループの存在を確認できた。
  • 武末 裕樹, 鈴木 勉, 糸井川 栄一
    2008 年 43.3 巻 p. 25-30
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、大地震発生時における避難危険性の評価を、地震火災リスクを考慮した上で定量的に行うことである。まず避難危険性を評価するために、避難場所までの到達不能率、平均避難距離および各避難場所における避難者密度の計3指標を定義する。次に、各ノードにおける出火確率を算出し、その値に基づいて火災が発生するとした上で、避難者が火災を避けながら避難場所までの経路を選択するようなネットワークモデルを構築する.そしてモンテカルロシミュレーションにより複数の空間的な火災発生のパターンを生成し、東京23区を事例として避難危険性を評価する。結果として、火災リスクを考慮することで避難距離が増加し、特に出火確率が高い地区や適切に割当が行われていない地区ではその傾向が強く見られることが明らかとなった。また、避難先や避難経路を自由に変更する場合、到達不能率や平均避難距離が減少することが示された。
  • 堀内 智司, 奥村 誠, 塚井 誠人
    2008 年 43.3 巻 p. 31-36
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    幼稚園、小学校、病院などの公共施設の計画に当たっては、居住地からの距離を抑えるように配置を定め利便性を確保すべきものとされる。しかし、多くの地域において、それぞれの世代が世帯形成期に開発された住宅地に集中するなど、地理的に異なる場所に居住しているため、各世代にとっての公共施設の最適な配置は異なるものとなる。そこで、ある特定の世代の利便性を重視した施設計画は他の世代への負担をもたらすため、公共施設の配置をめぐって世代間に対立が生じる可能性がある。本研究では、近年公共施設の利便性が低下している宮城県大和町において、このような世代間の対立が生じる可能性があることを確認した。すなわち、世代ごとに居住地から施設までの平均距離を最小にする最適施設配置モデルを解いて、最適配置解の一致性を分析した。その結果、施設数が少数の場合または立地候補点数に近い多数の場合には、世代間の相違は発生しない。しかし、中ぐらいの個数の施設を配置する場合には、世代ごとの最適施設配置解に相違が起こり、世代間の対立につながる可能性があることがわかった。
  • 兵庫県神戸市の5つの小学校を事例に
    雨宮 護, 齊藤 知範, 島田 貴仁, 原田 豊
    2008 年 43.3 巻 p. 37-42
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    わが国における「子どもの防犯」は、その必要性が主張される一方で、取り組みの基盤となる実証的な知見に乏しい状況にある。そこで本研究では、兵庫県神戸市の5つの小学校を事例に、小学生の日常行動と犯罪被害の実態を把握し、さらに既存の子どもの防犯を目的とした施策の評価を試みた。2396名の児童と1875名の保護者を対象とした調査の結果、以下の3点が明らかとなった。a)児童の放課後の単独歩行行動は、児童の歩行行動全体の約四分の一を占め、時間的には下校後の外出先への行き帰りに、空間的には通学路など少数の領域に集中する傾向がある。b)児童の単独歩行の集中する時間・空間に、犯罪被害も集中する傾向がある。c)既存の防犯対策は、児童の単独歩行が集中する領域を有効にカバーできていない可能性がある。以上の結果は、既存の子どもの防犯を目的としたまちづくりに、子どもの行動特性を反映させることの必要性を示唆するものと考えられた。今後は、例えば、子どもの単独歩行の集中する領域で、具体的な場所の改善を図るなど、場所だけに特化しない取り組みが必要と考えられた。
  • 永家 忠司, 外尾 一則, 猪八重 拓郎
    2008 年 43.3 巻 p. 43-48
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の主たる目的は防犯環境設計における「監視性」、「領域性」を対象にスペースシンタックス理論を基に都市空間の防犯性能を考察した上で、スペースシンタックス理論におけるインテグレーション値と街頭犯罪の発生および警察の犯罪リスク認知空間との関係を分析することである。街頭犯罪の発生と警察の犯罪リスク認知空間の空間的分布を把握するため、アンケート調査を地域住民および警察官に対し行い、GISデータベース化を行った。本研究の成果は1.街頭犯罪の発生と警察の犯罪リスク認知空間の空間的分布状況を明らかにしたこと、2.都市全体から見たアクセシビリティの高低が容易に判断できるアクシャルマップを作成することにより、人通りや見通しがもたらす潜在的な監視性や領域性の推定を行ったこと、3.街頭犯罪の発生および警察の犯罪リスク認知空間とインテグレーション値の高さにおいて関係性があることが明らかとなったことである。
  • 渋谷駅を対象として
    上野 純平, 岸本 達也
    2008 年 43.3 巻 p. 49-54
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、都心部の鉄道周辺地域を中心に再開発事業がさかんである。再開発事業により駅周辺地域の建築物や駅施設が複合かつ多層になっていくことで、駅施設の魅力が上がり今度もその駅を利用する人が増加していく一方で、駅の利用者からすれば複雑な空間形態に加えて多くの歩行者が行き交い各々の目的地までに行くのに分かりづらい空間形態になっていくことが予想される。本研究では、このような空間形態を「複雑多層空間」と定義した。このような複雑多層空間内で、人々は何を基準に経路選択をしているのだろうか。それをスペース・シンタックス理論(以下、SS理論)を用いて定量的に分析することが本研究の目的である。本研究では東京都渋谷区にある渋谷駅を事例対象として分析を行った。歩行者流動を実測し、SS理論を用いて空間形態を分析し、それらの結果を用いて歩行者流動を表す重回帰モデル式を作成した。その結果、「視野範囲の広さ」と「ターン回数の少なさ」及び「最短距離で歩けること」が経路選択時において重要な影響を与えることが明らかになった。
  • 桝谷 有三, 藤井 勝, 下タ村 光弘, 田村 亨
    2008 年 43.3 巻 p. 55-60
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    通勤交通は、居住地から発生する交通と従業地へ集中する交通によって形成されることから、通勤トリップ長は居住地及びCBDを含めた従業地の規模あるいは地理的位置関係等の職住分布構造によって大きな影響を受ける。本研究においては、職住分布構造と通勤トリップ長との関係を考察するため、職住分布構造を視覚的に、計量的に把握することができ分析手法及び指標を、セントログラフィ、累積頻度分布曲線及び重力モデルを基礎に考察を試みた。そして、北海道でパーソントリップ調査が実施された5都市・10年次の通勤交通データを対象に実証的分析を行った。その結果、標準距離、CBD-居住地(従業地)分布平均距離及び職住間流動指標等の3つの指標を基に、居住地及び従業地の空間分布としての職住分布構造と通勤トリップ長の関係を考察することができた。特に、居住地のCBDからの分布状況が通勤トリップ長に大きな影響を及ぼしていること等を考察することができた。
  • 山形市町丁目人口データを対象とした分析と人口予測
    古藤 浩
    2008 年 43.3 巻 p. 61-66
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では二時点の小地区短期間多地域データからの人口分析・人口予測の新しい方法を提示する。そこではコーホート変化率法をベースとし、因子分析の考え方も活用してモデルを構築した。小地区での人口予測での3つの問題について検討し、山形市の町丁目データへの適用結果を議論する。データ分析の結果、このモデルでは地区を仮想的な4種類の成分(典型地区)に分割するモデルとした。また、モデルには、2種類のパラメータがある。1つは町丁目間に共通なパラメータ、もう一種類は各町丁目に個々のパラメータである。最終的に、1995年と2000年の人口データを中心に分析し、その分析結果と、それによる2005年の人口予測結果などを考察する。
  • 齋藤 文典, 大庭 哲治, 中川 大
    2008 年 43.3 巻 p. 67-72
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、中心商業地域における商業立地と駐車場の関係を、リアルオプション理論に基づき、将来の不確実性の影響を加味してモデル化した上で、都市において顕著な現象となっている商業と駐車場の立地転換のメカニズムを、数値シミュレーションにより分析した。その結果、来訪者の成長率が大きければ、空間制約が影響することと参入オプション価値が増大することにより、必ずしも商業立地が増加するわけではなく、むしろ駐車場が増加する可能性があることを明らかにした。また、経済環境の不確実性が大きければ、参入オプション価値の上昇による立地転換閾値の上昇と、不動産価値分布の標準偏差の増大が起こり、駐車場が増加しやすくなる可能性があることを明らかにした。
  • 寺木 彰浩
    2008 年 43.3 巻 p. 73-78
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は地図情報の誤差の影響を検討することを目的とする。本稿は、その端緒として、点と境界線の関係について取り上げる。まず2章において本稿で用いる確率モデルについて定式化を行う。3章では位相関係に関し、位置誤差が一般的な2次元正規分布に従う場を取り上げて検討を行う。4章では、わが国の地図情報が整備される上で基準となる公共測量作業規程を取り上げて測度の計算方法について検討を行う。5章では、ケーススタディとして点の位置の変化に伴って位相関係の誤りが発生する確率がどう変わるのか計算し、境界線による判定に際して留意すべき事項について検討した。
  • 奥 俊信
    2008 年 43.3 巻 p. 79-84
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    ボロノイ図とは、空間に複数の点(母点)があるとき、最も近い母点に所属するように空間を分割した領域図であり、いわば母点の縄張り図ともいえる。ボロノイ図の都市計画への利用として、施設の立地分析や最適配置計画に適用されている。例えば、店舗の商圏、図書館や病院などの公共施設の利用圏、小学校区などの分析や計画があり、応用範囲が広い。点(母点)によるボロノイ図には基本的に次の3種類があり、それぞれに適した別々の方法が用いられる。1)空間全域を母点群の領域に分割するボロノイ図。垂直二等分線が用いられる。2)線パターンで構成されたボロノイ図。グラフ理論が用いられる。3)障害物のあるボロノイ図。グラフ理論の最短経路が用いられる。本研究は以上3種類のボロノイ図を同一の手法で求めようとするものである。その基本的アイデアは次の通りである。つまり、1)空間を正方格子で分割されたセルの集合とする。2)セルの位置をセル内部のランダムな位置で代表させる。以上の方法によって実際にコンピュータを使ってボロノイ図を作成する。
  • 今井 公太郎, 藤井 明
    2008 年 43.3 巻 p. 85-90
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本論は、距離が重み付けられた領域(WR: Weighted Regions)における制限付きウェーバー問題(Restricted Weber Problems)の近似解を、実用的で簡単な方法によって求める方法を提案する。その方法では、多数のランダム点によるドローネ網で平面をメッシュ分割し、その上で重み付の最短経路距離を計測することにより、複雑な条件付のウェーバー問題をネットワーク上での単純な最短路探索問題に置き換えている。そして、最短経路の近似解が、厳密解であれば成立する、光の屈折現象を説明するスネルの法則やレンズメーカーの式に従うことを検証している。さらに、自由形状を持つ、重み付領域がある条件のウェーバー問題の近似解を求めている。
  • 田中 健一
    2008 年 43.3 巻 p. 91-96
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、交通網を分析するための新しい指標として、道路距離と直線距離の差を提案する。都市内の様々な移動に対する差の値の分布は、直線距離からの逸脱度合いが都市内でどのように分布するのかを記述し、特定パターンの交通網がもつ特性を分析するための有向な道具になるものと考えられる。また近年、環境問題への対応が急務であるという認識が高まっており、移動に伴うエネルギー消費を議論するための基礎モデルの開発は重要な意味をもつ。直線距離との差の分布は、最も理想的に移動できる状態からの移動エネルギー消費の増分の都市内分布を記述する重要な指標と考えられる。本稿では、格子状網を有する二つの正方形都市モデルを用い、差の分布の導出手順を詳細に述べ、起・終点が一様に分布する場合についてこれを具体的に導出する。
  • 分析・可視化手法の提案とその適用
    貞広 幸雄
    2008 年 43.3 巻 p. 97-102
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    空間分割は、都市に見られるもっとも基本的な空間構造の一つである。行政区、郵便番号区、選挙区、学区などの人工的な区割り構造や、商圏、駅勢圏、さらには土地利用、土壌、植生といった自然環境に関わるものまで、一つの地域に多様な空間分割が存在している。こうした空間分割は、その形成において互いに影響しあうことが少なくないため、その分析では、相互間の関係を正しく理解することが必要不可欠である。その方法としては、例えば各空間分割の特徴を示す指標値(区域の平均面積、周長など)を計算し、それらを比較するという方法が考えられる。しかしこの方法では、指標の計算が比較の前に行われるため、空間分割間での領域配置の差異が反映されないなどの難点がある。この問題を避けるには、空間分割同士を直接比較し、その後に集計を実施する必要がある。そこで本論文では、空間分割間の関係性を体系的に記述し、分析に適した明快な形で可視化する手法の提案とその適用を行う。特にここでは、空間分割という構造を特徴づける性質の一つである、分割間の階層性に着目し、階層的な類似性という視点を取り入れた手法を提案する。
  • 相 尚寿, 貞広 幸雄, 浅見 泰司
    2008 年 43.3 巻 p. 103-108
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    商店街などの都市商業集積は、都市商業空間の重要な構成要素の一つであるが、近年は再開発ビルの開業や大型店舗の進出により変化が見られる。都市計画上、その正の効果を活かし、負の効果を抑えるためには、開発の影響を適切に把握することが重要である。本研究はその基礎分析として、詳細な時系列建物データを用いて、中規模商業集積での建物の立地と用途の変化を沿道単位で分析する手法を提案する。まず、商業集積の核となる基点を設定し、基点からの距離と各地点までの商業と住宅の累計延床面積をプロットする。その際、道路間・地域間比較のため、対象区間延長と延床面積合計で基準化する。次に、沿道での延床面積の分布特性を表す指標を計算し、その時系列変化を読み取る。さらに、年次間での集積傾向の変化を示すグラフを描き、その傾向を把握する。実証研究では、東京都内の二つの商業集積において、再開発により商店街の範囲が縮小し、店舗跡地は住宅用途への転用が多く見られた。また、再開発を契機に、このような変化が進行した要因として、商業床需要の減少、地価下落、住宅地としての好立地性、周辺地域との容積率規制の差異などに注目して仮説を導いた。
  • 笠原 衣織, 赤松 隆
    2008 年 43.3 巻 p. 109-114
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、新経済地理学の枠組みに基づく多都市・多産業の Core-Peripheryモデルにおいて実現する均衡人口配分パターンを明らかにすることである。そのために、まず、Forslid and Ottaviano(2003)の工業部門1産業からなる一般均衡モデルを、労働者が都市選択を行う多産業経済の枠組みに拡張した。そして、計算分岐理論に基づく数値計算によって、パラメータ(輸送費用)変化に関する均衡解の分岐パターンを解析した。その結果、都市・産業の集積パターンに関して以下の2つの定性的な規則性が成立することが示された:1) 輸送費用の減少とともに均衡人口パターンは、分散→集積→分散という分岐パターンを示す。2) 人口集積が最大となる都市では代替弾力性の低い産業への特化、その他の都市では代替弾力性の高い産業への特化がおこる。
  • 小林 隆史, 雨宮 護, 大澤 義明, 腰塚 武志
    2008 年 43.3 巻 p. 115-120
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、都市計画学会研究発表論文集を引用文献に基づいて、建築学会計画系論文集、土木計画学研究・論文集及び土木学会論文集、ランドスケープ研究、と比較することで、都市計画学術雑誌の中での引用の特徴に関する位置づけを明らかにする。データベースを構築し以下の分析を行う。第一に、引用本数、引用媒体、引用文献刊行年、自己引用率など引用に関する基礎情報を論文集間比較や年次比較により整理する.第二に、文献は何年程度引用されるのかを総括するために、経過年数が指数分布に従うとし半減期の最小分散不偏推定量を用いて数値化する。第三に、論文集間の引用関係から、学会雑誌の影響関係を空間布置の遠近関係により視覚化する。その結果、第一に、一般書の引用が多く、逆に国外文献の引用が少ないことが示された。第二に、引用文献の発行年を調べると指数分布への適合度が高いこと、そして半減期は近年になるほど伸びていることが確認できた。第三に、都市計画学会誌は建築学会、土木学会の中間に布置されたことが明らかになった。
  • 谷口 守, 松中 亮治, 平野 全宏
    2008 年 43.3 巻 p. 121-126
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    自動車利用を原因とするCO2削減のため、都市のコンパクト化の必要性が指摘されている。しかし、マクロなレベルでは人口高密化の効果は検証されているが、「串とお団子」などの都市構造誘導策自体によるCO2削減効果は統計的に検証されていない。本論文では1987~2005年の4時点における全国38都市における居住者一人当たりの自動車CO2排出量を実際の居住者の交通行動データに基づいて算出し、その結果に対して簡便なモデル構築を通じて都市構造自体が自動車CO2排出に及ぼす影響を独自に抽出した。分析の結果、我が国の都市における一人当たり自動車CO2排出量は地方都市を中心に時系列的に増大していることが示された。また、都市構造パターンに応じて自動車CO2排出量に有意な差があることが明らかとなり、高密化策ほどではないが都市構造誘導策もその有効性が統計的に初めて検証された。
  • 溝上 章志
    2008 年 43.3 巻 p. 127-132
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、交通サービスだけでなく一般財の消費も考慮した効用関数を定義し、現在の効用水準を維持した上で、コンパクト性評価指標ベクトル目的関数を最適化するような一般財の消費量や交通パターンを求めるミクロ経済モデルを提案した。このモデルをK都市圏パーソントリップ調査が実施された1984年と1997年の2時点に適用し、総エネルギー消費量や総交通時間の最適解を時点間や地域間で実績値と比較することによって、都市のコンパクト化の可能性について検討した。その成果を下記が明らかになった、1)交通サービスの消費の代替として一般財の消費を増加させたり、自動車トリップを公共交通機関トリップに転換させたりするような施策によって、現在よりも総エネルギー消費量が少ない都市のコンパクト化が可能である。2)その際、総交通時間を実績値からあまり増加させずに総エネルギー消費量を削減させることも可能で、コンパクト化による交通混雑増大への反論にも応えることができる。
  • 高発電効率ガスエンジンコージェネレーションを利用した地域熱供給のモデル分析を通じて
    菅 正史, 大西 隆
    2008 年 43.3 巻 p. 133-138
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本論はコージェネレーションシステムを用いた地域エネルギーシステムの評価法を扱った論文である。本論でははじめにコージェレネーションシステムを評価する際の評価系や論点の整理を行い、次いで評価系や電力と熱の評価方法の設定等が地域エネルギーシステムのエネルギー効率性の評価結果に与える影響を明らかにする目的で、ガスエンジンコージェネレーションによる仮想的な地域エネルギーシステムのエネルギー効率性のモデル的試算を行った。モデル分析の結果、評価系の設定がエネルギー効率性の評価に与える影響は大きく、都市内のエネルギーシステムについてはサブシステムレベルでの効率性向上が全体効率の向上に必ずしもつながらない可能性があることを明らかにした。これらの結果をもとに、本論は地域エネルギーシステムの可能性を活用するためには、都市計画で地域エネルギーシステムの整備を位置づけることが有効との仮説を提示している。
  • 河原 真麻, 土肥 真人, 杉田 早苗
    2008 年 43.3 巻 p. 139-144
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    フィリピンには、周囲を塀やフェンスなどで囲み、出入り口に遮断機と警備員を配置して居住者以外の進入を制限した、“Village”と呼ばれるゲーテッド・コミュニティ(GCs)が数多く存在している。特に首都メトロ・マニラではその数は年々増え続け、近年では開発が郊外にまで広がるとともに、購買層も高所得者層から中・低所得者層へと拡大してきている。本研究ではメトロ・マニラを対象として、GCsの開発や管理に関わる主体にヒアリングを行い、日本では見られないこのようなコミュニティの形態がフィリピンにおいて定着した背景と、その現状・実態を把握した上で、GCsが都市に与える影響を考察することを目的とする。
  • 旧市街開発公社PROCIVESAを事例に
    阿部 大輔
    2008 年 43.3 巻 p. 145-150
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、バルセロナの旧市街における一連の都市再開発を担ってきた開発主体、とりわけ旧市街開発公社(PROCIVESA)の活動に着目し、(1)開発公社の内在的な特徴を明らかにし、いかにして官々連携、官民連携が図られてきたのか、(2)いかにして資金調達の流れが生み出されたのか、(3)旧市街の再開発過程において開発公社が果たした意義は何か、(4)わが国の再開発会社との相違点は何か、について考察することを目的とする。開発公社の最大の目的は、居住地としての旧市街の環境再生のために、土地収用を行い、立ち退き対象者となる従前の住民に代替住宅を提供することであった。開発公社の資金供給の主な手段は、土地の収用とそれを活用した不動産活動であった。これにより、再開発の過程で生じる負債の返済を容易にし、事業実施に資金を与え補助金を通して事業の変動を抑えられるようにした。持続可能な事業を展開するために、市以外の公的な組織と積極的な連携を構築し、中古流通市場から住宅を数多く購入し、修復に取り組んだ。
  • 箕浦 永子
    2008 年 43.3 巻 p. 151-156
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は、中華民国期蘇州における都市改造と住宅地開発について考察する中国近代都市計画史研究である。民国期、国民政府は都市改造計画を主導したが、蘇州でも1927年に『蘇州工務計画構想』を制定し都市改造に着手した。しかし、蘇州のような伝統都市では、新市街地形成よりも既存の市街地における都市問題の解決が最優先された。既存道路の整備・拡幅と新規道路の設置、水路の衛生改善や埋め立て、公園や野菜市場の設置、既存建築物の改善などに力が注がれたのである。また、古代より行政の中心であった「市中心区」は、都市公園や体育場、近代教育に基づく学校など、近代的な思想を背景とする施設が設置され、公共性を有する文教地区として再生された。一方で、民間による住宅地開発も1930年代に活発化し、個人・金融機関・富裕な役人や投資家などによって近代の住宅地が形成されていった。近代住宅の建築形式は、里弄形式と洋館形式が存在したが、上海の同時期のものと類似点がみられた。蘇州のような伝統都市では、現実的な都市問題の解決を優先させながら、緩やかに近代都市へと移行していたことが明らかとなった。
  • 秋本 福雄
    2008 年 43.3 巻 p. 157-162
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    ルイス・マンフォードは人間環境が再建されるべき基本原則を確立しようと試みた。彼は、「都市の文化(1938年)」、「都市開発(1946年)」、「歴史における都市(1961年)」、「都市の展望(1968年)」を刊行している。彼は、都市の機能的理論と規範的理論を統合した都市生活に関する総合理論を打ち立てた数少ない理論家の一人であり、学識の幅広さと深さ、そして独自性を持つ都市の文化の鋭い批判者であった。しかし、著作スタイルの難解さにより、解析的な研究は乏しく、彼の思考は計画家にとって活用すべき資源として残されている。この論文は、パトリック・ゲデスの都市生態学、エベネザー・ハワードの田園都市論の基礎の上に確立された彼の都市・地域計画の基本原則を解明している。
  • 松原 康介
    2008 年 43.3 巻 p. 163-168
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    番匠谷尭二は、生涯に渡って中東・北アフリカ地域の都市計画に携わった計画家である。清家清の門弟から出発して、パリのATBATでG.アニング、G.キャンディリスらに学んだ。その後アルジェに渡り、イスラム教徒とキリスト教徒が共存できるような住宅地計画に関する業務に従事した。1962年よりM.エコシャールとともに、国連開発計画の専門家として、ベイルート、ダマスカス、アレッポの都市基本計画を策定した。CIAMの理念も参照しつつ、彼らは自動車の導入によって旧市街の活性化を試みた。残念ながら、彼らの近代主義的政策には反対運動が起こり、番匠谷は失意の中で引退した。しかし、それでも彼の業績は多大であり、計画論的分析がなされるべきである。それは中東都市計画物語の序説となるであろう。
  • 「都市計画の方法について」の歴史的文脈に着目して
    中島 直人
    2008 年 43.3 巻 p. 169-174
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    高山英華は「都市計画学のパイオニア」の一人である。しかし、高山の学術的な業績はこれまでに明確な評価を受けてこなかった。そこで、本稿では、高山の主要な学術的貢献とされ、高山自身が「私が戦前から考えておりましたものを体系したもの」と位置づけていた「都市計画の方法について」に着目し、その形成過程、すなわち高山の戦前からの都市計画の学術的探究の軌跡を明らかにすることを目的とした。その結果、高山は当初は住宅地計画の研究、特に標準住宅から近隣住区までの幅の広さで研究を展開し、その後、戦時中の東京改造計画の立案において、人口密度計画、土地利用計画という手法を発展させ、戦後は大都市構成の研究を続行し、「密度」、「配置」、「動き」の3つの構成、分析手段などを提示するに到った。そうした探究の集成が「都市計画の方法について」であり、ここに都市計画学の一つの原点を見出した。
  • 多摩市と宇都宮市の保育所利用世帯を対象として
    山田 あすか, 佐藤 栄治, 讃岐 亮
    2008 年 43.3 巻 p. 175-180
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    これからの子育てと就労の両立を支える都市環境のあり方を考える上で、職住構造が就労と子育ての両立にどのように影響するかの実態を把握することは、今後の都市環境整備に資する知見として有用であると考えられる。そこで本稿では、東京郊外の多摩市と大都市圏に近接する地方都市、宇都宮市の保育所利用世帯へのアンケート調査によって、世帯の就労の状況、父母の送迎分担、就労と子育てへの両立に関する意識などを把握した。両市での結果を比較しながら、各市での就労・子育ての状況の特徴の明確化を試みたところ、通勤時間の差異が世帯の就労状況や分担状況に影響を及ぼしている様子や、地域ごとの交通手段の相違が望ましい保育サービスの立地や提供のされ方に差異をもたらしている可能性などを示した。また、各市で子の幼少期からの就労や家庭外保育への賛否には意識差が見られ、就労や送迎分担の状況が類似した世帯でも、市ごとに保育や子育てと就労の両立に関する意識に差異があることもわかった。今後の保育サービスや子育てと就労の両立のための政策展開には、こうした地域差を加味する必要がある。
  • 村松 健児, 真野 洋介
    2008 年 43.3 巻 p. 181-186
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、まず東京近郊における伝統的地縁組織から町会への変遷過程を明らかにする。次に地縁組織の活動、組織形態とその区域との関係を詳細に分析する地区として、十条地区、東向島地区、鹿浜地区の3地区を選定し、境界、地形、鎮守、地域活動に着目することで、地縁組織の活動、組織形態とその区域との関係を明らかにする。本研究の結論を以下に示す。十条地区では、伝統的地縁組織の境界や活動における特徴が、市街化や戦時期に行われた東京市町会整備によって失われてしまった。他の2地区では市街化や東京市町会整備があったにも関わらず、境界、鎮守、地域活動が組織変化の抑止力になった。このような過程を経ることで、地域空間と地縁組織の変遷過程の関係が、現在の町会の特徴に継承されているのである。
  • 石丸 紀興
    2008 年 43.3 巻 p. 187-192
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は計画思想という領域に注目して考察したものである。今回は被爆後広島において形成された平和記念都市の計画思想である。被爆後の戦災復興計画の中で多くの構想が提案されるが、その中から平和記念という考え方、特に平和記念施設の構想、あるいは平和記念都市全建設の構想が提案されたが、財政難や資材難の中で実現性は担保されなかった。かくして広島平和記念都市建設法の制定に結びつき、大きな役割を果たす強固な制度的な基盤が築かれることに結果した。同時に、この計画思想が深まるというよりは形骸化していった。こういった計画思想の形成過程を明らかにした。
  • 1950~1976年度の旧軍港市国有財産処理審議会における決定事項の考察を通して
    今村 洋一
    2008 年 43.3 巻 p. 193-198
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、『旧軍港市国有財産処理審議会決定事項総覧』を用い、旧軍港市である横須賀、呉、佐世保、舞鶴における、1950~1976年度までの旧軍用地の転用実態を明らかにしている。旧軍港市4都市では、旧軍用地を如何に活用するかが都市づくりの大きなテーマとなっていた。4都市で合計1,784haという大量の旧軍用地が、工場、公園、学校、水道、公営住宅などへと転用されることとなった。処分上の特徴としては、1970年代前半まで継続的に旧軍用地の転用がなされていたこと、旧軍用地の利用者は民間が過半を占めたこと、旧軍用地の処分方法として民間には譲渡が、公共団体には譲与が実施されたこと、従前用途を継承した旧軍用地の転用が見られたことが挙げられる。
  • 竹内 智子, 石川 幹子
    2008 年 43.3 巻 p. 199-204
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    急速に市街化が進んだ1950~60年代、東京周辺区部において、緑地地域、近郊地帯、都市計画公園の3つの施策の相関関係、影響について考察し以下の知見を得た。1)首都圏整備法による近郊地帯は、区域設定に至らなかったが、首都圏整備計画により周辺区部の大公園に国費を入れ重点的整備が行われた。2)都市計画公園が再検討され、事業化を要しない河川緑地・社寺境内地等を都市計画緑地とし、地域制制度として活用した。3)緑地地域は計画的市街地整備に方向転換し、一団地の住宅経営事業、区画整理事業等を行い、すべき区域が継続されている区域を含め、旧緑地地域の51.7%が計画的市街地整備の誘導に寄与している。
  • 砂川市を事例として
    鈴木 栄基
    2008 年 43.3 巻 p. 205-210
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    北海道砂川市に立地した北工東圧(三井東圧化学北海道工場所)の社宅街を例に、その変容過程を追跡し、人口減少下の都市計画における地域の文化的資源の継承について考察した。その結果、人口の減少過程における社宅街の変容は、居住施設、スポーツ施設、文化ホール、店舗、医療施設それぞれに異なることが確認できた。そして、これらの施設および文化的な活動の幾つかは、自治体の施策を通して先進的で公共的な資源として地域に残されたコミュニティに継承された。社宅街で形成された施設および機能の変容形態は、消滅だけではなく、多様化、継承、再編によって分類できた。
  • 小浦 久子
    2008 年 43.3 巻 p. 211-216
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    2004年に制定された景観法にもとづく景観計画が各地で策定されてきている。半年以上運用実績のある景観計画を対象にその構成と運用実態について調査分析した。その結果、景観計画の構成は地域の景観課題に応じて多様な使い方が見られた。定性的となりやすい形態意匠に関する景観形成基準については数値基準との組み合わせなどが試みられているが、基準表現の解釈の幅に応じて適合性判断が難しいと考えているところが半数近い。景観法だけでは地域の景観課題に十分対応できず、より良い景観形成にむけて事前協議と自主条例の必要性が多くの自治体で認識されていた。
  • 佐藤 貴彦, 堀 裕典, 小泉 秀樹, 大方 潤一郎
    2008 年 43.3 巻 p. 217-222
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    景観法の景観計画における運用上の課題と効果を考察することを目的とした。研究の方法は、景観計画の規制基準の整理・分類と全国を対象とした自治体アンケート・ヒアリング内容の分析による。結論として、基準は色彩・形態意匠・緑化等について定めているところが多いが、運用実態はほとんど色彩のみに偏っており、形態意匠についてはあまり協議されていなかった。自治体の制定基準を色彩に着目し、分類すると5タイプに分かれ、各自治体の課題に合わせた運用がなされていた。運用実態について、景観法に基づく変更命令は出された事例はなく、景観法の効果は出てきていると考えられる。ただし、高さについては変更命令が出せないため、良好な景観をトータルで創出するためには、都市計画諸制度との効果的な連携が必要となる。
  • 齋藤 直人, 十代田 朗, 津々見 崇
    2008 年 43.3 巻 p. 223-228
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、公開空地・有効空地の利用促進のための知見を得ることを目的としている。主な知見は以下である。1.新建築誌から、公開空地・有効空地の計画コンセプトを有する52件の記事が抽出された。計画コンセプトは5つに分類され、時代と共にハード的なものからソフト的なものへ移り変わる傾向がある、2.ソフト的なコンセプトを持った空間では、賑わい利用を意識した可動式装置が多く見られる、3.公開空地・有効空地の賑わい要因としては、i.住宅地に立地し「交流」や「子供の遊び」の場として認識される、ii.商業利用と関連した装置により「交流」利用が促進される、iii.オフィス街で喫煙所や着座装置を通りから見える部分に配置し利用が進む、の3点が、逆にコンセプトに整合していない要因として、i.管理側による利用規制が強い、ii.周辺に「交流」のための別の空間が存在する、の2点が挙げられた。
  • 高度地区による絶対高さの制限値の設定のあり方に関する研究
    青木 伊知郎
    2008 年 43.3 巻 p. 229-234
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    高度地区は広範囲の市街地を対象とする強制力のある規制であり、その内容が市街地形成や経済活動等に与える影響は大きい。このため、規制の導入や運用に際しては、規制によるプラス・マイナスの両面を考慮し、総合的に見て規制が妥当かどうかを判断することが望まれるが、高度地区の制限内容について具体的な指針はなく、都市によって考え方や制限内容が様々となっている。本研究では、近年、高度地区による絶対高さ制限を適用した都市について、絶対高さの制限値の考え方と制限緩和規定の内容を調査し、現状を整理するとともに、ヘドニック法を用いて、制限内容の違いによる地価への影響を測定する方法によって、高度地区による規制の費用便益分析を行い、高度地区による絶対高さ制限の設定のあり方について知見を得ることを目的とする。本研究による調査分析の結果、突出した高層建築物のみを規制する程度の比較的緩い規制でも便益の方が大きくなること、一方、高度利用がある程度進んでいる地域で強い規制を適用した場合は費用の方が大きくなる場合があることがわかった。
  • 東京都心部を対象としたヘドニック法による外部効果の推計を中心に
    保利 真吾, 片山 健介, 大西 隆
    2008 年 43.3 巻 p. 235-240
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、東京都における容積移転による歴史的環境保全事例が周辺に及ぼした効果について検証することで、その合理性について検討することを目的とする。容積移転による歴史的環境保全・土地高度利用が実現すると、歴史的環境の存在による効果、容積緩和を受けた開発による効果、及びそれらの相乗効果が総体として現れると考え、ヘドニック法によりその外部効果の推計を行った。その結果、高層化や公共施設負荷集中等による悪影響を上回るだけの有意な社会貢献を地域にもたらしていることが推定され、容積移転による歴史的環境保全には一定の合理性が認められることが確認された。一方で、容積移転と関係なく存在する歴史的環境や容積緩和を受けた開発は、有意な外部効果が見られなかったため、容積移転により一つのプロジェクトとして歴史的環境保全と新たな開発が実現することによって何らかの相乗効果が生まれていると推察された。事例分析を通して、多様な用途による集客効果、存在感増大による景観形成効果、歴史性による地域の個性創出効果が周辺にもたらされていることが示唆された。
  • 熊谷 勇輝, 村橋 正武
    2008 年 43.3 巻 p. 241-246
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    大阪市東部地域に代表されるような大都市工業集積地域においては、古くから中小工場が集積し、その高度な取引ネットワークにより高付加価値な生産を可能にしている。しかし、近年、こうした工業集積地域において工場の移転廃業が相次ぎ、その工場跡地への戸建て住宅やマンションなどの立地が進展している。こうした無秩序な用途混在の進展により、住宅側から工場に対して苦情が寄せられ、住環境に加え工場の操業環境をも圧迫している。そのため、無秩序な住宅立地による問題を回避する規制・誘導策が必要となる。そこで、本論文では無秩序な住宅立地の実態と、それを抑制する既存施策の運用実態を把握する。そして、無秩序な住宅立地の抑制に向けた土地利用施策を提案することを目的とする。
  • 菊池 隆史, 中川 大, 大庭 哲治
    2008 年 43.3 巻 p. 247-252
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、わが国では、東京一極集中の都市間交通機機関整備の結果、過疎過密化問題や地方都市の衰退など多くの問題が起きている。そのため、今後は地域の発展を支え、多極分散型の国土構造を形成する都市間交通を整備していく必要がある。そのためには都市間交通が地域の発展や国土構造に与える影響を詳細かつ定量的に把握・評価し、その結果を用いて地域の発展・活性化につながる交通機関を効率的に整備することが重要である。また、都市間交通は、鉄道・航空機・高速バスなどフリークエンシーに差がある複数の交通モードが用いられるという特徴を持つが、従来はこうしたフリークエンシーの差を考慮して都市間交通を評価することは少なかった。そこで本研究は、都市間交通の特徴であるフリークエンシーの差を表現した交通利便性評価指標を用いて都市間交通利便性と都市人口との関係を定量的に把握する。さらに、その関係を全国網羅的かつ経年的に把握することで、交通が都市に与える影響、ならびに、わが国の交通機関整備が国土構造に与える影響について客観的に明らかにすることを目的とする。
  • 三上 千春, 近藤 光男, 近藤 明子, 萬浪 善彦
    2008 年 43.3 巻 p. 253-258
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、今後の活性化策として注目されている地域間交流を、四国地域において観光を目的とした流動に着目し分析を行った。訪問先の滞在時間によって変化する訪問先での経済的な消費額に着目し、地域間交流が訪問先に与える影響を計量的に評価する指標を提案した。また、効用最大化理論に基づき行動モデルを導出することで、地域間交流モデルを定式化し、このモデルのパラメータ推定を行った。そして、モデルを用いた分析により、地域間の旅行費用や目的地における魅力、地域間に存在する連携が地域間交流に及ぼしている影響を明らかにした。さらに、高速道路整備を政策とする、今後の地域間交流影響度のシミュレーションを行った。
  • 郭 東潤, 北原 理雄
    2008 年 43.3 巻 p. 259-264
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、人口減少、都市の成熟化、経済社会文化的な変動や環境の制約等に対応できる持続可能な循環型社会への変換が求められている。これによって開発需要を中心とした従来の都市政策から歴史・文化・地域性を継承する都市再生政策が進められている。韓国では、990年代に入ってから本格的な都市再生についての議論がされ始まった。この議論の成果の一つとして、約2年間かけて実施されたソウル市「清渓川復元事業」が完成した。この事業は、都心部における多様な利害関係者との合意形成に基づき、大規模な自然環境の復元による都市再生戦略として世界中からも注目を集めている。本研究では、ソウル市の「清渓川復元事業」を対象に、対立可能性に対する合意形成戦略について「共有資源=計画情報」「活動の相互依存性=推進体制」「目標の両立不可能性=政策決定」の側面から明らかにすることである。
  • 単 春艶, 屋井 鉄雄
    2008 年 43.3 巻 p. 265-270
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    日本の道路事業においては、PI(パブリック・インボルブメント)が計画プロセスに導入されている。それに対し、中国では市民が交通計画プロセスに参加する機会が少ないのが現状である。本研究では、中国の大都市で交通事業の計画と建設について、PIの実施の現状を明らかにするために、現在建設中である天津都市快速道路の沿線住民に対してアンケート調査を行い、道路計画と建設プロセスのPIに対する評価と参加意識の把握を試みた。その結果、まず住民がこの道路におけるPI現状には満足しておらず、更なるPIが必要であると認識していることが分かった。次に、この道路計画において仮定した様々なPI手法に対して、説明会の参加意向が一番高く、オンライン方法が一番低いことが認識された。また、居住区域など個人属性が参加意識を影響していることが示唆された。
  • 都市計画道路の整備及び見直しのあり方を再考するために
    川崎 興太, 大村 謙二郎
    2008 年 43.3 巻 p. 271-276
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、長期間未整備の都市計画道路をめぐる都市計画訴訟、具体的には都市計画制限に基づく建築不許可処分の取消訴訟及び都市計画制限に対する損失補償訴訟の判例について考察することを目的とするものである。都市計画の存立基盤は、原理的には、長期的安定性・継続性と可変性・柔軟性との緊張関係の上にありながらも、実際には建築自由の原則を尊重する観念の反対論理として、ひとたび都市計画決定を行って財産権に制限を課したならば、その後の都市計画の運用は慎重に行うべきだとの思考に固執するあまりに時間の観念が稀薄になり、いかに社会経済情勢や環境諸条件等が変化しようとも、既決のものは所与不変の事実として自明視され、適切に見直しが行われなかった場合が少なくなかったように思われる。これは、本質的には都市計画の効力が持続することについての実体的かつ手続的な合理性の問題だと考えられる。本研究では、こうした観点から、今後の都市計画道路の整備及び見直しを進める上での検討課題として、都市計画変更義務の的確な遂行と事業期間明示型都市計画制度の導入、都市計画基礎調査の内容の充実、都市計画提案制度の活用要件の拡充を提起している。
  • 群馬県のまちうち再生総合支援事業を事例として
    森田 哲夫, 塚田 伸也
    2008 年 43.3 巻 p. 277-282
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、群馬県において市町村のまちづくり活動を支援する、まちうち再生総合支援事業の概要を紹介し、市町村の「まちの魅力」及び「まちづくり活動」の構成要素を明らかにした上で、まちの魅力とまちづくり活動の関連を把握した。以上より、群馬県のまちづくり再生事業を事例とするまちづくり活動支援事業の今後のあり方について考察した。
  • 指定管理者制度導入公園の満足度調査を事例として
    前田 博
    2008 年 43.3 巻 p. 283-288
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    東京都および静岡県における指定管理者評価事例をもとに、指定管理者評価において管理作業の履行確認、指定管理者の財務状況確認と並んで評価軸の1つとして挙げられている外部意見の把握に関して、現在他の自治体でも多く使われている利用者満足度調査による評価を適応させることの妥当性について考察した。(1)類似公園における管理項目、管理行為と利用者満足度との比較(2)利用者満足度調査における利用者満足度と管理状況満足度等の比較の二つの比較調査から公園の管理運営の評価に現行の利用者満足度調査による評価を用いることは不適切であるという結論を得た。
  • 北海道標津町における観光を活用した地域づくりプロセスの分析
    森重 昌之
    2008 年 43.3 巻 p. 289-294
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    「社会の流動性」が高まる中で、観光は地域づくりの手段のひとつとして注目を集めている。そこで本研究では、観光がどのように地域づくりに貢献できるかを明らかにすることを目的とした。まず、北海道標津町の地域づくりの事例分析から、観光の推進を通じて地域づくりに必要な地域関係者のネットワークを構築できることを明らかにした。そして、構築されたネットワークが「地域外の異質性を取り入れやすい」、「関係者が自律した対等の関係性を築きやすい」という、地域づくりにおいて優れた特性を持つことを示した。さらに、観光を活用した地域づくりを効果的に進めるためのプロセスの一般化を試み、1)観光の導入による地域ネットワークの構築、2)ネットワークを通じた組織的学習の促進、3)地域ネットワークによる新たな事業や活動の創造、4)地域づくりを持続するためのしくみの構築を提案した。
  • 岩本 陽介, 松川 寿也, 中出 文平
    2008 年 43.3 巻 p. 295-300
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    日本の市町村の数は、近年の市町村合併の進展に伴い3232から約1790まで減少した。一つの市町村に異なる土地利用規制が混在するという問題が、市町村数の減少によってもたらされた。都市計画区域は都道府県が指定する。しかし、都市計画を主体的に実施する市町村の都市計画区域の再編に関する意向は、都道府県の決定に影響を及ぼすと考えられる。そこで本研究では、市町村合併により都市計画区域の再編の必要性が生じたと考えられる全国109自治体を抽出しアンケート調査を実施した。過半数の自治体が都市計画区域の統合や拡大といった再編を考えているが、具体的な再編方法の決定にまで至っていない自治体も多いことが明らかとなった。また都市計画区域の再編を考える自治体は、多くの障害を認識していることも明らかとなった。本研究の目的は、都市計画区域の再編の課題を考察し、今後の都市計画再編の議論への示唆を与えることである。
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