都市計画論文集
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43.3 巻
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  • 都市計画制度・都市計画税・土地利用に関する条例に着目して
    鈴木 潔, 内海 麻利
    2008 年 43.3 巻 p. 301-306
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、地方分権を背景として、市町村合併が進められており、市町村の行政区域が大きく変化してきている。このような実態は、都市計画法による土地利用と、地域の意思が直接反映される市町村の行政区域との関係で問題(矛盾)を顕在化させている。本研究は、市町村合併による、(1)都市計画制度による土地利用規制、(2)都市計画税、(3)土地利用にかかわる条例への影響とその対応方針を全国の市町村にアンケート調査することにより明らかにし、土地利用における上記の問題(矛盾)とその対応方策を示唆するものである。
  • 谷本 圭志, 大近 翔二
    2008 年 43.3 巻 p. 307-312
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    小規模な自治体においては人口規模や財政規模が小さい場合が多い。必然的に実行可能な事業は限定的にならざるを得ず、恒常的に最小の負担で最大のサービスを享受しうる政策を模索しなければならない。そのためには、住民のニーズをモニタリングしつつその結果を踏まえた政策代替案を作成し、それらを個々の分野ごとではなく分野横断的な見地から評価し、行財政計画に反映させるための方法論が必要となる。行財政を構成する分野には多岐にわたっており、また、個々の分野においてもその分野に関連する住民サービスの指標は多様であり、住民への調査にしても調査結果の分析にしても被験者や分析者の負担が大きい。このため、容易にかつ効率的に実施できる方法が求められる。そこで本研究では、小規模自治体の職員が行財政計画を立案する際の支援システムの開発を行う。具体的には、顧客満足度調査を二つの種類の調査に分け、それらを段階的に調査する手法を検討する。その上で、それらの調査結果に基づいてコンジョイント分析を援用して住民のニーズに基づいた評価の関数を導出し、それを用いて分野横断的な見地から政策案の比較・検討することを可能とする。
  • メリーランド州の郡レベルのAdequate Public Facilities Ordinancesを例にして
    平 修久, 西浦 定継
    2008 年 43.3 巻 p. 313-318
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    米国で実施されている成長管理政策において、都市開発と都市基盤・施設の整備の同時性は重要な課題の一つである。同時性を実現するため、米国メリーランド州の13の郡と13の市では、公共施設の整備度合いと開発許可に関する条例(Adequate Public Facilities Ordinances :APFO)を制定した。APFOは、学校、道路、上下水道、警察、消防、公園などを対象にしている。これらの施設が不十分な場合、開発申請は却下されるか、公共施設等整備計画に基づいて該当する公共施設が建設されるまで保留にされる。APFOの効率的運用のためには、公共施設などの建設用の十分な財源、開発業者に課せられる影響料やモラトリアムのため住宅価格が上昇したり供給量が減少するといった問題への対策、そして、郡と市との協力が必要である。
  • 暫定逆線引き地区における開発許可制度の緩和と市街化区域再編入の取り組みを対象として
    松川 寿也, 岩本 陽介, 中出 文平
    2008 年 43.3 巻 p. 319-324
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、逆線引きされた地区で3411条例を適用した事例を対象として、都市計画行政と開発行政の変則的状況によって生じた開発と市街地形成の実態を明らかにした。その結果、以下の事象が明らかとなった。逆線引きされた地区にある3411条例の区域は、逆線引き前後に生じた規制強化への不満を回避する方策として指定された。逆線引きされた地区では、既存宅地制度による開発に止まらず、その制度の廃止後も、新たな開発審査会基準や3411条例の適用によって開発は更に進行した。その結果、既存宅地制度による開発と同様に、基盤整備が乏しい地区で市街地が形成された。そして、法34条但し書きの法的解釈が周辺環境に支障となる開発行為を認めさせた上に、地区計画による再編入後の市街地整備の方向性にまで影響を与えた。
  • 高岡市と砺波市との境界部散居集落を対象として
    永井 康之, 松川 寿也, 岩本 陽介, 中出 文平, 樋口 秀
    2008 年 43.3 巻 p. 325-330
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、富山県の砺波平野に位置する砺波市及び高岡市を対象に、土地利用上の問題や制度上の問題を明らかにすることで、今後の散居集落での土地利用コントロール手法の提言を行うことを目的としている。本研究では以下の問題点が明らかとなった。砺波市のように農用地区域での開発が容易に行われる背景には、富山県の農振制度が挙げられる。この制度の特徴は開発地から50m以内に宅地が存在すれば開発の可能性が高まることである。これに加えて、砺波市では散居という集落形態により農地の集団性に対する考え方が緩く、農振除外が起きやすい。その結果、高岡市に隣接する規制の緩い砺波市では開発が頻発し、散発的に行われている。また、散居集落では特有の集落形態や散発的開発により、土地利用が混在し、農地と集落を明確に区分することが困難である。そのため、区域を設定しての土地利用コントロール手法が難しい。以上のことから、本研究では、土地利用制度の運用は実際の土地利用に見合った方針に改善する必要があると指摘した。
  • 新都市計画法以降の権限分担の全容及び移譲過程から
    小西 真樹
    2008 年 43.3 巻 p. 331-336
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、都道府県・市町村間の最適な都市計画決定権限の分担について検討することを第一の目的としている。現在(第一次分権改革後)の、都道府県と市町村との都市計画決定権限の分担の状況については、全体像が不明確な状態となっている。そこで、本研究ではまず、現行都市計画法制度上、都道府県と市町村との権限分担がどのようになっているかを明らかにする。都市計画決定の権限は、都市計画の種類により、都道府県が決定するもの、都道府県決定と市町村決定が併存するもの、市町村が決定するものに分けられる。また、1990年代以降、行政改革、地方分権改革の流れの中で、徐々に都道府県から市町村へ都市計画決定権限の移譲が行われてきた。これらをふまえて、本論文の最後に、今後の都道府県・市町村間の都市計画決定の最適分担を考える上での6つの論点を提示した。
  • リージョンの重視からサブリージョンへの着目へ
    関 恵子, 花輪 永子, 中田 雄介
    2008 年 43.3 巻 p. 337-342
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    イングランドにおいて、地方分権や民間・市民セクターの公共への関与が推進され、一方で経済開発など単一の基礎自治体では対応が難しい広域的課題が顕在化するなかで、地域開発の空間的単位としてサブリージョンが注目されている。本研究では、戦略策定や財源配分などリージョンにおけるガバナンスの形成とその限界、及び多様な主体のパートナーシップによるガバナンスの広域化の二つの視点から、サブリージョンにおけるガバナンスの形成に向けた動きについて考察を行った。日本の広域地方計画と照らした特徴として、1)リージョンレベルでは中央政府主導によりRDA、RA、GOの制度上の機能分担が進み、リージョンの裁量を認める予算制度が整備されたが、リージョン内における調整機能の限界が指摘され、RDAへ戦略策定・予算機能が集約されつつあること、2)中央政府はサブリージョンの概念を明確に示さず、リージョンが主体的に圏域を設定していること、3)サブリージョンレベルで任意に設立したパートナーシップやローカルにおける地域戦略パートナーシップが、複数地域協定の締結に向けたガバナンスが形成していることを指摘した。
  • 佐藤 菜穂子, 石田 章
    2008 年 43.3 巻 p. 343-348
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、1999年の独立時に暴動を経験した東ティモール共和国を事例として、世帯レベルでのフードセキュリティーの水準に影響を与える諸要因を定量的に解明することを主たる目的とした。この目的を達成するために、本稿では世界銀行(World Bank)が2001年に実施した世帯調査の個票データを用いて分位点回帰を行なった。その結果、暴動等を契機とした親戚・友人の受け入れや暴動による住居被害は、世帯レベルでの食料摂取状況を大幅に悪化させることが明らかとなった。その一方で、ソーシャル・キャピタルや家畜・家畜生産物の自家消費は世帯レベルでの食料摂取状況にプラスの影響を与えることが確認できた。こうした分析結果を踏まえると、社会経済的に脆弱な地域において、世帯レベルでのフードセキュリティーを向上させるには、既存のコミュニティーグループへの参加や自家消費を目的とした家畜飼養の奨励が効果的であると考察できる。
  • 地方レベルの地球温暖化対策を支える役割に着目して
    高澤 由美, 岡部 明子
    2008 年 43.3 巻 p. 349-354
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、地方自治体を主な構成員とし、環境問題と接点をもちつつ国境を越えて活動するネットワーク(Transnational Network)を対象に、設立の経緯や温暖化問題に対する取り組みなど活動内容を明らかにし、特徴を分析した。本研究では以下のことを明らかにした。1)TNは欧州レベルの政策の進展と密接な関係をもちながら1990年ごろから急伸長してきた。2)TNは設立経緯や目的などから「総合型」「地域型」「目的型」に分類でき、異なる特徴を有する。「総合型」は、EUレベル政策形成に関与しアドバイザーとパートナーの両面を持っている。他方、「目的型」はCO2削減策など具体的で役に立つ知識や技術をメンバー自治体に提供しサービスを共に構築し充実させ、加盟自治体数を増やし結果的に国を超えた存在感を示している。3)欧州では相互に補完関係にある多様なTNが存在し、さらにTN間でも連携している。このようなTN活動が、個々の自治体が規模・地域特性に合った多様な環境政策を試行錯誤して進めながら、EUレベルの戦略的方針となんらかの対応関係を保持することを支えている。
  • ロンドンの取り組みを通して
    村木 美貴, 小倉 裕直
    2008 年 43.3 巻 p. 355-360
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、都市計画を通じたCO2排出量削減のあり方を、経済活動を牽引する役割と環境負荷低減の両方を行う必要性の高い首都でいかに行うか、ロンドンでの取り組みを通じて考えることを目的とする。日英は計画制度、開発圧力等に違いがあるが、首都が経済社会ニーズに応えつつ、環境負荷低減をいかに行うか、本研究の成果が、早急に対処する必要性のある都市づくりにおける環境負荷低減の方向性を考える上での一助となることが望まれる。本研究の構成は以下の通りである。まず、ロンドンにおけるエネルギー有効利用実現のための政策の枠組みを明らかにする。次に、ロンドンの開発圧力とCO2排出量の関係から地域の特性を明らかにした上で、ロンドン市によるCO2排出量低減のための個別開発指導と面的エネルギー有効利用を図る指定地域の意味を分析する。最後に、これらを踏まえ、東京の都市計画がいかにCO2排出量削減のための取り組みを行うべきか議論する。
  • 西浦 定継, 平 修久
    2008 年 43.3 巻 p. 361-366
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    メリーランド州は、アメリカの中で農地等の保全に関する長い歴史を有している。保全の対象は、当初の自然資源から農地や森林にも拡大した。環境面で危機的な土地を対象にした保全プログラムも追加された。また、州の成長管理政策の一つとして、総合的な地域レベルの保全プログラムも登場した。これらのプログラムの目的には、都市スプロールの制御も加えられた。保全方法として、保護的地役権が土地の保全に適用されている。しかしながら、予算の変動、地主の申し出ベースの地益権の売買、地益権の買取り価格の上昇のため、目標面積の農地を保全することは容易ではない。さらに、農業継承者の不足や農地分割に関する法律の抜け道などがあり、それらの対策も必要である。
  • 中城 康彦, 齊藤 広子
    2008 年 43.3 巻 p. 367-372
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    定期借地権を利用した良好な住環境の戸建て住宅地の開発・管理手法を考察するために、英国のリースホールド制度の利用と変遷についてまとめた。19世紀後半から用いられるようなったビルディングリースは建築費用を借主が負担する点で定期借地権と類似性をもつ。開発事業者の資金不足を補う方法として用いられたが、99年の期間の後半における融資の問題や満了時の公平の問題のために1967年法が立法された。ビルディングリースの資料が多く残るレッチワースガーデンシティを調査対象地とし、リースホールドの利用と変遷をみた。リースホールドは地代収入による都市経営とカベナントによる住環境コントロールの両面をもつものであったが、1967年法によりフリーホールド化が進んでいる。これに対してカベナントの内容を継承する管理規則の認可を受けた。1967年法にもかかわらず、現在の管理者である財団はリースホールドで新規住宅供給を行っている。カベナントによる住環境コントロールは現在でも都市経営の重要な手法である。
  • 国分寺市まちづくり条例を対象に
    野澤 千絵, 堀 裕典
    2008 年 43.3 巻 p. 373-378
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    自主基準と委任基準を巧みに連携させ、独自の開発基準を定めた国分寺市まちづくり条例に基づく戸建て宅地開発を対象に、条例による宅地開発誘導の効果と課題を明らかにすることを目的に、条例に基づく開発基準に関わる一連の適合審査・協議プロセスにおける運用実態、及び宅地開発後の実態を分析した。その結果、道路整備に関する基準により、前面道路幅員の拡幅整備や周辺道路等との通り抜け化など、防災上・避難上の安全性、良好な地域環境の確保に寄与していたこと、外壁後退基準や緑化率基準については、遵守されていない事例が見られ、協定が承継されていないこと、建築物の敷地の最低限度の基準が厳しく、条例のがれの要因となっている可能性が高いこと等が明らかとなった。よって、地域特性に応じた実効性ある開発コントロールを推進するためには、独自の開発基準をベースにしつつ、開発協議により、建築物の敷地の最低限度基準の緩和が可能となるようなインセンティブが働く仕組みを用意することが有効であると考えられる。
  • 都市再生局の取り組みを通して
    岡 絵理子, 藤井 崇史, 鳴海 邦碩
    2008 年 43.3 巻 p. 379-384
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    日本をはじめアジア諸都市では、高層集合住宅の建設が急速に進んでいるが、その一方で、老朽化した中高層集合住宅のもたらす問題も大きい。そこで本研究では、住民の99%が集合住宅に住んでいる香港で、都市再生局が都市再生の一つの手法として用いている建物再生事業に注目し、その手法を理解した上で都市再生における効果を検証した。観察調査やヒアリング調査の結果、香港での集合住宅再生事業は、抜本的方策ではないが、地域の持続性、住宅市場の活性化、事業そのものの波及効果、地域を活気づける効果が期待でき、わが国の地区再生に対しても示唆する点があることが明らかとなった。
  • 大阪府吹田市都市整備部の試み
    田中 晃代
    2008 年 43.3 巻 p. 385-390
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、吹田市の都市整備における協働の取り組みを経年的に分析し、「場」のデザインや行政支援の方策について追求している。分析の結果、以下の点が明らかになった。(1)行政は、「場」と「組織」を使い分けする必要がある。(2)行政は、WSを積極的に取り入れることによって、市民同士の本音を出し合える雰囲気づくりをすることが大切である。(3)行政は、事務局メンバーとしては、コーディネートやファシリテーションを経験した市民にも広く声をかける。さらに事務局機能を積極的に市民に任せることが重要である。そのことによって、住民同士の結束力も高まる。(4)行政は、事業スケジュールに最低限必要な条件を、まず、市民に提示する必要がある。
  • シェフィールド市とシェフィールド大学を事例として
    小篠 隆生
    2008 年 43.3 巻 p. 391-396
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文の目的は、地域と大学がどのように連携しながら都心再生のための計画づくりを行っているのかを実際の事例をもとにして把握し、その際にどのような計画理念を持ちながら空間計画の枠組みを構築しているのかについてその特徴を分析することである。都心における再生計画を立案し、その展開を図っている都市の中で特に大学の役割を重視すると共に、大学も都市との連携によって環境整備を進めようとしているイギリスのシェフィールド市を事例として分析を行った。主要な特徴としては、1)大学は、施設・環境整備に対して地域に対する役割を明確にすることで外部の組織よりの資金を得て整備を行うプロジェクトをつくっている、2)大学側の計画にも公共施設・空間の整備プロジェクトが位置づけられ行政との協働による環境整備の実現を図るプログラムがつくられている、3)都心地区のマスタープランでは、経済の発展戦略計画との連動・連携が図られている、4)大学側のプロジェクトを統合化し、大学地区の都心の中での位置づけを明確にするように都市側の計画づくりがなされている、という4点が分析された。
  • 井上 豊宏, 村橋 正武
    2008 年 43.3 巻 p. 397-402
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    現在京都市では伝統的建造物群保存地区をはじめ、京町家を保護するいくつかの制度が設けられている。一方で、京町家の建築技術の継承が問題となっており、その背景には既存不適格規定による職人の技術継承の場の喪失がある。近年京都の職人グループによって、技術の再生に一定の成果を挙げているが、依然町並み保存地区以外では京町家の開発が進められており、限られた京町家での活動は厳しいといえる。こうした伝統的な建築技術の衰退は全国的な課題であるが、その中で大工の技術を活かす場を新たに作り、技術を活かした活動を展開している取組みがある。本研究ではそうした取組みの実態を分析し、技術継承への課題を指摘するとともに、技術継承に貢献するまちづくりの方法論を提案し、京都市への適応可能性を検討することを目的とする。
  • 小野 めぐみ, 森 傑
    2008 年 43.3 巻 p. 403-408
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、高齢者通所介護施設利用における自宅から施設までの送迎の実態を詳細に把握、送迎上の移動環境の課題を、送迎車両と施設、送迎車両と利用者自宅間の建築・道路などの物理的バリアといったハード面と、高齢者通所介護施設の介助職員の有無や利用者の要介護度といったソフト面の両方から分析し、今後の改善指針を得ることを目的とした。その結果、(1)一方通行の道路に面したり交通量が多い道路に面したりする住宅では、敷地内に乗降スペースがなければ乗降が非常に危険であり、かつ多くの乗降時間を要するため、乗降場所としての適切な駐車スペースが必要であること、(2)歩行が可能な場合は短時間で移動できる場所でも、歩行に介助が必要な場合には移動に長時間を要することがあるため、利用者の住宅の出入りのバリアフリー改修は不可欠であること、(3)家族の支援は、送迎のスムーズな遂行に大きな役割を果たしているが、今後は単身高齢者が増えることも予想されるため、施設側への人員配置だけでなく、既存の集合住宅を対象とした住宅側での送迎支援サービスの充実が望まれること、等の知見を得ることができた。
  • 宮崎市天満橋周辺部を対象として
    牧 大佑, 吉武 哲信, 出口 近士, 外井 哲志
    2008 年 43.3 巻 p. 409-414
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、散歩行動の特性や散歩に適した空間整備のなされた地区において、散歩経路の特性と経路の変更要因を把握することにより、散歩に配慮した空間整備のあり方について検討することである。具体的には、宮崎市中心部に位置する天満橋周辺地区での散歩者を対象としたアンケート調査にもとづき、散歩行動の特性を分析した。分析内容は、散歩の目的や時間、距離など散歩行動に関する対象地区の特性、天満橋開通に伴う散歩経路の変化、散歩経路として利用されたリンクやそのリンクと魅力的な場所との関係、散歩経路の変更要因等である。この結果、多くの散歩者が経路変更前後での散歩距離の差が小さくなるよう経路変更すること、特にそのような散歩者の散歩距離は3~4kmが多いこと、散歩に適した空間整備を行なう際、3~4km程度に収まる多様な散歩経路を確保する重要性が高いこと、整備を行う空間とその周辺の魅力的な場所とを結ぶ必要があること等、いくつかの知見を得ることができた。
  • 藤本 尚子, 藤田 素弘
    2008 年 43.3 巻 p. 415-420
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    現在、全国の小学校では自宅と学校を往復するための道である通学路が定められており、子どもたちは登下校の際にその決められた道を通ってくるよう学校から指導されている。近年では登下校中の児童を狙った路上犯罪の増加により、通学路の安全面の強化が図られている。しかし一方で、通学路とは子どもが多くの時間を費やす場所であるため子どもが楽しんで通うことの必要性も重視されてきており、子どもが成長する中で友達や地域の人と交流し季節の変化に気づくような魅力的な通学路が望まれている。このような背景のもとで、本研究では子どもの視点から現在の通学路環境に対する意識調査をすると共に、子どもが考える理想の通学路についても調査した。それらの調査データを統計的手法によって検討した結果、子どもにとって嫌うことなく通うために必要な通学路環境は、通学路の清潔感、安全性であり、一方で自然環境(植物、生物、小川)も求められていることがわかった。
  • 福岡市立全小学校を対象として
    小西 圭介, 石橋 知也, 柴田 久
    2008 年 43.3 巻 p. 421-426
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では福岡市立全小学校の通学路を対象とし、通学路図、交通年鑑、教育関係者へのヒアリング調査を基に、安全な通学路に求められる課題について考察を行った。その結果、1)対象の通学路が「結合型」「枝分れ型」「標準型1,2」の4種類に分類された。2)通学路図は学区内の通学環境を把握するには十分な資料で、通学路図に危険箇所を明記することの意義を明らかにした。3)歩道があることで安全性が確保されるという認識は低いことが明らかとなり、車道幅員4~6mの道路が接続する交差点、車道幅員5~6mの単路で危険箇所が多く抽出された。これらの道路は通学や通勤で頻繁に利用される「生活道路」である場合が多いことが把握された。4)通学路図に危険箇所を明示するだけでなく、通学路上にある地域の魅力を記載することで、児童の情操教育や原風景の形成に寄与し、より有意義な通学行為が促されると考えられる。5)危険箇所に該当する「生活道路」に着目し、あいさつ・散歩などの地域住民による健全な生活動線と通学路を積極的に重ねることで、見守りがより有効な安全対策として位置づけられる可能性が示唆された。
  • 群馬県前橋市を事例として
    川原 徹也, 湯沢 昭
    2008 年 43.3 巻 p. 427-432
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、大型店が市街地に立地した場合、中心市街地へどのような影響を与えるかを検討するものである。研究方法としては、始めに地方都市における大型店の立地状況の把握を行い、次に複合型大規模商業施設と中心商店街利用者を対象とした消費者意識と消費行動分析を通して、大型店と中心商店街との共存・競合関係を分析する。結論としては、大型店が中心市街地内に立地した場合には共存関係が認められたが、周辺に立地した場合は、競合関係が発生し、中心商店街の更なる空洞化が懸念される結果となった。
  • 大阪市中崎町地区を事例として
    篠田 なつき, 松村 暢彦, 鳴海 邦碩
    2008 年 43.3 巻 p. 433-438
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    大阪市内の代表的な住居コンバージョン店舗の集積地区である中崎町エリアを対象に、来街者への空間印象評価のアンケート調査を実施した。さらに、調査結果から、空間要素と空間印象および、エリアに対する総合評価との関係を分析により明らかにした。これらの調査および分析から、住居コンバージョン店舗集積地区における空間の特性として、エリアのなかに従来から存在する生活空間や商業、公共空間などの要素と、新たに増え始めた住居コンバージョン店舗とそれに付随する様々な要素が、エリア内に共存し、それぞれの良さが同じスケールでバランスよく機能することによって、エリアの魅力をもたらしているという知見が得られた。また、「古さの中にある新しさ」や「都会の中の下町の風景」といった、都市的で大きなスケールの空間とすぐ隣り合わせのところに、昔からのスケールで存在する街並みがあるという対比的な特徴に気付くことで、より、エリアに対する親しみやまとまりといった印象を与え、総合評価を高めているということが明らかとなった。
  • 中島 玲欧名, 中井 検裕, 中西 正彦
    2008 年 43.3 巻 p. 439-444
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    全蓋式アーケードは大規模小売商への対抗策として全国各地の商店街に数多く建設されてきた。しかし現在、その多くが建築としての耐用年数を迎えている。近年の商店街の衰退傾向を考慮すると、今後は撤去を行う商店街が増加すると考えられる。そこで本研究は撤去に焦点を当てる。まず撤去動向を示す。次に撤去及び撤去と併せた組織の取り組みについて実態把握を行う。そして商店街振興に効果的な撤去となる要因について考察することを目的とする。結論としては、撤去と併せた個店や街路の整備の充実さに依存することが分かった。整備を充実させる要因としては行政の補助事業の認定を受けることが重要であるが、そのためには組合員の商店街のまちづくりに対する投資が必要である。
  • 富山市田園住宅開ヶ丘事業のケーススタディを通して
    清水 郁江, 森 傑
    2008 年 43.3 巻 p. 445-450
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、NPOが優良田園住宅の供給に積極的・意欲的に取り組んでいる富山市田園住宅開ヶ丘事業に注目し、そのケーススタディを通して、農村地域における宅地開発の際に導入される優良田園住宅の計画手法が地域コミュニティへもたらす影響について、サステナビリティの観点から考察することを目的とした。その結果、主に以下の二つの課題が明らかとなった。(1)現行の『優良田園住宅の建設の促進に関する法律』が定める計画手続きによると、入居者が集落づくりに参加できるのは事業開始後となるため、建設計画作成の段階から入居者の意見を取り入れる本来の意味でのコーポラティブ方式を採用することは非常に難しい。(2)特定のライフスタイルを志向する人々を想定することが、住宅プランと入居者の家族構成の限定となり、そのことは、コミュニティを長期的な視野からみたときに、入居者の頻繁な入れ替わりへと繋がることが予想され、地域コミュニティのサステナビリティを弱める可能性がある。
  • 慎 鮮花, 澤木 昌典, 柴田 祐
    2008 年 43.3 巻 p. 451-456
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    韓国の大都市の住居系市街地の多くは、戸建て住宅地が中心になっており、良好な基盤施設や建物を維持している所が多いにも関わらず、開発履歴による住宅の老朽化や陳腐化、居住者の人口の減少や高齢化などの様々な理由に伴う住宅の個別建替えや改築などの更新が行われており、様々な問題が発生している。そこで本研究では、韓国の大邱市の住居系市街地の戸建て住宅地を対象に比較検討行い、各々の住居系市街地の地域特性や居住者特性から直面する問題や課題を整理し、邱市の住居系市街地の居住環境の変化等の問題に対する今後の方策を検討するための知見を得ることを目的とする。計画的戸建て住宅地の地域の開発特性や人口特性を見た結果、開発時期や立地条件が同じであるにも関わらず、人口・世帯特性が異なっていることが分かった。計画的戸建て住宅地の地域の開発特性や住宅老朽化、高齢化や人口・世帯の増減により、空き家や無秩序な更新からの住宅地の維持・管理や人口・世帯構成の変化によるコミュ二ティの変化などが予想されており、各々の地域の居住環境の悪化や変質にも影響を及ぼしていると考えられる。
  • Trust for Public Landの取り組みを通して
    佐藤 宏亮, 後藤 春彦, 田口 太郎
    2008 年 43.3 巻 p. 457-462
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    米国においては様々なランド・トラストやコミュニティ・ランド・トラストが活発に活動し、自然環境の保全や住環境の向上に貢献してきた。近年では、都市部においてコミュニティデザインに係わる取り組みが展開されるとともに、ランド・トラストとコミュニティ・ランド・トラストが相互に連携を模索する動きが見られる。本稿では、米国におけるランド・トラストとコミュニティ・ランド・トラストのコミュニティデザインに係わる近年の取り組みを把握したうえで、両者が相互に連携を模索しはじめる経緯と、連携を図っていく意義やコミュニティデザインへと展開していく可能性について考察した。
  • 街なみ環境整備事業が適用された長野県木曽町「福島宿周辺地区」を事例として
    丸登 健史, 浦山 益郎, 松浦 健治郎
    2008 年 43.3 巻 p. 463-468
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、建築基準法42条2項に指定された路地において、沿道建築物の更新を制御して幅員を維持し、路地空間の質向上を図るために必要な知見をえるために、街なみ環境整備事業を取り上げ、全国160自治体を対象に路地の整備と沿道建築物に係るルールの実態を把握し、さらに路地の幅員を維持しつつ、路地空間の質向上に成果を上げている長野県木曾町福島宿周辺地区の事例分析をした。街環事業には建築物等に関する協定と協定を運用するための地元組織をつくることが制度的枠組みになっているが、路地空間の保全を効果的に行うためには、さらに以下のことが必要なことが明らかになった。・現状状幅員で整備する方針と方針の着実な実施。・協定づくりによる修景に対する理解と実施につながる住民意識の啓発。・紳士協定にもとづく修景基準を建築行為や門塀の設置に適用させる制度と運用プロセスの導入。・このプロセスを効果的に運用するために地域の専門家や住民の組織化とプロセスへの参加。
  • 大手町・丸の内・有楽町地区における大規模都市開発プロジェクトを事例に
    岡田 忠夫, 有田 智一, 大村 謙二郎
    2008 年 43.3 巻 p. 469-474
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近時、バブル崩壊以降、数多くの都市開発プロジェクトが数多く計画されてきたが、本論文においては、特に、東京都心における大手町・丸の内・有楽町地区を対象に、上位計画や個別プロジェクトにおける官民協議に示されてきた望ましい都心の将来像を整理し、機能変容という視点から、その将来像がどのように具体化されてきたのかを明らかにした。その結果、当該地区においては、従来からの中枢機能である業務機能の高度化と並んで、業務以外の多様な機能の導入により、短期間の内に新たな国際競争力を持った多機能都心空間が出現するとともに、関係各主体の協調による街づくりの試みが実践されているという点で、日本型PPPの成功事例のひとつとして位置づけられると考えられる。
  • 近藤 裕陽, 木下 光
    2008 年 43.3 巻 p. 475-480
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、坂出人工土地の開発手法の意義と限界をその計画、事業プロセスの変遷を通して明らかにしたものである。結論は主に以下の三点である。1)坂出人工土地は公共用地を生み出す実験的な開発手法であったが、予定以上に事業が遅延し、事業途中の1969年都市再開発法が施行されたため、特殊解として位置づけられることになった。2)坂出人工土地はすべての土地の買収を前提としない画期的な開発手法であり、区分所有や立体換地による今日の再開発手法とは異なるものであった。3)坂出人工土地は構造や設備の観点において、土地と同等として捉える試みがなされたが、法的には位置づけられることがなかったため、結果的には建築床と同じ扱いになっている。
  • 森奥 悠人, 松村 暢彦, 鳴海 邦碩
    2008 年 43.3 巻 p. 481-486
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、社会構造が変化していく中で、工場の廃業・移転に伴う産業の空洞化が、地域経営上の重要課題として着目されている。そこで、近年、工場の流出が著しくその打開策が求められている大阪府茨木市を研究対象地として選定し、地域資源としての工場が地域住民によってどのように受け止められているかを検証するために意識調査を実施した。研究ではまず、地域及び工場に対する意識から導き出された潜在意識間の共分散構造分析を試みた。その結果、工場に対する意識が高い人ほど、地域に対する意識も高いという傾向を把握でき、地域住民の意識面において工場を守り育てていく素地と意味が十分にあることが知見として得ることができた。さらに各潜在意識の属性別特徴、施策選好に与える影響も把握でき、産業の空洞化や企業流出といった地域問題を解決する一つの手段として、好意的な住民意識を活かしていくことの有効性を示すことができた。
  • 高松市におけるケース閲覧型調査から
    高塚 創, 泉 英明
    2008 年 43.3 巻 p. 487-492
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、高松市において創意工夫や実験精神にあふれた住生活を実践する都心居住者の情報をケース冊子に取り纏め、それを活用した調査によって、郊外居住者のどのような層が、どのような点に反応して、都心居住に対する意識をどの程度変容させるかを統計的に明らかにした。その結果、最も顕著にまちなか移住意向を変容させたのは、意外にも30代の層であった。小さな子どもがいる可能性が高いこの層は、近年最も郊外人口の増加に寄与した層であった。その30代が最も移住意向を変化させた理由としては、ケース情報によって、育児・教育関連、治安といった項目でまちなかのイメージが大きく改善されたことが挙げられる。また、性別でみると女性の方が、移住意向を顕著に高めている。都心型ライフスタイルにより共感したのは女性の方であり、これは育児・教育といったことに加え、共働き世帯(あるいはその予備軍)の増加が背景にあるように思われる。これらの結果を踏まえれば、都心居住を推進していくためには、新しいライフスタイルを試みる人々を支援する制度を充実させ、そういったライフスタイルを広く知らしめていくことも重要かと思われる。
  • 伊勢 昇, 日野 泰雄
    2008 年 43.3 巻 p. 493-498
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    わが国の郊外住宅団地は、同じような世代が同じ時期に入居するといった独特の特徴を持つ。そのため、居住者の年齢層に偏りが生じ、時間経過とともに、居住者のライフステージの変化によって、住宅団地全体のライフステージが一変することが予想される。一方で、開発時期に対応して、主たるライフステージが異なるため、各団地で居住者のニーズも異なり、単一の施策では対応が難しくなる。そこで本論文では、居住者の生活様式が、住宅団地開発時期ごとのライフステージによって変化することをアンケート調査データの分析から明らかにすることを目的とした。その結果、居住者のライフサイクルにあまり差はみられないものの、開発時期によって主たるライフステージが異なることが明らかになった。また、その結果に基づいて団地開発からの時間経過に伴うライフステージの変化をモデル化し、将来の予測を試みた。これにより、開発時期の異なる住宅団地における将来の居住者属性を把握することが可能になり、その居住者属性の変化に伴う移動ニーズへの対応などに有用であることを示した。
  • 藤居 良夫, 西島 主悦
    2008 年 43.3 巻 p. 499-504
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    全国の地方都市において、中心市街地の空洞化が問題になっている。その中、多くの地方都市では、中心市街地でのまちなか居住が推進されているが、マンション開発はその対策の1つとして位置づけられる。本研究は、中心市街地活性化で成功している都市として注目されている長野市の中心市街地を対象に、マンション立地による土地利用変化の調査と、マンション居住者および中心市街地内の商業者に対してマンション立地に関するアンケート調査を行った。その結果、マンション居住者の意識から、都市機能の集積や公園の整備などが求められていること、商業者の意識から、既存のマンション立地は商業活性化にあまり寄与していないことなどがわかった。
  • 青森県八戸市における中心市街地と郊外住宅団地を事例として
    石川 宏之, 田村 憲章
    2008 年 43.3 巻 p. 505-510
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、地方都市の中心市街地と郊外住宅団地における居住者をマッチングさせ、街なか居住を推進するための条件と課題について明らかにすることを目的とする。八戸市を事例として住環境と住み替えに対する意識について考察が行われた。中心市街地における高層共同住宅の居住者と3箇所の郊外住宅団地における戸建住宅の居住者に対しアンケートを行い、結果は以下の通りである。1)地方自治体が貸主の持家の賃貸料を保証することと、その住宅の借主に対し一部の家賃を補助すること、地方自治体よりその持家の終身借上げを検討すること。2)貸主が、短期契約の定期借家権により数年毎に持家の賃貸契約を解除できること。3)地方自治体は、迅速に借主の転居先の住宅を探せる民間非営利の住替え情報バンクを設立させること。
  • 三重県名張市の地域づくり委員会を事例として
    松浦 健治郎, 藪崎 奏菜, 浦山 益郎
    2008 年 43.3 巻 p. 511-516
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、地域予算制度によってコミュニティ組織に財源移譲を実施している名張市を対象として、名張市の地域予算制度の成果と課題を解明した上で、まちづくり事業体として実行力のある事業展開が可能な条件を明らかにすることを目的とする。地域予算制度はコミュニティ組織の組織化と彼らが地域課題の解決に取り組むきっかけになったが、次のような成果と課題が明らかになった。1)地区毎に事業内容の採択や予算配分に裁量がある。しかし、2)地区の資源や住民が感じている問題点を把握し、具体的な事業に展開していく必要があるが、コミュニティ組織によって対応力に差があること、3)ある程度の人口規模がないと空間整備事業や地域サービス事業に十分な予算が配分できないこと、4)コミュニティ組織間の連携を促す仕組みがないこと、5)事業の実施能力を高めるために、ボランティアグループとの連携を高めること、6)予算規模を確保するために収益事業の展開などが課題となる。
  • ティティン ファティマ, 神吉 紀世子
    2008 年 43.3 巻 p. 517-522
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は世界遺産ボロブドゥール寺院近郊のチャンディレジョ村で実施されているコミュニティ主導型グリーンツーリズムの実現プロセスについて明らかにすること目的とする。一般にはこの取り組みは2001年NPO等の支援を受け実現されたと言われているが、それ以前を含めて見ることでどのようにしてコミュニティ主導が進んできたかに注目する。このために村の主要メンバーへのインタビューと補助資料を用いてプロセスの把握を行う。さらにこうした取り組みの結果住民の意識が変化したか他村と比較するためアンケートを行った。結論は次の通りである:(1)実現プロセスは4段階に整理される、(2)コミュニティはプロセスの中で、活動の始導の役割を担ってきており、NPO等の支援もコミュニティの働きかけの結果である、(3)グリーンツーリズムは2003年に村内の組合を設立して正式に始まったが、コミュニティ主導の始まりは1980年に遡る、(4)ボロブドゥール地方にある他の村と比較すればチャンディレジョ村の住民は環境・景観保全への関心は高い傾向がある。
  • オヤンタイタンボを事例として
    イシザワ マヤ
    2008 年 43.3 巻 p. 523-528
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    アンデスの文化的景観の保全は、複雑な問題をはらんでいる。それは、15世紀から19世紀前半にかけてのスペイン侵攻の際の破壊、20世紀中頃の共和制時代の近代化と都市拡張の影での衰退、そして過去20年間の旅行客の増大という、これまでのアンデスの歴史に起因する。本論文では、ウルバンバ川流域のオヤンタイタンボを事例として、アンデスの文化的景観の価値を明らかにすることを目的とする。はじめに、オヤンタイタンボの文化的景観の遺産とその現況を述べる。次に、経済発展および無計画な都市の成長が文化的景観へと及した影響を明らかにする。さらに、その文化的景観が現在直面している課題を明らかにする。最後に、地区ごとに評価を行ない、保全と再生のため戦略を立案する。
  • ダリオ パオルッチ マッテオ
    2008 年 43.3 巻 p. 529-534
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    この論文は文化的景観保護の起源と、その時代ごとの文化的景観の価値の捉え方の違いについて研究したものである。時代を通じ、文化的景観の価値観は変化してきた。文化的景観保護の分析方法は、法律システムに基づいている。この論文では19世紀から現在に至るまでの文化景観保護のアプローチの変化を指摘している。19世紀の終わりから20世紀の中頃までの初期段階においては、中央政府による文化的景観保護を重視していた。20世紀後半からは、州政府による文化的景観保護を新規に設け、文化的景観保護は州政府の景観計画に関連づけられた。現在は美しい景観保護の拡大と社会へ認識させる運動の促進を、州政府と県が行ない、これによって中央政府による文化的景観保護の重要性は減少していきました。最後に、19世紀から文化的景観の価値は常に変化しつつ、景観価値を保護する主要機関も変化し、これによって文化的景観保護を実施するための地方の独自性も必要になったことを指摘している。
  • 敷地規模と所有形態に着目して
    中川 貴裕, 笠原 知子, 齋藤 潮
    2008 年 43.3 巻 p. 535-540
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    横浜旧居留地である中区山下町に位置する、横浜中華街は、その隣接地区と対照的な都市景観を形成している。建物用途と敷地規模は都市景観を特徴づける基礎的な要因であり、この2地区の差異を形成していると考えられる。そこで、本研究では、両地区の空間的差異の形成過程を明らかにする。1916年から1960年における山下町の土地台帳を用いて、土地所有や敷地分割・統合の変化を追跡した。その結果、2つの事柄が2地区の空間的差異を形成したことが明らかになった。第一に、関東大震災後の土地区画整備事業である。これによって土地の分割が進んだが、現在の中華街の外側である、山下町北部の海側で見られ、ほとんどが法人所有地や官有地となった。第二に、第二次大戦後の接収を中華街が免れたことである。これによって、中華街の辺りで土地の分割と個人所有化が進んだ一方、接収を受けた隣接地区は敷地が凍結された。これによって、空間的差異の原型が形成された。
  • 「横浜写真」・「横浜絵葉書」を用いた景観分析を通して
    飯田 晶子, 石川 幹子
    2008 年 43.3 巻 p. 541-546
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    横浜における居留地文化が花開いた幕末明治期の景観について、外国人遊歩道を中心に「横浜写真」・「横浜絵葉書」を用いて分析を行ない、以下の3つの結論を得た。第一に、外国人遊歩道沿いの空間では、10種の景観構造が見られた。それらは、地理的特徴により川と街並を臨む「川辺の景観」、岬と海を臨む「海辺の景観」、崖の上から見晴らし、下からは見上げる「崖線の景観」、谷戸を見通す「谷戸の景観」、丘の上の広がりを臨む「丘の景観」の5つに分けられた。第二に、それら全ての景観構造において、崖線という地形的要素が、景観の空間的構造や視覚的構造を大きく規定していることがわかった。そして、崖線の上下の空間や、崖線が川や海と接する空間において、社寺等の名所が存在し、また、居留地時代には、多くの公園や射撃場等の屋外施設がつくられた。第三に、外国人遊歩道では、景観が崖線や水辺を転換点として変化しており、単に余暇を過ごす場や社交の場などの文化的施設が連なるだけでなく、景観がダイナミックに展開する豊かなパークウェイであることがわかった。
  • 新井 理恵, 久保 妙子, 大西 國太郎
    2008 年 43.3 巻 p. 547-552
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本調査研究の目的は、北京旧城歴史文化保護区の現状を分析し、景観の保存再生の方法についての、現在の解決策における課題を明らかにすることである。2001年に、歴史文化保護区の保護計画が策定された。ようやく方向性が決められ、「小規模微循環方式」によって歴史的街区の整備が進められている。しかしその方法は、部分的な修復ではなくて、四合院の建替えが主である。そのため、材料やデザインも画一的で、それぞれの四合院の持っていた特性が失われるなど多くの問題を抱えている。
  • 劉 暢, 姥浦 道生, 赤崎 弘平
    2008 年 43.3 巻 p. 553-558
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    中国の都市は建築ラッシュにより市街地が拡大し、近郊の緑地である農林地が失われつつある。その一因として、中国における近郊緑地の保全計画及びその担保施策が、歴史的に不十分で、本研究では、東北部の大都市である瀋陽を事例として、満州時代以降に作成された中国の都市計画における、既成市街地及び将来市街化計画地以外で、開発圧力の存する都市近郊地域の位置づけの変遷を明らかにすることを目的とする。研究の結果として近郊地域に関する計画及び規制内容は、時代によって大きく変動し、満州時代には、近郊地域に環状緑地が計画され、開発規制がかけられたが、計画経済期は近郊地域については計画も規制も存在しなかった時期となり、その結果、90年代に入り都市計画区域外にも市街化が進行する結果となった。そこで改革解放後においては、都市と周辺農村との一体的計画の必要性が認識され、近郊地域も再び都市計画の対象区域内に包含されるようになり、その担うべき機能についての計画内容も充実化してきているが実現手法については未整備な状態が続いている点が、問題として挙げられ、それは今後の検証課題として残されている。
  • 徐 南姫, 斎藤 潮
    2008 年 43.3 巻 p. 559-564
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    謙斎チョンソンは朝鮮時代の画家で、ソウルの地景を真景山水画として残した。特定された描画地点を出発点とし、デフォルメという観点から絵画と地形透視図を比較精査し、謙斎絵画のデフォルメや画角の特徴を抽出するとともに、先行研究が特定した描画地点で修正すべきものがあればそれを導出することを目的とする。分析の成果は地形透視図に比較して、絵画は鉛直方向に2倍以上伸張して描かれていること、南山の2峰の間隔が実際以上に圧縮される傾向を示していることである。水平画角は平均45°であり、広角のもの2枚は、亭とその周囲との地景的関係を見取り図的に描くために画面を合成したとみられる。
  • 松本 邦彦, 柴田 祐, 澤木 昌典
    2008 年 43.3 巻 p. 565-570
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    大都市圏において計画的な農地保全を進める際には、既に土地利用が混在しているという特性から、農地だけでなく、農地に隣接して立地する住宅や商店などの建物立面との関係を考慮する必要がある。大都市圏の農地景観に関する研究は、メッシュを用いたマクロな研究や、ミクロなものでも評価手法研究として実験的に数地区を取り上げたものが多く、農地と隣接地との関係性が明確にされないまま農地景観の議論がなされている。そこで本研究では、農地と隣接土地利用との境界線(エッジライン)に着目し、エッジラインの長さやそれを構成する土地利用の特徴を把握することで、農地とともに景観構成要素となる隣接地の建物立面の状況を踏まえた農地景観の特性を把握することを目的とする。エッジライン分析により、農地景観を隣接する建物立面との関係から定量的に把握できた。周縁部では、主に住宅地と隣接する農地が全体の半数以上である。また隣接地の建物立面積を分析することで、市街化区域内で主に住宅と隣接する農地が、周囲を建物で壁の様に囲まれている状況や、市街化調整区域における流通、福祉施設等の開発が景観に与える影響を定量的に把握することが可能となった。
  • 「オープンスペース・シアトル2100」に着目して
    田中 貴宏
    2008 年 43.3 巻 p. 571-576
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年わが国では、人口減少、里山の荒廃、地域環境に対する住民意識の高まり等を背景として、都市における自然環境の保全・復元に向けた新たな取り組みの必要性が指摘されている。そこで「地域の人々と共に都市全域レベルの緑地計画ビジョンを描くための技法を確立すること」は今後のわが国の課題であると言える。そこで本研究では米国のシアトル市の「オープンスペース・シアトル2100」と呼ばれる緑地計画ビジョン策定のための住民参加型シャレットの事例を取り上げ、シャレット前からシャレット後までの一連の活動・作業を記述・整理し、それぞれの段階で活用された技法を抽出し示した。そして、それら技法のわが国での活用について考察を行った。特に計画支援情報の整備がわが国の課題であるといえる。
  • 片桐 由希子, 大澤 啓志, 山下 英也, 石川 幹子
    2008 年 43.3 巻 p. 577-582
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、臨海部の埋め立て地の植栽地について、生態的な視点からの現況を明らかにすることを目的とし、緑地環境調査に基づいた基礎データを作成し、公園緑地の緑地環境の分析を行った。対象地は川崎臨海工業地域であり、45の公園緑地を対象とした。自然秩序的な植生成立は望めない埋立地においては、人為的な植栽種選択や管理がより強く作用した形で存在する緑地に対し、層土壌から草本層、低木層、中木層、高木層に分解し、その構成を基礎データとして整備することで、人工基盤の上に成立する緑地環境を立体的に表わした。対象地域内の公園緑地の制度と整備年代を、公園台帳をもとに整理し、作成した植栽地緑地環境の基礎データを用いて、公園種別ごとの植栽地の特性について分析を行った。今回の手法は、緑地の構成と管理状況について明らかにし、その緑地環境の生物生息基盤としての展開を表層土壌から説明するものであり、特に階層構造が自然植生との大きな違いとなっている高木植栽や中木植栽において適した手法であるといえる。この手法により、当該地の公園緑地における階層性の欠如を明らかにした。
  • 大通公園、中島公園、美香保公園の再整備を事例として
    小林 里菜子, 坂井 文
    2008 年 43.3 巻 p. 583-588
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    現在、社会資本ストックの活用として、既存公園の再整備が都市計画における一つの重要な課題となっている。本研究では、札幌市における都市公園の再整備事業の経緯とその内容について、大通公園、中島公園、美香保公園に着目しながら明らかにし、都市公園再整備の変遷について考察することを目的とする。都市公園の再整備の流れとして、都市のアメニティの重要性が問われるようになった昭和50年代以降、国の積極的な補助事業等を受け進められた大規模都市公園の再整備と、厳しい財政状況の中各自治体によって行われる、近年増加する老朽化した中小規模都市公園の再整備の2つの流れがあり、それぞれの手法に違いが見られることが明らかとなった。今後は、増加が予想される中小規模都市公園の効果的な再整備の手法、さらに近年試みられ始めた大規模公園再整備における市民参加の手法が検討されるべきであると考える。
  • 日本の産業史と地域史の観点から
    青木 達也, 永井 護
    2008 年 43.3 巻 p. 589-594
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、産業遺産の保存に関する調査が土木学会、建築学会や文化庁等により進められ、対象となる構造物に関する意匠や構造に関する特徴が整理されつつある。産業遺産は構造物の意匠や技術的価値のみならず、産業史や地域史のなかでの位置づけや役割に関する評価がより重要であることが論文等で指摘されている。足尾銅山を有する日光市は、産業遺産を活用したまちづくりを進めている。日本の産業史と足尾の銅山史の中で、産業遺産を位置づけ個々の産業遺産の価値を明確にすることがまちづくりに貢献する。本研究は産業史と地域史の観点から宇都野火薬庫の特徴を明らかにする。すなわち、火薬を中心とした我が国の産業史、それに対応した国の火薬に関する取り締まり法規の変遷、足尾銅山の産銅技術と鉱山都市の発展過程のなかで、宇都野火薬庫の位置づけと役割を整理し、現地調査により、その残存状況を確認する。結論として、その特徴と活用に際しての留意事項をまとめる。
  • 野瀬 元子, 古屋 秀樹
    2008 年 43.3 巻 p. 595-600
    発行日: 2008/10/25
    公開日: 2017/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    2010年までに訪日外国人来訪者を1,000万人に増加させる訪日観光促進策(Visit Japan Campaign)の目標達成が見込まれ、より多くの観光地が今後、外国人観光者を迎えることが予想されている。そのため観光者が一層多様化すると考えられ、それらに対応した観光地整備が重要となる。その過程では、観光者の属性や来訪時の満足、不満といった評価特性の把握が必要不可欠となる。本研究では、我が国における代表的な国際観光地である日光と箱根を対象として、外国人観光者と日本人観光者双方の観光者属性の実態とともに、評価特性をアンケート調査によって明らかにすることを目的とする。特に、観光地に対する評価が、1.観光者の評価パターン(複数の評価項目の得点の大小を示すパターン)、2.観光地特定要因、ならびに3.両者の交互作用から形成されると仮定し、観光地評価のデータを用いて観光者のセグメンテーションを行い、各セグメントの特性を明らかにする。
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