都市計画論文集
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50 巻, 3 号
都市計画論文集
選択された号の論文の152件中1~50を表示しています
  • 張 心笛, 石井 儀光, 雨宮 護, 大澤 義明
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 273-278
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    高度成長期以後進んだ都市の街路緑化が,縮小時代ではその剪定とメンテナンスが自治体財政の負担となっている.街路樹の管理費削減のため,強剪定などで対処している自治体は,景観上の問題がみられる.街路樹の維持管理が喫緊の課題となっている.本研究では,緑のインフラの減少時代に向けて,街路樹の削減と緑視率の関係を単純化モデルで分析する.まず,運転者の目線から樹木密度(道路延長あたりの樹木数)と緑視率との関係を考察する.次に,沿道住民の視線をランダムな直線に置き換えて議論する.結論として次の知見が得られた.第一に,樹木密度を半減させても緑視率は半減しない.第二に,高速運転となる道路では,樹間距離を長くしても緑視率は大きく減少しない.第三に,街路樹の伐採方式により,沿道住民視点での緑視率の減少傾向が異なる.
  • 貞広 幸雄
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 279-285
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    回帰分析では,独立変数間の多重共線性によって推定モデルの信頼性が低下し,独立変数の役割の解釈が困難になるなどの問題がしばしば生ずる.特にこれは,都市施設からの距離が独立変数に含まれている場合に発生する.そこで本論文では,距離変数を独立変数に含む回帰分析において,多重共線性を抑制する標本点配置を空間的最適化を用いて数理的に導出する手法を提案する.この手法により,標本点の適切な配置が得られるだけではなく,多重共線性の回避という観点から見て,距離変数の定義に適した都市施設配置を系統的に論ずることも可能となる.手法の有効性を検証し,実際的に有用な情報を得るために,理論構築に併せて数値実験を実施する.
  • 寺木 彰浩
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 285-290
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は地理空間情報の位置誤差が面積に与える影響を取り上げる.従来,地理空間情報上で多角形の面積の期待値は不偏推定量であるとされてきた.しかし,既存の関連研究での論証が不十分であることがあきらかとなったため,基礎理論的な検討を行うものである.2章において関連研究のレビューなどを中心に,位置誤差が面積の期待値に与える影響について,基本的な認識と地理空間情報の実態について確認し,関連する学問分野や実務での取り扱いなどについて概観する.3章で本稿で用いる確率モデルについて積分幾何学により定式化を行い,地理空間情報上で平面図形が観測される場合の確率と面積の期待値について一般式を提示する.4章では,わが国の地理空間情報の実態に即して,基準となる公共測量作業規程と基盤地図情報を想定して数値計算を行う.算出された結果から,誤差が面積に与える影響は実務上問題がないことが示唆された.最後に5章で結果をとりまとめ,今後の課題などについて述べる.
  • 国内10都市の実データに基づく分析例
    宗政 由桐, 本間 裕大, 今井 公太郎
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 291-296
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,建物ノードに容量制約が付された都市モデルにおいて,通勤移動コスト,業務移動コスト,不快度コストを考慮した職住分布の均衡配置および最適配置を理論的に求める数理モデルを構築し,実空間に展開して各都市の職住形態について分析することである.具体的には通勤移動コスト,不快度コストおよび不快度コストの均衡配分問題が数理計画問題と等価であることを明らかにし,また均衡配分問題および都市モデルおけるコストの総和を最小化するシステム最適配分問題が非凸2次計画問題となることを明らかにした上で,線形緩和法を用いて線型計画問題に帰着することを示す.実証分析例として日本の10都市に着目し,実空間データから各都市における就業地と居住地の容量制約を算出し,都市内領域を再統合した上で領域間・領域内それぞれの距離を導出する手法を記述する.その上で各都市におけるパラメータの比較や配分モデルの違いによる都市の変化について記述する.
  • 鵜飼 孝盛
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 297-302
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,地域内に施設を1つ配置する際の立地場所について議論する.多くの場合,施設の立地場所は,利用者と施設との距離の総和が短くなるような場所のように,利用者にとって便利なよう計画される.そのような基準は,特定の意思決定者が存在する場合における意思決定を支援している.一方で,ある地域に住む不特定の人々の投票により,立地場所の決定がなされるということもある.本稿では,後者のケースについて考える.地域の住民は,各々から最寄りとなる候補に投票をし,その結果,過半数を獲得した場合,その候補が勝利したとものと見なす.このとき,その候補が他の地点に対してどれだけ勝利するかで,その候補の潜在的な評価値として分析を行う.
  • 楊 輝彦, 石川 徹
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 303-308
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、住戸配置の規則性が、パーソナルスペースの認識と親しみの心理的評価に与える影響を実証的に調べた。移動と回転の程度を変えて作り出した9つの住戸配置パターンを60人の回答者に見てもらい、各住戸配置のわかりやすさ、パーソナルスペース領域、親しみについて答えてもらった。回転が加わった住戸配置では、回転が加わっていない配置にくらべて、わかりやすさ、パーソナルスペース面積、親しみが低下することが示された。平面移動については、小さい程度の移動が加わった配置では、わかりやすさとパーソナルスペース面積が小さくなる一方、親しみはさほど低下しないことがわかった。さらに、上記指標の共分散構造分析から、平面移動のみが加わった配置においては、パーソナルスペースと認識する面積が増えると、親しみが高まる傾向が明らかになった。また、回転を加えた住戸配置では、わかりやすさの面では評価が低くなるものの、位置的により多様なパーソナルスペース認識を促すことで、公に属する領域という意識を通して親しみを高めうることが示された。これらの結果に基づき、地域への親しみとコミュニティ意識を高めるまちづくりへの示唆を議論した。
  • 湖城 琢郎, 吉川 徹, 讃岐 亮
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 309-316
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、交通網の形状や交通機関の変化に伴う都市内の利便性分布の変化を分析することにより、小規模な都市の拡大に対応する交通網体系再編成について考察することである。本研究では、3つのケースを想定して分析を行った。1つ目には基幹バスを導入する場合、2つ目にはLRTや鉄道を導入する場合、3つ目にはそれらを導入した後にバスを再編する場合、である。利便性は、居住点から都心までの所要時間の合計期待値の最小値で表した。分析の結果、以下の2点の知見を得た。一つは、利便性は運行速度より運行頻度の方が決定要因として大きいこと、もう一つは、LRTや鉄道を導入した後にバスを再編するケース3が、利便性向上により効果的であることである。
  • 石川 雄己, 松本 幸正, 鈴木 温
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 317-323
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,平成13年に実施された第4回中京都市圏パーソントリップ調査と平成23年に実施された第5回中京都市圏パーソントリップ調査の結果を用いて,中京都市圏の小ゾーンを交通特性に基づいて「自動車依存型」,「鉄道利便型」,「歩いて暮らせる型」の3つのクラスターに分類した.これらのクラスターに共通する人口分布や都市施設配置の特徴を明らかにした.自動車依存型クラスターは多くの人が鉄道駅から遠くに住んでいることがわかり,鉄道利便型クラスターと歩いて暮らせるクラスターは鉄道駅の近くの人口割合が高く,鉄道駅へのアクセスがしやすいクラスターであることがわかった.また,鉄道利便型クラスターと歩いて暮らせるクラスターは鉄道駅に対して似たような人口分布をしていることもわかった.続いて,ゾーンが属するクラスターの変遷はどのような都市形態の変化によって起きるかを分析した.その結果,自動車依存型クラスターから歩いて暮らせるクラスターに変化したゾーンは鉄道駅から離れた場所に人や施設が集中するような傾向が見られた.
  • 谷本 圭志, 倉持 裕彌, 土屋 哲
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 324-330
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    人々への食料供給を支援するサービスとして,移動販売サービスがある.このサービスは人口減少や高齢化といった社会的な背景のもと,その役割が再認識されている.移動販売サービスは集落の中心地などへ店舗から商品を運ぶのが特徴であり,消費者は遠方へ移動せずに商品を調達することが可能となる.したがって,移動販売サービスは自身での移動が困難と感じる人々にとって有効なサービスであり,すなわち,高齢者にとっての一つの有力な買い物支援策として期待されている.一方で,移動販売サービスの経営実態は脆弱であり,その持続可能性を高めるための策を講じていく必要がある.そのためには,まずはどの顧客層にサービスが支持を得ているのか,また,どのような観点で支持されているのかを明らかにする必要がある.そこで本研究では,中山間地域におけるデータを用い,移動販売サービスの顧客層ならびに価値認識を離散選択モデルにより実証的に分析する.前者の検討に際しては,移動販売サービスと似て非なるサービスである宅配サービスとの違い,ならびに,移動販売がその他のどの買い物手段と併用しているのかによって顧客層が異なることに焦点を当てて検討する.
  • 熊本都心部回遊調査を例に
    石野 祐希, 円山 琢也, 溝上 章志
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 331-336
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    紙面やインタビュー型の交通調査への代替手段として,GPSやスマートフォン (スマホ)を利用した交通行動調査の研究や実務への応用が試みられている.これらの新たな交通調査は,都市圏レベルの人の動きだけでなく,回遊調査への応用も期待されている.しかし,新たな調査法の参加者の母集団代表性には注意が必要である.例えば,スマホ型調査の対象者はスマホ所有者に当然限定され,サンプルのランダム性は確保されるとは限らない.本研究は,この問題意識を背景として,調査参加者の属性に着目してインタビュー調査とスマホ型調査の比較を行うことを目的としている.熊本都心部回遊調査を,この2つの調査形式で実施しており,それらのサンプルの属性分布などを比較する.最後に,これら2つの調査統合データで滞在時間モデルを推定した例も提示する.
  • 古屋 秀樹
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 337-344
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    宿泊観光旅行における旅行時期,目的,同行者,利用交通手段の関連性を考慮しながら,その表出のもととなる旅行クラスの導出,ならびにその特徴把握を目的として,潜在クラスモデルを適用して分析を行った.その結果,宿泊観光旅行を8クラスに区分するとともに,各クラスのカテゴリー構成比率ならびに特徴を把握することできた.その中で,上位3つのクラスは,C1:自然・名所,夫婦,自家用車型(その他休日に自然・名所等の見学を目的として自家用車を利用:25%),C2:平日,慰安,夫婦,自家用車型(平日に友人・知人と慰安旅行を目的として自家用車を利用:19%),C3:1人旅,JR鉄道型(多様な交通機関を選択する傾向:18%)を抽出でき,旅行目的と利用交通手段,同行者と旅行時期との関連性を踏まえたクラスが導出できた.
  • 佐藤 貴大, 円山 琢也
    原稿種別: 論説・報告
    2015 年 50 巻 3 号 p. 345-351
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    2013年11月から12月に熊本都心部においてスマホ・アプリ型回遊調査を実施し,1083人の参加者を得た.データに含まれる膨大なGPSの軌跡情報を効率的に処理する方法が求められる.本研究は,カーネル密度図を利用して,簡易に回遊行動圏を推定する方法を提案する.GPS軌跡の95%のカーネル密度図を行動圏域と定義しているが,それは測位誤差に頑健となることも確認した.最後に,提案した行動圏の面積と回遊時間を比較し,評価指標としての違いや,政策含意を議論した.
  • 西山 直輝, 室町 泰徳
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 352-357
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,首都圏鉄道を対象に,震災発生後における帰宅ODを,臨時ダイヤを基にした時空間ネットワークに配分することによって,駅構内の混雑により列車に乗車することができない駅滞留者数を推計した.また, 震災発生後における円滑な首都圏鉄道の運転再開に向けて,駅滞留者の過剰発生を抑制する方策,すなわち勤め先等で待機しつつ,駅滞留者が過剰に発生しない程度に少しずつ帰宅行動を開始する方策について検討を行った.その結果,首都圏鉄道が全線運転再開した場合において,鉄道利用者が一斉帰宅する場合に比べ,遂次帰宅する場合の方が駅滞留者数のピークが緩和されることが示された.また,遂次帰宅を行う場合において,一斉帰宅を行う場合と比較して,7割程度の鉄道利用者が乗車時刻を30分程度後ろの時間帯にシフトさせることにより,駅滞留者の過剰発生を抑制し,震災発生後における首都圏鉄道の円滑な運転再開にする寄与する可能性があることが示された.本研究で示した遂次帰宅ケースを何らかの形で実現できれば,駅滞留者を過剰発生させることなく,円滑に運転再開を行うことが可能となると考えられる.
  • 松中 亮治, 中川 大, 大庭 哲治, 鈴木 克法
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 358-364
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    日本の地方鉄道では,列車の運行間隔が不均一である,列車到着の数分前に列車が発車してしまうために乗換に長時間を要する,といったようにダイヤが不便なまま今日に至っている路線が多い.ダイヤの改善は少ない投資で利便性を向上させることができる手段であり,特に地方鉄道においては所要時間の大部分を占める待ち時間を短縮することが効果的であると考えられる.そこで本研究では,地方鉄道の一例として北近畿タンゴ鉄道を対象に,所要時間を構成する待ち時間を「先着便待ち時間」,「総乗換時間」,「停車中の車内待ち時間」の3つに分類しダイヤを詳細に分析した.分析で得られた知見を基に「先着便待ち時間」「総乗換時間」「利用者が多い区間の待ち時間」という3つの待ち時間の短縮に資するダイヤ変更案を作成し,総期待一般化費用を用いて評価した.その結果,KTRにおいては特に先着便待ち時間を短縮するようにダイヤを変更することで,オペレーションコストを6.9千円/日(0.36%)減少させたうえで総期待一般化費用を326.5千円/日(2.24%)減少させ,合計で333.4千円/日(2.24%)費用を減少させることが可能であることを示した.
  • 日本人の通勤と居住の地域・決定要因に着目して
    伊藤 弘基, 佐藤 遼, 柏崎 梢
    原稿種別: 論説・報告
    2015 年 50 巻 3 号 p. 365-370
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は日本人の居住の実態とその決定要因、及び通勤手段を通じて、台北都市圏のMRTの利用実態や課題を明らかにすることを目的とする。台北都市圏では、1500万台のスクーターなどにより道路混雑や交通事故が激化し、また環境の点からもMRTの発達が求められている。中でも通勤交通は都市交通において重要な部分を占めている。また台北都市圏に住む日本人は増加の傾向にある。そのため、日本人の通勤行動や住居の地域・決定要因から、台北MRTの利用実態を分析することで、一層の充実が求められる台北MRTの課題を明らかにすることができると考えられる。本研究では日本人を対象としたアンケートを行い、MRTに関する結論や日本への示唆を得た。
  • 欧州各都市における現地調査に基づいて
    波床 正敏, 伊藤 雅, ペリー 史子, 吉川 耕司
    原稿種別: 論説・報告
    2015 年 50 巻 3 号 p. 371-378
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    LRTを特徴づける要素の一つとしてトランジットモールがあり,海外には多数の実例が存在する.しかし,日本ではトランジットモールの構造およびモール内における歩行者の通行状況などに対する実態の理解が十分ではなく,実際には歩行者が軌道上を歩行するケースが比較的希であるにもかかわらず,「トランジットモール=混合交通」というイメージが定着してしまっている.このことは,日本においてトランジットモールが実現しにくくなっている原因の一つではないかと思われる.本研究では,海外のトランジットモールの街路構造を調査するとともに,モール内における歩行者の通行状況について分析し,軌道幅員や交通頻度と歩行者の横断角との関係を明らかにした.また,分析に基づいて,わが国でトランジットモールを実現するには,どのような課題が存在するかについても考察した.
  • 野田村復興まちづくりシャレットワークショップ4年間のふりかえり
    河村 信治, 市古 太郎, 野澤 康, 玉川 英則
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 379-386
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    広域にわたる東日本大震災の津波被災地では、復旧・復興の進行も、支援の形も多様であり、さまざまな専門性を持った外部からのグループが、復興支援のための活動に取り組んでいる。筆者らは、そのような活動の一つとして、岩手県沿岸北部に位置する野田村において、2011年から4年間にわたり「野田村復興まちづくりシャレットワークショップ」(以下、野田村CWS)を開催してきた。本研究では、この一連の活動のねらい、活動内容、課題をふりかえり、今後野田村の復興のためにこの活動経験を次に繋げていく展望について考察する。
  • 2009年ラクイラ地震における緊急時対応及び応急建設に着目して
    野村 直人, 佐藤 滋
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 387-393
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    巨大災害が引き起こす長期避難生活において、適切な住環境、生活環境の構築は、本格的な復興へと円滑に移行していく上で重要な課題である。2009年に中部イタリアで起きたラクイラ地震においては、復興に膨大な時間がかかることが予想されたことから、「応急建設」という法的枠組みのもと、長期避難生活に耐えうる質の高い住環境を短期間で供給することに成功している。本研究では、第1に適切な緊急時対応及び応急建設を実現させた組織体制を明らかにすること、第2に長期復興プロセスに対する応急建設の有効性を明らかにすることで、災害の規模や被災地の特性に応じた住宅供給のあり方として日本への示唆を得ることを目的とする。本研究により具体的に以下の2点が明らかになった。 1.応急建設物の迅速な建設プロセスや住宅としての質の高さにおいて長期的な復興プロセスに対する有効性が見られた。 2.全国災害防護庁は技術的な蓄積をもとに、被災の規模や被災地の特性に応じて緊急時における住宅供給の戦略を決定し、多様な規制緩和や行政手続きの免除等によって迅速な事業の実施を可能としている。
  • ―東日本大震災液状化被災12自治体を対象として―
    田野井 雄吾, 有田 智一, 糸井川 栄一, 梅本 通孝, 太田 尚孝
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 394-401
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    2011年11月に創設された、道路等の公有地と既存住宅地等の民有地の一体的・面的な液状対策事業(東日本大震災復興交付金事業「市街地液状化対策事業」)の実態と実施上の課題を明らかにする。対象は事業検討12自治体で2014年6月から2014年12月にかけてヒアリング調査および行政資料調査を実施した。本研究の結果明らかになった点は以下の通りである。液状化リスクが高く、今般の震災以前に開発された既成住宅地について、市街地液状化対策事業により、宅地や家屋等の個人財産の保護・救済と、面的な液状化対策による市街地としての価値向上に資することが明らかになった。しかし、家屋存置での地盤改良工法の技術的課題や、不透明な過去の開発履歴によって施工困難となる場合や、宅地密度が低く民間負担額が割高なる場合、転出世帯、個別対策世帯等の事業に同意できない世帯が存在する場合等の課題から、事業区域内の権利者の事業実施に対する合意形成が図れないことがあり、液状化リスクのある既存住宅地すべてに対して保護・救済としての意義を満たすものとは言えないことが明らかになった。
  • 携帯電話位置情報集計データの活用
    奥村 誠
    原稿種別: 論説・報告
    2015 年 50 巻 3 号 p. 402-408
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    都市が巨大災害に見舞われると,人々が生活をするために必要な活動や機能が長期にわたって失われる.災害の影響の大きさは,発災直後の被害だけでなく,失われた活動や機能が回復していくスピードに強く影響される.しかしながら,都市においてどのような活動や機能が低下して,それらがどのようなスピードで回復していくかについては,十分な研究が行われているわけではない.本研究では,東日本大震災前後の1時間ごとの携帯電話位置情報データから都市活動や機能等の空間パターンを把握できることに着目して復興過程の空間パターンの分類とそのスピードの違いを把握することを目指す.具体的には,震災前後の人口分布の変化量に対して因子分析を適用し,その時間的,空間的パターンを分析するとともに,被災前の都市活動空間分布との相関分析を行い,どのような活動の水準が低下し,回復が遅いのかを考察した.
  • 内田 倫彦, 湯沢 昭, 塚田 伸也
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 409-415
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、都市基幹公園の防災機能に関する便益評価手法について表明選好法の比較検討を行うものである。すなわち国土交通省が提唱している大規模公園の防災機能評価法としては効用関数法がある。本研究では、効用関数法の適用結果と仮想評価法、価格感度測定法およびコンジョイント分析法による便益評価結果を比較検討することにより、表選好法の適用可能性と課題について検討を行う。
  • -現地再建した岩手県沿岸小中学校を対象として-
    菊池 義浩, 南 正昭
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 416-422
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    東日本大震災で津波被災した学校のうち、被災規模が小さかったところでは浸水した土地で再開している学校が少なくない。今後、災害が発生した場合に児童・生徒や教職員の安全を守れるよう、避難空間の再検討が課題になると考えられる。本研究は、緊急避難先の変更に着目してその状況と傾向を明らかにし、詳細な事例分析から場所・施設を設定した要因を探ると共に、避難空間の計画手法について考察した。岩手県沿岸部の小中学校を対象として、現地でのインタビュー調査および現地踏査を実施し、次のような結果を得ることができた。1)学校の位置、生徒数、被害程度から再建場所の選択傾向を確認した。また、現地再建した学校の多くで、発災後に緊急避難先を変更している状況を明らかにした。2)緊急避難先の変更過程について、各校が抱える課題に応じた多様なケースがみられた。分析的な考察からその変更要因を探り、多重型の避難計画がつくられるプロセスを捉えた。加えて、多主体連携による防災対策の具体例をみることができた。3)避難空間の計画要素を検討し、学校の安全性と教育環境の維持を踏まえた、円滑な避難を促せるような空間構造の仕組みについて考察した。
  • 和歌山県みなべ町を事例とした実践に基づく検討
    照本 清峰
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 423-430
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    津波からの避難の方法として、地域の置かれている環境によっては、自動車での避難を選択肢に加えておいたほうが効率的な場合もある。一方で多くの住民が自動車避難を選択した場合には、渋滞が起こる可能性もある。浸水の危険性のない区域まで全員が混乱なく迅速に移動できるようにするためには、地域の特性を踏まえて、津波到達予想時間までの間に取るべき行動を地域全体で戦略的に考えておくことが求められる。本研究では、上記を踏まえ、津波避難訓練、ワークショップ、質問紙調査の結果をもとに、地域の津波避難対策のあり方について検討する。2011年度から2013年度にかけて実施された津波避難訓練より、避難場所までの距離が長い地域では津波到達予想時間までに避難できない可能性が高いこと等が示された。これらの結果をもとにして、地域の津波避難ルール(案)を示した。
  • 井内 加奈子, 松丸 亮, マリ リズ
    原稿種別: 論説・報告
    2015 年 50 巻 3 号 p. 431-437
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    土地利用規制と移転による住宅再建の組み合わせは,災害被害軽減策の一つとして途上国開発の文脈においても着目されるようになってきているが,このような土地利用規制による災害リスクのコントロール,特に災害後の移転に着目した研究はあまり行われておらず,様々なリスクを低減させる適切な計画論は構築されていない.その第一歩として,本稿は,ジョクジャカルタ近郊で発生したメラピ火山災害後のコミュニティ主導型の移転再定住を災害リスクの軽減という目的で支援するプログラムである「REKOMPAKプログラム」について分析を行い,このプログラムの利点や課題について報告するものである. 分析の結果,REKOMPAKは,様々な再定住に柔軟に適用され,プログラムの適用を受けた住民は移転を納得していることが明らかになった.さらに,効率的で効果的なREKOMPAKの運営には,コミュニティの参加とプログラムを積極的に進めていく自発的な意志,プログラムと現地事情に詳しいファシリテーター,プログラムの運営のための財源,が必要であることに加え,プログラムの適用対象コミュニティの特性や災害が発生したタイミングも影響することが明らかになった.
  • -岩手県田野畑村の震災復興過程におけるナラティブ・アプローチ-
    沼田 真一
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 438-444
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、ナラティブ・アプローチを通してインタビュー映像を利用したワークショップを論じる。対象地は2011年東日本大震災で被災した岩手県田野畑村であり、ワークショップの参加者は田野畑村の村外で暮らす支援者である。このワークショップは参加者に田野畑村に関するインタビュー映像を見せ、村の魅力や課題、幸福像、未来像を意見交換するものである。ナラティブは「語りの内容」と「語る行為」の2つの意味を含意している。まず、ワークショップで使用された各インタビュー映像での「語りの内容」と「語る行為」の特徴を明らかにする。次に、ワークショップでの各テーマで意見交換された「語りの内容」を分析する。最後にワークショップの参加者アンケートを「語る行為」の結果として分析する。結論として、本ワークショップは、対象となる抽象的なテーマを整理し、参加者に対して新たな気づきと発見、および新しい話題や視点をもたらす手法として有効であることがわかった。
  • 四国中央市妻鳥町「棹の森」を対象とした取り組み事例
    羽鳥 剛史, 片岡 由香, 牧野 太亮
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 445-450
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,地域住民のシビックプライドを育成するためのコミュニケーション施策として,住民参加型・回覧型「思い出マップ」を提案し,本マップづくりの実施による効果を実証的に検討することを目的とした.この目的の下,愛媛県四国中央市妻鳥町の住民を対象として,同地区を代表する地域資源である「棹の森」を題材とした「思い出マップ」づくりを実施した.その上で,本マップづくりへの参画が,地域住民におけるシビックプライドの醸成や新旧居住者間の意識の共有化に及ぼす効果を検証することとした.その結果,本取り組みを通じて,地域住民における棹の森やまちに対する誇りや愛着意識が向上すると共に,新旧居住者間の棹の森やまちに対する意識の相違が低減する傾向が確認され,本提案手法が地域住民のシビックプライドを醸成する上で効果を持ち得ることが認められた.
  • 石川県・金沢市での再投資と「目的地化」の地区分析から
    内田 奈芳美
    2015 年 50 巻 3 号 p. 451-457
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では、ジェントリフィケーションのこれまでの論説に基づき、方法としての再投資と、結果としての地区への目的地文化の付加(「目的地化」)の両側面から地域変化を読み取ることで、日本型のジェントリフィケーションの実態を明らかにすることを目的とする。対象は石川県金沢市であり、ケーススタディ地区として二地区を選定した。研究方法として、まず仮説としての定義を示した後、評価軸として「再投資」と「目的地化」を挙げ、評価軸に従ってケーススタディ地区の分析を行い、仮説としての定義を検証した。ケーススタディ地区の分析から、日本型の地方都市におけるジェントリフィケーションとして、「既存の建物に再投資が起こり、地価のレベルと連動した動きを持つ再投資の規模の大小が『目的地化』の質を規定すること」であると最終的に定義した。
  • -和歌山市の中心市街地を事例として-
    長曽我部 まどか, 小川 宏樹
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 458-463
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    まちなか居住促進のためには、まちなかの既存ストックを有効に活用する必要がある。本研究では、和歌山市中心市街地における賃貸集合住宅について調査を行い、DIY型賃貸借の課題の整理と対策案の検討を行った。まず、和歌山市の中心市街地における賃貸集合住宅の実態調査を行い、まちなかエリア・まちなか周辺エリアでは、建物の築年数に偏りがないことを把握した。次に、賃貸集合住宅の所有者(貸主)に対してアンケート調査を行い、所有者のDIY型賃貸借への意向を明らかにした。1) 自ら建物の管理を行っている所有者はDIY型賃貸借に対し積極的であるが、DIY型賃貸借について十分な情報を有していない、2) 建物の管理を委託している所有者は、DIYによる仕様変更が管理の妨げになることから、DIY型賃貸借に対し消極的であることが明らかになった。地方都市のまちなか居住エリアにおいてDIY型賃貸借を普及させるためには、所有者の特性に応じた情報提供や所有者の管理の負担にならないDIY手法の普及啓発が必要である。
  • -アンケート調査による制度創設時と今日との比較分析-
    城 絵里奈, 依田 真治, 内海 麻利
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 464-471
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    持続可能な都市づくりを進めるために、きめ細かな都市計画を実現することが重要となってきている。そのひとつの方策として1980年に都市計画法に導入された地区計画制度の運用が期待されている。しかし、社会経済情勢の変化に伴い、都市型社会の都市の縮減を迎える今日の地区計画制度の運用や期待は制度創設時と比較し変化していると考えられる。そこで本研究は、地区計画制度創設当初の制度への趣旨と期待を考察した上で、創設時に実施されたアンケート調査(1982年、1983年)に着目し、今日、同等のアンケート調査(2015年)を実施した。そして、両アンケート結果を比較分析することで地区計画制度の評価と運用実態及び制度課題を明らかにしている。
  • 合理的土地利用に向けた諸利益の焦点化に着目して
    金井 利之, 内海 麻利
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 472-479
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    日本のような都市化した社会では、詳細レベルの慎重な利害調整が都市計画に必須であると考えられる。別言すれば、都市計画には、「多様な利益を、総合的に集約・調整して、即地的で拘束性があり、詳細かつ具体的な計画を、基礎的自治体が決定する作用」である「焦点化」が必要である。本研究は、オランダの2006年空間計画法のもとでの地区詳細計画の制度的工夫を考察する。オランダは計画優先の枠組を持つ。そして、地区詳細計画が原則として全土を覆う。オランダでは、詳細で具体的な即地的で拘束性がある地区詳細計画を、領域的または機能的に多様な諸利益を集めて調整することを通じて、市町村が決定できる権能が与えられている。さらに、計画決定後にも柔軟な微調整の可能性もある。これらの制度的工夫は、日本における法制度の設計に際しても、示唆を与えるものであると考えられる。
  • 容積送出敷地の歴史的環境に与える影響に着目して
    柏原 沙織, 楊 惠亘, 鈴木 伸治, 窪田 亜矢
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 480-487
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は台北市大稲埕地区における歴史保全ツールとしての容積移転(TDR)について、2007年~2014年の運用プロセスとその変遷に着目して送出敷地への影響面から成果を評価し、今後の課題を明らかにすることを目的とする。研究方法としてTDRの制度及び運用プロセスについて関係者へのヒアリング調査の他、台北市及び国のTDR制度の発展について文献調査を行った。分析の枠組みとして歴史保全のハード的側面(質・量)、ソフト的側面(コンテンツ、社会経済組織)を設定し、それぞれの観点から影響要因を検討した。その結果、台北市大稲埕歴史風貌特定専用区のTDRにおける重要な要因として、歴史調査の義務付け、建物改修の5段階チェック、都市設計審議会の弾力的運営、柔軟な制度対応、容積ボーナスの5点が抽出された。特に容積ボーナスは強力なインセンティブとしてハード的側面の歴史保全に大きな成果を上げる一方、ソフト的側面の保全には課題が発生している。インセンティブ設計を容積ボーナスに頼っていたことが歴史保全において歪みを生じていると考えられ、容積ボーナスの再設計、容積以外のインセンティブの考案、規制の検討が必要である。
  • 総合設計委員会の議論・答申および許可準則・技術基準に着目して
    中西 正彦, 大澤 昭彦, 杉田 早苗, 桑田 仁, 加藤 仁美
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 488-493
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    わが国の建築物に対するインセンティブ制度の代表である総合設計制度は、市街地形成に一定の成果をもたらしたが、一方で適用事例が紛争の原因となるなど問題も多く指摘されている。しかしインセンティブ制度は成熟・停滞社会を迎えて、いっそう活用が図られなくてはならない。 本研究は導入から40年以上が経つ総合設計制度について、その創設時の議論に着目したものである。具体的には主要な議論を行った総合設計委員会の記録および答申を分析し、実際に導入された許可準則および技術基準との相違を明らかにし、現在の総合設計制度が確立した過程を追う。その上で今日の視点から同制度創設を評価し、今後の市街地コントロール手法、特にインセンティブ制度のあり方について示唆を得るものである。
  • - 横浜市みなとみらい21地区および関内地区を対象とした実測調査 -
    佐々木 優, 横山 真, 松尾 薫, 田中 貴宏, 佐土原 聡
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 494-500
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、横浜市沿岸部に位置する2つの中高層市街地を対象に、気温の同時多点長期実測調査を行い、気温分布の形成要因について、市街地形態に着目して分析を行った。その結果、得られた主な知見を以下に記す。(1)対象地の海風の1日の吹き方には、パターンA「終日南西方向からの海風が吹く日」、パターンB「海陸風循環が見られる日」、パターンC「南西方向からの海風が吹かない日」の3パターンが存在する。(2)東風については、水平方向の移流による影響が大きい。そのため、東風時は街路方向により気温分布が異なり、直交街路の気温が低い。(3)南西風については、鉛直方向の移流による影響が大きい。そのため、南西風時は市街地密度や建物高さばらつきにより気温分布が異なり、MM21の方が低温となる。
  • ― 内外水複合氾濫モデルを用いたシミュレーション解析 ―
    飯田 晶子, 大和 広明, 林 誠二, 石川 幹子
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 501-508
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、都市型集中豪雨に伴う内水氾濫が頻発している。従来の河川整備や下水道整備を中心とした治水計画には限界があり、雨水貯留浸透施設の設置や緑地の保全創出による流域対策を強化する必要性が高まっている。本研究は、流域スケールで都市緑地の有する雨水浸透機能と内水氾濫抑制効果を検証することを目的として、神田川上流域を対象に、緑地現況、緑地減少シナリオ、緑地創出シナリオの3事例を想定し、内外水複合氾濫モデルを用いたシミュレーション解析を行った。その結果、民有地の緑地を減少させたシナリオでは、約0.8倍の雨水浸透量の減少、1.2倍の浸水域の増大がみられ、民有地と公有地の双方の緑地を創出させたシナリオでは、約1.3倍の雨水浸透量の増加、0.7倍の浸水域の縮小がみられた。本研究により、都市緑地の保全創出は、雨水浸透機能の増大と内水氾濫の抑制に効果的であることを定量的に示すことができた。また、公有地の緑地だけでなく、民有地の緑地の保全創出が、流域対策上重要な役割を果たすことが明らかとなった。
  • 川口 暢子, 清水 裕之, 村山 顕人, 高取 千佳
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 509-516
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の新規性は、従来から用いられてきた街区の緑被規模に関係性の深い指標(街区非建蔽率や街区緑被率)に加 えて,街区の非建蔽地の形状を表す新しい2種の指標-樹木が立地可能な街区の開放性の指標(街区非建蔽地開放性比率)と非建蔽地の空間の複雑さを表す指標(街区非建蔽地線単純率)-を導入したことである。この指標を用いて、土地用途タイプをベースに,非建蔽地の規模・形状が緑被量に対してどの程度寄与しているかを分析した. その結果,自然的土地利用の街区では街区形状が開放/単純で,緑被規模に大きく寄与していることがわかった。一方で都市的土地利用の街区では様々な街区形状が存在し,街区形状の開放性・単純性が必ずしも緑被規模に寄与していない実態が明らかとなった。
  • メキシコ、オアハカ州、イクストラン・デ・フアレス共同体の住民と土地との関係に着目して
    増田 知久, 土肥 真人
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 517-522
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    20世紀後半から不適切な方法による森林開発は世界的問題となっており、地域共同体が主体となる自然管理のあり方が求められている。メキシコ南部オアハカ州シエラ・ノルテ地方にあるイクストラン・デ・フアレス(Ixtlán de Juárez以下、イクストラン)は国際的にも有数な生物多様性保全地域とされ、先住民共同体が主体となり自然管理を実践している。オアハカ州は先住民の割合がメキシコ国内で最も高く、先住民の慣習に基づいた独自の行政運営による自治が州法で承認されている。本研究では1)オアハカ州の先住民共同体に関する法制度及び国際機関からの支援状況の把握、2)自然管理を実践するイクストランを事例に、住民と土地との関係に着目して先住民共同体の社会構造の実態と意識を明らかにすること、そして3)共同体が主体となる持続的な自然管理のあり方を提示することを目的とする。
  • バーデン=ヴュルテンベルク州の景域計画手引書に基づいて
    根岸 勇太, 山下 英也, 石川 幹子
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 523-530
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、緑の基本計画と景域計画の計画体系と計画項目の全体像を整理、比較し、さらに景域計画に特有の計画項目が、計画体系のどのような事項に規定されているのかを把握した上で、景域計画に特有な計画項目が、景域計画の論理展開の観点から担わされている役割について、考察することを目的とするるものである。本研究を通じて、景域計画に特有な計画項目またはその特徴が、以下の役割を担っていることが明らかになった。1)それぞれの環境要素のあるべき状態を具体化する役割。2) 景域計画自体の策定時に環境の利害が適切に勘案されているかどうかをチェックする際の、基準としての役割。3)Fプランの策定時に考慮されるべき環境要素を明示し、Fプランの策定時に環境の利害が適切に勘案されるかどうかを批判的に評価するための基準としての役割。
  • 芝原 貴史, 羽藤 英二
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 531-538
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は松山市道後地区の都市組織の変容過程を,多数の史料を整理し重ね合わせながら,解析的に読み解くことである.都市組織の変容が顕著な近代以降に焦点を当て,都市空間を構成する組成・組織・構造の概念で年表整理を行い相互の関係性を考察し,各年代の土地利用図から都市空間をグラフ化し組成要素を考慮したネットワーク解析を行う手法を用い,都市組織の変容実態を定量的に明らかにする.構造として鉄道整備と源泉開発,組成として旅館,外湯,遊郭,日用品店の変遷を詳細に追い都市組織への影響を分析することで,鉄道整備で入浴客数が増加し源泉開発が行われ,土木技術の進展が大規模ホテルの集積を生み,ホテルが多様な組成要素を取り込む建築プランを取ったことで,次第に新温泉の廃止や上人坂の空白化を引き起こした過程を読み解いた.ネットワーク解析により街路の媒介性が徐々に本館北側に偏重して街の重心が変化し,そこから離れた地区の衰退につながった実態を明らかにしている.
  • 久保 勝裕, 安達 友広, 西森 雅広
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 539-545
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    北海道殖民都市の多くは、グリッド市街地を形成している。これらは、明治期に確立した「殖民地区画制度」に基づいており、農耕地開拓のための原野区画と一体的に計画された。従って、その軸性は原野区画とそれと一致する場合が多いが、一部の市街地では、主要道路において「山当て」が構成される等、歴史的市街地のように周囲の景観を取り込むデザイン手法が導入されている。これらは、開拓の進展に伴って明治20年代以降に内陸都市として建設されたが、北海道では、明治10年代までに沿岸都市の市街地を整備した実績を持つ。近世市街地を基盤としていること、原野区画とは無関係に市街地単独で形成されたこと等が特徴であり、さらには、留学生らによる欧米の都市計画手法が持ち込まれる以前に実施されている点も重要である。本論では、こうした北海道の沿岸都市を分析対象としてその計画手法を分析した結果、主要道路において山当ての現象が確認された他、公共施設や寺社の配置が計画的に行われていたことを解明し、近世までの我が国固有の都市設計手法が導入されたと同時に、一部はその後の内陸都市の計画に受け継がれたことを明らかにした。
  • 安達 友広, 久保 勝裕, 西森 雅広
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 546-552
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    明治期の北海道内陸部で建設されたグリッド市街地の多くは、「殖民地区画制度」に基づいて計画された。これらは合理的に農耕地を開拓するための原野区画と一体的に形成され、空間的には原野区画とその軸性が一致するのが特徴である。特に、原野区画の基準となった「基線」は、開拓道路として地域で最も早くに開削され、沿道に市街地が開設された場合が多いことから、市街地の空間構成を考える上でその性格を把握することは重要である。一般的に、北海道の空間計画における「基線」は、高燥地であること、勾配や凹凸が少ないこと、原野区画の基準線として当該原野を長く貫くこと、等の合理的な理由に基づくものとされてきた。しかし、基線上に山当ての現象が見られる等、それだけでは説明できない場合も指摘されている。本論では、歴史的資料を用いて原野の空間計画の考え方を分析すると同時に、羊蹄山周辺地域の事例分析から「基線」の設定と山当ての関係を考察し、それらが合理性だけではなく、デザイン的要素も加味した計画手法であったことを明らかにした。
  • 店舗・施設によるサイバー空間上の広報に着目して
    富永 透見, 星野 奈月, 谷口 守
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 553-559
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    IT技術の進展やスマートフォンの急速な普及により,我々は日常的にサイバー上の情報に触れている.例えば都市を構成する店舗や施設は,人々の行動を左右する様々な情報を発信している.このような中,サイバー空間から実空間への誘導を発生させるO2Oという考え方が注目されている.店舗や施設への集客が,結果的に街の賑わいを創出することも大いに期待できる.本研究では,店舗や施設で行われている広報の実態を明らかにし,O2Oを発生させるための要因をモデル分析から明らかにした.その結果,ネット通販の取り扱いと,実店舗・施設への集客が補完関係にあること,ネット広報に対する広報実施者の熱意や若さが,集客を発生させる上で重要であることを明らかにした.
  • ―日本全国のビッグデータを用いた網羅的実証―
    福田 崚, 城所 哲夫, 佐藤 遼
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 560-567
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    地方都市における都市圏レベルでの産業集積の形成の必要性が指摘されているが、産業クラスター論に基づいた既存の産業集積促進策は都市圏内立地の視点を欠いている。本稿では、都市圏内の企業立地の在り方に着目する。産業集積の成立の在り方について二つのモデル(中心地理論・基盤産業モデル)を提示した上で、全国の地方都市を都市規模に関わらず網羅的に扱い、それぞれのモデルに対応した企業の、都市規模・中心からの距離に依存した立地特性を明らかにする。この目的のため、(株)帝国データバンクが保有する企業間取引データを利用し、企業を販売・仕入の分布(都市圏内/外)により類型化を行い分析をした。結果として、以下のことが判明した。第一に、中心地理論に基づいた産業立地は卸・小売など特定業種に偏っており、都市の中心よりに形成されるものの、中心から2~4km程度離れた地域の方が取引は活発である。第二に、基盤産業モデルに基づいた産業立地は多様な産業で成立する可能性があり、都市圏人口100万人を超える大都市では中心への集中が見られるものの、それを下回る都市では郊外部に集まっている。
  • 北島 遼太郎, 城所 哲夫, 瀬田 史彦
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 568-573
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究ではバンコクを対象都市とし、公共交通指向型開発(TOD)の観点から実態を解明することによって、バンコクにおけるTOD実現に向けた課題を明らかにすることを目的とした。第一に本研究においてTODの観点からバンコクの実態を解明するための評価軸として、代表的既往研究からTODを構成する6つの要素(公共交通への近接性、混合用途、高密な開発、マルチモーダル、パブリックスペース、歩行環境) の抽出を行った。第二にこれらの6つの観点から、バンコク都庁や公共交通運営主体といったバンコクにおける関連主体が持つ計画、また開発許可の動向把握や民間住宅デベロッパーによる将来の事業の展望の整理を行い、TODの現状の把握を行った。第三に駅ごとの周辺地域の土地利用から駅周辺への商業及び業務用途の集積を分析し、公共交通指向型の周辺地域を持つ駅の存在を明らかにした。第四に2駅を対象としたケーススタディを行い、現地踏査を通じて6つの構成要素の観点からTODの実態をより明確に把握した。以上より、TODの観点から行政による計画等の背景と調査結果とを比較することでバンコクの実態を解明し、TOD実現のための課題を指摘した。
  • 東京都アジアヘッドクォーター特区を対象として
    関向 直志, 村木 美貴
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 574-579
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    東日本大震災以降、防災の需要が高まり、業務地区では熱電を供給できるコージェネレーションシステム(CGS)の導入が進んでいる。しかしながら、CGS導入時には熱の利用も検討する必要があるため、望ましい用途の組み合わせも同時に検討することが求められるものの、その在り方は明らかではない。そこで本研究は、業務機能の集積する東京都心部で、防災性のためにCGSの導入と連動した開発規制の仕組みを誘導用途の観点から明らかにすることを目的とする。具体的には、東京都アジアヘッドクォーター特区を対象とし、CGSを導入する地域の建物用途構成を電熱比から考え、規制誘導を行った場合、その効果をCGS事業の採算性とCO2排出量削減効果、防災性向上効果から明らかにするものである。
  • 石巻市・長浜市における事業者アンケート・ヒアリング調査をもとにして
    城所 哲夫, 近藤 早映, 岩田 大輝, 福田 崚
    原稿種別: 論説・報告
    2015 年 50 巻 3 号 p. 580-587
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    中心市街地の再評価が進みつつあることを背景として、地方都市の中心市街地活性化を地方活性化の文脈のもとで位置付けることが本研究の問題意識である。このような問題意識のもとで、本研究の目的は、地域イノベーションシステムの形成という観点から、地方都市の中心市街地の役割について検討するとともに、石巻市と長浜市を事例対象都市として、事業者アンケート調査、事業者及び関係機関インタビューをもととして、新たな中心市街地のあり方について提言することである。調査結果から、中心市街地の重要な機能として、イノベーションの促進、新規事業者の起業および情報交流の場としての重要性を示し、これからの中心市街地のあり方として、イノベーション支援ネットワークの形成、都市居住と起業の場としての多様なスペースの活用、都市的ライフスタイルのオープンな表出の場の創出の重要性について論じた。
  • 菊地 亮太, 室町 泰徳
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 588-593
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,国土数値情報の土地利用3次メッシュデータを用いて,都市的土地利用が減少し,かつ自然的土地利用が増加した地域,及び市区町村単位で人口が減少しているにも関わらず自然的土地利用が減少し,かつ都市的土地利用が増加した地域をそれぞれ抽出し,人口,産業構造,地理的条件などを考慮した土地利用変化モデルを推定し,将来予測を行った.調査対象12,065メッシュのうち,1991年から2009年までの18年間で,建物用地が減少し,かつ自然的土地利用が増加しているメッシュは2,251,自治体単位で人口が15%以上減少しているにも関わらず自然的土地利用が減少し,都市的土地利用が増加しているメッシュは3,729確認された.これらのメッシュを対象としてモデルを推定した結果,人口,年少人口の割合,保育施設までの距離,最大傾斜角,1次産業従事者の割合などが説明変数として導入された.また,2030年までの20年間の土地利用変化を予測したところ,人口減少に伴い建物用地が減少し,自然的土地利用が増加する可能性が示唆された一方で,人口が減少している自治体においても開発が進む場合も少なくないことが明らかとなった.
  • 高知県高知市をケーススタディとして
    武田 裕之, 津田 泰介
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 594-601
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、甚大な津波被害が想定されている都市において、震災前の移転の可能性を検証すると共に移転に伴う都市ヴォリューム及び移転費用の概算を行う。移転については住民の意思による個別移転として、長期間での移転プロセスを考えることとする。まずインターネットアンケートにより、震災前の個別移転に対する賛否、移転の際の条件等を整理した。賛否については70%以上の回答者が賛意を示しており、平均で15年程度の内に移転のきっかけが訪れることが明らかとなった。次に高知市の浸水域から3つの移転推進地域、高知市西部の利用可能な地域を定め、それぞれ移転推進建物の床面積、新たに生み出される床面積の算定を行った。その結果、現行の用途地域においてもほとんどの移転推進建物の床面積の受け皿となり得ることを示した。最後に移転に必要な費用を試算し、地震による被害想定額と比較した。結果として移転費用は被害想定額を下回っており、震災前移転のメリットを示した。
  • 村木 美貴
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 602-607
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    オリンピックは地域の都市再生を推進する契機となりえる。本研究は英国の面的市街地再開発、特に、ロンドン・オリンピック・パーク(以下、オリンピック・パーク)に着目し、大規模な面的市街地開発の中でどのような計画間と主体間の連携が存在し、それがオリンピック後の都市づくりに活かされているのか明らかにすることを目的とする。研究の構成は以下の通りである。まず、オリンピックに関連する主体と計画の関係を明らかにした上で、オリンピック・パーク整備の方針をロンドン市と基礎自治体について見る。最後に大会のテーマである低炭素を基軸に、その政策と分散型エネルギーネットワークの導入における主体間連携について議論する。研究を通して、(1)横と縦の計画間の連携は十分図られていたが、全体最適が地域の課題となるケースも見られるため、インフラ整備のための資金を広域で提供すること、ハコもの整備のための資金提供を超えて、住民サービスなども含めたソフト事業に対しても、細かく対応すること、(2)投資回収に時間のかかる地域冷暖房事業では、契約のための透明なプロセスと、市民、民間、公共にとってメリットが享受できる状況を考えることを指摘した。
  • 空間的異質性および物理的環境との相互作用効果に着目して
    上杉 昌也, 樋野 公宏
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 608-615
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,東京都区部における近隣地区居住者の社会経済的構成と住宅侵入窃盗率との関係を明らかにすることであり,とくに両者の関係性の地区による差異や物理的環境との相互作用効果に着目する.一般的な重回帰モデルによる推計では,地区の高所得世帯割合は犯罪率に統計的有意に負の関係を有していることが示されたが,地理的加重回帰モデルによる推計ではこれらの関係には地理的変動があることが明らかになった.また,道路面積率や最寄駅までの距離といった物理的環境要因と犯罪率の関係は近隣地区居住者の社会経済的構成によって変化することが明らかになった.このような文脈依存的な関係を明らかにすることは防犯対策において地区レベルの居住者特性情報の有用性を示すとともに,より小地域の特性に基づいた対策の必要性を示唆するものといえる.
  • 西沢 昴, 鈴木 勉
    原稿種別: 研究論文
    2015 年 50 巻 3 号 p. 616-621
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,地方財政状況悪化による公共施設の管理が問題となっている.そこで本論文は,施設の築年数に合わせた施設保全費と施設の用途の転用に着目し,2種類の施設を対象としたp-メディアンモデルを土台として,ある期間内の公共施設配置再編を限られた予算の中で,保全・新築・転用に必要なコスト制約を満たしながら,移動費用の最小化を目的とした動的施設配置問題を定式化するとともに,モデルを構築して,転用が有利となる都市構造条件や総移動距離を定量化することを目的とする.小学生と高齢者を例とした仮想空間において,人口分布別にシナリオ3種類に対して適用した結果,集約型都市構造は施設が中心部に立地するため移動コストが小さくなること,さらに集約型都市構造の場合,転用による移動コスト削減効果が大きく転用が起きやすいことが明らかになった.
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