都市計画論文集
Online ISSN : 2185-0593
Print ISSN : 0916-0647
ISSN-L : 0916-0647
51 巻, 1 号
都市計画論文集
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 阿部 正太朗, 中川 大, 松中 亮治, 大庭 哲治
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2016/04/25
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、地方都市中心部における鉄軌道駅の立地状況に着目し、駅勢圏のカバー率の違いによる駐車場用地の立地要因の違いを明らかにすることを目的とした。分析においては,2005年10月時点の中核市37都市すべての都市中心部における土地利用データを構築した結果,駐車場用地は1985年から2005年にかけて,37都市のうち32都市で増加している実態を把握した。その上で,都市中心部における鉄軌道駅から200mの範囲が占める割合により都市を分類し,業務用地,住宅用地から駐車場用地への転換要因の違いを分析した結果,用途地域の指定状況が駐車場用地への転換に及ぼす影響が異なっており, 1985年時点の土地の利用状況について,駅勢圏カバー率が低い都市は高い都市に比べ,1985年に駐車場用地やその他の低未利用地であった業務用地や住宅用地が1995年から2005年にかけて駐車場用地へ転換する確率が高いことを示した.
  • ドンピラン地域を事例として
    白 りな, 十代田 朗, 津々見 崇
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 2016/04/25
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は韓国ドンピランを対象とし、「地域住民が主体となる観光まちづくりは住民にも観光客にも魅力ある地域づくりにつながる」という過程の下、観光まちづくりの展開を整理し、住民意識、観光客の動態・評価、及びそれらの対応関係を明らかにし、住民参加による観光まちづくりの利点と課題を考察した。当地での観光まちづくりの展開を3期に区分して特徴を見たところ、発展期では住民参加による活動が見られ、こうした活動は観光公害の減少、経済的利益の還元など、観光の実利を伴いながら生活空間を向上させることから、利点として認められる。一方課題も表出しており、観光業従事者である一部住民のみが活動に主に参加しており、一部住民の意見が地域社会の総意として扱われる恐れがある。また、彼らの意識が経済面に集中してしまい、魅力的な生活空間の形成や観光地としての持続的な成長を防げる可能性があることが指摘された。
  • 主要都市へのアンケート調査JR高山本線活性化事業での事例研究による考察
    小滝 省市, 高山 純一, 中山 晶一朗, 埒 正浩
    原稿種別: 論説・報告
    2016 年 51 巻 1 号 p. 23-32
    発行日: 2016/04/25
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,コンパクトなまちづくりの一環として,駅周辺の再整備の必要性が増している中,駅前広場の事業推進のための課題を明らかにするものである.主要都市へのアンケート調査の結果,都市郊外において駅前広場が長期未着手になっている背景に,駅周辺整備に関して上位計画での位置づけが少ないことが明らかとなっており,先進事例として富山市におけるJR高山本線活性化事業を取り上げ,都市政策の一環として,駅前広場整備など交通結節点の整備に取り組むことの有効性について確認した.
  • 輪島市での家族類型と出入り大工・工務店との関係性からの考察
    水野 雅男
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2016/04/25
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    能登半島地震により被災した住宅を再建した世帯への調査により、居住世帯を6つの家族類型に分類した。出入り工務店との関係性、被災直後の相談相手、再建方法、住宅再建に携わった工務店や業者選定の主体等と家族類型との関係性を分析した。さらに、2つのエリアの再建特性についても比較分析を行った。最終的に、出入り工務店との繋がりの強さと地域内工務店への依頼率の2つの指標から、各家族類型の相対的な位置関係を見ることができた。地域内工務店による住宅再建を助長する要因として、なじみ工務店への強い信頼感や住み慣れた家での居住継続欲求が挙げられた。一方阻害要因としては、家族類型の変容(高齢化や核家族化)により出入り工務店との繋がりが弱まること、大工職人の廃業にともなう建設能力の低下が挙げられた。また、別居子息が再建業者を選定する場合は、地域外工務店を求める傾向にあることも阻害要因の一つとなっている。
  • 名古屋市と錦二丁目低炭素モデル地区の取り組みの現状と課題
    村山 顕人, 森田 紘圭, 藤森 幹人, 延藤 安弘
    原稿種別: 論説・報告
    2016 年 51 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 2016/04/25
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    低炭素都市戦略の実現は、地球規模の気候変動を抑制する挑戦において重要である。名古屋市は、2050年を目標とする低炭素都市戦略を持ち、それは、同実行計画だけでなく都市計画や交通のプランに、さらには市の低炭素モデル地区の1つである錦二丁目のまちづくりプロジェクトにも反映されている。これは、気候変動への対応というグローバルな課題に、自治体低炭素都市戦略及び既成市街地におけるまちづくりというローカルなアクションで対応しようとする先駆的取り組みである。本論文では、名古屋市低炭素都市戦略等の内容を分析した上で、錦二丁目のまちづくりの経緯とまちづくり構想の内容を整理し、「錦二丁目低炭素地区まちづくりプロジェクト」の展開の現状を説明する。そして、総括では、地区におけるPDCA、地域まちづくりの人材・財源の確保、他地区における展開の支援、地区の特性に応じた二酸化炭素削減目標の設定の必要性について言及する。
  • 関東圏を対象として
    土屋 依子, 伊藤 史子, 田頭 直人, 池谷 知彦, 馬場 健司
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 1 号 p. 46-57
    発行日: 2016/04/25
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、電気自動車の地域別の普及可能性を明らかにすることである。まず、2011年1月に実施したアンケート調査により収集した自家用車の利用データにより、自家用車の利用実態と、それらを規定する要因を特定した。次に、関東圏を対象に作成した地域類型を用いて、地域類型別の自家用車利用の比較分析を行った。自家用車利用の規定要因では、自家用車の保有台数や年間走行距離、1日当たりの最長走行距離は、世帯・個人属性と居住地特性や車両属性などの影響をうけ、利用頻度は、長距離では年齢と鉄道の利便性、短距離では世帯属性よりも居住地特性・車両属性による影響をうけることがわかった。また、人口や住宅等の居住状況による「居住類型」を用いて、EVの走行可能距離や経済的な優位性、充電利便性の条件を総合的に分析した結果、EV適合車両の比率は、近郊外・外郊外と都心から外縁部にいくほど高まる傾向があることが明らかとなった。
  • 原田 陽子
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 1 号 p. 58-69
    発行日: 2016/04/25
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、デンマークにおける地区を基盤にした市民参加の都市再生事業の概要と特性を明からかにし、我が国における市民参加の都市再生事業に対する示唆を考察することを目的とする。研究の結果、デンマークにおける都市再生事業は、特に「(1)戦略的空間改善と法制度の影響力」、「(2)プロセスの透明性と市民に公的権限を与えること」において強みを持っていると言え、「(3)参加者や活動内容の多様性と創造性」、「(4)事業の継続性と柔軟性」という観点においては課題が残っていることが明らかになった。一方、わが国の市民参加の都市再生事業では特に「(1)戦略的空間改善と法制度の影響力」、「(2)プロセスの透明性と市民に公的権限を与えること」において弱みを持っているといえ、デンマークでの取り組みは、今後の我が国の仕組みを検討する上で重要な示唆を与えていると考えられる。
  • 韓城市党家村の四合院住宅の利活用に着目して
    魏 小娥, 加藤 晃規
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 1 号 p. 70-78
    発行日: 2016/04/25
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、中国の歴史文化名村の保存制度の形成背景と経緯を整理する上で、歴史文化名村の歴史的建造物の利活用に着目し、韓城市党家村を取り上げ、その保存計画における観光利用のあり方を考察したものである。韓城市党家村における観光利用は地域の活性化を促進するとともに、農村と都市との間においても交流の場を形成することが期待される一方、旧村の居住空間を縮小する施策による加速しつつある空き家問題への対応が求められている。今後、空き家の加速を促進した居住空間の縮小という施策を見直すことが求められ、継続的な居住利用と観光利用と合わせた利活用手法による保存計画を中国の歴史文化名村で共有し、住民の積極的な参与を促すことが求められていると結論した。
  • ネットコンシャスなまちづくりを見据えて
    星野 奈月, 肥後 洋平, 谷口 守
    原稿種別: 論説・報告
    2016 年 51 巻 1 号 p. 79-85
    発行日: 2016/04/25
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    モータリゼーション化による都市構造の変化と同様に,インターネットの発展は都市構造を根本的に変化させる可能性がある.今後はそのようなネットからの影響にも配慮した「ネットコンシャスなまちづくり」が必要となる.本調査報告ではサイバー化が進んだ人々の交流スポットを捉えるために,SNS上のチェックインスポットの分布や量を把握し,都市マスタープランに示されている拠点エリアと,チェックインスポットとの対応関係について詳細に分析を行った.その結果,チェックインスポットが拠点エリアに集積している都市,すなわちサイバー化が進展したとしても,都市機能誘導地区の整備とは矛盾しないと類推される都市が存在することが明らかとなった.一方でチェックインスポットが拠点エリアに集積していない都市も存在しており,このような都市においてはネットコンシャスという観点から,集約化を進めるための対策が必要になると言える.
  • 福島県いわき市を事例に
    小川 美由紀, 西田 奈保子, 松本 暢子
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 1 号 p. 86-93
    発行日: 2016/04/25
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、東日本大震災被災者への応急住宅対策として実施された民間賃貸住宅の借上げによる提供について、福島県いわき市での供給事例を分析している。いわき市では、一時提供住宅として共用廃止であった雇用促進住宅等に加え、市長名で借上げた民間賃貸住宅760世帯分を市職員によって斡旋提供を行った。この供給方式(一般型)は、被災者自らが探して契約した住宅の家賃を県が負担する供給方式(特例型)とは異なり、多大な行政事務が生じるものの、自ら住宅を探すことの難しい高齢者等への提供を行ったほか、短期間に斡旋することによって避難所の早期解消および建設仮設住宅供給を最小限にとどめた。こうした応急住宅対策について、事前に民間賃貸住宅の借上げによる提供の可能性や提供の方法等について検討しておくことが必要であることを示した。
  • 沖縄県北中城村大城地区を事例として
    寺田 千尋, 木下 光
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 1 号 p. 94-101
    発行日: 2016/04/25
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    大城地区は小規模自治体にも関わらず、住民主体のまちづくりを10年以上活発に行っている。よって本研究は、大城地区を事例とし、住民主体となって持続的にまちづくりが展開される条件を明らかにすることを目的とする。結論は以下の5つである。(1)大城地区のまちづくりは、当初は無形の地域活動が大城自治会の内部組織で行われ、有形の地域活動へ、内部組織で運営されていたものが徐々に外部組織と協働する形になって展開してきた。(2)大城地区のまちづくりは、自治会の内部組織や任意組織の発展とともに展開し、自治会がそれらの活動を支援してきた。(3)自治会は、住民だけでなく、外部の個人、組織も活動に参加しやすいように垣根を低くし、受け入れてきた。(4)公民館をまちづくりの拠点とし、新しい地域活動が行われていった。(5)大城地区は行政の金銭的、人的支援を受けておらず、外部の個人、組織の支援で地域活動を維持、発展させてきた。
  • 菊地 吉信
    原稿種別: 論説・報告
    2016 年 51 巻 1 号 p. 102-107
    発行日: 2016/04/25
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は,日本における民間非営利セクターによる空き家再生事業を拡大する上での示唆を得るため,空き家再生の取り組みが活発化している英国の社会的企業に着目し,とくに就業訓練を組み込んだ事業を実践している団体を対象にケーススタディを行う。主な目的は次の二点である。一つには空き家再生に取り組む社会的企業の実態の一端を明らかにすること,二つには空き家の修繕作業における就業訓練の流れや仕組みを明らかにすることである。調査を通じ以下のことが明らかとなった。すなわち,空き家再生に取り組む社会的企業の多様さ,空き家(不動産)取得の重要性,段階的な就業訓練と個人支援の実態である。日本でも,民間の空き家をアフォーダブルな住宅として活用する仕組みや,非就業者の社会参加を促す仕組みを構築する上で,英国の社会的企業による事業に学ぶ点は多い。ただし,日本では住宅以外への用途転用を促す補助策についても検討の余地がある。
  • 野中 勝利
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 1 号 p. 108-117
    発行日: 2016/04/25
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、岩手県による岩手公園開設の契機、整備及び維持管理の経過と、その過程において長岡安平による公園設計やその意図が、どのように受け入れられていたのかを明らかにした。岩手県から招聘された長岡安平は、盛岡で現地踏査と公園の設計を行った。その後、工事の監理も依頼され、公園の開園式まで約五ヶ月余り盛岡に常駐し、専門家としての設計方針をもとに、整備を指導した。このように岩手県は長岡安平の設計を全面的に受け入れ、公園の整備では設計から施工まで長岡安平の意向が強く反映された。長岡安平は自らが主導した岩手公園の出来映えに満足し、自賛していた。岩手県は28年間、公園の維持管理をしたが、大きな施設整備や改造を行わなかった。長岡安平が設計、工事監理して開園した公園を継承する管理だった。
  • 2000年以降の適用事例に着目して
    山口 歓, 浅野 純一郎
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 1 号 p. 118-124
    発行日: 2016/04/25
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、地方都市における近年(線引き制度や開発許可制度を含む都市計画法改正のあった2000年以降)の逆線引き制度運用の実態を全国レベルの調査から把握し、その課題を考察したものである。逆線引き地区の把握については、道府県の担当部局や当該地区の市町へのアンケート調査で概要をつかんだ後、顕著な課題を示す特定の事例ついては、現地調査や当該市担当部局へのヒアリングを主としたケーススタディで詳細を分析した。その結果、逆線引き後の宅地化率は(1)物理的な開発困難地、(2)農振農用地区域の指定、(3)開発圧力の低さの3つを要因として比較的低いものの、逆線引き後に開発許可条例の適用地にする等、開発管理上問題のある事例が見られた。また複数の逆線引き地区を持つ都市計画区域では、保留人口フレームの減少や枯渇が逆線引きの動因となっている一方、持続的に逆線引き地区を捻出しつづけることの困難さや人口フレーム計算の非公表等、線引き運用の硬直性と密接な関係があることを明らかにした。
  • カンザスシティ市におけるエリアプラン実施状況の分析
    芝田 昌明, 小泉 秀樹
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 1 号 p. 125-133
    発行日: 2016/04/25
    公開日: 2016/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、米国カンザスシティ市のコンプリヘンシブプランを詳細化、具体化したエリアプランに着目し、市民参加のもと、計画に書かれた政策や取組がどのように具体化・詳細化され、予算化されているのか、計画実施の実態を明らかにすることを目的とする。計画に記載された内容がそのまま直ちに実施につながるのではなく、計画内容の更なる具体化・詳細化、優先度の選定作業が必要であり、官民で構成される実施委員会が中心となった取組によって、新たな参加や交流の促進、前向きな検討への好循環の創出、安定的な予算獲得など、計画の継続的な活用や計画実施につながる成果が着実にあがっていることが明らかになった。一方で、特定の地区のみでしか計画実施は進んでおらず、市民の積極的な参加意欲があっても、計画内容の具体化・予算化のための仕組みや制度が用意されていなければ、計画策定後に安定的な計画実施はうまく機能しないことが明らかになった。
feedback
Top