都市計画論文集
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51 巻, 3 号
都市計画論文集
選択された号の論文の149件中51~100を表示しています
  • 椎野 亜紀夫
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 560-565
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、北海道札幌市における都市公園配置状況と小学校区別児童数の増減との関係について明らかにするとともに、事例分析を通じて児童の都市公園選択利用を明らかにすることを通じ、今後の効果的な都市公園運営に向けた計画推進のための方法論構築の一助とすることを目的に分析・考察を行った。研究の結果、校区別の都市公園数、児童数には差異が認められ、児童数が増加傾向にありながら都市公園数が少ない校区が見られるなど、都市公園再整備推進を優先的に検討すべき小学校区を抽出・特定することができた。また事例分析の結果から公園面積と利用数に一定の関係が示されたほか、特定少数の公園への利用の集中が見られたが、子どもの数が減少する中で遊び相手を見つけやすいという点において、このような利用偏差は好ましいとも言えると考えられた。今後の都市公園再整備にあたっては、本研究で示した方法により小学校区を単位とした都市公園配置の状況や調査を通じた利用実態把握を行い、児童の遊び場拠点として重要と判断される都市公園を抽出・特定した上で優先的に整備を進めていくのが効率的な都市公園運営につながると考えられた。
  • 滝沢 要, 中井 検裕, 沼田 麻美子
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 574-580
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、各自治体において、生物多様性に基づいた緑化施策の策定が必要とされている。しかし、広域での統一された目標や生態系において重要な場所が特定されていないために、多くの基礎自治体は、生態系を踏まえた緑化施策を策定することができていない。そこで本研究では、広域での生態系を踏まえた緑化施策のあり方について検討を行うことを目的とする。対象は東京23区とする。本研究で明らかになった点は以下の通りである。(1)東京都が広域での計画を策定し、23区各区が広域計画に沿った具体的な行動指針をつくり、さらに東京都と各区が密に連携していくことが重要である。(2)生態系において重要な地域として「23区中心部」「23区外縁部」「5つの軸」の3つの地域が存在した。(3)各区は、土地利用や地形、地区計画などその土地特有の状況を踏まえながら行動指針を作成しなければならない。
  • 名古屋市内の緑地を対象としたケーススタディ
    川口 暢子, 高取 千佳, 村山 顕人, 清水 裕之
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 581-588
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、都市における景域管理作業量の概念の提案とその推計である。少子高齢化・人口減少により縮退する社会では、緑地の維持管理負担は今後の大きな課題である。中でも都市緑地の維持管理は多様な主体の階層構造によって成り立ち、関係者の範囲を超えた総合的な議論が必要である。そこで本研究は、緑地を管理するための労働量として「景域管理作業量」を提案し、市域・地区スケールにおける緑地管理労働量を推計することを目的とした。まず、緑地管理者に対するヒアリング調査を行い、TLDjl(緑地を管理するための単位面積当りの年間作業時間 (hr/a))を算出した。次に、算出されたTLDjlに、市域全域・町丁目に含まれる緑地面積に乗じて景域管理作業量を推計した。その結果、民有地では戸建住宅と農地の景域管理作業量が高い値を示した。公有地では公園・道路の景域管理作業量が高い値を示した。最後に、人口一人当たりの景域管理作業量と65歳以上人口の町丁目スケールの空間分布図を示した。その結果、高齢化が進行し、かつ人口一人当たりの景域管理作業量が高い値を示す町丁目が市域周辺域に分布していた。
  • 横浜市関外地区を対象とした風環境数値シミュレーションによる分析
    佐々木 優, 横山 真, 松尾 薫, 田中 貴宏, 佐土原 聡
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 589-595
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    地球温暖化、都市ヒートアイランドに伴う都市高温化対策として、風通しの活用が有効とされている。そこで本研究では、建物の建替え更新時期が近づいている横浜市関外地区を対象にCFDによる風環境の数値計算を行い、風通し改善に向けた市街地形態を提案することを目的とした。得られた結果を以下に記す。 (1)風速比と市街地形態の重回帰分析の結果、道路方位に依らず、高層建物面積率が風速比に与える影響が大きい。また、上空風と平行する道路においては、道路幅員が風速比に与える影響が大きい。 (2)風通し改善を行う上で、上空風向と平行する道路の幅員を拡幅するモデル(現状幅員の30%)よりも、総合設計制度の利用による建物の高層化するモデルの方が、風通しの改善効果は大きい。 (3)総合設計制度による建物の高層化を、すべての街区に適用したモデルと千鳥配置にしたモデルでは、同程度の風速比改善効果が得られる。総合設計制度を一律に適用する困難さを考慮すると、まずは千鳥配置が最も効率的な改善モデルである。
  • 神奈川県全域を対象とした夏季多点同時気温実測に基づく分析
    佐々木 唯, 松尾 薫, 横山 真, 佐々木 優, 田中 貴宏, 佐土原 聡
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 596-602
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、地球温暖化、及び都市ヒートアイランド現象による夏季の都市高温化が問題とされており、その緩和が必要とされている。そこで、エリアごとに適材適所の緩和策をとる必要性があり、これを検討するための資料として都市環境気候図がある。緩和策を提案する上で、夏季の都市内の気温分布及び、その形成要因を把握する必要があると考えられる。そこで本研究では、神奈川県横浜市及び川崎市を対象に、気温分布の把握と気温分布形成要因との関連分析を行い、沿岸都市におけるこれら要因の総合的評価を行った。得られた主な知見を記す。1) 対象地の夏季晴天日は、海風の吹き方の違いから、3つのパターンに分類することができる。2) 相模湾から吹く海風(南風)による気温低減効果が大きい。3) 昼間は周辺の風通し環境よりも、広域的な影響を及ぼす南西風による影響、夜間は周辺緑被率が気温分布に影響を与える。
  • 2012 年エミリアロマーニャ地震における被災4都市を対象として
    野村 直人, 佐藤 滋
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 603-610
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    イタリアは日本同様地震頻発国であり、戦後の度重なる震災の中で歴史・文化の復興を目的とした復元的復興を軸として被災地の地域性に応じた多様な復興計画手法を試みてきた。2012年エミリアロマーニャ地震からの復興においてはこれまでの経験をもとにした歴史文化の復興への取り組みと同時に、震災前から抱えていた人口流出や高齢化、都市環境の悪化など多様な課題への対応が求められており、社会経済の再生、都市環境の再編に向けて綿密な調査に基づく計画策定と、その間の長期避難生活を支える住環境の構築が同時並行的に行われている。本研究では、都市形成史、長期避難生活を支える住環境の計画手法、歴史地区における復興計画手法、を明らかにすることで復興計画手法を明らかにした。いずれの都市においてもこれまでの歴史的文脈を踏まえた上で、多様な応急建設による長期的な復興を見据えた仮設市街地の構築と、復興計画による従前の都市が抱えていた課題への対応とを両立させることで、都市再生としての震災復興を意図していることが明らかになった。
  • 地方中心市街地における「みち空間」での実践を事例として
    野原 卓, 釣 祐吾
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 611-618
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、地方都市におけるストリート空間の魅力と活気を取り戻すために、道路と沿道が連携しながら行うストリートデザインマネジメントの詳細な展開プロセスのあり方について、実践事例の分析を通して明らかにすることを目的としている。地方都市の3つの実践事例(長期醸成型の喜多方市ふれあい通り、短期醸成型の石巻市中央一大通り、短期一斉型の松山市ロープウェイ通り)の分析を通して、プロセスを(1)導入・(事業)検討段階、(2)計画・共有段階、(3)実施・管理段階の3つの段階に整理した上で、街路と沿道とが一体となったストリートデザインマネジメントを実現するためには、事業開始時に多主体が連携できる柔軟な体制をインフォーマルでもよいので構築すること、頻度の高い勉強会等を通じて丁寧にビジョンを共有すること、そして、具体的な整備者(設計者や施工者)を交え共有したビジョンを円滑に伝達する仕組みを創出することなどが重要であるということが明らかになった。
  • 岡村 祐, 豊田 純子, 川原 晋, 野原 卓
    原稿種別: 論説・報告
    2016 年 51 巻 3 号 p. 619-626
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、期間限定で地域内の複数工場を一斉公開するイベントと定義される「オープンファクトリー」に着目し、その到達点や可能性を論じた。まず、台東、大田、墨田、燕三条等の8事例を抽出し、「オープンファクトリー」導入の背景には、(1)クリエイティブな環境の創出、(2)モノづくりと住まいの関係の再構築、(3)モノづくりを基盤とした地域ブランディングという地域課題があり、イベントの発意には、デザインやまちづくり等の地域外の専門家の関与があることを究明した。次に、工場の一斉公開と各種企画の組み合わせで構成される「オープンファクトリー」には、イベントとしての地域展開性や時限性を活かし、(1)地域内の回遊促進、(2)モノづくりと他要素の連携、(3)モノづくり資源の集約・ネットワーク化、(4)製品開発や空間利用の実証実験、(5)製品の販売促進を目指した企画が提供されていることを示し、「工業振興」、「住工共生」、「地域振興」の3つの目的を見出した。最後に、「オープンファクトリー」が各地で定着し、イベントを契機に新たな動きが生まれている状況を踏まえ、モノづくりのまちの活性化手法としての「オープンファクトリー」の可能性を指摘した。
  • フードトラックの出店形態と空間マネジメントに着目にして
    今井 梨花, 後藤 春彦, 馬場 健誠
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 627-633
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    パブリックスペースとは多種多様な活動を受け入れる都市において重要な空間であり、その質の向上に向けて様々な取り組みがなされている。取り組みの一例として、オープンカフェや屋台等、食を通した屋外での賑わい創出が着目されている。一方で、臨機応変に営業することが可能な移動販売車(以下、フードトラック)も米国をはじめ脚光を浴びるようになり、また、近年では我が国においてもパブリックスペースの簡易的な活用方法として注目され、社会実験を通して実用化に向けた検討がされるようになった。 これらを踏まえ、フードトラックをパブリックスペースの賑わい創出の活用手段として、現状の出店状況や事業者目線からみた空間利用や課題を整理し、今後の政策に繋げることは重要である。 本研究では、フードトラックに着目し、首都圏における出店の現状を把握するにあたり、以下の2点を明らかにする: (1)空間利用許可を踏まえた首都圏における出店傾向(3章) (2)営業形態に応じた空間マネジメントの課題(4章) 以上より、今後パブリックスペースにてフードトラックを活用していく上でのマネジメントの知見を提示する。
  • 木藤 健二郎
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 634-641
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    ノルウェーにおいて地区詳細計画は、マスタープランを、具体的、詳細に規定し実践する仕組みであり、欧州諸国の多くは同様の仕組みを持つ。本研究は、スタバンゲル市のトレイル整備事業における地区詳細計画制度の利点を考察し、その適用の実態を明らかにすることを目的とする。都市と生活空間という二つのスケールでのトレイル整備実態を分析し、以下の点が明らかとなった。1)マスタープランと地区詳細計画の二段階構造の土地利用計画制度と対応し、都市スケールのトレイル整備目標に基づき、生活空間スケールでのきめ細かな歩行空間の整備が行われる。2)地区詳細計画による開発に見られる歩行空間の94%が、大規模緑地を結ぶ広域トレイル計画を補完、又は広域トレイルと近隣市街地を接続するものであり、全体計画と一貫性を持つトレイル整備が行われてきた。3)生活空間においてトレイルは、公園、民間開発地の共有空間、道路、各種公共施設等から成り、機能、管理主体の異なる空間が複合、連鎖する歩行空間である。
  • 島根県松江市美保関の縁側・前土間に着目して
    藤居 由香, 増井 正哉, 安高 尚毅
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 642-648
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    住宅の表構えの実態について明らかにするために,歴史的町並み景観として明治時代の建築物が1/3を占める松江市美保関の縁側と前土間に着目した。この地域では通りが重要であり,通りに面する住宅の表構えとして玄関と通り側第一室について調査を行った。通り側第一室は,縁側・前土間・居室のいずれかに分類でき,居室は窓形態により,居室+掃き出し窓,居室+出窓・腰高窓に分けた。縁側は全体の3割にあり,外観が似ている掃き出し窓付きの座敷を合わせると町並みの半数を占める。前土間は旅館に多くみられ,出窓・腰高窓付きの居室は,昭和21年以降が多い。住宅改修で玄関が海側に設けられた事例や,縁側が無くなる事例がみられる。縁側は美保関の住宅の表構えで伝統的な構成であり,今回の研究から,それが居室+掃き出し窓に継承されていることがわかった。今後の美保関の歴史的町並み景観では,住宅の建て替えまたは改修の際に表構えとして通り側第一室に縁側の設置または継承,あるいは居室+掃き出し窓を選択することが有効だと考えられる。
  • 宮崎 萌, 森本 章倫
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 649-654
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,通学中の子供に自動車が衝突する重大事故が相次いで発生している.このような現状を受けて,文部科学省・国土交通省・警察庁による通学路の緊急合同点検が行われ,様々な安全対策が実施された.しかし,対策の成果ははっきりと現れていないことから,通学路における子供の事故実態を明らかにし,効果的な安全対策を検討する必要がある.そこで,本研究では宇都宮市における通学路のGISデータを作成し,通学路と通学路外で発生した子供の交通事故の比較分析を行った.分析の結果,通学路と通学路外では事故の内容に差異はみられなかったが,子供の違反は道路形状に依存すること,通学路では運転手が低速で行動中に事故が多発していることが明らかになった.
  • 石村 映美, 森本 章倫
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 655-660
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    これまで,交通安全に関して様々な法改正や道路整備が行われてきた結果,交通事故件数や負死傷者数は減少し続けてきた.しかし, 近年では減少幅が縮小してきており,これからの時代に合わせた対策が求められる.本研究では,交通違反の取締りに着目し,現状の取締り計画書のあり方について踏まえた上でアンケートによりドライバーの違反時の考えを把握した.さらに,交通管理者の視点より交通事故と交通違反の関係を明らかにし,事故減少に寄与する取締り方法を検討した.その結果,駐車違反,スピード違反やシートベルト違反は繰り返されやすいことや,場所によって効率的な取締り方法は異なり,すでに多くの取締りを行っている地域ではそれ以外の対策が求められることなどが分かった.
  • 金 利昭
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 661-666
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、自転車が歩行者を追い越しす交通事象を対象として、観察調査によって交通コミュニケーション行動の実態を把握し、アンケート調査によって 自転車と歩行者の間には様々な意識ギャップが存在することを明らかにすることである。その結果、自転車利用者と歩行者では安全な追い越し方法について意識 GAPがあること、特に高齢歩行者は自転車に希望するコミュニケーション行動としてベルや声掛けを望んでいることが明らかとなった。
  • 充電切れ確率と希望航続距離に着目して
    三輪 富生, 森川 高行
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 667-672
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,EVの航続距離がEV購入意識に与える影響を把握することを目的として,充電器整備状況がEVの希望航続距離をどのように変化させるか,1日走行距離分布の容易な導出方法を示したうえで,人々がどのような充電切れ確率を許容しているか,希望航続距離や燃料切れ確率がどのようにEV購入意識に影響を与えているかについて分析を行った.分析結果より,大規模ショッピングセンターや勤務地など長時間の駐車を行う施設への充電器整備によって希望航続距離が低下すること,充電器が整備されていない状況では,人々は2%(100日利用において2日)の充電切れを許容すること,充電器が整備されることで許容される充電切れ確率が3%弱程度まで増加すること,希望航続距離とEV航続距離の比はEV購入意向を有意に説明できるが,充電切れ確率は有意に説明できないことなどが示された.
  • 秋田市交通圏のタクシーを例として
    鈴木 雄, 日野 智
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 673-679
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、秋田市のタクシー利用に対する価格感度やタクシー利用の満足度について分析を行った。分析の結果、タクシー利用者は現在のタクシー運賃について満足していないことが明らかとなった。また、タクシー運賃はタクシー利用の総合満足度に与える影響も大きいことが明らかとなった。つまり、タクシーの運賃は改善することが求められる。価格感度に関する分析では、タクシーの初乗り運賃について「安い」と「高い」のバランスが取れている「基準価格」が647円となった。これは現行の710円よりも低い値である。つまり、タクシー利用者は現行の初乗り運賃である710円に割高感を持っていることが示された。しかし、免許返納割引や障害者割引により運賃が1割引になった場合には、割高感は解消されることが明らかとなった。また、タクシー利用の満足度が高い人ほど運賃に対して割高感を持たないことも明らかとなった。今後は、タクシー運賃の値下げを検討するとともに、接客態度や社内の清潔性・快適性の確保などによる満足度の向上も重要であることが示された。
  • 大山 雄己, 羽藤 英二
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 680-687
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    歩きに主眼を置いた空間計画が日本中で注目を集める中,歩行者の回遊行動に基づく計画評価の手法の必要性が高まっている.歩行者の経路選択行動は,1)経路の多様性が高く選択肢集合の生成が困難であり,2)プレトリップ型の意思決定が仮定できない,3)移動と滞在の連続性が高く,トリップ単位のモデルは適さない,という特徴を持つことから,既存の交通行動モデルでの記述が難しかった.本研究では,状態遷移確率に基づいた選択肢非列挙型の活動経路選択モデルの定式化を行った.活動経路の時空間的な特性を考慮するため,時空間プリズム制約,将来期待効用に対する割引率パラメータを導入し,さらにn-GEV型の定式化を行なうことによって,経路相関を記述した.それによって時間制約を持ち,出発地へ戻ってくる複数の活動を一体的な配分結果として出力することが可能となった.数値計算では,時空間割引率が回遊時の意思決定を左右する重要なパラメータであること,スケールパラメータの操作がIIA特性を緩和することを確認した.また松山中心市街地を対象とした歩行者の活動配分を行い,時間制約が時間と空間の使い方に影響を与えていることを明らかにした.
  • 福山 祥代, 羽藤 英二
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 688-694
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,都市空間上の歩行者移動における時空間利用について,大まかな空間把握に基づき逐次的に通行領域を選択していく行動を表現するモデルを提案する.個人ごとのODを基準とした一般化座標を用いて移動を記述し,OD間の時空間制約下で逐次的に得られる確率的通行領域の効用をもとに,個人が歩行する空間領域を選択するものと仮定する.予め固定されたゾーンではなく,ODベースでの確率的空間を用いることで,歩行者行動データから任意の特徴ある空間範囲を抽出することが可能になる.本モデルについて,歩行者の詳細な時空間軌跡を観測できるプローブパーソンデータを用いて渋谷駅周辺の1km圏程度を対象にした推定を行い,特徴的な行動の傾向を確認することができた.
  • 松中 亮治, 大庭 哲治, 中川 大, 鎌田 佑太郎, 津村 優磨
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 695-702
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,鉄道駅の運行頻度および鉄道駅が整備された時期以降の駅周辺における開発状況と鉄道駅周辺における自動車利用との関係を経年的に明らかにすることを目的に,1970年代・1980年代に整備された日本全国の鉄道駅を対象にして,駅周辺における自動車分担率の経年変化を分析した.まず,運行頻度および鉄道駅整備期以降の開発状況によって対象駅を類型化して,各類型の自動車分担率の経年変化を比較した.さらに,共分散分析を用いることにより,運行頻度および開発状況の双方を考慮した上で,鉄道駅が整備された時期から30年後の自動車分担率を分析した. その結果,運行頻度の高い鉄道駅ほど周辺地域における自動車分担率およびその増加量が低い傾向にあること,鉄道駅が整備された時期に開発が既に進んでいる地域においては開発が進んでいない地域よりも自動車分担率の変化量は小さい傾向にあることを明らかにした.さらに,大都市圏・地方都市圏において,運行頻度と鉄道駅が整備された時期から30年後の自動車分担率との関係は,鉄道駅が整備された時期の開発状況によって異なることを明らかにした.
  • 菊地 亮太, 室町 泰徳
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 703-708
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,ネットワーク型コンパクトシティを念頭に,人口減少下においても公共交通が維持される都市構造のあり方について検討した.具体的には,都市のコンパクト化によって公共交通の利用者数とその分布がどのように変化するかを検討するために,3次メッシュ単位でのコンパクト化シミュレーション分析を行った.分析の結果,急速に進む人口減少の影響で公共交通利用者数は現在と比較すると大きく減少することが明らかとなった.また,コンパクト化施策は公共交通の分担率をわずかに上昇させるのみであることが示された.宇都宮生活圏では,すべてのコンパクト化シナリオで公共交通の分担率は上昇したものの,津山生活圏では,人口集約メッシュの設定によっては公共交通の分担率が低下する結果が得られた.次に,バスネットワークの安定性の検討のため,乗り合いバス利用者の分布に関する分析を行った.宇都宮生活圏においてはコンパクト化施策を実行した場合,乗り合いバスの黒字区間は現状と同程度,あるいはそれ以上の水準を保ち,現状の公共交通ネットワークを安定的に維持できる可能性が示された.
  • 愛知県瀬戸市を対象として
    鈴木 宏幸, 鈴木 温
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 709-714
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    我が国の多くの都市では、人口減少、商業施設の撤退、公共交通サービスの低下等に伴い、郊外部のみならず、中心市街地においても自動車を持たない世帯や高齢者等が生活必需品や必要なサービスが得られないという問題が発生している。そこで、本研究では、財・サービスに着目したアクセシビリティ指標を提案し、愛知県瀬戸市の100mメッシュ単位の居住地に対して、食料品等の生活必需品に関するアクセシビリティ評価を行なった。また、その結果をもとに特定化されたアクセシビリティの特に低い地域の改善施策として、新たな施設立地とアクセシビリティの高い地域への人口誘導の2施策を比較検討した。その結果、新たな施設の立地誘導効果が高いことが示された。本研究の成果は、立地適正化計画の区域指定等の計画立案に有益となり得ると考えている。
  • -栃木県宇都宮市を対象として-
    佐々木 拓哉, 佐藤 徹治
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 715-721
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    栃木県宇都宮市では宇都宮市中心部と宇都宮市の東に隣接する芳賀町の工業団地を結ぶLRTが計画され、2019年度の開業が予定されている。LRT整備は、地下鉄等の鉄道整備と同様、将来の都市内の人口分布や都市構造を大きく変化させると考えられる。このため、計画・整備にあたっては、これらの変化を考慮した費用、便益の計測が必要である。本稿では、交通整備による世帯分布・都市構造の変化を踏まえた費用便益分析の確立を念頭に、LRTの整備が将来時系列の都市内世帯分布に及ぼす影響の推計手法を開発し、栃木県宇都宮市を対象にLRT整備あり、なしの状況における2040年までの世帯分布の推計を行っている。推計の結果、LRT整備は、宇都宮市東部や芳賀町の沿線での人口減少に歯止めをかけるなど、世帯の転居行動、世帯分布・人口分布に一定の影響を及ぼすことが確認された。
  • 織田 峻央, 森本 章倫
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 722-727
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    都市のコンパクト化を進めていくことに伴って,都市機能の縮退が進むことが予想されるエリア(縮退エリア)における交通利便性の低下や,自動車への過度の依存が懸念される.また,土地利用に余裕が生じると考えられる縮退エリアを特定の分野で活用する動きも見られる.そこで,縮退エリアへの良好なアクセスを確保することを目的として,市街化区域外を縮退エリアとみなして交通の実態を把握した上で,自動車分担率の低い地区を交通手段構成比に着目して分類し,分類した類型間の比較を行う.その結果,縮退エリアの交通整備の参考となるような自動車分担率の低い地区は代表交通手段構成比別に4つの類型に分けられ,縮退エリアの交通整備の方法が複数存在する可能性が示された.
  • 個人の意識,交通行動に着目して
    香月 秀仁, 川本 雅之, 谷口 守
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 728-734
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    近年注目を集める自動運転技術を搭載した自動車(SDC)の導入は都市における人々の交通行動に大きな影響を及ぼし、結果的に都市構造も影響を受けることが考えられる.本研究では独自に実施した意識調査と全国都市交通特性調査による大規模な交通行動調査の結果を結合することを通じ,個人のSDC利用意向に影響を及ぼす要因,およびSDC利用意向と都市属性の関係について検証を行った.分析の結果,1)運転することが好きな人やステータスと感じている人はむしろSDCを利用しない傾向にある,2)現在運転をしておらず,自動車の安全性が改善されると感じる人はSDCを利用する傾向にある.3)個人の運転距離が長い疎な構造を持つ都市においてSDC利用意向率が高くなることが定量的に示された.
  • スコットランドの取り組みに着目して
    須永 大介, 村木 美貴
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 735-740
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    我が国においては、COP21のパリ協定によって、改めて低炭素都市づくりの重要性が認識されている。環境問題への対応を都市計画の分野から図る上では、今後低炭素都市づくりがさらに広がることが期待される。そこで、本研究では、人口規模が数十万程度の中規模都市において低炭素都市づくりを幅広く推進する上で、スコットランドの低炭素都市づくりに向けた計画と事業の実態に着目し、今後基礎自治体が法律に基づきどのように計画策定し事業を展開すべきかについて方向性を明らかにした。研究ではまず、スコットランドの低炭素都市づくりに向けた法律と計画、財源の体系について明らかにした。次に、スコットランドの三大都市を対象に、低炭素都市づくりに関する計画と事業の実態について明らかにした。最後に、スコットランドの事例を通じて、計画における地域特性を反映した削減目標の設定、計画と連動した事業支援資金の拡大、環境問題と他の地域課題との一体的解決が重要であることを明らかにした。
  • 理念の歴史的起源と具現化のためのPolicy Screening Toolの効果について
    山下 修平, 高見沢 実
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 741-748
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、ブータンの国民総幸福(Gross National Happiness)の理念が生まれた歴史的起源が第三代国王統治期(1952-1971)のブータン型近代化にあったこと、および理念を具現化するための計画手法であるPolicy Screening Tool(PST)が効果的であること、を示す。理念の歴史的起源は既往研究の解読によって、PSTの効果は再生可能エネルギー政策(2011)と国内電気料金政策(2015)に実際に適用された事例の分析によって、それぞれ行う。 研究の結果、第三代国王が、近代化は不可避だが同時に伝統的アイデンティティ維持もほとんど不可避な、僅差での選択を行ったことが、GNH政策の四本の柱を決定づけ、PSTは、政策立案段階においてデータに基づき定量的に、多角的でメリハリのあるチェック機能を果たしていることがわかった。
  • 米国・スウェーデン・台湾・タイの4カ国の大学生を対象としたアンケート調査を用いて
    佐藤 遼, 柏崎 梢, 伊藤 弘基, 李 度潤
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 749-754
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、海外の若年高度人材が日本などの他国への移住に関心を抱く段階において、諸外国と比較した際に、日本への移住に関心を持つ高度人材に文化的魅力が訴求しやすい、という仮説を定量的に検証することを目的として実施した。研究方法として、米国・スウェーデン・台湾・タイの4カ国の大学生を対象としたアンケート調査を実施した。研究成果として、まず、日本への移住の関心と関係する要因としては、日本の言語・食環境への適応意向や、文化の面白さ・生活の質への関心、島しょ部への居住経験や国際交流活動への参加への意欲などの文化的魅力と関係する要因が抽出された。他方、日本以外の海外諸国への移住の関心と関係する要因としては、文化的魅力と関係する要因の影響は相対的に弱く、就労環境や教育環境など、就学や就労という移住の目的と直結する要因が多く抽出された。本研究の成果からは、海外からの一時的な移住を促進する際に文化的魅力を訴求することの重要性が示唆される。
  • 改正まちづくり三法前後に移転した病院を対象に
    洲永 力, 野澤 千絵
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 755-761
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、改正まちづくり三法前後の10年間(2003年から2012年)に移転を行った70病院を対象にしたアンケート調査、及びケーススタディ病院へのヒアリング調査を行い、病院移転による立地変化の動向、公共交通網の交通アクセス性等の観点から分析することにより、病院移転における立地ニーズと敷地選定プロセスを明らかにすることを目的とする。調査結果として、改正まちづくり三法の施行によって、病院の立地が大幅に変化したとは言えない状況であった。病院移転時の立地ニーズと敷地選定プロセスでは、移転前敷地の近隣であること、及び移転の早期実現を重視する傾向が明らかになった。また、病院が立地する都市が持つ鉄道インフラ構造によって、病院の立地ニーズは大きく異なる傾向があることが明らかになった。
  • 有料老人ホームの開発審査会基準とそれを規定・未規定とする自治体に着目して
    松川 寿也, 中出 文平, 樋口 秀
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 762-768
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、開発許可制度における有料老人ホームに着目し、開発審査会基準での規定内容に加えて、市街化調整区域での有料老人ホームの許可実態を明らかにする。その結果、主として以下のことが明らかとなった。(1)多くの自治体では、有料老人ホームの開発審査会基準に関する具体的判断基準がなく、その基準があっても弾力的に運用されていること。(2)有料老人ホームの開発審査会基準を持たない自治体でも、調整区域内に有料老人ホームが複数立地していること。(3)その有料老人ホームの一部には、都市計画法の許可を得ない施設も含まれること。
  • 平野 頌之, 岡井 有佳
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 769-776
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、モータリゼーションを背景とした大規模集客施設の郊外立地が中心市街地の衰退を招くなどの影響を及ぼしている。本研究では、大規模集客施設の中でも特に郊外化の影響が大きいとされる大規模小売店舗に着目し、兵庫県を事例として、条例に基づく立地適正化の効果と課題を明らかにし、都道府県による広域的観点からの大規模小売店舗の立地適正化のあり方に示唆を与えることを目的とする。その結果、兵庫県の条例による立地適正化に関して、一定の効果がみられた。しかし、緩和規定が適用され、立地に至った店舗が確認できた。このため、県のゾーニングを上位計画として位置づけ、市町はそれと整合するよう考慮しながら詳細な土地利用の方針を定めることが求められる。
  • 福井県越前町を事例として
    北川 博喜, 野嶋 慎二, 石原 周太郎
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 777-783
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、過疎化が進む地方小都市に着目し、居住移動の実態を詳細に分析する、そして、今後の望ましい住み替えの場所と住宅形態のあり方に対する知見を得ることを目的とする。 (1)住民基本台帳より、5年間の転居812件、再転入678件、新規転入768件、転出2121件を抽出し、合計4379件の居住移動がみられた。 (2)越前町外の近郊部の田園開発地への転出が5年間で150件みられた。 (3)地域コミュニティを大事にした近距離の移動が200件みられた。海浜部では高齢期の世帯の近距離移動が多く、これ以外のエリアでは家族形成期の世帯の近距離移動が多くみられた。 (4)都市近郊部の用途地域では、工業系用途地域にある民営住宅への若い単身者の新規転入による、局所的な人口増加がみられた。
  • 市街地拡大に対する考え方と開発許可条例の運用に着目して
    酒本 恭聖, 瀬田 史彦
    原稿種別: 論説・報告
    2016 年 51 巻 3 号 p. 784-790
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    立地適正化計画は、コンパクトシティを推進するために2014年に国が創設した制度である。しかしこれは、市街地を拡大させる開発許可条例の運用とは相反するものと考えられる。コンパクトシティ政策は人口減少問題を抱えるすべての自治体に必要なものと考えられるが、一方で開発許可条例によって市街地を拡大させてきた自治体がある。本研究では、まず、これらの自治体をアンケート調査から浮き彫りにする。そして、具体的なケーススタディによって「立地適正化計画」と「開発許可条例」との関係を明らかにするとともに、自治体が立地適正化計画を策定する意義と課題について考察する。
  • イノベーティブ・タウン仮説の提示とその妥当性の検討
    城所 哲夫, 近藤 早映
    原稿種別: 論説・報告
    2016 年 51 巻 3 号 p. 791-797
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、日本の地方都市の地域活性化の進め方と中心市街地の役割に関する考え方として、ライフスタイル産業仮説とクリエイティブ・タウン仮説から構成されるイノベーティブ・タウン仮説を提示した。イノベーティブ・タウン仮説の肝は、ライフスタイルを生かした地域の活性化と、そのベースとなるアイデアを喚起し、人と人をつなぐ場としての中心市街地の役割である。中心市街地活性化の好事例としてとり挙げられることの多い地方都市についてイノベーティブ・タウン仮説の適合性を検討したところ、中心市街地活性化事業の展開の仕方(行政主導型、協働型、民間主体型)の違いにより、そのアプローチの違いはみられるものの、全体として、イノベーティブ・タウン仮説に適合したかたちで中心市街地活性化事業が展開していることが確認できた。とくに「民間主体型」において、より直接的にライフスタイル産業の生成に結びつく活動が展開していることが指摘できる。一方、「行政主導型」「協働型」においては、ライフスタイルの彫琢、市民のネットワークの形成、魅力的なパブリックスペースの創出等の中長期的な目標が重視される傾向がある。
  • クリーブランド市におけるケーススタディ
    藤井 康幸
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 798-803
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    滞納物件差押には大きくは抵当融資滞納差押と税滞納差押の2種類があり、前者は民間が扱う領域、後者は行政が扱う領域である。米国においては、自治体はしばしば市場において税抵当や税滞納物件そのものを売却することで税収の回復をはかる。本研究においては、クリーブランド市の中位市場地区と低位市場地区の2地区をケーススタディとして取り上げ、滞納物件、空き家等の差押後の所有、納税状況の変化とランドバンクの役割を検証した。滞納物件差押を扱う各方策には適した市場というものがあり、抵当融資滞納差押は市場性の高い地区において機能する一方、迅速な行政手続による税滞納差押は市場性の低い地区における荒廃除去に効果を発揮していることがわかった。市場メカニズム、とりわけバルクでの税抵当売却は、衰退した近隣のさらなる疲弊を招いており、問題を抱えている。ランドバンクは、迅速な行政手続による税滞納差押を通じて多くの物件を取得し、力量を発揮している。それに対し、司法的税滞納差押の扱った物件においては少なからず、税滞納が繰り返されている。
  • 公共空間の整備事業に関して民間側に費用負担を実効的に求める費用回収の手法に着目して
    金井 利之, 内海 麻利
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 804-811
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    経済成長が見込めないなかで、都市施設の整備や市街地開発事業(以下、「整備事業」)を実施する際に、(1)合理的な土地利用計画の改訂に基づいて、(2)整備事業をする際に、(3)基礎的自治体が、(4)公共空間の整備によって受益する民間事業者側から、(5)法的強制力を背景に、(6)負担金または都市土地施設等の提供により、公平な負担を求め、(7)それを実効的に運用する、「費用回収」の手法が求められている。この点について、オランダでは2008年の改正空間計画法に「土地活用事業」を規定し、(I)計画的で(II)柔軟性のある(III)実効的な費用回収の仕組を導入した。本研究では、オランダの土地活用事業制度の費用回収の手法について、制度(土地活用事業計画及び土地活用事業協定)と運用実例を紹介する。具体的には、市が整備事業を行う際には、地区詳細計画の改訂と土地活用事業計画の策定を位置づけ、マスタープランである構造ビジョンに指定することで、民間事業者に負担金の賦課するなどによって費用回収を計画的に図る制度を背景に、土地活用事業協定によって柔軟に調整するものである。この手法は日本の費用回収へも示唆があるだろう。
  • 東京都・大阪市・横浜市に着目して
    中西 正彦, 加藤 仁美, 桑田 仁, 杉田 早苗, 大澤 昭彦
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 812-819
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    わが国の建築物に対するインセンティブ制度の代表である総合設計制度は、市街地形成に一定の成果をもたらしたが、一方で適用事例が紛争の原因となるなど問題も多く指摘されている。しかし成熟・停滞社会を迎えて、都市づくりにおけるインセンティブ制度は、いっそう重要度を増している。本研究は、導入から40年以上が経つ総合設計制度について、国が定めた制度を地方自治体がどのように受け止め運用してきたかを明らかにするものである。具体的には、まず国の総合設計制度に関する許可準則・技術基準の変遷を概観する。次に同制度を多く適用してきた自治体として、東京都、大阪市、横浜市を取り上げ、それらの市における運用の基準の変遷をまとめ、共通点と相違点を明らかにする。またその要因や都市政策体系における位置づけなどを分析・考察し、これらを通じて、今後の市街地コントロール手法、特にインセンティブ制度のあり方について示唆を得るものである。
  • 齊藤 広子, 中城 康彦
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 820-826
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    定期借地権マンションの立地、建物概要や借地契約・費用負担の実態、管理上の課題とそれへの対応実態などを明らかにした。定期借地権マンションは都市のコンパクト化や土地入手困難地域での立地、公的主体所有の土地の有効利用、さらに住戸面積のゆとりのあるマンションの供給に一定寄与している。しかしながら、供給時の設定された法的関係、それに対する対価の設定、維持管理計画においては根拠が不明確なものがあり、現行法においての課題がある。さらに、契約関係が明確になっていない、契約内容が承継されていない、解消に向かってのプロセスプランニングがない、底地の買取の対応策がないという問題がある。また、借地契約関係への管理組合・管理会社の関与が現行法では困難と考えられているが、実態では多くの関与があり、関与が求められている。こうした実態を踏まえ、今後の課題として管理組合・管理会社の借地契約関係の関与の立法的対応、利用期限のある建物の計画修繕や解体準備のあり方、底地の買取制度等を検討し、供給時から体制を整備することが都市部の土地の有効利用につながると考えられる。
  • 日野市を対象として
    小澤 一嘉, 村木 美貴
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 827-832
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    首都圏の多くの住宅地は、建物の老朽化や居住者の高齢化、余剰ストックの増加が問題となっている。そのため、計画的な整備の実現には、小地域の実情を考慮し、政策の優先順位の決定や地区に応じた整備の方向性を検討することが必要とされる。本研究は、地区特性と将来住宅ストックの観点から、自治体の住宅マスタープランと連動して地区に応じた住宅地整備の方向性を明らかにするものである。研究の分析方法は、日野市の住宅地を人口や住宅ストック、住環境といった地区特性指標から、住宅地の特性を類型し、各地区で将来の住宅需要を算出し分析を行う。研究の結果、住宅地の整備の方向性を検討する上では、住宅地の実情を考慮した地区割りの検討や将来の世帯動向を考慮して住宅ストックの管理を行うことが必要だと結論付けられた。
  • 世帯数と住宅数の差分に着目して
    石河 正寛, 松橋 啓介, 有賀 敏典, 金森 有子, 栗島 英明
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 833-838
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は現況における空家の地域内分布を全国的に比較可能なかたちで把握するとともに、その将来的な趨勢変化の推計を試行した。建物ポイントデータの住宅数と国勢調査の世帯数の差分が住宅・土地統計調査の空家数に相当すると想定し、建物ポイントデータにもとづく住宅数が住宅・土地統計調査の住宅数と近い値になるよう対応付け、現況における建て方別空家数を3次メッシュ別に推計した。本研究による住宅数の対応付けにより、住宅・土地統計調査の住宅数を約95%カバーする住宅数を建物ポイントデータから抽出することが可能になった。また、本研究の手法を用いて千葉県を対象に空家の地域内分布を推計した結果、県の東部の海岸沿いで40%を超える空家率となるおそれがあること、市域の中でも高齢化が進んでいる地域での空き家化が進むことを図示した。今後、建物ポイントデータ外に存在する住宅や建物ポイントデータ内の住宅系建物以外に存在する住宅について精査することなどが課題である。
  • 山形県及び県内市町村を対象として
    矢島 侑真, 十代田 朗, 津々見 崇
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 2566-573
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、全ての世界遺産登録運動の明確な見通しが立っているわけではない我が国において、登録運動による地域への蓄積や派生事象の考察から今後の登録運動のあり方に資する知見を得ることを目的とする。研究対象は登録運動開始から5年後に中止を宣言した山形県及び県内26市町村とする。まず、県の事業の変遷を追う。次に県内26市町村を対象にアンケート調査及び広報誌より登録運動を契機とした文化財保全活動を抽出し、各活動代表者へのヒアリングからその展開及び県や県の事業との関係を明らかにする。最後に登録運動の蓄積や派生事象をまとめ、登録運動による文化財保全充実に対する示唆を得る。その結果、(1)山形県の登録運動中止前後で市町村の幅広い文化財保全活動を充実させる環境が整えられたことがわかった。(2)登録運動関連の活動は、世界遺産登録準備に関わるもの、地域遺産の価値付けに資したもの、「山形の宝」事業に関わるものがある。(3)登録運動を契機に発足した住民組織が運動中止後に新組織に派生した事例がみられた。(4)登録運動を自律的なまちづくりに結びつけるには国際的な視点の前に、地域内の意識醸成と地域遺産への価値付けの重要さが示唆された。
  • 人口40万人規模の富山市を対象として
    鈴木 温, 杉木 直, 宮本 和明
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 839-846
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    我が国の多くの都市では,立地適正化計画等の政策を通じて,居住地や都市機能の立地誘導を促す政策が各地で検討されており,都市内の人口分布予測や誘導施策の影響評価等は,今後,益々重要性を増すと考えられる.マイクロシミュレーションは,個人のライフイベントの発生や転居に伴う居住地変化を確率的に計算することによって,将来の世帯構造や人口分布を予測できる.しかし,国内外でこれまでも開発されてきたが,データの制約や計算能力の制約から適用範囲が限られていた.そこで,本研究では,約40万人の富山市を対象に,全市民を対象としたマイクロデータを用い,ライフイベントの発生に伴う世帯構造変化や居住地の変化を確率的に計算できるマイクロシミュレーションモデルを構築し,将来の人口分布を予測するとともに精度の検証を行う.
  • 丸山 洋平, 大江 守之
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 847-853
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    日本は今後長期にわたって人口減少、少子高齢化が地域差を伴って進行する社会であり続ける。こうした社会において効果的な政策を実施するには、将来人口推計の結果を政策形成過程に反映させるという視点がより重要性を増してくるだろう。地方自治体が複数のケースの将来人口推計を行うようになった点を踏まえて、この結果を利用しつつ、住宅所有関係別一般世帯数(居住世帯のいる所有関係別将来住宅ストック数)と世帯人員数を推計する方法を開発しようとするものである。これにより人口減少が顕著な地域においては、持ち家や借家の世帯数がどれだけ減少するか(空き家の発生)や、持ち家や借家での高齢化がどのような違いを伴って進むのかを明らかにすることが可能となる。本稿は、この推計モデルを福井県に適用して推計精度を分析し、将来推計結果を検討したものである。
  • 栃木県宇都宮市の中心市街地周辺の住宅地を対象に
    坂本 慧介, 横張 真
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 854-859
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,地方中核都市である栃木県宇都宮市の住宅地を対象に,ポアソン回帰モデルを用いて空き家と空閑地の発生動態の相違性を解明することにより,人口減少期における既成住宅地の住環境の再編に向けた基礎的知見を得ることを目的とした.研究の結果,空き家の多寡と撤退タイプ空閑地の多寡には開発年代との関係による類似性が見られるものの,空き家の多寡が駅からの距離や10.0m以上の広幅員道路延長の割合といった住宅需要を牽引する立地的特性と強く関係している一方で,撤退タイプ空閑地の多寡にはそのような関係が見られなかった.つまり,空き家の発生動態は住宅需要と密接に関係しているが,撤退タイプ空閑地の発生動態には住宅需要以外の要因による影響が強いことが示唆された.今後,既成住宅地における住環境の再編を進めるにあたっては,上述のような両者の発生動態に作用する要因の違いを考慮した施策の検討が必要であると考えられる.
  • 東京圏1都3県の都市地域での町丁目単位の分析
    相 尚寿
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 860-866
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    就職、進学、転勤などにより転居する場合、一般的に町丁目単位までは居住地を制約されないため、町丁目単位での人口増減は一定の割合で居住地選択の結果を反映すると仮定し、若年人口と生産年齢人口に着目して、その増加が見られる町丁目の住環境特性の把握を試みた。各種施設への距離や土地利用あるいは住宅の種類など13の住環境指標と人口増加との間にカイ二乗検定で有意な関連があることを検証し、残差分析で各指標がどの程度の値のときに人口増加に影響するかを導出した。さらに判別分析により判別式の係数を算出し、この係数の絶対値を各指標が人口増加に与える影響度として利用し、残差分析の結果を統合しつつ町丁目ごとの住環境を得点化した。既報である全人口の場合の各指標の影響度の差異を考察すると同時に、本報告で導出した住環境得点も人口増加との有意な関連性を示し、若年人口では平均以上、生産年齢人口では平均をやや上回る水準の地域で有意に人口増加が多いことを明らかにした。
  • 東京都23区における地区分類と手段別分担率との関係の分析
    嚴 先〓, 鈴木 勉
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 867-874
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    都市の持続可能性を高めるための対策の一つとして注目されている概念が混合土地利用である.しかし,混合土地利用の具体像はあまり明確ではなく,混合土地利用パターンの定量化についての検討は必ずしも十分とは言えない.そこで本研究では,一般的なポリゴン形式の土地利用図から用途間の空間関係に着目した混合度指標を提案し,市街地における混合土地利用パターンを定量的に測定することにより,より適切な地区分類の可能性を検討すると共に,混合土地利用が交通手段選択に与える影響を明らかにすることを目的とする.まず,隣接性,集積性,近接性の混合度指標は用途間の異なる空間関係を表しており,各指標とその組合せにより,土地利用パターンが説明できる有意な情報を持つ.次に,混合度指標の因子得点を用いたクラスタリングの結果,土地利用構成比が類似していても混合土地利用の様相の異なるパターンを区分することが可能となる.最後に,異なる用途との隣接による混合は自動車の分担率を高める一方,集積による混合はそれを低下させ,徒歩の分担率の向上に寄与する結果となり,同じ用途間の混合であっても空間関係によって影響が異なることが明らかになった.
  • 安達 修平, 鈴木 勉
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 875-880
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿はバランスのとれた交通網形成に役立てるため、(高速交通網がもたらした国土構造の形成を旅客交通の所要時間の観点から評価し、)国内市町村間の高速交通網の整備度合いの格差・優先順位を比較することで地域へのアクセス改善の効果を交通手段別に明示し,大都市への集中や地域間格差について議論を行った.この結果、1)日本の交通網は東京・大阪間を軸に整備が進められ,その後格差を埋める形で地方の交通網の整備が行われた 2)九州地方では航空機による、東北では新幹線による平均所要時間の短縮効果が大きい 3)中央リニア新幹線の整備によるアクセス改善効果は長野県や山梨県などの中間駅付近の市町村で顕著に見られる ということが明らかになった.
  • 都内3区を対象とするケーススタディ
    山田 あすか, 讃岐 亮
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 881-887
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    放課後のこどもたちの活動の場である学童保育拠点は,就労支援や児童福祉の観点から,ますます拡充が求められている。その際,コストや整備期間の短縮といった観点からは地域資源の活用が有効であると考えられる。本研究では,都内の学童保育拠点の設置状況(単位面積あたり拠点数,1拠点あたり定員)が異なる3つの区を対象としたケーススタディとして,学童保育拠点の配置と,定員の過不足についての検証を行う。また,定員が不足する場合には拠点増設を想定し,[将来想定]条件での将来的なニーズの把握とそれに対応した拠点整備効果の検討を行った。拠点分布に偏りがある場合の利用圏域の調整など現有資源の有効活用,ならびに地域資源の活用を想定して拠点の圏域と定員の調整を行い,将来的な利用児の増加に対する対応可能性を示した。この成果は,高学年児童も受け入れる学童保育制度への移行や,1人あたり面積の拡充等に向けた道筋となる資料として一定の価値があると考える。
  • 鵜飼 孝盛
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 888-893
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,住民の投票行動を考慮した施設立地について議論する.施設は対象領域の任意の地点を立地の候補とする.さらに,住民はより近い候補を好むとの仮定の下で,全ての候補間での多数決を考える.候補となる点について,他に対して敗北する量は潜在的な評価と見なすことができよう.本稿では,住民は2次元平面上に分布している状況を対象とする.候補点が敗北するような対立候補の領域を幾何的に描く手法を提案し,そのような領域の面積を解析的に導出する.
  • 田中 健一, 古田 壮宏
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 894-900
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,都市における施設配置を公平性の観点から評価するために,Median Share Ratio(MSR)を用いた分析を行う.MSRは,Quintile Share Ratio(QSR)の変種であり,施設までの距離の分布に対して,その中央値に着目し,施設までの距離が大きい上位5割の人口に対する平均距離を,施設までの距離が小さい下位5割の平均距離で除したものとして定義する.需要が一様かつ連続的に分布する線分都市モデルにおいて,施設が一つおよび二つ存在する状況を想定し,施設位置の関数としてMSRを解析的に導出する. MSRはQSRと比較して場合分けが少なくて済むという操作性の高さを有しており,都市における公平性を分析するための有用な道具になることが分かった.
  • U市とN市の社会福祉協議会の運営実態
    高瀬 敦, 山田 あすか, 野原 康弘, 佐藤 栄治
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 51 巻 3 号 p. 901-908
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル オープンアクセス
    介護保険制度において,訪問介護にかかる移動の時間が報酬支払いの対象として点数化され,移動コストが改めて認識されている。本研究では,過疎・山間地域にも訪問介護提供を行うケースが多いとされる社協が運営する,訪問介護事業の運営実態の把握と,過疎・山間地域への訪問介護の状況を整理するケーススタディを行った。調査対象には,地方都市であって市街地と,比較的近傍の過疎・山間地域での訪問介護の状況を比較できるという条件で,地方都市であるU 市と,U 市に隣接し市域の70%が山間地域であるN市を選定し,この2市にある社会福祉協議会による訪問介護事業所4箇所からデータ提供を得た。 この利用者,ヘルパー,事業所の住所と道路情報をGIS に取り込み,全ヘルパーの介護提供記録から実際の道路情報をもとに,ヘルパーの移動距離(道路ネットワーク距離)や移動時間を計測し,サービス提供圏を算出した。結果として,調査対象とした4事業所では,N市:地理的条件により移動コストが大きい利用者,U市:回数と介護内容により介護負担・移動コストが大きい利用者,への訪問介護サービス提供を行っているという特徴を整理することができた。
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