都市計画論文集
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52 巻, 1 号
都市計画論文集
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 『明治三十二年 土地.帳 印旛郡八街村八街』を資料として
    廣橋 碧, 三島 伸雄
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、千葉県印旛郡に位置し明治8年から昭和15年の間に開墾会社永沢社によって開発された八街開墾地の特質を地目と等級の観点から明らかにすることである。永沢社は、佐賀藩士によって明治維新後に武士の地位を失った人々に対する窮民授産のために設立された。本研究では、近年発見されたために今日まで学術的研究に用いられたことのない『明治三十二年 土地?帳 印旛郡八街村八街』(土地台帳)を資料として用いる。土地台帳より、当時の各敷地の状況を復元させた地図を作成し、明治政府によって定められた地目と等級と比較した。結果として、街道筋宿駅の短冊状の伝統的地割りを踏襲して開発されたこと、明治半ばの鉄道開発が土地の等級付けにも影響したと考えられることなどが明らかになった。
  • 商業・医療機能の立地と核間公共交通に着目した都市間比較
    小澤 悠, 高見 淳史, 原田 昇
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は、「多核連携型コンパクトシティ」の考え方が自治体の計画でどのように現れているのかを概観するとともに、都市機能立地と核間公共交通が現状どのような状況にある場所が拠点として設定されているのかを、全国横断的に把握し明らかにするものである。具体的には、自治体の計画として都市計画マスタープラン、都市機能立地として商業・医療機能に着目して分析を行った。 得られた知見の概要は以下の通りである。(1)対象都市(79市)の46%(36都市)で「多核連携型コンパクトシティ」を明確に指向しており、目指すべき都市構造の1つとして定着している。(2)一方上述36都市中35都市の全415拠点のうち26%(108拠点)は、都市機能立地・核間公共交通の両面で利便性が低いと判断される。(3)三大都市圏を除くと、人口規模の小さな都市ほど、利便性が低い拠点が多く存在する傾向にあり、拠点が過剰に設定されている可能性が示唆される。
  • 細田 真一, 瀬田 史彦
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 1 号 p. 18-27
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は柏市中心市街地において、民間主体により道路区域内広場の整備及び維持管理が実施された事例に対して、文献調査及びヒアリング調査によって、その整備から維持管理までの過程を明らかにし、成功要因を探るとともに民間主体によってどの程度計画の自由度が高まり、魅力的な公共空間の創造に繋がったかを検証するものである。成功要因としては、商店街連合代表理事のリーダーシップ、地元専門家を中心とした整備及び維持管理の体制づくり、行政内の第三者的立場のセクションの参画等が資金調達、行政協議の推進に大きく影響したことが明らかになった。民間主体によるメリットとしては公費が削減されたこと、計画内容に対する利用者の評価が概ね高いものであったことが明らかになった。またその一方で、整備段階における資金調達や民間同士の協議の不調等が課題として残った。今後は新たに設立されたエリアマネジメント組織による状況改善が望まれる。
  • マルチエージェントシミュレーションを用いて
    見城 紳, 玉川 英則
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,人口減少を前提とした都市におけるコンパクトシティ政策と空閑地の緑地転換利用を行う政策が,緑地環境,コンパクト性に及ぼす影響について把握し,両政策の両立可能性について明らかにし,今後のコンパクトシティ政策,空閑地の緑地転換利用政策の指針を定めるための知見を得ることを目的とする.マルチエージェントシミュレーションによって都市シミュレートを行った結果より,空閑地を暫定緑地に転換することで緑地環境が一時的に向上するが,いずれ都市的用途にとって代わってしまうことが示され、集約化の初期段階において空閑地の暫定緑地転換政策により緑地を暫定的に確保したうえで,街区レベルで緑被率等の目標値を定めるなどし,暫定緑地を恒久的な緑地選定の際の候補地として利用することで,コンパクトシティ政策及び,空閑地の緑地転換利用政策が両立できると考えた.
  • 安 成光, 松橋 啓介, 鈴木 勉
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 1 号 p. 34-41
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,Landsat衛星画像を分類することによって,都市毎の市街地変化を,また,OSM地図データから,鉄道網の時系列変化を計測し,都市間の比較を行った.先進国の大都市では1985年以降市街地拡大が少ない一方,新興国や途上国での急速な市街地拡大によって都市形状が顕著に変化したことや,都市毎の鉄道路線整備に差異が見られることを明らかにした.次に,市街地拡大による移動時間増加と鉄道網整備による移動時間短縮効果に着目して市街地形状と鉄道網との連携度および短縮度の指標を定義し,鉄道網の充実度との対比を行った.公共交通が発達したロンドンと東京は連携度が高く評価された一方,中国三大都市では,市街地拡大が郊外部まで広がったため連携度が低いレベルにあることなどが明らかになった.そして,コンパクト化寄与地区の分析から,平均移動時間を短縮する意味では中心市街地がコンパクト化寄与地区となるが,連携度指標が高いという意味では,鉄道網沿線や鉄道網が整備された郊外部の市街地がコンパクトな市街地形成に寄与できることを明らかにした.
  • 釜山公設富平町市場・木浦公設市場を対象として
    砂川 晴彦, 伊藤 裕久, 延 圭憲, 栢木 まどか, 濱 定史
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は、日本植民地期朝鮮の釜山と木浦における公設市場を対象に、その空間構成を明らかにする。そして、居留地周辺部にみられる商業市街の形成過程について2都市を比較する。研究結果は次のようである。大正期の釜山公設富平市場は、段階的に街区形状と一致する売店が建築された。一方で、近隣の路上市が吸収された。木浦公設市場とその周辺街区(南橋洞)は、昭和初期に埋立てされた新市街である。当地区は、日本人により、市場に隣接する4つの長方形街区が建設され、韓国人の土地所有が混在し、街路両側の表長屋からなる商店街が形成された。
  • 西山 貴史, 伊藤 香織, 丹羽 由佳理
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    近年,市民ロードランナーの拠点であるランニングステーションが増加している.本研究では,皇居周辺の5施設の利用者へのアンケート調査によりランニングステーションの利用実態を把握し,利用満足度を構成する要因を明らかにする.因子分析によって[イベント],[快適性],[利用満足度],[機能性],[交流],[ショップ],[交通利便性]の構成因子が抽出され,共分散構造分析によって6つの因子がどのように[利用満足度]を構成するのかを明らかにした.得られた主要な結果は,(1)[快適性]が[利用満足度]と最も関連が強い,(2)[イベント]は[交流]を介して間接的に[利用満足度]を構成する,(3)自宅アクセスは施設利用者の満足度評価との関連が弱い,(4)利用頻度の高い利用者,若い世代,同伴者のいる利用者では[交流]が[利用満足度]を構成する重要な要素である.
  • 愛知県豊橋市の南米系外国人市民向けの行政と市民団体による多文化共生事業を中心に
    蕭 閎偉, 城所 哲夫, 瀬田 史彦, 佐藤 遼, 李 度潤
    原稿種別: 論説・報告
    2017 年 52 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    「多文化共生」という言葉が近年広く地域社会に知られるようになり、その背景には1990年代の日系南米人など「ニューカマー」の急増があった。本稿は、多文化共生行政に約15年の歴史を持つ豊橋市を対象に、多文化共生のまちづくりの実務として各団体による多文化共生事業の現状及び課題の把握に主眼を置く。行政側及び民間団体による「コミュニケーション支援」、「生活支援」、「地域づくり」の三種の実施事業の現状について考察し、いくつかの課題を明らかにした上で、「多文化共生の複眼的な視点」、「社会的包摂の実現」、「外国人に優しい就労環境づくり」、「外国人市民による社会参加の向上」、「多文化共生人材の育成と活用」などを今後の多文化共生事業に向け提言としたい。また、多文化共生事業はサービスを受ける側の通勤圏等アクセス性を考慮する必要もあるため、今後の事業展開は需給両側の立場を考慮した空間的分析も必要と考える。
  • 都市評価指標枠組みの比較検討
    山下 嗣太, 林 憲吾, 森 宏一郎, 内山 愉太, 藤井 豊展
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 1 号 p. 63-71
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は既存の都市評価指標との比較検討を通じて、筆者らが開発してきた都市のサステイナビリティ評価指標(City Sustainability Index、CSI)の枠組みを提示する。既存の指標には歴史的背景の違いにより3つの系譜があるが、いずれも都市のサステイナビリティを評価する上での要件を明示していない。そこで(1)「強いサステイナビリティ」への立脚、(2)絶対評価と相対評価の区別、(3)都市の漏出効果の考慮、という3つの要件を明確化し、「制約指標」と「最大化指標」という二種類の指標を備えたCSIの概念枠組みについて論じる。これに基づいて構築したCSIのプロトタイプを用い、18のメガシティを対象にした評価結果を提示する。既存の指標と比較すると、CSIには地球環境と社会・経済的な公平性に関するサステイナビリティを絶対的に評価できる利点がある。一方、政策評価の枠組みが備わっていないという限界が明らかになり、この点について補完手法の開発が必要である。
  • 野中 勝利
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 1 号 p. 72-83
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は近代の和歌山城址において、風致を破壊する計画とそれに反対する取り組みの経過を明らかにすることを目的とする。風致の破壊とは濠の埋め立てや石垣の取り壊しのことである。1910年に軌道整備に伴う濠の埋め立てがあった。1914年に和歌山市による道路整備に伴う濠の埋め立て計画では、市議会や新聞に反対する意見が出された。結局、和歌山市長はその計画を撤回した。1915年には風致の破壊を伴う和歌山城址の公園改修が計画され、賛否の意見があった。最終的に和歌山県知事はそれを許可しなかった。1922年から1923年にかけて、再び濠の埋め立て計画が浮上し、一部の埋め立ては実施された。
  • 蛭田 有希, 浅見 泰司
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 52 巻 1 号 p. 84-92
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2017/04/25
    ジャーナル オープンアクセス
    市街地の熱環境問題や気候変動への適応への要請を背景に,市街地の自然的要素がもたらす正・負の効用の定量評価が求められている.本研究は,市街地の自然的要素の定量評価に不可欠な樹木量データの整備手法を提案することを目的とする.提案手法は,航空レーザ測量により得た高さデータから,既存データを使って樹木分布域以外を除外し,残存するノイズを樹木の分布特性のモデル化により除外することで,樹木の分布域とその高さを特定するものである.提案手法は,広域において均質,高解像度,3次元的,といった条件を満たす樹木量データの整備に有用だと考えられたが,他方で課題も示された.また,手法の提案を通じ,1)人工構造物の空間情報の精緻化は同時に複雑な自然的要素のデータ化にもつながるという点,2)自然的要素のデータ整備においては自然の摂理に従う樹木の形状や分布の特徴を発見・活用するという観点が重要であるという点を指摘した.
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