都市計画論文集
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54 巻, 3 号
都市計画論文集
選択された号の論文の178件中151~178を表示しています
  • 栗田 卓也, 村木 美貴
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1372-1378
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、新たな公(新しい公共)の考え方が、政府の政策にどのように位置づけられてきたのかというテーマをとりあげる。政府の政策意思の最も重要な決定、表現手法である閣議決定において、新たな公の考え方が位置づけられた嚆矢は、国土形成計画(2008年閣議決定)である。国土計画の系譜の中で、どのような思想発展を遂げてきたのかを研究することは、新たな公の政策への位置づけへの流れを理解し、それが日本社会のあり方とどう関係するのかを考える上で、有益と考えられる。本研究では、地域経済の下支え機能を公共投資に依存することなく、地域社会の持続可能性、自立性を確保するための仕組みとして、多様な主体が公共的役割を果たしている実態も踏まえた国土形成計画の検討過程を子細に振り返っている。そこでは、政府部門の補完という受動的な位置づけにとどまらず、受益者から供給側への転換等を通じて、個人の満足度を高めるといった新しい公共の多面的な意義とともに、政策への位置づけの大きな転換の有り様が示される。

  • 地方圏立地企業の刊行社史を用いた分析
    福田 崚, 城所 哲夫
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1379-1386
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    地方圏の経済発展の促進という関心から、何が地方圏立地企業のイノベーションに寄与しているのかを明らかにすべく、プロセスが詳細にわかるという利点を持つ刊行社史の記述に基づいた分析を行った。特に、インプットとして社会関係資本と人的資本、アウトプットとしてイノベーションの新規性に着目し、比較を交えて考察を展開した。まず、テキストデータに基づき類型化・定量化を行い、創業者の地理的背景に基づき、地域内外の社会関係資本・人的資本の蓄積を記述した。これを利用して、クロス集計と回帰分析による考察を行った結果、人的資本と社会関係資本が複合的に作用した場合に、地域内あるいは国全体で初めての事業を行うような、新規性の高いイノベーションが生まれることが分かった。

  • 能登空港ターミナルビルを事例として
    天目 岳志, 岡村 祐
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1387-1394
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、地方空港の地域住民を対象とした公共性を有する活用法として、地域交流拠点としての活用に着目する。こういった空港ビルの非航空活用は収益のみならず、利用者の航空利用意向向上にもつながるという仮説の下、地域側をターゲットに据える意義を明らかにすることを目的としている。まず、全国の非航空活用事例を整理し、空港内の貸室が地域交流拠点として機能しうることを示した。先進事例8空港にヒアリングを行った結果、5つの空港では貸室を地域住民に開放することを方針として掲げていることも明らかとなった。中でも能登空港は、年間利用者数も約35000人と実態も伴っていた。それは、行政が活用に携わり、地域側からの利用・訪問を誘致する構造を作っていることが機能していることも明らかになった。一方で、利用者へのアンケートから、彼らは空港施設を地域交流拠点して利用するに際し、「アクセス性」、「駐車場の存在」、「航空ネットワーク」の活用といった特徴に利便を感じており、また利用の結果、彼らの航空利用意向にも影響を及ぼすことも明らかとなった。

  • 福島県浜通り地域を対象として
    齊藤 充弘
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1395-1402
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,原発立地地域である福島県浜通り地域を対象として,原発事故前後の地域構造の特徴を明らかにすることを目的とする。そのうえで,原発事故からの復旧・復興の特徴と課題を提示しようとするものである。原発立地後からの地域構造の変化について,人口や事業所の集積にみる社会構造と道路体系や市街地の形成にみる空間構造より捉えて調査・分析した。社会構造をみると,人口増加や就業構造の変化など原発とその関連事業所の立地による影響を受けていることがわかった。また,そのことは面的な道路体系や市街地の形成・拡大みる空間構造にも影響していることがわかった。復興計画書を分析すると,事故前の地域構造を復旧・復興させるための取り組みと,事故後の復興にむけた新たな取り組みがあることがわかった。そのことは,農地・未利用地を宅地化して,住宅や工業・商業施設などの誘導を通して新たに市街地を整備する形となっている。復旧・復興が進む広野町の実態をみると,新たな場所に新たな人口を受け入れる形となっていることより,事故前の社会構造と空間構造をふまえて,新たな復興への取り組みによる地域構造の変化との関係を構築していくことが求められる。

  • 都市計画区域マスタープランと市町村都市計画マスタープランの比較考察を含めて
    鶴田 佳子, 根本 一樹, 佐藤 雄哉, 櫻木 耕史
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1403-1409
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、広域都市計画区域に含まれる市町村の中で、都市縁辺地域で調整区域面積の割合が高い市町村における土地利用の課題を把握することを目的とする。分析の結果、次のことが明らかになった。都市計画区域マスタープランの人口フレームとは別に町の人口フレームに基づいて整備・開発をすすめていることがわかった。また、拠点設定では、都市計画区域マスタープランに定められる拠点に加え、町独自の拠点を設置し、その拠点の開発手法は地区計画を検討しているが、低密度集落の点在と農振農用地による土地利用制限という課題があることがわかった。

  • 東京都心部の附置義務駐車場に着目して
    塩原 碩茂, 村木 美貴
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1410-1417
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国の都心部における商業地域では、建物と同一敷地内への附置義務駐車場の整備によって、収益性の低下が問題視されている。そこで主要都市では、利用可能性の高い1階部分への駐車場設置の代わりに、特定の駐車場に集約化させる「集約駐車場」の整備を推進している。集約駐車場は、段階的な建物の更新に合わせて、その規模や配置を決定することが必要とされているが、整備のあり方は明らかにされていない。そこで本研究では、都心部の附置義務駐車場を対象に、市街地更新を考慮した段階的な駐車場整備のあり方を明らかにする。本研究では、費用対便益の観点からを検証することで市街地更新に合わせた段階的な駐車場整備のあり方を明らかとした。

  • 先導的官民連携支援事業からみた官民連携の推進傾向と課題
    泉 あかり, 村木 美貴
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1418-1423
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国では、現在、限られた行財政での公共施設の有効活用が求められている。それは、多くの地方自治体において、人口減少に伴う財政状況の悪化が懸念されるためである。一方、公共施設マネジメントにおいては、官民連携の導入が近年注目されており、公共支出を削減しつつ必要な公共施設の更新が期待されている。本研究の目的は、公共施設マネジメントにおいて公共と民間事業者がいかに連携するか明らかにすることである。本稿では、我が国の公共施設マネジメントにおける官民連携の方針と国内の先進事例を参照する。結果として、官民連携事業の推進に向けては、対象施設に応じた手法の選択と民間事業者へのインセンティブが重要と明らかになった。

  • 奄美大島龍郷町秋名・幾里集落を対象として
    齋藤 嘉克, 佐藤 宏亮
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1424-1429
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    「日本創生会議・人口減少問題検討分科会」は、2040年までに全国の市町村のうち約半数が消滅する恐れがあると発表した。移住定住促進を意図した政策により、近年国民の地方回帰意向が高まりその動きが注目されてきている。本研究では、奄美大島龍郷町秋名・幾里集落を対象地として研究を行なった。本研究対象地は奄美大島龍郷町20集落の中で、若年層のUターン者が多く、2008年から2018年の10年の間で急激に増加している。一般的に沖縄・奄美地域は帰還性が強く定年退職後のUターンについては離島研究の多くでも言及されてきた。しかし、若年層Uターン者の増加やその要因についての分析や報告も少なく、若者の回帰促進を考える上で回帰を促進する要因とその形成プロセスの究明は重要性が高い。

  • 国鉄線路沿いに建設されたAirport Rail Link郊外駅周辺に着目して
    伊藤 智洋, 窪田 亜矢
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1430-1437
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は都市鉄道計画と空間整備の不連携が課題となっているバンコクを対象に、郊外駅周辺での商業施設の変化を駅開業前後に着目して明らかにし、駅周辺商業施設のあり方に対する示唆を得ることを目的としたものである。駅周辺の商業系土地利用に駅開業前後での変化は少なく、数少ない駅前商業開発の中には競争の中で経営不振に陥った事例も見られた。一方で市街地拡大の軸から離れたAirport Rail Link郊外駅周辺では屋台や小規模食堂といった個人経営店舗の新規出店が多く見られた。また駅周辺住民へのアンケート調査では、駅開業前から存在する箱物商業施設を使いながら都市鉄道を日常的に利用する人が見られた。箱物商業施設がない駅周辺では個人経営店舗を利用する人もいたが、こうした人々は駅周辺内で完結する生活を送っており、都市鉄道の利用には至っていなかった。以上より、駅周辺の商業施設として、駅開業以前からある箱物商業施設を巻き込むこと、もしくは個人経営店舗の質・存在を担保することが有効である可能性を提示した。

  • 中西 正彦, 藤岡 麻理子
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1438-1445
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    都市計画を遂行するためには、目標とする将来像およびその実現の方針を示したプランを定め、そのうえでプランの実現手段を行使することが重要である。今日のわが国の都市計画制度にも、そのような役割と機能を持つ都市計画マスタープラン制度が存在する。しかしわが国の制度は硬直化しており、新しい課題に対応できてもいない。制度を再考するための一方策として、本研究では、類似の背景を持つ韓国と台湾のマスタープラン制度の実際を調査し、日本の制度との比較を行うものである。比較の結果、それぞれの国の制度に特徴的な点があることがわかった。韓国の制度は国土計画と都市計画が連動しており、また近年、生活圏計画という新しいマスタープラン制度が加わった。台湾は計画と手段が連動しており、都市計画を変更するには必ずマスタープランを変更しなくてはならない。それぞれの特徴と課題があきらかとなり、日本の制度を再考するための示唆を得ることができた。

  • グライフスヴァルト原発の廃炉と立地地域
    乾 康代, 中田 潤
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1446-1451
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    ルブミンは,工場団地の成功と顕著な税収増で,地域再生を果たした。この成功でもたらされた成果は,ルブミンが人々に選択される居住地,人々が訪れる観光地になったことである。ここから引き出せる教訓は,原発立地地域の地域再生策は,廃炉事業に依存せず,地域資源や立地を生かした産業の育成と,人々を惹きつける居住地づくりにおくことにある。

  • 蕭 閎偉
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1452-1459
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、台北市において20年程度の歴史を有する主要3容積移転制度の中から、歴史的保全地域を対象とする迪化街容積移転に着目して①主要3容積移転制度の実績を踏まえた迪化街容積移転の位置づけの解明、②出し地・受け地に着眼した運用実態と地域の変容として修復・修景した建造物の利活用の実態の解明、③設定した指標の推移に基づいた運用実態への評価を行った。本研究が特に迪化街容積移転の運用に伴う地域変容について、修復・修景した建造物の利活用の実態を解明した結果、近年では歴史的街区の中心商店街である迪化街一段両側では新規店舗の急激な増加が見られ、その実態は廃業する伝統地場産業の問屋系店舗の代わりに文創店舗が多く流入し、全店舗の4割強を占めている。容積移転と地域変容との関係性を検証すると、「新規店舗による活用率」が全体平均で72.5%にのぼり、容積移転の運用は新規店舗の増加との高い関連性が認められる一方、「文創店舗による活用率」が48.7%に留まり、容積移転に伴う建造物の修復・修景は文創店舗流入の契機ではあったが、必ずしもその増加に大きく寄与していない。一方、修復・修景が多い中心商店街から離れた路地の一般建造物にも有機的に多くの文創店舗が流入しており、地域に大きな変容をもたらしている。

  • 富樫 遼太, 後藤 春彦, 森田 椋也, 山近 資成, 山崎 義人
    原稿種別: 論説・報告
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1460-1467
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    存続が危ぶまれる農村集落において、集落の担い手確保や生産能力維持等を支援する外部主体の活動が多く行われる一方で、新潟県小白倉集落では、AAスクールによる集落支援を直接的な目的としない活動が22年間継続されてきた。本研究では、AAスクールの活動であるWSと住民の活動でありAAスクールとの交流機会である祭事に着目する。両活動を通じて双方側から調査を行うことで、22年間を通じてみたAAスクールと住民の活動及び意識の変容を第三者の視点から明らかにすることを目的とする。WSはAAスクールと住民の協働の活動であるOSPJの一環として位置付けられ、WSの目的が外部主体による自身たちの教育活動から、住民に対する視座も含めた地域への貢献活動へと変容していた。長年継承されてきた祭事は大きく変容し、運営・慰労する対象が住民間で完結していたものから、AAスクールを含めた多様な主体に向けたものへと変容していた。外部主体の活動が継続するにつれ、双方ともに協調性が高まる形で意識が変容していた。したがって、両主体間の関係は、それぞれ独立した関係から、WS開始約10年後から様々な変容が顕著に見られ始め、協働関係に変化したことが明らかになった。

  • 北島 紗恵, 六本木 延浩, 冨岡 秀虎, 森本 章倫
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1468-1474
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    近年問題となっている人口減少や空き家の増加に対し,コンパクトシティへの転換が求められている.コンパクトシティ政策の実現のためには,行政が主体となって空き家の発生を抑制し,発生した空き家を有効活用しなくてはならない.そして有効な空き家対策を行うためには,将来の空き家分布を予測し,空き家対策に用いる指標を確立する必要がある.そこで本研究では,画像認識技術を活用することによる新たな空き家発生モデルの構築を検討する.深層学習を用いた画像認識技術を活用すれば,数値で表すことの難しい情報を,画像データとして扱うことができる.結果,公共交通網分布,用途地域分類,住居分布の空間データを用いた空き家発生モデルの有効性を確認することができた.

  • 都市計画の方針と立地規制の厳格さに着目して
    横澤 直人, 関本 義秀
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1475-1482
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国では1990年代以降,国際化の進展や本格的な少子・高齢化社会の到来を背景に,都市計画分野において分権化が進められてきた.各種の権限移譲に伴い,地方自治体が地域の実情に即した柔軟な計画策定が可能になった半面,市町村間での計画の不整合や競合が課題となってきた.従来の研究では,主として実証的な立場から都市計画策定段階における広域調整の必要性が示されてきたが,実際に広域調整を行うための支援手法は開発されてこなかった.本研究では,都市計画マスタープラン及び立地適正化計画を念頭に置いて,都市計画の方針及び立地規制の厳格さの調整問題を対象として,市民の立地行動と計画の影響を考慮した将来土地利用予測シミュレーションを構築し,広域調整の影響評価手法を開発した.シミュレーションを富山県内の市町村に対して適用し,検証実験や現地でのヒアリング調査,実際の事例との比較などを通じて手法の妥当性を確認するとともに,広域調整の影響に関する新たな知見を獲得することが出来た.今後は,シミュレーションの高度化や他の広域調整問題への対応,ユーザビリティ改善などを図ることが望まれる.

  • 四衢 深, 小林 隆史, 石井 儀光, 大澤 義明
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1483-1489
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    日本国内の仏教寺院数は7万を超え,極めてありふれた施設である.しかし,地方を中心に寺院を支えてきた檀家数が減少し,かつ葬儀形態の変容によって,寺院経営は困難な状況となっており,ストックの未利用化すら進行している.本研究の目的は,僧侶による檀家の見守り機能と,寺院を地域の拠点として利用することによって,寺院維持とストック活用を検討することである.先ず,僧侶による檀家の見守りサービスについて,岐阜県の不遠寺を事例に分析した.寺院と檀家の距離は年々増加しているものの,寺院と同一市内の檀家については概ね2km以下の距離となっていること.また,1日あたり3,4軒程度の檀家を巡回して読経を行っており,移動時間を含めて概ね午前中には巡回が終了することより,僧侶にとって過大な負担とはならずに,僧侶による見守り機能が実現可能であることを示した.次に,寺院の地域拠点化について,埼玉県において,面積と施設のジニ係数,及び施設と人口との距離分布の分析を行った.面積あたりで寺院が小学校やコンビニエンスストアよりも均一に分布していること,宗派による協力で小さくなる距離分布を数量的に表し,地域拠点としての活用可能性を示した.

  • 名古屋市におけるJAGESのパネルデータを用いて
    金 洪稷, 樋野 公宏, 薄井 宏行, 花里 真道, 高木 大資, 近藤 尚己, 近藤 克則
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1490-1495
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,近隣施設の密度と高齢者の社会活動参加頻度の変化の関係性を分析した.その結果,自己選択バイアスを考慮したパネルデータを用いた分析により,いくつかの種類の都市施設の密度は,高齢者の社会活動参加の多寡だけではなく,社会活動参加の増減とも関係していることが示された.つまり,都市部において,都市施設の立地誘導は高齢者の社会活動参加を促進するための一つの策になり得る.また,特に食料品店の場合,一定水準までは,より近い方が良い反面,近過ぎると社会参加が少なくなることを確認した.高齢社会において,自治体または居住者が日常的な買い物をしやすい近隣環境を考える際には,食料品店までの近接性だけではなく,社会参加に繋がる可能性も考慮する必要があると思われる.例えば,買い物弱者対策として宅配や移動販売に加えて,買い物に伴う交流にも目を向ける必要がある.

  • 袖山 仁志, 栗田 治
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1496-1503
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    地球上の各地には,扇状地や三角州といった扇状に広がる地形が多く見られる.このような土地に位置する都市では,河川が都市を分断するために都市内の移動が不自由であるという側面を持っている.したがって,交通サービスには橋の存在が非常に重要なものとなる.この論文では,河川によって分断された扇状都市を隣接する複数の扇形でモデル化した.このモデルにおいて,隣接する扇形同士は橋によって接続され,橋を用いた移動の効率が橋の位置や本数にどのように依存しているかを数学的に説明した.さらに,富山県の黒部川扇状地にモデルを適用し,今回のモデルの妥当性を検証した.また,この地域における実際の橋梁建設順序が妥当であることも確認できた.

  • 矢﨑 有理, 栗田 治
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1504-1511
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    図書館は都市やコミュニティにとって不可欠な存在であり,身近で使いやすいものでなければならない.しかしながら、図書館の運営を担当する多くの地方自治体は財政的困難に直面している.したがって、図書館を運営するための予算が削減される可能性がある.そこで,図書館には限られた資源の中で良いサービスを提供するための効率的な管理が必要である.そのために本論文では,立地点の優位性と所蔵資料の数という2つの魅力からなる図書館サービスの評価法を提案する.特に湿地の優位性の方は“図書館デザート”によって評価する.これは,人々が図書館から非常に遠くに住んでいる地域であり,人々が図書館を容易に使用することが難しい地域を意味している.

  • 均等性と集積性の指標を用いた都市内人口分布比較
    劉 俐伶, 長谷川 大輔, 石井 儀光, 鈴木 勉
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1512-1517
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文は人口分布に焦点を当てて世界の主要都市の都市構造を分析する.均等分布の程度とクラスタリングの程度を明らかにするために,2つの指標,すなわちGini係数とMoran係数が採用されている.この研究では,世界規模の視点が採用され,人口30万人を超える1,710の都市がこれら2つの係数を使用して分析および分類される.主な調査結果は以下の通りである.一般に,人口の多い都市は集積が高く,一部のサブエリアに集中している傾向があるが,人口の少ない都市は均等に分散して広がっている傾向がある.さらに,国による地域差も明らかにする.

  • 渡部 宇子, 本間 裕大, 本間 健太郎, 今井 公太郎
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1518-1524
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,超高層建築物と周辺建築物との複合日影に着目し,超高層建築物による日影が街区の日照環境に与える影響を定量的に示す.具体的には,超高層建築物による日影の影響を,日影時間そのものの増加だけでなく,周辺建築物による日影との重複時間の増加という側面からも分析することによって,都市部における日照環境の特徴を明らかにする.本研究では街区における複合日影の影響を,時間と重複の2要素に分解し,(i)日影時間が増加する地域,(ii)影の重複が増加する地域,それぞれの時空間的特徴を明らかにする.詳細な日影シミュレーションを通して,周辺建築物が密集する地域においては,むしろ影の重複が助長され,結果として,重複時間のほうが増加傾向にあることを明らかにし,両指標が互いに補完的関係にあることを示した.既存の等時間日影図では到達しえない知見であり,今後,街区の採光性をより精緻に分析するための応用可能性を秘めている.

  • 丹野 一輝, 田中 健一
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1525-1532
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文では,道路網上に配置された複数の施設を所与とし,移動者が経路上で施設に出会うまでの距離の分布を導出する.移動の起・終点は,道路網上に連続的に分布する状況を仮定する.施設で提供されるサービスは,移動の目的地においても入手可能な状況を想定する.そして,決められた経路に沿って移動するフロー需要に対し,経路上に施設がある移動者は起点から施設までの距離を,経路上に施設がない移動者は起点から終点までの距離を対象とし,全移動者に対する距離分布を導出する手法を構築する.本研究の成果は,道路空間での歩行者や車両による移動者が,サービスを手にするまでの距離や所要時間の分布を意味しており多様な応用が存在する.例えば,競技場や公園等で大規模なイベントが開催される状況において,途中経路上に運営スタッフやポスターを配置し,目的地に到着する前に目的地でのイベント情報を提供することが可能である.人員の配置が情報提供の利便性に与える影響を提案手法によって見積もることが可能である.提案手法を実際の道路網に適用して距離分布を導出したところ,経路上の施設数に応じて距離分布が大きく変化することが明らかになった.

  • フロー需要の最大化と施設までのアクセシビリティ最大化
    田中 健一
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1533-1540
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    都市施設には,平日と休日の区別を問わずサービスを提供しているものも存在する.本稿では,通勤・通学経路上にある施設を利用する状況において,平日と休日の施設へのアクセス方法の違いに着目した施設配置問題を構築する.平日は経路上にある施設へは経路のどの駅に置かれた施設も同程度に望ましく,休日は自宅の最寄り駅から近い駅ほど施設へのアクセスが容易であると仮定して,経路上の駅に得点を設定する.すべての移動に対する得点の合計を最大化する施設配置問題を整数計画問題として定式化する.提案モデルを首都圏鉄道網上の通勤・通学フローのデータに適用し,最適解を数理最適化ソルバにより求め,得られた駅配置を分析した.経路上に施設が存在するフロー量を最大化する平日の設定のもとでは,新宿,渋谷,池袋,秋葉原などの,山手線上の駅が多く現れた.休日の移動を重視する設定においては,都心の駅以外にも,大宮,船橋,町田などの郊外の大規模駅が最適解に現れることを確認した.

  • 馬場 弘樹, 浅見 泰司
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1541-1548
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国では人口当たり公共サービス歳出の増大が懸念されており、地方自治体は時代に即した柔軟な自治体間協力が求められている。そこで、本研究は消防サービス供給範囲に着目し、人口当たり歳出が最小となるような人口規模(以下、効率的規模)について推定を行うことを目的とする。その際、自治体連携の有無についても考慮することで、自治体単独でのサービス供給との差異を明確化し、将来的な消防連携の再編可能性について示唆を与えられると考える。以下、主要な知見について述べる。第一に、消防本部に基づく費用関数は人口に対して下に凸の二次関数として表現でき、効率的規模の存在が明らかになった。第二に、推定された効率的規模は全消防本部で平均431,613人、自治体単独処理で平均342,581人、自治体連携で平均529,172人であった。第三に、現在の消防本部人口と効率的規模である人口の比率をとると、全消防本部の約93%が効率的規模である人口よりも小さいことが明らかになった。本研究では効率的規模の地理的分布を可視化出来たため、今後の消防広域化に関してより綿密な議論を行えると考えられる。

  • 施設の空間的な分布と公共交通網による連結の観点から
    嚴 先鏞, 西堀 泰英, 坪井 志朗
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1549-1555
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,人口の急激な減少と高齢化を背景に,環境負荷,財政問題に対応しながら住民が公共交通により生活利便施設等にアクセスできるよう,「コンパクトシティ・プラス・ネットワーク」型の都市構造が推進されている.本研究では,近年の立地適正化計画の拠点のような都市機能の地理的な集約による複数の都市機能を持つ施設の集約と交通網を考慮した利便性の評価を行い,その優劣の要因について施設の分布と交通網の観点から明らかにすることを目的とする.第一に,自家用車,送迎,公共交通の3つの移動パターンにおいて,移動時間を最短にしながら複数の施設を巡回する際の利便性を評価する.第二に,自家用車および公共交通の両方において便利な地域は2割程度である一方,居住地の6割を占めている地域では公共交通の利用が不可能である.第三に,住民が公共交通によりアクセスできる施設集約地点は約4割のみである.第四に,公共交通が相対的に不便である地域は,居住地面積および人口の2割を占めており,「路線網による不便」と「施設分散による不便」に区分できる.

  • 汐澤 隆, 寺木 彰浩, 阪田 知彦, 土久 菜穂
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1556-1561
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は机上調査への建物写真の導入を提案し,都市計画基礎調査の建物利用現況の収集項目のうち,用途に関する判断の精度とコストに影響を与える要因について実験による基礎的な検討を行った結果について報告する.最初に基礎調査実施要領に示された出典資料の活用・流用が誘発する問題について整理し,建物調査の導入を提案する.2章で既存の関連研究についてレビューを行い,3章で本稿の検討を行う上で必要な前提条件を確認し,コストを評価する指標として判断に要する時間を,精度を評価する指標として正解率を取り上げる.4章で実験の概要と結果について,5章で分析結果について報告し,6章で今後の課題についてまとめる.

  • 重み付きランダムドロネー網上の最短路探索シミュレーション
    田端 祥太, 新井 崇俊, 本間 健太郎, 今井 公太郎
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1562-1569
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,Desire pathの発生モデルを構築し,歩行環境が歩行軌跡に与える影響を解明することである。Desire pathは草地や土の地面において,人が繰り返し歩行することによって発生するが,美観や衛生の観点から,管理運営上Desire pathを発生させない計画が望まれる.そこで本研究は,地面の仕上げに応じた移動抵抗を加味したランダムドロネー網上での最短路上にDesire pathを再現することで,草や土の領域の移動抵抗を推定し,歩行環境が歩行軌跡に与える影響を解明した.分析より,草の移動抵抗はフォーマルな空間やパブリックな空間ほど大きく,インフォーマルな空間やプライベートな空間ほど小さいこと,土の移動抵抗は舗装路の移動抵抗とほぼ同一であることが明らかになった.

  • 佐藤 将, 後藤 寛
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 1570-1575
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では共働き世帯比率の高い世帯の集積エリアにおいて居住形態と送迎および通勤行動がどのような特徴が見られるのかを検証してきた。以下では低い集積エリアとの差異や都区部および郊外部で明確に見られた特徴を中心に考察する。居住形態から共働き世帯比率の高い集積エリアの特徴として都区部では駅前マンション居住、郊外部では徒歩圏内における戸建居住がメインであった。両者の特徴として利便性重視の居住地選択選好は共働き世帯が担っているといえるが、都区部では利便性重視だけでなく、価格面も考慮した居住地選択を行っていること、郊外部では利便性以上に依然として良好な住宅環境を重視した居住地選択を行っていることが明らかとなった。送迎および通勤行動からは都区部および郊外部どちらも自転車利用がメインな保育所環境を有するエリアにおいて共働き世帯比率の高い集積エリアがあることがわかった。またフルタイム勤務が可能でかつ短時間で通勤可能な制約のもと勤務形態を行う世帯が多く、このことは限られた条件下で子育てと仕事を両立していることが伺える。

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