都市計画論文集
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56 巻, 3 号
都市計画論文集
選択された号の論文の141件中1~50を表示しています
  • 佐々木 宏二, 増田 昇, 井原 縁, 加我 宏之
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 421-428
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、1890年代から1960年代に奈良公園を題材に描かれた絵葉書の分析を通じて、原初的な奈良公園の風致景観を構成する植栽の特徴を明らかにし、風致景観における効果を考察することを目的としている。その結果、風致景観を構成する植栽は、植栽そのものが主景となる景と、植栽が建造物や参道を修景する景の2通りに分けられた。前者では、いわれのある名木、巨木、広大な草地が、歴史的建造物やシカと一体となって主景を形成し、植栽が奈良公園固有の歴史文化性や自然性を表象する効果を発揮していると考えられた。後者では、主景の前後に出現する植栽が、景に季節感、奥行き感、歴史性を与える効果や背景を整える効果を発揮していると考えられた。

  • 歴史まちづくりを巡る町並み保全活動への参画意識と町並み保全のステレオタイプに着目して
    白柳 洋俊, 須藤 雅陽, 羽鳥 剛史
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 429-436
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    歴史まちづくりを考える上で,町並み保全活動に対する住民の主体的な参画を促してゆくことは重要である.その一方で,主体的な参画の実現に際しては,地域的・歴史的文脈から逸脱し,自分達が住む町並みを特定の様式に単純化・固定化しようとするステレオタイプに関する問題が付随する.そこで本研究では,歴史まちづくりを巡る住民の町並み保全活動への参画意識とそれに付随して生じ得る町並み保全のステレオタイプに着目し,その影響要因を実証的に検証した.分析の結果,第1に,地域愛着及び地域の歴史に関する主観的知識の水準が高い程,町並み保全活動への参画意識が高まる傾向にあること,第2に,地域愛着及び地域の歴史に関する主観的知識の水準が高い程,町並み保全のステレオタイプが高まる傾向にあるが,地域の歴史に関する客観的知識の水準が高い程,同ステレオタイプが緩和される傾向にあることを示した.

  • 福岡市中洲地区を対象として
    余語 大地, 黒瀬 武史
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 437-444
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,古写真や絵葉書から過去の景観を復元し,中洲地区の河川沿いのビルボードの立地の変化を分析することである。変化の背景を議論するために、土地利用や交通基盤の変化も分析し,中洲地区に広告物が集積した要因を考察することである。中洲地区は、近世は大部分が畑地であった。明治時代に大規模施設が立地した場所が戦後,都市機能の中心を担い、人々が通行・滞在する機会が増えたことで広告物が集積した。特に明治通りは開通後,街の主要な公共交通である路面電車が置かれたため、沿道には広告塔や看板を伴う店舗が集積した。広告物の数は1980 年以降減少しており、今後の建て替えで中洲の景観がさらに変化するだろう。そのため、中洲特有の景観の価値を議論することが重要であり、本研究はそのための基礎的な情報を分析したものである。

  • 阿久井 康平, 江村 優一, 下村 泰彦
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 445-452
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では篠山盆地を構成する山並みに着目した眺望景観を対象に、来訪者の視点からみた視覚的特徴を明らかにすることを目的とした。20枚の景観写真を用いた印象評価実験と因子分析の結果を踏まえてクラスター分析を行い、『Type I:象徴性が低いタイプ』、『Type II:重畳性が卓越するタイプ』、『Type III:象徴性がやや高く重畳性がやや低いタイプ』、『Type IV:象徴性が卓越し重畳性が低いタイプ』、『Type V:象徴性と重畳性ともに低いタイプ』の5つのタイプに類型化した。その結果を踏まえ、景観写真のタイプと景観構成要素の関係を分析した。結論として、『Type II:重畳性が卓越するタイプ』では、複数の山や微地形の重畳を主とする山並みを遠景で平均12%程度確認できるとともに、視点場から山並みまでの距離が1.0〜4.0km程度、仰角5°以下で捉えることができるなどの眺望景観の視覚的特徴を示した。

  • 市民緑地認定制度を活用した民間企業によるノリタケの森の整備プロセスと緑地の管理作業量の計測
    藤本 みずほ, 宮脇 勝, 山出 美弥
    原稿種別: 論説・報告
    2021 年 56 巻 3 号 p. 453-460
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、都心部に位置し、市民緑地認定制度を用いた事例の中で、工場跡地を産業遺産として保存活用し、大規模な緑地の創造を都心部で積極的に行っている名古屋市のノリタケの森を研究対象とし、構想された経緯、設計プロセス、森と産業遺産のランドスケープデザインの内容、市民緑地認定制度に関して、企業、行政、設計者にヒアリングとともに、緑地の管理作業量の計測を行うことで、維持の課題を考察した。1)ノリタケの森を構想したのは、岩崎前社長の強い意志により、工場を産業遺産として保存活用し、既存の屋外空間を活用しながら設計が進められたこと、2)ノリタケの森地区計画による建蔽率40~60%と、煙突ひろばの軸と歩行者用通路の連結、3)ランドスケープの設計における南北軸と東西軸を強化させた産業遺産を一つにつなげる特徴、4) ノリタケの森の管理作業量では、「園路などの清掃」が約6割、「樹木の管理」が約2割、「花壇の管理」が約1割を占め、全体の管理労力も比較的大きいことが明らかになった。

  • 景観形成に関する諸ルールの関係性と景観マネジメントの活動スキームに着目して
    高木 悠里, 嘉名 光市, 蕭 閎偉
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 461-468
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、大都市都心部におけるエリアマネジメント団体による景観マネジメントの実態として、各事例における景観形成に関するルールの関係性を分析した上で、それぞれの景観マネジメントの活動スキームを解明した。その結果、建築物に対しては、地区計画等の規制に加え、エリマネ団体のルール等を用いた景観協議により、特徴的な街並みを継承していく事が有効であることが明らかとなった。公共的空間に対しては、エリマネ団体によるエリマネルールの運用が重要であり、加えて、エリマネ団体と地権者等の役割分担や、活用実績の蓄積により、さらなる活用が期待できることを明らかにした。エリマネ広告事業は、事例間での共通事項が多く、エリマネルールを適切に定め・運用することで、景観形成に寄与すると考えられる。

  • 福岡県うきは市筑後吉井伝統的建造物群保存地区における土蔵造・海鼠壁を事例として
    倉田 英司, 嘉名 光市, 蕭 閎偉
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 469-476
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、伝統的建造物群の特性を踏まえた制度設計や運用支援が修理・修景内容に寄与した影響について分析を行った。対象地区の福岡県うきは市筑後吉井では、1996年の伝建制度開始以降、伝統的建造物群の特徴を踏まえた制度設計や運用への様々な支援策を行っている。研究では分析手法として、制度設計や修理・修景検討時における設計士会の関わり、修理・修景マニュアル作成、多くの設計士や施工業者が修理・修景に携わる機会の提供などの「運用への支援策」の詳細を把握した。次に「修理・修景内容」に関して、保存対策調査や行政の所有する写真、ヒアリング調査などから比較を行い、制度設計や運用支援との関係性について考察を行った。

  • 大阪市域における24区別の散歩の発生特性と市内の特定地域における散歩ルートの選択特性から
    盛岡 諄平, 松尾 薫, 加我 宏之, 武田 重昭
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 477-484
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    都市環境のウォーカビリティを明らかにするためには、必要活動だけでなく、任意活動についても調査をする必要がある。本研究の目的は、徒歩行動の中でも散歩という任意活動からウォーカブルな都市環境の持つべき特性を明らかにすることである。第一段階では、散歩と環境要因の関係性を地区単位でとらえた。第二段階では、どのような理由でどのようなルートが散歩されているのかをとらえた。任意行動を誘発するウォーカブルな都市環境を形成するためには、「歩きやすい」環境に加えて「歩きたくなる」環境が求められることが明らかとなった地区の課題やポテンシャルを明らかにしたうえで、散歩の需要に応じた環境整備を検討することが重要である。

  • 広島市を対象とした調査と分析
    西村 純平, 井上 莞志, 田中 貴宏, 松尾 薫, 横山 真
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 485-492
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    行政機関、民間企業、商業施設等、様々な機能が、集積する地方中枢都市の都心部では、多くの人々が様々な場面で街路空間を利用する。街路空間を利用する人々の密度が賑わいを形成する要素のひとつと考えられ、今後の街路空間整備に際して、賑わい創出に貢献するデザインが求められる。そこで本研究では、街路空間デザインの参考となる指針作成を最終目的とし、その第一歩として現在の地方中枢都市都心部における街路の行動者量と物理的特性の関連を明らかにすることを目的とした。広島市都心部の街路を対象とし、夏季及び秋季に行動者量の実測調査を行った。街路特性については、行動者量に影響を与えると考えられる18指標を各街路について、それぞれ算出した。各街路の単位長さ当たりの行動者量を目的変数、街路特性指標を説明変数とし、重回帰分析を行った。その結果、「本通り商店街までの距離」「大型商業施設までの距離」「小売業建ぺい率」「道路の美装化」は、行動者量との関連が大きいことが明らかになった。行動者属性別、行動別の分析では、高齢者や滞留者はアーケードやベンチが有る街路に多いことが明らかになった。

  • 風景の保護とコミュニティ権、国家と州政府の役割
    宮脇 勝
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 493-500
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本論は「風景の保護」に関わるイタリア共和国憲法の基本原則である第2条、第5条、第9条の制定時の議論を条文の間を結びつけて考察し、次の点を明らかにしている。1) 憲法第9条は、憲法議員マルケージとモーロによって起草された。風景とともに文化や芸術遺産を憲法で扱う必要性、国際的な価値と国家による保護の必要性を憲法議員たちが認識していたことが、議事録から理解できた。2) 憲法第2条は、個人の自由権と社会集団のコミュニティ権の二つの権利を統合するねらいがあった。3) 風景保護は、個人の自由権とコミュニティ権を両立させ、個人の財産が地域コミュニティで生かされ、社会的機能の形成に寄与するように、私有財産権を風景保護のために制限することを憲法裁判所の判決で認めている。4) 風景の保護について、地方分権も検討されたが、第9条に国家の役割を入れた経緯が明らかになった。5) 憲法第9条のビジョンは、2004年のウルバーニ法典により、文化的発展に風景保護を用いる考え方が法律化し、国家と州政府が協力するかたちで、コミュニティ権を守るべく、私権の制限を行う仕組みを整えたことが明らかになった。

  • 新潟県内の自治体を対象として
    山賀 和真, 阿部 由香里, 松井 大輔
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 501-507
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、住民主導の保全型まちづくりが増加し、行政職員が業務時間外にも住民と同じ立場で地域に関わり活動支援する重要性が高まっている。本研究は行政職員の地域との関係構築のプロセスと要因、業務時間外活動における課題を明らかにすることを目的とする。結論は以下の通りである。(1)職員と関係が継続している地域では地域住民と信頼関係の構築等、関係強化がなされていた。(2)職員と地域間で活動への目的意識の共有を図り、互いに活動の中に利点を見出すことが重要である。(3)業務時間外における職員の活動が行政組織内で正確に把握されず、職員は円滑に活動を進めにくい場合がある。

  • 主体関係の変化と現在の意見に着目して
    阿部 由香里, 松井 大輔, 西川 亮, 石山 千代
    専門分野: 論説・報告
    2021 年 56 巻 3 号 p. 508-515
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は景観紛争を乗り越えて実践される、鞆の浦における町並み保全型まちづくりの展開と、現在の意見の全体像を明らかにしたものである。結論は以下の通りである。(1) 埋め立て架橋計画は、行政・住民による町並み保全に大きな影響を与えてきた。しかしながら、それらは外部専門家からの協力を得ながら、継続的に進められてきた。(2) 現在、町並み保存に関わる住民主体の保存組織は、複数存在している。しかしそれらは目的や活動内容が異なり、お互いの活動内容・状況を知らない中ではあるが、役割分担がされているといえる。(3) 景観紛争時に発生した主体間の関係が起因となり、保存組織間での情報共有の不足に関わる不安が多く挙げられた。現状では、共通・類似している意見が多いが、それぞれが課題に感じている優先順位や課題に対する解決手法に差異がみられる。(4) 鞆の浦では組織間の情報共有の促進や、活動のマネジメントを行う組織づくりが必要である。

  • 袖山 仁志, 栗田 治
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 516-523
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    都市の道路網において右折禁止規制をかけると,同一起終点でも移動距離が伸びることがあるため平均移動距離は大きくなる.ところが米国大手運送会社UPSは,事故の可能性が高く,さらにアイドリング時間の増大につながる左折(米国では車は右側通行)を原則禁じた配送ルートを設定することで,燃料消費量および二酸化炭素排出量を削減することに成功した.本研究では,運送会社のみならず都市全体で右折を禁ずることで,より大きな効果が得られるのではないかという仮説に基づき,モデル解析を行った.具体的には,格子状道路網の街区辺上に一様分布する起終点間の移動距離・所要時間・燃料消費量についてそれぞれ平均値と確率密度関数を導出し,右折禁止規制をかける前後の結果を比較した.その結果,右折禁止規制によって平均移動距離は大きくなるが,ある規模以上の都市においては,所要時間・燃料消費量の面で右折禁止規制のほうが良い結果を得られることがあるということを示すことができた.また,その都市規模の分岐点も簡単な方程式の解によって具体的に表されることを示した.

  • 小林 里瑳, 羽藤 英二
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 524-531
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文は,土地所有者による土地の売買と来訪者による逐次的滞在場所選択を離散的選択モデルで定義したサブモデルからなる地区スケールを対象とした土地-交通モデルを提案した.特に土地売買行動は,売手地主と買手地主それぞれの推定購入額と推定売却額を効用関数に導入することで,相互推論によるマッチング行動を仮定し,従前の土地市場モデルで扱われてきた均衡価格を明示しない取引構造の記述を試みた.構築したモデルは,2時点の実データを用いた実証分析及び構造推定を用いた推定により,計算可能であることを確認した.提案モデルは,都市開発や都市政策が歩行者の行動や土地所有者の土地取引行動に与える影響の測定やシミュレーションに応用可能性を持つと考える.

  • 長谷川 大輔, 嚴 先鏞
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 532-538
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    少子高齢化やインフラ維持管理費用の増加に伴い,「コンパクト・プラス・ネットワーク」の構築が求められている.このような都市構造を支えるためには,住民の移動の利便性を考慮した効率的な公共交通ネットワーク形成が必要であり,現在の公共交通ネットワークの性能を住民の利便性の観点から評価することが不可欠である.しかし,多くの自治体で人口カバー率を中心にした公共交通利便性の評価や拠点計画が行われており,カバー率が同じであっても移動需要に対応した路線網とダイヤの接続性によって住民の利便性は大きく異なる.そこで本研究では,公共交通のダイヤの接続を考慮できる時空間ネットワークを構築し,住民の日常的な移動に対した自治体の公共交通ネットワークの性能を平均移動速度と移動時間割合から評価し,利便性向上のための改善方策を検討することを目的とする.第一に,平均移動速度は,路線形状が移動需要とどの程度マッチしているかを評価する.第二に,移動時間割合は,運行頻度と接続性によって発生する待ち時間による時間ロスを定量化する指標である.最後に,これらの二つの指標の組み合わせにより,住民の利便性向上のための改善方策を検討する.

  • 谷口 航一, 田中 健一
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 539-546
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では,移動者が経路途中に存在する施設に確率的に立ち寄って利用するという仮定の下,すでに競合他社が施設を設置している地区に,自社施設の利用者数の期待値を最大化するように施設を配置する問題を提案する.この問題は,既存の介在機会モデルを用いたフロー捕捉型配置問題に,競合を考慮して拡張したものと見做せる.提案モデルでは,移動者が経路上の何番目に出会う施設に捕捉されるかという情報に応じて期待利用者数が異なり,この構造を取り入れた整数計画問題としての定式化を示す.道路網データを用いた例題に提案モデルを適用し,いくつかの状況設定の下で最適解の特徴を分析した.その結果,利用者が施設に立ち寄る確率が小さいときは,新規参入側の施設は通過フローの多いノードに配置され,逆に確率が大きいときは,参入前に他社が捕捉していたフローを奪いやすいノードに配置されるという傾向が明らかになった.また,提案モデルに対して貪欲解法を設計し,得られた近似解を分析した結果,解の精度および計算時間の観点から,貪欲解法が優れた手法であることが実験的に確認された.

  • 勤務先の制度的裏付けの有無に配慮して
    小松﨑 諒子, 石橋 澄子, 宗 健, 谷口 守
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 547-554
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    COVID-19により,近年徐々に進展してきた活動のオンラインシフトは急速に普及し、リモートワークの一般化が進展した。既存研究では勤務先でリモートワークが制度化されているかがその実施に強く影響していることが示されている。今後リモートワークを可能とする企業や業種の幅が広がることを想定すると、制度的制約の軽減が更なるオンラインシフトに及ぼす影響についての検討が求められる。本研究では、独自のアンケート調査を用い、COVID-19により業務活動に生じたオンラインシフトの要因分析を行った。結果としては、個人属性の他、リモートワークの生産性への評価や主観的な居住地特性の認知といった要因がオンラインシフトの拡大に影響していることが示唆された。

  • 非三大都市圏の大学在学時に親元を離れて大学周辺に居住した者に着目して
    長谷澤 未来, 雨宮 護, 讃井 知
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 555-562
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    非三大都市圏の大学に在学し在学時に親元を離れて大学周辺に居住した経験を持つ、現三大都市圏居住者を対象に、卒業大学周辺地域における在学時の生活、同地域への現在の地域愛着、同地域に対する貢献行動意図の三者の関係を明らかにした。インタビュー調査(n=10)とウェブアンケート調査(n=442)で得られたデータを分析した結果、以下のことが明らかとなった。(1)在学時や現在に卒業大学周辺の地域との関わりが多い人は、現在の地域愛着が強い、(2)現在の大学周辺地域への地域愛着が強い人は、その地域への貢献行動意図が高い。これらの結果は、地方大学卒業生が遠隔の都市部から地域貢献を行うことができる可能性を示している。

  • 長崎市斜面市街地の居住実態分析への適用
    池上 哲広, 大山 雄己
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 563-570
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    斜面市街地における転居誘導や集約化を闇雲に行なうよりも,現在の居住環境の再評価を行い,戦略的な計画・政策の策定が必要である.本研究では,高齢者の実生活に基づいた外出-滞在-帰宅の一連の活動パタンに則したモビリティ指標の提案を行なう.具体的には,高齢者が買い物・通院目的の日常的な活動パタンを特定の活動時間帯内に公共交通機関を利用して達成する状況を想定し,そのモビリティの定量化手法を提案する.提案分析手法を長崎市斜面市街地に適用した結果、家屋流出率が増加する地区は通院モビリティが低く、家屋流出率が減少傾向にある地区は通院モビリティが良好であることが明らかになった。家屋流出・流入クラスタ分類結果から所要時間の長さよりもAvailable pathの多さ,Loss timeの短さが居住地選択に影響していることが明らかになった。

  • 福岡県・大分県の市部における規制条例制定・ガイドライン策定状況に着目して
    岡澤 由季, 樋野 公宏, 浅見 泰司
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 571-578
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    近年では太陽光発電事業の大量導入に伴い、地域からの反対や自治体による条例やガイドライン等の規制が見られる。本研究では自然環境・景観に関する規制の制定状況に着目し、福岡県・大分県の市部の43市、固定価格買取制度の認定取得地点15,663件(2019年4月末時点、20kW以上)を対象に、太陽光発電事業の立地(居住地との距離、集積)と規制条例・ガイドライン等の制定との関係性、およびその施行・策定後の認定取得地点の立地傾向を明らかにすることを目的とした。人口集中地区から約10km以内の場合、太陽光発電事業が散在した自治体で景観条例が制定され、約10km以遠では太陽光発電事業が集積した自治体で自然環境ガイドライン等が策定される確率が高い結果となった。自然環境ガイドラインの策定後では認定取得地点は集積に有意な差はなかったが、居住地から遠い傾向があり、景観条例では制定後、認定取得地点と居住地との距離に有意な差はなかったが、集積する傾向が見られた。居住地との距離だけではなく集積を考慮し、今後自治体が太陽光発電事業を誘致または規制すべき方向性を示した。

  • 富山市・金沢市・福井市を対象として
    近藤 智士, 数井 航平, 川端 章均, 野際 大介
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 579-586
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では富山市,金沢市,福井市を対象に,2005年,2010年,2015年の国勢調査地域メッシュデータを用いて人口分布及び都市空間の集約または拡散の推移について分析を行った.手法としては各メッシュの人口及び区画数について,階級別に市街化区域内外で集計するとともに人口密度関数の推計を行った.その結果,富山市と金沢市では人口分布が集約する傾向にあり,福井市では拡散する傾向にあることが示された.また,3市において最も人口密度の高い区域の人口が減少する一方,中程度の密度の区域に人口が集約されつつあることが示された.さらに市街化区域内に人口が集約されつつあることが示された.一方で,3市とも新たに人口が定着する地区があり,都市空間の集約とは逆行する動きが認められる.

  • 土砂災害・洪水浸水・密集市街地に着目して
    相 尚寿
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 587-594
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    住民が住みたいと思うかという視点で住環境を総合的に評価する「住環境得点」の概念に着目する。住環境得点では施設へのアクセス性や地形的要素などが考慮されているが、災害リスクが考慮されていない。本稿では、住環境得点の高い地域へ居住誘導を図ることと、居住地の災害リスクを低減することが両立できるかを検証する。土砂災害、洪水浸水、密集市街地の3つを対象にし、人口増減と災害リスクの有無との関係性をクロス集計した。検定の結果、洪水と密集市街地では住環境得点に基づく居住誘導では災害リスクの高い地域への誘導が進んでしまう可能性が示唆された。これら災害リスクの高い地域の空間的分布を可視化すると、複数のリスクが存在する地域は少なく、土砂災害と洪水のリスクが連坦する地域を見出した。床上浸水が想定される地域での人口増減と住環境指標の水準の関係を見ると、いずれも人口増加が見込まれる地域のほうが各種施設へ近いことがわかり、特に人口増減への影響が大きい駅と病院に近接した地域の洪水対策を優先することで、居住誘導とその地域の災害リスク低減を両立できる可能性を指摘した。

  • 小関 玲奈, 羽藤 英二
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 595-602
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    東日本大震災後には広域に及ぶ人口移動が発生した.人口減少下にある地方都市を襲う巨大災害の後に,人口移動がどのようなメカニズムで生じるのかを明らかにし,多様な支援と人口移動を前提として復興需要を予測する枠組みを検討する必要がある.そこで本研究は,災害後の人口移動予測に向け,不確実性下における,被災者の動的な意思決定を記述するため,DRLモデルを適用した動的居住地選択モデルを提案する.東日本大震災から10年間の居住履歴に関する実データによって提案モデルの実証分析を行い,復興事業等の政策的要因や都市構造といった環境要因の影響評価への応用可能性を確認した.復興事業等の政策的な効果を説明する変数の取り込みや居住地選択肢のサンプリングにおける時系列的な異質性を考慮したモデルに発展させることが,今後の展望である.

  • 梶原 健人, 瀬戸 寿一, 関本 義秀, 小川 芳樹, 小俣 博司
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 603-610
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    立地適正化計画など地方都市での都市計画では、市内の精細な人口・世帯分布の将来予測が重要である。そこで本研究では、世帯単位のマイクロシミュレーションである世帯推移モデル、その起点となる2015年の世帯推計データを日本全国で開発した。世帯推計データでは、国勢調査、株式会社ゼンリンの建物データから、日本全国の世帯の住所、構成員の年齢・性別、家族類型、住居種類を推計した。年齢別人口は町丁字レベル、家族類型別世帯数は市町村レベルで十分な精度が確認できた。世帯推移モデルでは、世帯推計データを基に世帯の各属性を5年毎推測するシミュレーションを開発した。ライフイベントを確率で考慮したマイクロシミュレーションである。富山県静岡県全市町村において1980年から2010年までシミュレーションし、本モデルの精度を検証した結果、市町村レベルの年齢別人口、家族類型別世帯数で高い精度が確認できた。最後に世帯推移モデルの活用例として、消滅集落、空き家分布の将来推計を行った。

  • 片桐 仁, 松川 寿也, 中出 文平
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 611-618
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    豪雪地帯の都市の立適には、雪対策を誘導施策とする計画があるが、各都市が実効性をもって位置付けているかは議論の余地がある。本研究では誘導施策に雪対策を位置付けた18都市のうち異なる雪対策を掲げた6都市を取り上げ、ヒアリング調査により位置づけた過程を明らかにする。また、空間分析により誘導施策としての実態と課題を明らかにし、今後の雪対策に示唆を与えることを目的とする。誘導施策として雪対策を位置付ける際に、雪対策部門と差別化を検討した都市もあったが、都市計画部門の判断のみで誘導施策に雪対策を位置付けた都市も見られた。誘導施策として雪対策を検討する際には、雪対策部門と実効力があるか協議したうえで位置付けるべきである。

  • 岩手県釜石市による10年間の復興の取り組みを事例に
    後藤 純
    原稿種別: 論説・報告
    2021 年 56 巻 3 号 p. 619-626
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、大規模な津波被害を受けた地方小規模都市の1つである岩手県釜石市を対象に、コミュニティの居住環境が整備されつつあった2017年度に住民ワークショップを実施し、コミュニティの居住環境についての課題を定性的に把握した。また2019年度に、釜石市民を対象に居住環境の改善度についてのアンケート調査行った。本研究の目的は、釜石市の復興まちづくりについて明らかにし、二つの調査結果について報告して、復興まちづくりによる新しいコミュニティの課題(取り組むべき論点)を考察することである。住民WSでは、震災を経て、仮設住宅から復興公営住宅・自力再建に向かう段階で、確かに安全な場所に基盤は整備されたが、一方で一変した生活基盤のなかでいくつかの新しいコミュニティ課題が具体化された。アンケート調査の結果では、居住環境の評価として、被災地域は散歩に適した公園や道路環境、公民館等の地域の活動の場の不足について被災地域の約4割が改善傾向と答え、復興支援地域の意識についても有意差が見られた。最後に、釜石市の復興まちづくり(計画及び事業)により創造されたコミュニティの居住環境に関する課題について、考察しまとめた。

  • 岡田 忠夫
    原稿種別: 論説・報告
    2021 年 56 巻 3 号 p. 627-634
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国の大動脈として物流や人の移動を支えた旧信越本線等の鉄道幹線は、新幹線の開業により並行在来線として新たな役割を担うことになったが、今後も新幹線の延伸等により新たな設立が予測され、地方におけるその存在意義は小さくない。本論文では、現在の並行在来線8社を対象にその輸送実績及び収益構造の分析から並行在来線特有の課題を把握し、今後の並行在来線における鉄道経営のあり方を検討するための論点を得ることを目的とする。本論文からは、並行在来線は株式会社の形態を取り市場に基づく経営を行う必要がある一方、収入面では教育政策の影響を受ける通学定期利用者や国策に基づく線路使用等、国や自治体の施策に大きく影響を受けやすいリスクを抱えていることや費用面においても鉄道特有の様々な施設設備を各社自ら保有し維持修繕を行っていることから工事のスケールメリットが効きにくいことや各工種に対応する職能ごとの人員体制を保持しておく必要があり、費用の圧縮が困難であること等が明らかになった。今後は、並行在来線各社が連携した取り組みを加速させつつ、国等の支援を得つつ汎用性のある支援スキームの検討を行っていく必要があると考える。

  • 津田 采音, 川合 智也, 森本 章倫
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 635-640
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    現在、持続可能な社会の実現を目指し、ICTを活用して都市のさまざまな問題を解決する持続可能なスマートシティの政策が進んでいる。しかし、官民連携のスマートシティプロジェクトの社会実装にあたっては、解決すべき課題が多いのが現状である。その課題の一つとして、多くのステークホルダーが関わるスマートシティプロジェクトにおける運営体制に関するがある。この調査では、スマートシティの運営に焦点を当て、国土交通省が選定した22の先行モデルプロジェクトを対象としたアンケート調査から運営に関する現状と課題を明らかにした。さらに、都市計画分野における官民連携の前例と、スマートシティプロジェクトの現状と課題を比較し、我が国における将来のスマートシティの持続可能な運営体制について検討した。

  • 緊急事態宣言前・中・後3断面での家事・育児時間に着目して
    石橋 澄子, 武田 陸, 谷口 守
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 641-648
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    COVID-19の流行は、仕事と家庭内労働におけるジェンダー・ギャップをあぶり出す絶好の機会となっている。本研究では、緊急事態宣言前後の日記データを用いて、COVID-19が12歳以下の子どもを持つ労働者の家庭内労働のジェンダー・ギャップに与える影響を測定した。その結果、女性の家事・育児と男性の育児は「平常」に戻ったのに対し、男性の家事は宣言期間中に増加し、宣言終了後は再び「平常」に戻らなかったことが明らかになった。在宅勤務の増加に伴って生じたこの変化は、今後の家庭内労働におけるジェンダー・ギャップの縮小に向けて、わずかではあるが重要な一歩となった。

  • 首都圏の新築・中古住宅に対する資料請求状況の分析
    鈴木 雅智, 新井 優太, 清水 千弘
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 649-656
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では、首都圏の新築・中古住宅に対する不動産ポータルサイト上での資料請求状況の分析を通して、COVID-19第一波前後に生じた潜在的な住宅選好の測定を試みた。次の傾向が明らかとなった。① COVID -19第一波の外出自粛期間中には、資料請求量の増加がみられた。これは、住まいの見直しに関する関心の高まりが反映されたものと考えられ、住宅検討行動データを通して、リアルタイムに住宅選好を捉えることができる可能性を示すものである。②外出自粛期間中の資料請求量の増加が(一時的に)顕著であった物件特性をみると、従来の住宅選好とは異なる傾向もみられた。例えば、都心乗車時間が45分以上の中古物件、最寄駅から15-20分以上離れた中古物件、延床面積が100-150m2以上の広い物件が挙げられる。③都心乗車時間が45分以上の地域においては、海浜や森林に近接した物件で、外出自粛期間中やその後における資料請求量の増加が顕著であった。遠郊外や通勤圏外において、自宅周辺の自然環境を重視する新しい傾向といえる。

  • 小地沢 将之, 田村 渓介
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 657-664
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、将来的に児童遊園が適切に更新されていくための課題を整理する。児童遊園と都市公園が隣接して整備された経緯は、市当局へのヒアリングを実施したが不明だった。そこで、私たちは現地調査、文献調査、管理者へのヒアリングなどを実施した。その結果、児童遊園は児童厚生施設の園庭の役割を持っていること、ならびに自治体の乏しい財政により児童遊園が更新できていないことが明らかになった。この問題の解決のためには、児童厚生施設を含めた公共施設との一体的なリニューアルを行う必要があると私たちは結論付けた。

  • 東京アートポイント計画「TERATOTERA」を事例に
    常泉 佑太, 伊藤 香織, 高柳 誠也
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 665-672
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    公共空間の多様性を考える上で、個人の表現活動であるアートと公共空間の公共性はどのように両立するのだろうか。近年のアートプロジェクトの増加によって、アートと地域をつなぐ中間組織の役割が期待される。本研究の目的は、公共空間を利用してアートプロジェクトが行われる際に中間組織にどのような役割が求められるのかを明らかにし、中間組織が関与することによる公共空間でのアートの可能性について考察することである。東京アートポイント計画TERATOTERAを事例とした資料調査、インタビュー調査によって、中間組織の役割を明らかにする。結果として、公共空間を利用する際には、中間組織のアートマネジメントの専門性によるアーティストの作品の本質をできるだけ担保する調整、空間の管理者毎に文化的意義の共有を図る交渉、中間組織による責任の所在の明確化がアーティストの表現の創造性を担保することがわかった。さらに、ギャラリーとは異なりアートに対する基礎知識や前提についての知識を有していない市民の目にも触れる公共空間の環境がアートによる新たなコミュニケーションの可能性を広げていることがわかった。

  • 兵庫県下の市町および運営主体へのアンケート調査を基にして
    武田 裕之, 大内 美紅, 加賀 有津子
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 673-680
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国は近年、少子高齢化が深刻な問題となっており、人口減少は労働力人口の減少を引き起こす懸念がある。そこで重要となるのが女性の労働力確保である。厚生労働省保育課によると女性の就業率と保育所等の利用率の間には相関関係があり、女性の就業率上昇は、保育の受け皿拡大が支えているといえる。本研究では小学生の子供を持つ共働き世帯の支援の場の一つと言える放課後児童クラブに着目する。放課後児童クラブの運営実態を把握するとともに、地域との連携が運営にどのような影響を及ぼすのかを把握することを目的とし、兵庫県下の市町と施設にアンケート調査を行った。市町向け、施設向けのいずれのアンケートでも一番に挙がっていた「職員の確保」という課題感は地域によって差があることが確認できた。しかし、市町向けのアンケート結果と統合して分析を行うと地域特有の課題感を認識しきれていないことが明らかとなった。

  • 岡山市に発生する空き家に着目して
    氏原 岳人
    原稿種別: 論説・報告
    2021 年 56 巻 3 号 p. 681-687
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    地方都市である岡山県岡山市を事例に,地区(町丁目)単位の空き家率の実態を把握するとともに,空き家が相対的に多く,衰退する地区の都市内の位置づけを明確にする.次に,それら地区をタイプごとに分類し,現地調査することによって衰退地区の条件を整理する.得られた結果は以下の通りである.1)空き家が顕著に多い衰退地区(空き家率10%以上)は,全地区の約4%と限定的であるとともに、空き家率の偏りも大きく、空き家問題にも地域格差が生じていた.2)衰退する地区の条件は、共通条件として「インフラ」、個別条件として「立地」,「急斜面」,「歴史」が存在した.共通条件と個別条件が組み合わさることによって空き家率の高い衰退地区が発生していた.一方で、3)現行の空き家対策は個別の対症療法であって原因療法ではないため,衰退地区の根本的な対策にはならない等の限界があることも指摘された.

  • 広陵町市民農業団体健楽農業関係者アンケートより
    近江 郁子, 中山 徹
    原稿種別: 論説・報告
    2021 年 56 巻 3 号 p. 688-695
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    奈良県広陵町の市民農業団体では、参加者数と売上高が増えています。 彼らは野菜を栽培し、販売によって運営しています。しかし、それは経費を賄うだけで、給料を支払うことまではできません。 彼らはまだボランティア組織です。 しかし関係者による評価調査では、多くの分野で評価が高く、満足度が高いことがわかりました。 販売店や行政は野菜の品質も高く評価しています。 野菜を栽培する農家が減っていくことが予想されます。 販売店や行政はこの組織の発展を期待しています。参加者も野菜の品質を高く評価しています。一方、農民は野菜の品質に対する評価が低く、農業に対する意識の違いが明らかになりました。 次の課題は農家との協力です。

  • 九州を対象とした操作変数法とSCGEモデルによる検証
    森 優斗, 佐々木 邦明
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 696-703
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    高速道路整備は沿線の自治体にストック効果をもたらすと言われる。他方、同じ地方圏においても整備時期に違いが生じることは多々存在する。本研究は、整備時期の違いが地域の発展に与える影響の違いを生じた可能性を明らかにすることを目的とする。具体的に操作変数法と空間的応用一般均衡分析を用いて、九州地方における実証分析をおこなった。初めに統計的検定により高速道路整備の効果を推定する操作変数として昭和前期の駅数を提案した。そのうえで、操作変数法による分析から、整備時期の違いが人口やGRPの変化に与える影響の差異として現れた可能性を統計的に有意な結果で示した。空間的応用一般均衡分析では、地域間での経済的偏在を解消する整備計画を提案した。一方、社会全体では非効率であることが示されるなど、今後は人口構造や産業立地を踏まえた更なる検討を進めたい。

  • 千代田区大手町・丸の内・有楽町地区を対象として
    堀口 駿太朗, 村木 美貴, 須永 大介
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 704-711
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    2020年のパリ協定の本格的な運用の開始に伴い、環境目標は脱炭素化へと転換している。特に、エネルギー消費量の増加が顕著である民生部門では重点的な対策を講じることが求められており、ZEBが注目されている。一方、都心部における再生可能エネルギーの賦存量は少ないことから、オンサイト環境施策 (建築物に直接導入する環境施策)のみでは、脱炭素化の達成は困難とされており、オフサイト環境施策(CO2排出量の取引等の環境施策)の導入が求められている。しかしながら、その施策展開のあり方は明らかでない。本論文は、事業性を考慮した、都心部における脱炭素達成に向けた施策展開のあり方について論じる。結果として、環境施策の展開が脱炭素達成を可能とすることが明らかとなった。また、費用対便益の観点から脱炭素達成に向けた施策展開のあり方が明らかとなった。

  • 小さな拠点を形成した市町村担当者へのアンケート調査の結果から
    古山 周太郎
    原稿種別: 論説・報告
    2021 年 56 巻 3 号 p. 712-718
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    小さな拠点は、持続可能な集落づくりに向けた政策であり、全国で確実に増加している。本研究は、小さな拠点に関わる地域運営組織の活動実態と取り組みへの評価を明らかにするものである。研究の方法は、小さな拠点形成に取り組む市町村を対象としたアンケート調査であり、430市町村中174の市町村から回答を得た。本研究の結論は次の三点である。1)地域運営組織は半数程度の市町村で新たに組織され、活動計画も定めており、他の団体との連携もみられた 2)地域活動は従来の活動に加えて、集落の持続可能性を高める活動についても実施されていた 3)市町村は、活動や組織の特徴と取り組みへの評価軸によって4つに分類された。

  • 佐藤 雄哉, 山本 紘子, 坪井 志朗
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 719-726
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、拠点の形成という視点から地方創生拠点整備交付金の活用実態を全国的に分析している。本研究では以下のことが明らかになった。自治体の空間計画とSRRBCは連携が不十分であった。また、土地利用規制の緩い領域で活用されているSRRBCが75.7%と多い。さらに、都市計画区域の中で実施されている事業は、拠点の形成を目的にしているケースは少ない。一方で、都市計画区域外で実施されている事業のうち、拠点の形成に資する事業は、行政機能や生活機能が集積している場所で実施されている。これらの結果を踏まえ、本研究は交付金の審査の際に空間計画との連携を評価指標として追加することなどを提案した。

  • 福島県相馬市松川浦における東日本大震災前後の比較を通して
    村井 遥, 後藤 春彦, 森田 椋也, 山崎 義人, 泉川 時
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 727-734
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    様々な地域課題を抱える今日の農山漁村では、自然災害が社会の変化を加速させ、地域課題がさらに深刻化する。本研究では、東日本大震災で被害を受けた、福島県相馬市の潟湖・松川浦における生業として青ノリ養殖業に着目する。松川浦には地域固有の土地所有慣行が存在し、その上で独自の漁場利用の仕組みが形成され、震災前から生業が持続されてきた。震災後の復興過程では、土地の再整備や、道具の支援などの復興支援事業が行われ、生業の再開に至った。さらに、生産者らが主体となり新しい取り組みを模索しながら生業の継続が図られている。また、生産者らによる生業に対する評価を捉えたところ、道具の支援の受用、漁場環境の回復、生業の魅力の再発見が生業の再開・継続への動機となっていた。その上で、生産者らが描く今後の生業の持続に向けた生産方法として、生産形態の更新、環境価値の向上、就業体制の踏襲の3つの傾向があり、これらはそれぞれ社会・経済、風土・地域、歴史・慣習を背景に含意していると考えられる。生産者はそれぞれ多様な方法を模索しており、その背景を丁寧に読み解きながら、災害復興を進めていくことが重要であると考えられる。

  • 大槻 颯, 丸岡 陽, 松川 寿也, 中出 文平
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 735-742
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、立地適正化計画を策定した地方都市を対象に、人口密度目標の特性を整理し、居住誘導区域外の市街化区域・用途地域からの居住誘導を前提として実現可能性を評価することで、今後の目標設定に示唆を与えることを目的とする。人口密度目標の特性や実現可能性を踏まえ、ヒアリング調査を実施した。その結果、実現可能性が高い都市を含め、多くの都市が具体的な居住誘導を考慮せずに人口密度目標を設定しており、実現可能性に関する検証等も行っていないことを明らかにした。将来推計人口等を考慮し、居住誘導区域外の市街化区域・用途地域においても一定の人口密度を確保することを前提としつつ、具体的な居住誘導までを想定した人口密度目標を設定することが重要だと考える。

  • 松中 亮治, 大庭 哲治, 伊藤 完太
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 743-750
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,居住誘導区域の設定方針を定量的に明らかにすることを目的とし,人口密度,公共交通利便性および災害危険性の指標に着目して,各指標が居住誘導区域の設定に与える影響を,構造方程式モデリング(Structural Equation Modeling:SEM)を用いて,将来人口の増減別および都市圏別に分析した.その結果,人口増加都市では,居住誘導区域の設定の際に,2040年の人口が特に重視されていること,人口減少都市では,災害のリスクが高い区域は除外される傾向にあることを明らかにした.また,人口減少都市においては,三大都市圏では人口の集積が見込まれる区域,政令指定都市圏および地方都市圏では鉄軌道駅へのアクセス性が高い区域が重視される傾向にあることを明らかにした.

  • 郊外商業集積に着目して
    清田 幹人, 黒瀬 武史
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 751-758
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、非線引き都市の立地適正化計画において、都市機能誘導区域(都誘区域)と郊外の商業集積との関係性を明らかにした上で、非線引き都市における都誘区域の設定に際しての課題を得ることを目的としている。古くからの中心市街地が存在する一方、商業機能の郊外化が見られる6都市のケーススタディを通して、沿道型の指定や大規模SC周辺を指定するなど、自動車分担率の高い非線引き都市の特徴を反映させた区域設定を確認できた。非線引き都市における都誘区域の設定に際しての課題として、①現状の都市の実態に対応できていない従前の都市計画制度が区域設定の基準となっており、各都市の方針を反映できない点、② 都誘区域への具体的な施設誘導施策を持たないまま、市民の生活実態から乖離した基準により区域設定を行っている点、③郊外化が生じやすい非線引き都市では、誘導区域外への規制手段の弱い立適計画は実効性に課題が残る点が明らかになった。

  • 神戸市における実証研究
    西村 慧音, 松島 格也
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 759-764
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文では,公表統計情報のみを用いて地域の多様性が人口流入率に及ぼす影響の有意性について評価する.まず,J. Jacobsの都市の多様性の条件に従って,宅地サイズのばらつき,用途地域の混在度,路地密度という3つの変数が地域の多様性を表すのに適切であることを提案する.2010年と2015年の神戸市における人口メッシュデータを用いて,地域への人口流入率を被説明変数とし,従来から用いられた都市施設の整備度合いを表す変数に加えて上記3変数を説明変数として採用した回帰分析をおこなう.モデル推定の結果,地域の多様性を表す3つの変数が人口流入率に対して有意な影響を及ぼすことがわかった.人口流入を目指す各種政策を検討する際に,地域の多様性をもたらす地域の保全が重要であることを示唆している.

  • 京都府移住促進特別区域を対象として
    新井 崇史, 松本 邦彦, 澤木 昌典
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 765-771
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、農山村地域への移住促進につながる住民組織が実施する移住支援の内容と効果を明らかにすることを目的とする。京都府の移住促進特別区域を対象とする住民組織へのアンケート調査を実施した。分析結果からは、住民組織が認識する移住促進の効果有りに影響する移住支援として、空き家所有者との定期的接触、移住希望者からの相談対応ならびに移住関連イベントの実施が示された。さらに移住者に対するヒアリング調査の結果からも、移住希望者からの相談対応ならびに移住関連イベントの実施が、移住者の移住のきっかけを与えるなど重要な役割を果たしていることがわかった。

  • 富山県小矢部市内の高校に通学する高校生を対象として
    籔谷 祐介, 阿久井 康平
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 772-779
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、高校生の通学時における地域風土との接触が地域愛着の醸成に与える影響を実証的に検証することで、どのような接触機会が地域愛着形成に有効であるかを明らかにした。具体的には、富山県小矢部市内の高校に通学する高校生380人を対象にアンケート調査を実施した結果、自然や人との接触が地域愛着(選好)や地域愛着(感情)に影響を与えることを統計的に明らかにした。さらには、子どもの頃の地域愛着醸成がUターン意識や地域における活動への参加意識の向上につながる可能性が示唆されたことから、Uターン施策として、地域愛着を醸成する通学路の計画や地域の人や自然との接触機会を増やす施策が有効である可能性を示した。

  • 新 雄太, 松田 陽多, 齊藤 領亮
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 780-787
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,長野県小布施町に現存する「通り門」の利用実態と空間特性を明らかにすることを目的としている.通り門は,敷地に隣接する水路の利用に由来して成立し,農業利用だけでなく,水害対策の意味もあったとされている.まず通り門の分布や特徴を明らかにするため外観目視調査とアンケート調査を行い,さらに事例調査によって詳しい使用状況を明らかにした.1980年頃からはライフスタイルや家族構成の変化に伴い,車庫や子供部屋など,農業以外の目的でも使用されるようになっていることが確認された.現在でも多くの所有者が通り門を生活に必要であると考え,修理や改築をしながら利用し続けている。通り門は,時代によってその役割が柔軟に変化する,家族にとっての冗長的な空間であり、地域の生活に根ざした特有の建築の形式と言える.

  • 細江 美欧, 桑野 将司, 森山 卓, 中井 健太郎, 菅原 一孔
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 788-794
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    経路検索システムの検索履歴データには,出発地・目的地,公共交通を利用したい日時など,検索者が希望する移動に関する情報が記録されており,交通需要予測のための新たなデータとして活用が期待されている.本研究では長期的な交通需要予測手法の開発に向けて,検索件数の長期的変動に着目し,検索傾向に影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的とする.具体的には,山陰両県に導入される経路検索システム「バスネット」を用いて検索された鳥取県内のバス路線を非階層クラスター分析によって,検索件数の長期的な変動が類似するグループにまとめる.その上で,路線グループの検索傾向と路線周辺環境との関係を決定木分析を用いて分析し,検索傾向に影響する要因を明らかにする.分析の結果,県内を運行する209路線は5つのグループに分類され,それぞれ全く異なる検索傾向を持つことが明らかとなった.そして,各路線グループの検索傾向には路線周辺の若年層の分布,および事業所,ホテル・旅館,娯楽施設の立地数が影響することがわかった.

  • 富山市を事例として
    龍野 杏奈, 松行 美帆子, 中村 文彦, 田中 伸治, 有吉 亮
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 795-802
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、コンパクトシティ政策を推進している富山市を対象として、富山市のコンパクトシティ政策の交通行動面、都市サービスへのアクセス面に関する効果を検証し、その効果とコンパクトシティ政策の要素との関係を検討することを目的としている。富山市におけるアンケート調査を行い、立地適正化計画における居住誘導区域の内と外で比較を行った。その結果、居住誘導区域外では、居住誘導区域内に比べて1.2倍ほど自家用車の走行距離や自家用車利用率は高いが、区域内であっても多くの人が車中心の生活をしていることが分かった。また、現時点ではスーパーや内科へのアクセス困難を感じていない人が9割近くを占めるが、将来の移動や都市サービスへの不安を感じている人は区域内で4割、区域外で6割存在していることが明らかになった。また、都市サービスへのアクセス困難性は、コンパクトシティ政策の中でも特に「拠点エリアへの都市機能の誘導」、「公共交通沿線への居住の誘導」が影響していることが明らかになった。

  • 移動手段・目的施設に着目して
    清水 宏樹, 安藤 慎悟, 谷口 守
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 3 号 p. 803-810
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国の多くの自治体では立地適正化計画の策定を通じた、「コンパクト+ネットワーク」を主眼としたまちづくりが進められている。そこで拠点として設定される都市機能誘導区域の誘導施設に対しては、公共交通や徒歩によるアクセスが一般的に期待されている。本研究では第6回東京都市圏パーソントリップ調査の結果を用いて着トリップを分析することにより、都市機能誘導区域内外における人の動きの集中実態を施設種類別・移動手段別に把握した。その結果、施設の種類によって都市機能誘導区域における着トリップの集中状況に特徴的な差異がある一方、都市機能誘導区域外に自動車トリップが集中するスポットが別途点在することが明らかになった。

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