都市計画論文集
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56 巻, 2 号
都市計画論文集
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
  • 富山市と長野市を対象として
    坂本 知萌巳, 高木 直樹, 中谷 岳史
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 2 号 p. 217-223
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、日本の地方都市では高齢化、中心市街地の空洞化、公共交通機関の衰退などが問題となっている。これらの深刻な社会問題を改善するために、多くの都市がコンパクトシティと呼ばれる都市構造を目指している。このコンパクトシティのような都市を実現するためには、都市構造の変化を追い、地域の特性を把握する必要がある。そこで、本研究では、地方都市である富山市と長野市の都市構造を把握する。また、両市のコンパクトシティ政策の経年変化を評価することで、今後の都市政策の課題を明らかにする。富山市では以前からスプロール現象が顕著であり、これまでコンパクトシティ政策を積極的に推進してきた。現状では、人口分布や土地利用の面で富山市の密集度は長野市に比べて低い。しかしながら、この10年間の変化を追うと富山市はコンパクトシティ政策が着実に推進されてきたことがわかる。

  • 大庭 哲治, 井上 利一
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 2 号 p. 224-233
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,令和元年台風15号による,千葉県全域の電柱損壊の被害状況を把握した上で,千葉県民の無電柱化に対する受容意識への影響を明らかにすることを目的に,Webアンケート調査を行い,無電柱化推進の必要度を目的変数とする二項プロビットモデル及び順序プロビットモデルを推定した.その結果,1)台風15号による架空線の被害が甚大である一方で,地中線はほぼ被害を受けていないこと,2)千葉県民は無電柱化推進を少なからず必要と感じている割合が被災前後で2割増加し,回答者の約6割が大規模停電の再発防止に無電柱化が最も有効な対応策であると考えていること,3)居住自治体の電柱損壊数,そして,被災以降の無電柱化関連情報の接触機会有りが,被災後の受容意識(無電柱化推進の必要度)と統計的に有意な正の関連性を有していること,4)平均限界効果を通じて,取り上げた影響要因の多くが個人の無電柱化に対する受容意識を高める可能性があることを定量的に明らかにした.

  • 救護施設から地域への接点としての可能性
    阿部 正美, 田口 太郎
    原稿種別: 論説・報告
    2021 年 56 巻 2 号 p. 234-240
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、研究対象地のスーパーにおけるイートインが①利用側、スーパー側双方への調査からどの様な属性の人々に利用されているのかを把握し、②スーパーにおけるイートインの利用実態を明らかにする。③その上で、②で明らかにしたスーパーにおけるイートインが、救護施設入所者の地域生活移行支援の場としての可能性を有するのかを検討する。

  • 溝上 章志, 村上 麻紀
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 2 号 p. 241-249
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,2019年10月に開業した再開発施設サクラマチクマモトを対象に,1)来街者の回遊行動の実態を把握するために,2008年から継続的に行っているのと同様の歩行者通行量調査と回遊行動アンケート調査を開業後に実施し,開業後の歩行者通行量と回遊行動の実態分析,開業前後の比較を行う.次に,2) 2011年の前回調査時に収集した回遊行動アンケート調査データを用いて推定した時間・空間連続選択モデルとして定式化された回遊行動モデルに今回の2019年回遊行動調査データを適用することによって,モデルの時間移転可能性の検証を行うこと,3)今回の2019回遊行動アンケート調査データによって推定した回遊行動モデルとオリジナルの回遊行動モデルとを比較し,提案した回遊行動モデルの有効性を検証することを目的とする.

  • 条里制の分布に基づく歴史的土地利用景観のアセスメント
    降籏 賢人, 宮脇 勝
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 2 号 p. 250-258
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    条里制水田は文化的景観の一つであるが、担い手農家の負担の増加とともに、伊勢湾岸地域において水田の圃場整備が急速に行われた。こうした現状を踏まえ、伊勢湾岸地域の歴史的土地利用景観である条里制の分布現況のGISを用いてデータ化を行い、近年の急速な減少の中で残されている条里制の分布を顕在化し、その「土地利用景観」を残している要因の把握することを目的とする。本論は、GISと航空写真を用いて伊勢湾岸地域の条里制分布を分類し、現況について地図を作成して顕在化した。具体的に、1971~1985年の既往研究調査による分布範囲のうち、特定した条里制の現況の内訳として、「圃場整備がなされずに、古代条里制が維持されていると考えられる範囲」は3.9%と非常に少なくなっている。一方、「圃場整備などがなされたが、条里制が確認できる範囲」は39.9%となっている。他方、「条里制が失われた範囲」は、既往研究の56.3%となっており、この35年間に半分以上の条里制が、歴史的景観資源として保護されずに、完全に失われたことが明らかになった。

  • 「水都大阪」の河川敷地占用許可準則に基づく事例を対象に
    中田 大貴, 嘉名 光市, 蕭 閎偉
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 2 号 p. 259-266
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    日本では都市の裏側であった河川が河川敷地占用許可準則によって公民の団体によって活用され始めている。本研究では、「水都大阪」を事例に、占用主体の取り組みの変遷から今後の事業スキーム・取り組みのあり方を明らかにする。その結果、河川活用事例が都心から都心周辺へと広がっており、それに伴い占用主体の取り組み、事業スキームも変化していた。また、水都大阪において河川空間活用を進めることで、河川にこれまでなかった価値が新たに生まれることにより、観光地として人が訪れなかった空間へ人が訪れるきっかけとなっている。

  • 井上 龍子, 出口 敦
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 2 号 p. 267-280
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は旧八幡市が近代都市へと成長する過程で、技師としてまた市長として都市計画に貢献した守田道隆の業績に焦点をあてたものである。戦前は旧八幡市の発展にとって重要な時代と言えるが、この研究では守田が戦前の地方都市ではほとんど実施されていなかった大規模区画整理事業などを、技師としてどのように推進し実現させたかを明らかにすることを目的としている。その結果、守田は担当技師として都市のインフラ整備を行ったのみでなく、地方行政と国、官営八幡製鐵所という国の直轄機関などとの様々な調整を行うことで、その実現を図るための重要な役割を担ったことが明らかとなった。

  • 田島 則行, 出口 敦
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 2 号 p. 281-292
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、英国で最もディベロップメント・トラスト(以下:DT)が集中しているグレーター・ロンドン(以下:ロンドン)において、各々のDTが多種多様な近隣状況に合わせて工夫された再生手法をとっている事に着目し、以下の5点について掘り下げる。①ロンドンにおけるDTの事例を調査し、活動地域、サービス内容、支援対象、アセットの活用タイプを整理して実態を把握する(2章)。②近隣状況に対応したアセットの活用に特徴のある代表的なDTを5つ抽出し実態を把握する(3章)。③DTのアセット活用における立地パタンから見出される再生手法の特徴を考察する(4章)。④DTにおけるファイナンスの仕組みを整理し、アセットを有効に活用した「アセットベース」というDT独自の方法を整理する(5章)。⑤最後に2010年から2019年までのロンドンの人口増加やジェントリフィケーションの状況下における各DTの経営状況について検証する(6章)。これら5つの項目の調査・分析を通じ、多様な近隣状況に適応したDTによるアセットの活用方法とそれを支える仕組みの特徴を明らかにした。

  • 1970年以降の食料品小売店と公共交通の分布に着目して
    丸岡 陽, 中出 文平
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 2 号 p. 293-303
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は長岡市と松本市を対象に、1970~2015年の3時点のDID内における食料品小売店と公共交通網の変容を明らかにすることを目的とする。分析には3時点の人口を割り当てた100mメッシュの重心から食料品小売店までの距離及び公共交通乗り場までの距離を用いた。分析の結果、公共交通網は中心駅から拡がる放射状ネットワークを、1970年から現在まで維持していた。食料品小売店はスーパーを含めて1990年から減少傾向にある。1970年DID内や1990年DID内では、DID形成当初に比べて、徒歩だけで生鮮三品を購入できない居住者が増加した。現在、自家用車に頼らず生鮮三品を購入できる地域は大型化したスーパーの周辺に限られる。集約型都市構造を目指す上で、こうした生活環境の変化を住民が経験したことへの配慮が望まれる。

  • 東京、ニューヨーク、ロサンゼルスを事例として
    北崎 朋希
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 2 号 p. 304-310
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、東京、ニューヨーク、ロサンゼルスにおける都市開発の収益性を考慮した公共貢献の評価手法の導入経緯や運用実績を明らかにすることを目的としている。都市開発による公共貢献を最大化するには、貢献に要する費用と対価のバランスの確保が重要である。そのため近年では、全ての事業に対して一律の算定式を用いてきた従来の評価手法から、事業毎に公共貢献の水準と対価を評価する仕組みを導入する動きがみられる。東京都では、2018年に電柱地中化を促進するため、開発事業者が負担した無電柱化工事費に相当する割増容積率を収益還元法によって算定する手法を採用している。こうした貢献の経済的評価は、公共貢献の種類や実施主体によって最適となる手法は異なる。そのため、特に収益の発生する公共貢献や間接的に事業の収益率を高める公共貢献などは、貢献費用と対価を単純比較するのではなく、事業全体の収益率を慎重に検証する必要がある。

  • 丸岡 陽, 中出 文平
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 2 号 p. 311-323
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は、中核性の高い地方都市51市を対象に、市街化区域全体の人口密度の差の要因を、(1)これまでの区域区分運用と、(2)現在の居住世帯の特性から考察すること、そして市街化区域の評価指標としての人口密度の可能性と限界を提示することである。分析では51市の市街化区域を7種のZoneに区分し、市街地の形成経緯を整理した。分析の結果、現在の全体密度の都市間の差の要因には、当初線引きの目標設定や、既成市街地の新陳代謝があった。同じ全体密度であっても市街地の様相が異なることから、全体密度から市街地の課題を抽出することは困難である。1967年の宅地審議会の答申を参考に、市街化区域が内包する既成市街地と新市街地をより厳密に位置づけ、制度運用に活かすことを提案する。

  • 西村 愛, 瀬田 史彦
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 2 号 p. 324-333
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、エコカルティエ認証制度の認証の仕組みと認証地区における環境配慮手法の特徴を分析することで、地区スケールの環境評価認証制度の多様な地域での活用のための示唆を得ることを目的とする。エコカルティエ認証制度における評価方法等の認証の仕組みを明らかにした上で、認証制度を活用している地区の全国的な広がりの実態、認証地区で実施されている環境配慮手法の全体の傾向、それら環境配慮手法の地域特性に応じた特徴の分析を行った。その結果、エコカルティエ認証制度は、各地区の取組み内容に対する柔軟な評価方法等を通じて多様な地域での活用を可能とし、各地域がそれぞれの特性に応じた環境配慮手法を選択し目標にアプローチすることを可能にしていることが明らかとなった。このことにより、地区スケールの環境評価認証制度が、地域がそれぞれに手法を選択できるという意味の地域適応性を備えるなら、多様な地域での活用が可能になるという示唆を得た。

  • 吉武 哲信, 泉 亮太郎
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 2 号 p. 334-346
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    立地適性化計画は都市の集約化を目指すために、都市計画区域内の一部に居住誘導区域、都市機能誘導区域を定め、都市の集約化を目指す計画で、同計画の主眼は誘導区域内にあり、誘導区域外地域については集約の対象外である。しかし同計画の策定に当たっては、誘導区域外の住民からの懸念は数多く報告されている。本研究はこの背景から、関連計画や方針の概容を明示することが合意形成の円滑化に寄与しうると考え、計画書内に記されている誘導区域外の方針に関する調査を行ったものである。この結果、全体としては誘導区域外の方針を記述する自治体は多くないが、交通分野の方針は記述されることが多く、地域拠点を誘導区域外に設定する場合は交通以外の分野でも方針が記述されやすいこと等が明らかになった。また、交通分野以外での誘導区域外地域の方針が希薄である課題も指摘している。

  • 町丁目単位でみたストックとフローについて
    栗本 賢一, 岡田 智秀, 落合 正行
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 2 号 p. 347-359
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、臨海工業の中心として高度経済成長を支えてきた東京臨海部の産業用地は、産業の高次化に伴い混合土地利用へと変化している。このような状況の中で東京臨海部の経済活動を促進するためには、新たに理想的な土地利用ビジョンを確立することが重要である。本研究の目的は、小地域単位の地域経済活性化状況を定量的に評価する手法の構築を目指し、それを東京臨海部に適用して経済活動の観点から空間動態を考察することである。本研究の結果、小地域単位の人口・雇用を構成する諸指標から成る「総合評価」、「多様性」、「集積性」について空間的に把握するための手法を提示するとともに、その手法を用いて東京臨海部の特徴について明らかにした。

  • コンパクト・プラス・ネットワーク政策評価のための実務的なモデル構築とケーススタディによる検証
    越智 健吾, 石井 良治, 末木 祐多, 羽藤 英二, 筒井 祐治
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 2 号 p. 360-367
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    各市町村におけるコンパクト・プラス・ネットワーク政策の実現のため,私事活動を始めとした多様な活動を考慮することが益々重要となっている.本研究は,鉄道駅を中心としたエリアにおける多様な活動を対象として,定量的な政策評価手法を開発することを目的とする.政策評価のため,本研究では「活動利便性指標」と呼ぶ指標を導入した.都市計画基礎調査データとパーソントリップ調査データを用いて様々な活動目的ごとに活動地選択モデルを適用し,活動目的ごとの活動利便性指標を算定するものである.モデルを用いた政策分析のケーススタディの結果,都市施設の種類によって,配置を変更することによる活動利便性への影響の出方が異なることが確認された.

  • 秋武 優梨菜, 柏原 沙織, 寺田 徹
    原稿種別: 論説・報告
    2021 年 56 巻 2 号 p. 368-376
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では都市農業の市場外流通(直売、契約販売など)をまちづくり団体が支援する例に注目し、支援の展開過程を解明した上で、その特徴や課題を考察した。支援の担い手として、NPO(柏市)とネットワーク型組織(国分寺市)という異なるまちづくり団体に注目し、両者を対比的に分析した結果、以下の点が明らかになった。1)流通支援は直売所運営などの直接的支援と消費者への情報提供などの間接的支援に分類され、柏市は直接的支援が中心であったのに対し、国分寺市は両方の支援が幅広く行われた。2) 柏市は支援にあたって組織化を積極的に推進したのに対し、国分寺市では個人が立ち上げる事業の集合体へと展開した。3) 柏市は直接的支援の事業の安定化に成功したが、支援の中核的主体の多様化が課題である。一方国分寺市では、個人による柔軟で機動的な支援が行われたが、収益性確保や支援の安定化が課題である。

  • 原田 陽子
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 2 号 p. 377-387
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、福井市を対象に、非集約エリアの空き地の多い住宅団地における土地利用特性と空き地所有者の管理活用実態を明らかにすることを目的とする。本研究で明らかになった主な内容を以下に示す。1)2009年と2019年の土地利用の変化を比較すると、調査を行った全て団地では6~7割の空き地は、2019年においても「空き地のまま(変化なし)」である。2)地権者の多くは「子供の居住地」として未利用地を入手したが、現在は所有地を売りたいと思っている地権者が多い。しかし、そうした土地の多くは売れない。3)以前未利用地を所有していた民間業者が倒産したり、土地が売れないため、たらい回しになりながら、未利用地の所有者が移り変わっていっている。

  • 宮城県気仙沼市鮪立地区を対象として
    青木 俊明, 金子 侑生
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 2 号 p. 388-396
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    2011年の東日本大震災を受け、津波の被災地では防潮堤建設が計画されてきた。しかしながら、それらの計画の中には、地域紛争が生じてしまったものがある。本研究は、防潮堤建設を巡る地域紛争が鎮静化した構造を明らかにすることを目的とする。事業の実施主体、学識関係者、地元住民団体の代表者へのインタビュー調査を行ったのち、地元住民を対象とした質問紙調査を実施した。調査の結果、以下のことが判明した。すなわち、1)景観を重視する住民は防潮堤建設に否定的である一方で、津波に対する安全性を重視する住民は防潮堤建設に肯定的であった、2)地域に対する愛着の高さゆえに、地域分断を嫌い、早期復興を望んでいたことが、反対派住民の防潮堤建設受入につながったこと、3) 戸建て住宅地という地区特性が紛争解決に貢献した可能性があること、が示唆された。

  • 定梶 圭, 嚴 先鏞, 鈴木 勉
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 2 号 p. 397-402
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文では,鉄道駅に着目し,まず全国の鉄道駅を対象にその周辺の施設集積状況に基づいた類型化を行う.そして,その結果に基づき,関東地方の鉄道駅について拠点設定と類型との対応関係を分析することにより,乗降客数との関係も考慮しながら,拠点として位置づけられている鉄道駅の施設集積の特徴を解明することを目的とする.その結果,以下のことが明らかとなった.(1)施設集積と乗降客数には概ね正の相関が見られるが,乗降客数が同水準でも施設集積には一定程度の散らばりがある.飲食店,建設,製造,生活施設,公共機関などの施設種類が類型に影響している.(2)施設集積度が高く,乗降客数の多い駅が拠点に設定されているが,相応の施設集積があっても拠点に設定されていない場合も見られる.施設種類類型によっても拠点に設定されている割合の多寡に特徴が見られる.

  • 免許・工事施工認可申請書にみる索道計画とその対応
    谷川 陸, 山口 敬太, 川﨑 雅史
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 2 号 p. 403-412
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,明治末から昭和初期にかけての京都東山における索道開発に着目し,開発計画の具体的な内容や,京都府による風致保存とその方策を明らかにした。1910年代に京都府は,東山一体の公園化を目的とする鉄道計画に対して,内閣総理大臣への上申を通じて条件付き免許を下付させ,その後工事施工認可を与えなかった。1920年以降,京都府は鉄道会社三社の索道計画がいずれも風致破壊の端緒となるものとみなし,不許可意見を付して三社の申請書を鉄道大臣に進達した。京都府の風致保存の方針として,市街地からみた山容の観望,史蹟・名勝地の歴史的価値,社寺と一体の山地の風趣が重視されていた。

  • 旧上海県城内外の道路整備における土地収用に着目して
    箕浦 永子
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 56 巻 2 号 p. 413-419
    発行日: 2021/10/25
    公開日: 2021/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、中華民国期の上海市工務局による既存道路の整備事業について、旧上海県城内外の道路整備を対象として土地収用に着目して実態を明らかにした。主な結果は以下のとおりである。1)中華民国期に実現した道路整備は一部に限られた。2)道路整備のための土地収用には、新たな法規に基づいて補償金が支払われた。しかし、上海市は道路建設のための費用を受益者に負担させた。3)具体的な事例考察に基づき、法規をもとに土地収用が行われ、既存道路の整備事業を完了させていたことを確認した。以上より、中華民国期の都市計画に関する公共事業は、市政が確立していく過程において、主管局の体制や財政状況を踏まえて計画の実施に尽力していたことが明らかとなった。

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