都市計画論文集
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60 巻, 2 号
都市計画論文集
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 朴 秀日, 加藤 博和, 清水 大夢, 秋山 祐樹
    2025 年60 巻2 号 p. 166-178
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
    ジャーナル フリー

    巨大自然災害に対してレジリエントな地域の推進を検討するためには、発災直後の死傷者の発生の1次被害だけでなく、復旧・復興までの中長期的な2次被害の両方の削減が重要である。本研究では、巨大自然災害に伴う1次被害と、2次被害を「生命・健康」を損なう被害と「生活環境悪化」に伴う被害に分け、それぞれについて「障害調整生存年数(Disability Adjusted Life Year)」と「生活の質により調整された生存年数(Quality Adjusted Life Year)」の余命指標を用いて、これらを同時に評価できるシステムを構築し、これを用いて評価・分析し、最後に地域のレジリエンスを高める減災策および適応策の検討手法を提案した。 本研究では、徳島県を対象に南海トラフ巨大地震が発生した場合を想定し、評価システムに適用・分析した結果、発災5日後以降は生活環境の回復が進まなくなること、生命・健康の回復量が僅かであることが分かった。最後に、減災施策の適用・評価を行い、より効果的な減災効果手法の提言を行った。

  • 札幌市、弘前市、金沢市、岐阜市、東近江市、枚方市を対象として
    吉田 隼斗, 岡井 有佳, 酒本 恭聖
    2025 年60 巻2 号 p. 179-188
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
    ジャーナル フリー

    立地適正化計画においては、居住誘導区域の外側においても地域特性等を考慮して、法定外の「独自の居住区域」を設定することで立適計画の実践的な運用に繋がると考えられる。本研究では、独自の居住区域を設定している札幌市、弘前市、金沢市、岐阜市、東近江市、枚方市の6都市に着目する。独自の居住区域は、地区に応じたきめ細やかな土地利用の方針を定める取組であり、限定的な居住誘導区域の設定や、細かく分類された区域での誘導施策の展開といった関連性が見られ、その運用には都市の実情に応じた特色があることが明らかとなった。行政としては、居住誘導区域外住民へ配慮することでスムーズな合意形成と住民理解の促進を目的としている。また、独自の居住区域は居住誘導区域への人口集約を妨げる要因ではなく、居住誘導区域への人口集約・維持と独自の居住区域内のあるべき土地利用を誘導し、都市全体の最適化を促進する可能性が示唆された。

  • 福山市鞆町におけるイベント『とも・こども商店街』の開催を事例に
    穂苅 耕介, 小野 悠
    2025 年60 巻2 号 p. 189-201
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
    ジャーナル フリー

    本研究は、縁を「偶然のめぐりあわせによってそこに居合わせた、人や物事とのつながりやかかわり」と定義の上、福山市鞆の浦において旧商店街の再生活動として開催された地域イベント『とも・こども商店街』を対象に、移住者と地域住民とのあいだに形成される縁の構築・変容プロセスを実証的に明らかにしたものである。調査の結果、移住者と地域社会とのあいだに形成された偶発的かつ多様な縁が、空き家再生拠点を中心としたイベントを通じて招集、更新されたことにより再び結び直された結果、旧商店街の再生活動の充実に寄与していることが事例を通じて具体的に明らかになった。加えて、移住者と地域社会を結ぶ縁は多様であるだけでなく、重層的で広範な空間的広がりを持つこと、また、偶然が重なり合い、縁の招集と更新が促進され、移住者と地域社会とのあいだの縁が新たに結び直されていることが明らかになった。

  • 石橋 澄子, 亀井 俊佑, 松場 拓海, 谷口 守
    2025 年60 巻2 号 p. 202-210
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
    ジャーナル フリー

    自治体における都市サービス施設の消滅という課題に対し、人口減少の影響が特に憂慮されているが、少子高齢化や居住の分散など他の人口問題や時代の潮流も影響を持つ可能性がある。本研究では2009年、2016年、2021年の経済センサス事業所データを用い、まずは国等の調査で頻繁に用いられる手法で、集計レベルでの人口規模と各種施設の存在確率の関係性の経年変化を初めて把握した。結果、一部の施設ではその関係性に変化が見られたが、集計レベルの資料のみではその要因の特定は困難であった。そこで条件付きロジスティック回帰分析を用いて自治体レベルでの各施設の存在確率の変化の要因を調べたところ、人口減少が主な要因となっている施設は一部に留まり、むしろ技術革新や社会的トレンドの影響や高齢化の影響が見られる施設が多く見受けられた。

  • 「アイレベル空間施策」、空間的特徴及び利用者評価の分析を通して
    松田 晃太, 中村 佳乃, 飛田 龍佑, 森本 あんな, 泉山 塁威
    原稿種別: 調査報告
    2025 年60 巻2 号 p. 211-224
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、東京都港区新虎通りを対象として、「アイレベル空間施策」の特徴、アイレベルの空間的特徴、アイレベルの利用者評価の3つの関係性を分析することにより、「アイレベル空間形成手法」及び留意点を示すことである。結論として、オープンカフェの誘導、1階建物用途を賑わい施設とすること、壁面素材にガラス等の透過性のある素材を用いることが重要であることが明らかとなった。

  • 社会生活基本調査を用いた追跡
    小林 泰輝, 松浦 海斗, 谷口 守
    原稿種別: 研究論文
    2025 年60 巻2 号 p. 225-233
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
    ジャーナル フリー

    近年、情報通信技術の発達やCOVID-19の流行といった事象を背景に、人々の生活行動は大きく変化していることが予想される。本研究では、人々の生活行動の経年的変容を「活動場所」や「情報通信機器の利用」の視点から明らかにした。分析の結果、以下のことが明らかとなった。1)「教養・趣味・娯楽」の自宅での活動時間は大きく増加し、「交際」のまちなか等での活動時間は減少した。2)生活行動パターンをクラスター分析で類型化すると、業務系クラスターにおいても私事系クラスターにおいてもサイバー空間を積極的に利用するクラスターが現れ、これらのクラスターは特に男性で経年的に増加してきた。3)大都市圏ほど、日常生活におけるサイバー空間の利用が進んでいる傾向にあり、高所得世帯では業務での利用が顕著に増加していた。

  • 大型店立地動向からみた指定効果及び立地適正化計画との連携による拠点形成効果に着目して
    下田 遥生, 浅野 純一郎
    原稿種別: 研究論文
    2025 年60 巻2 号 p. 234-247
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
    ジャーナル フリー

    本研究は特定用途制限地域による沿道型商業施設に対する規制誘導のあり方や課題を明らかにすると共に、人口減少時代における運用のあり方も含め同制度を検証することを目的とする。全国の地方都市において2024年10月時点で指定されていた全特定用途制限地域(284区域)から、白地地域の幹線道路に店舗面積制限を行う事例を、沿道指定型、規制型、準規制型として全事例抽出した(217区域、54自治体)。2024年3月末時の全大型店データを基に、①まちづくり三法改正後でも白地区域では1万㎡未満の店舗の立地は増加に転じていること、②その中で特定用途制限地域の指定は、特に3000〜5000㎡未満の店舗の立地抑制に効果を上げていること、③リテイルバーク型の連担型店舗の規制誘導に適していないこと、④今後は立地適正化計画と連携する形で1000〜3000㎡の店舗の適切な誘導に力点を置くべきであること、等を明らかにした。

  • 北口 立大, 嚴 先鏞, 鈴木 勉
    原稿種別: 研究論文
    2025 年60 巻2 号 p. 248-255
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
    ジャーナル フリー

    本研究では、鉄道が引き起こす地域分断を定量的に把握するため、①鉄道と道路の交差数、②道路網上での移動のしやすさ、③交差に伴う待ち時間や上下移動の負荷という三つの観点から、四つの評価指標を提案した。これにより、全国の鉄道駅周辺における地域分断の様相を具体的かつ相互に比較可能な形で記述することが可能となった。指標値の分析からは、交差数の少なさや上下移動の頻度が地域分断の強さに関係することが明らかとなり、また、鉄道が移動距離の増加や負荷の増大に与える影響も定量的に示された。さらに、駅の乗降客数や立体交差・踏切の配置に応じた分断の特徴も把握できることが示された。

  • 「小さな拠点」整備の 可能性 に関する基礎的研究
    五十石 俊祐, 小野塚 仁海, 石井 旭, 牛島 健
    原稿種別: 研究論文
    2025 年60 巻2 号 p. 256-267
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
    ジャーナル フリー

    本研究は、地方部において、民間生活サービスの自地域内施設利用率が高い地域・住民の特徴を明らかにするために、北海道の道北地域において生活行動圏に関する調査を行った。その結果、人口1万人以上の自治体は総じて自地域内施設利用率が高いと分かった。また、人口1万人未満の自治体においては、「最寄りの1万人以上自治体までの距離」が40km超か否か及び「地元就業率」の高さが自地域内施設利用率の多寡に影響を与える要因であると把握できた。加えて、生鮮食料品・日用品については「75歳以上」の回答者の自地域内施設利用率が有意に高く、「夫婦のみの世帯」の回答者の自地域内施設利用率が有意に低いと把握できた。ガソリンについては「85歳以上」「単身世帯」に該当する回答者、かかりつけ医については「35歳未満」「単身世帯」に該当する回答者の自地域内施設利用率が有意に低いと把握できた。

  • 藤井 祐, 南 正昭
    原稿種別: 研究論文
    2025 年60 巻2 号 p. 268-281
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
    ジャーナル フリー

    土地区画整理事業は,都市開発の主要な手法として利用されてきたが,様々な理由により事業期間が長期化している地区がみられ,公共投資に見合った事業効果の発現が難しくなることが懸念されている.事業実施においては,事業計画作成時点から適正な事業期間を設定することが重要となるが,事業計画作成時点での施行地区の現況や計画内容と事業期間との関係性については明らかになっていない. そこで本研究では,事業期間を事業の局面に応じて換地設計段階と整備段階に分け,事業データを活用して,地区の状況や事業内容と事業期間の関係について公共団体施行,一組合施行(業務代行方式以外),組合施行(業務代行方式)を対象に分析し,事業期間に影響を与える要因の特定とその影響について検証を試みた.また,その結果から土地区画整理事業に官民連携手法を採用することで,事業期間の短縮が可能になる可能性も指摘した.

  • 国内最初の中小企業団地・岡山鉄工センターを事例に
    中野 茂夫, 荒木 菜見子, 澁谷 和典, 角 哲, 中川 理
    2025 年60 巻2 号 p. 282-297
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
    ジャーナル フリー

    本研究は、国内最初の中小企業団地の一つである岡山鉄工センターを事例に取り上げ、中小企業団地の計画策定の経緯と実現した産業空間の実態について検討するものである。岡山鉄工センターは、新産業都市の岡山県南広域都市計画の一環として位置づけられており、中小企業団地のモデルとして計画された。当初、高山英華の指導のもと先進的なデザインの計画が策定されていたが、実際に造成する段階では、企業間の公平性に主眼を置いた計画に変更された。本研究では、こうした計画の質よりも公平性に重点を置いた団地造成のあり方にこそ中小企業団地の特質が潜んでいることを指摘した。このほかにも多様な支援事業を組み合わせた資金調達の方法や企業間の意見調整による管理・運営など、中小企業団地の産業空間の形成過程における特徴を見出した。

  • 和歌山県北部臨海工業地帯を対象として
    小田 裕平, 中野 茂夫
    2025 年60 巻2 号 p. 298-313
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
    ジャーナル フリー

    高度経済成長期には、四大工業地帯等とそれ以外の地域で格差が問題となり、地域格差を是正するために新産業都市や工業整備特別地域が選定された。和歌山県はいずれの政策にも選定されなかったが、和歌山県北部臨海工業地帯では活発な開発が行われた。本研究は、高度経済成長期に国の中心的政策の対象とならなかったにもかかわらず、大規模な産業基盤整備が行われた地域における、港湾とその背後にある都市空間との相互関係を明らかにすることを目的としている。国や県レベルの広域的な施策と、港湾や工業地、住宅地などの都市基盤の整備に関する個別の施策に着目した結果、港湾開発が地域計画に大きく関わり、都市計画や住宅地開発につながってきたことが明らかになった。

  • 奥村 佑一郎, 松中 亮治, 宇野 伸宏, 田中 皓介, 西垣 友貴
    2025 年60 巻2 号 p. 314-323
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
    ジャーナル フリー

    本研究では,全国のニュータウンを対象に,計画戸数の事業終了後における最大値,ならびに2020年時点における値を用いて,ニュータウンの計画戸数充足率と,立地条件ならびに事業特性との関連性について分析した. その結果,立地都市圏規模によらず,充足率が下位25%であるニュータウンは上位75%のニュータウンと比較して都市公園数やバス運行本数が少ないこと,大都市圏に立地し充足率が下位25%であるニュータウンは最寄り駅の鉄道運行本数が少なく,立地都市圏中心部までの距離が遠い傾向があることなどを明らかにした. また,計画戸数充足率を目的変数とした重回帰分析の結果,大都市圏に立地しているニュータウンでは最寄り駅の鉄道運行本数や最寄りの小学校までの距離,平均傾斜度などが,中小都市圏に立地しているニュータウンでは最寄り駅までの距離や最寄り高校までの距離,ニュータウン内の公園数などが計画戸数充足率との関連性が高いことを示した.

  • 埼玉県越谷市旧越ヶ谷宿エリアにおける実証実験を通じて
    山川 志典, 後藤 春彦, 髙嶺 翔太, 林 書嫻
    2025 年60 巻2 号 p. 324-331
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、「主観的幸福感(Subjective Well-being)」について注目が高まり、都市計画・まちづくりを通じて、いかにして人々の主観的幸福感を高めるかということが問われている。市民の主観的幸福感を支える都市政策への社会的関心に応えるため、本研究では、まち歩きにおいて、歩行地域に関する情報を付与する「ガイド」を伴うことが、まち歩き前後での精神的疲労と気分状態の変化に与える影響を明らかにすることを目的とした。そのため、埼玉県越谷市旧越ヶ谷宿エリアにおいて、58名の被験者を対象に、まち歩き実験を実施した。実験では、被験者を「ガイド」の有無に応じて2群に分け、まち歩きの前後で精神的疲労と気分状態を測定した。分析の結果、「ガイド」は、被験者の地域情報獲得を促したことが確認された。加えて、「ガイド」を伴うまち歩き(ガイド付きまち歩き)が、被験者の気分状態の改善に寄与することが示された。

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