土木計画学研究・論文集
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22 巻
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  • 消費内生型多地域間IOモデルの利用
    金 広文, 林 豪人, SECRETARIO. T. Francisco
    2005 年 22 巻 p. 1-10
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では、開発途上国経済の特徴に資した実用性の高い地域計量モデル開発を目的としている。具体的にはフィリピンを対象に筆者らが作成した多地域間産業連関表を用いて国内経済の地域間相互依存構造を明らかにした上で、消費内生型多地域間IO分析により公共投資の地域経済効果を地域別・セクター別に区別しながら計測し、公共投資の地域間配分の差異がフィリピンの地域経済へいかなる影響をもたらすか定量的に検討した。
  • 鷹尾 和享, 朝倉 康夫
    2005 年 22 巻 p. 11-18
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    筆者らは、経路選択行動の心理状態をことばによってモデル化することを試みている。その方法として、自由記述型アンケートの自由回答文から心理的な情報を抽出するというアプローチで研究を進めている。経路を選択する際のヒトの意識は、選択候補の各経路の認知結果であるアスペクトの取捨選択を行うことで表されるが、本稿では取捨選択の方略をPositive、Negative、Indifferentの3つに分類し、言語表現パターンを用いて自由回答文からこれら3種類のアスペクトの取捨選択方略を抽出する方法を示す。さらに、初見の文に対して本手法の適用実験を行い、その結果について考察する。
  • 榊原 弘之, 高橋 啓介, 坂元 鉄兵
    2005 年 22 巻 p. 19-30
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    一般に, 道路ネットワークを構成する各リンクは, 相互連関性を有しており, 集権的に運営することが望ましい. しかし, 意思決定の迅速化等の要請から, 分権的なネットワーク運営が選択されるケースも多い. この場合, 効率性が損なわれないような運営形態にすることが必要となる. 本論文では維持管理問題を対象に, 有料道路のネットワークを分割して分権的に運営した場合の個別の運営者の行動をゲーム論的にモデル化する. その上で, 非協カゲームの均衡解として得られた補修戦略と, ネットワークを集権的に運営した場合の補修戦略を比較する. また, 分割パターンと補修の効率性の関係について分析を行う.
  • 岡田 憲夫, 榊原 弘之
    2005 年 22 巻 p. 31-37
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 参加型コンフリクトマネジメントという視点から「地域づくり」「まちづくり」と呼ばれる営みを概念形モデルとして記述するとともに, コンフリクトマネジメントの成否を決定する本質的特性としての「想験性」, 「創発性」, および「執行性」について議論する. その際, 分析装置としてのゲーム理論に着目するが, ゲームの構造を規定する要素として, ゲームの場 (スコープ) という概念を導入することを提案する. さらに, スコーピングを, コンフリクトを解消させることを目的として, ゲームの構造を変化させる動的なプロセスと定義し, スコーピングの過程をコンフリクトマネジメントモデルとして定式化する.
  • 杉浦 伸, 木下 栄蔵
    2005 年 22 巻 p. 39-46
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文では, 総合評価値一斉法を提案する. 杉浦・木下はAHPの新しい手法である評価値一斉を提案している. 評価値一斉法は代替案の評価値のずれを修正するモデルである. また, 杉浦・木下は従来の一斉法と評価値一斉法を区別するため, 従来の一斉法を重み一斉法と命名している.
    本論文では, 新たに提案した総合評価値一斉法によって, 重み一斉法と評価値一斉法の統合化をはかり, 総合評価値一斉法がAHPにおける新しい視点を持つモデルである一斉法の完全な体系の構築を提案している.
  • 岸 昭雄, 河野 達仁, 森杉 壽芳
    2005 年 22 巻 p. 47-52
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, 勤務時間が固定の下での個人の行動モデルを構築し, 交通所要時間, 交通料金の変化による時間価値および交通需要の変化を数値シミュレーションによる比較静学によって示すことにより, 時間価値を内生化することが交通需要予測に与える影響について考察している. その結果, 時間価値の内生化により, 交通所要時間の変化と交通料金の変化が一般化交通費用の変化の上では等しくても, それぞれが交通需要に与える影響の度合いは全く異なることを示した. 本研究により, 従来型の時間価値一定の一般化交通費用による交通需要予測方法は, 大きなバイアスをもたらしている可能性が高いことが判明した.
  • 木俣 昇, 曽根 岳志
    2005 年 22 巻 p. 53-64
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文では避難計画=シナリオとし, その想定外の批判的・建設的検討の支援システムを著者らのペトリネットシミュレータを基礎に論じている. まず, シナリオとは, 事象連鎖による目的達成の指示書であり, ペトリネット記述法の原理と諸特徴よりシナリオ記述に優れていることを示し, 避難シナリオの基本部分ネットを提示し, それらの理解の容易さも, 批判的・建設的検討システムの要件となるとしている. 次に, 実レベルでの支援性を, 建物内避難空間図を背景画像とし, シミュレータを用いて, シナリオシミュレーションの構築支援性と, 即時実行性をデモンストレーションし, 初期想定よりリスクの高い想定での検討支援にもシステマテックに移行できることを示している.
  • 織田澤 利守, 長谷川 専, 小林 潔司
    2005 年 22 巻 p. 65-76
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    これまでに著者らが提案した公共事業の事前・再評価モデルは理論モデルであり, 評価スキームの実行可能性およびアカウンタビリティーの観点から実務への適用に限界があった. 本研究は, 理論モデルと可能な限り整合的であり, かつ簡便な事前・再評価スキームを設計するための方法論を開発する. その際, 公共事業評価の事前・再評価結果に大きな影響を及ぼすと考えられる要因として便益リスクと遅延リスクに着目し, 公共事業をとりまくリスク特性を可能な限り合理的に反映しうる実用的な事前・再評価スキームを提案する. さらに, 数値計算事例を通じて本研究で提案した評価スキーム設計手法の有効性について検証する.
  • 羽鳥 剛史, 安野 貴人, 小林 潔司
    2005 年 22 巻 p. 77-88
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    ETCは新しい技術であり, 導入段階における利用率の増加に伴って, 将来価格が低下するという通時的金銭外部性が存在する. 本研究では, ETC価格に関する通時的金銭外部性とETC購入を検討するための意思決定費用に着目するとともに, 個々のドライバーのETC購入行動をreal optionモデルとして定式化し, ETC価値に関して異質性を有するドライバーから構成される社会において, ETCが普及するプロセスを分析する. さらに, ETC普及政策として補助金政策と情報開示政策をとりあげ, 個々の政策単独ではETCの効率的な普及を実現することが出来ず, これらの政策を組み合わせた複合的政策が必要であることを理論的に示した.
  • 二神 透, 木俣 昇
    2005 年 22 巻 p. 89-96
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本稿では、中山間地域の救急・避難計画に着目し、著者らが開発を行っているペトリネット・シミュレータを用い、背景画像上の航空写真の画像データと、プローブデータ、住民情報、ハザードマップを援用することにより、より現実的なシナリオと部分ネットの作成を可能とするシミュレーション開発について述べた。適用事例を通じて、現実的な通行阻害シナリオの設定とペトリネットによる漸近的モデル化の実装を具体的に示し、それにともなう避難行動の変化を動的に示すことができた。
  • 寺部 慎太郎, 河添 典子
    2005 年 22 巻 p. 97-104
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では高知県内の社会基盤計画の事例を取り上げ, 情報伝達活動の評価手法としてweb調査を用いることの妥当性を検討し, 情報を伝える上でのメディア別特性を調べた. その結果, web調査を用いることはテレビを除いて妥当であることを示し, 社会基盤整備計画PIにおける情報伝達活動のメディア別特性を明確にした. これにより, PIプロセスにおいても, ある広報を行ったすぐ後にその効果測定をweb調査で行い, その後のPI活動に反映させるような使い方が十分可能であるということがわかった. また基本的な情報伝達のメディアとして新聞を利用しつつ, 若年層に向けてタウン情報誌を活用することを望ましいという知見を得た.
  • 滑川 達
    2005 年 22 巻 p. 105-110
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本稿では、本研究がこれまで構築してきたGAによるスケジューリングアルゴリズムに対し、投入資源量決定問題および確率的スケジューリング問題のための検討ツールとして拡張を行った。2つの問題の例題分析を通して、本アルゴリズムが投入資源量の多少に影響を受けることなく、常に安定して非劣解の可能性の高い効率的フロンティアが求められる検討ツールとなり得る可能性が高いことが明らかとなった。
  • 土谷 和之, 小池 淳司, 上田 孝行
    2005 年 22 巻 p. 111-120
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文では, 交通施設整備の効果として従来計測されてきた利用者便益に加えて, トリップの着地側でのフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションによる生産性向上の効果を技術的外部性として計測可能なSCGEモデルを提案した. さらに, 実データを用いたパラメータ推定および地域間所要時間短縮の効果シミュレーションを行うことにより, コミュニケーションによる生産性向上の効果が利用者便益と同程度のオーダーとなりうる可能性が示唆された. 本モデルは従来の地域計量経済モデルで計測されてきた効果とほぼ同じ概念のものを, 便益として計測可能であるという点で, 実務的にも有益なモデルとなりうると考えられる.
  • 福本 潤也
    2005 年 22 巻 p. 121-132
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    プロジェクト評価手法のマニュアル化は土木計画学の研究成果を実社会に還元するための重要な手段の一つである. 本論文では, プロジェクト評価の監査制度との関係に着目しながら, マニュアル化の意義と限界について考察することを試みる. 具体的には, 福本・土谷 (2004) で提案したモデルを拡張して最適監査制度についてのモデル分析を行う. マニュアル化の結果として生じる多様な影響を共通の分析枠組みのなかに位置づけたうえで, マニュアル化のメリットとデメリットを理論的に明らかにし, それらに意味解釈を加えることでマニュアル化の意義と限界についての知見を探る.
  • 福本 潤也
    2005 年 22 巻 p. 133-144
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    行政が実施する需要予測に対して, マニピュレーションが行われているのではないかとの厳しい批判が社会から投げかけられている. 本論文では, マニピュレーション抑止に有効な制度として, 有限責任制度, トーナメント制度, 繰り返し取引き制度, 再交渉制度, 監査制度の5つを定義し, 福本・土谷 (2004) で提案したリスク負担制度との比較を通じて, それぞれの制度の長短を把握し, 今後の制度設計に向けての有益な知見を探ることを目的とする. 複数制度の比較にあたり, 予測作業に携わる分析者が負担するリスクの大きさに特に着目する.
  • 喜多 秀行, 月岡 修一
    2005 年 22 巻 p. 145-152
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, より正確なバス利用者ODパターンのデータを得るため, 停留所別の乗降者数を基にした推計方法を開発し, 現実のバス路線データを用いて推計方法の妥当性を検討した. その結果, 路線によって差はあるが, 観測乗降者数データのみから, 補助金の算定やバスサービスの向上に必要とされる, より正確なバス利用者ODパターンを推計することが可能となった. また, 限定的な調査結果を年間データに拡大して用いなくとも, 比較的簡単に観測できる乗降者数データを基に推計することができることを示した. 今後は推計計算の考え方について更に検討を行い, より推計精度を向上させる方法を開発する.
  • 宮田 譲, 張 鍵
    2005 年 22 巻 p. 153-162
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    国際的に都市化が進む中で, 過疎, 過密問題は依然として重要な課題である。特に中小都市の都心部空洞化は, 都市の発展に影響があるだけではなく, 遠距離交通の問題を引き起こし, それがエネルギー, 環境負荷増大などの新たな環境問題にも影響を与えている。こうした背景のもと, 本研究では都市の発展, 衰退をどのように説明するのかを独占的競争理論を用いて行うものである。KrugmanはDixitand Stiglitzの独占的競争理論に基づき, 2地域モデルを考察しているが, 本研究もその一部を参考としている。しかしながら, 本研究ではその後のFujita and Krugmanのモデルでも考察されていない, 2都市からなる均衡動学シミュレーションモデルを構築していることに特徴がある。そして新規の企業立地がなさる時, どのような場合に都市が発展し, また衰退するのかを数値シミュレーションを通して分析している
  • 溝上 章志, 池田 香
    2005 年 22 巻 p. 163-169
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 交通結接点改善事業における行政と反対住民との間に発生する利害対立の構造をゲーム理論の一種であるコンフリクト解析を用いて経時的に分析し, WSのあり方について考察を行った. 行政と沿線住民, WS参加者の3者の立場から決定した選好順位を基にコンフリクト解析を行い, 得られた結果とアンケート調査結果を比較して均衡解の妥当性を評価. 各プレイヤーの認知レベルゲームの結果は各プレイヤーの意向を反映したものであり, ハイパーゲームにおける均衡解はWSの経緯をトレースしていることが確認された. 本事例において, WS開催の趣旨に対する誤認があったことがコンフリクト発生の大きな原因であったことが分かった.
  • 谷口 守, 松中 亮治, 中道 久美子
    2005 年 22 巻 p. 171-176
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    近年、都市コンパクト化の重要性が認識され、実際にそれを念頭に置いた都市構造政策が各所で見られるようになってきた。都市構造改変により防災上の諸課題にも影響が及ぶことが考えられるが、その検討は未だ十分でない。特に水害に関しては、土地利用計画と連携させることで水害対策を強化する地域を意図的に導入する戦略を採用することは可能と思われる。そこで本研究では、コンパクトシティ政策に対応した整備・政策メニューを検討するためのシステムであるSLIM CITYを実際の都市に適用し、シナリオに水害回避を盛り込むことで、都市コンパクト化政策と水害軽減方策の連携可能性について検討し、その有効性を明らかにすることができた。
  • 斎藤 健治, 清田 勝
    2005 年 22 巻 p. 177-182
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    歩道, 自転車歩行者道におけるバリアに関する情報を効率よく収集するためのプローブ自転車を開発した. このプローブ自転車には, 磁気センサ, 加速度センサ, ポテンショメータ, 傾斜センサ, ジャイロセンサが搭載されており, 段差の高さ, 幅員, 勾配を推定することができる. 段差の推定については種々の形状に対応すること, 幅員の推定についてはヒューマンエラーの介在を防止すること, 勾配の推定についてはジャイロセンサの情報を有効利用することが課題となった. 行政等における実利用のためには, 大容量記憶媒体やリアルタイム処理方式の採用, GPSとの同期, GIS上でセンサ出力波形を変換して可視化するシステムが必要となる.
  • 板谷 和也, 原田 昇
    2005 年 22 巻 p. 183-188
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文はフランスPDUにおける合意形成過程を明らかにするために、各住民参加手法と意思決定機関としての議会の役割を概観し、それをもとにPDU制定プロセスの、意思決定過程全体における位置づけを明確にした。それにより、フランスの意思決定過程は議会の議決を中心に据えており、各住民参加手法は議決に際しての民意把握を主目的としていることが明らかになった。この考え方に基づく制度の下で、構想計画・事業計画がそれぞれ別の意思決定過程を経ることも定められている。そこでは事業側は情報公開と民意把握、住民側は情報収集と意見表明が求められており、この明快な役割分担が計画策定・実施に関しで効果的であると考えられる。
  • 久 隆浩
    2005 年 22 巻 p. 189-194
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では、地区における住民主体のまちづくりプロセスのあり方について考察を行なった。情報共有・課題共有のための「交流の場」の設定から、課題解決をめざした「まちづくり協議会」の設立、そして協議会における構想づくりから具体的な事業・活動への流れを、いかにむすびつけまちづくりの実践へとつなげていけるのかについて考察した。まちづくりの契機として「交流の場」づくりが重要であること、また、交流の場からタスクフォースとしての「まちづくり協議会」が生み出されること、を指摘し、さらに、住民提案としてのまちづくり構想から行政計画としてのまちづくり計画へという2段階で考えることが大切であることを明らかにした。
  • 鈴木 温, 三浦 良平, 山口 真司
    2005 年 22 巻 p. 195-202
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では、社会資本整備の意思決定プロセスにおける市民参加に関して、制度的背景が比較的日本と似ていると言われるフランスの制度とその運用、特に公開討論の最新動向について紹介するとともに、社会背景や関連する社会制度、国民性の違い等を踏まえた上で我が国の市民参加の課題と今後の方向性について検討を行った。その結果、フランスの市民参加では合意形成を目的としていないこと、最終的には意思決定者が合理性の観点から、責任を持って決定を下すこと、決定の客観性を高めるため、第三者がチェックすること等の特徴が明らかとなった。今後は習慣や文化、価値観等の違いを考慮し、日本にあった方法を構築していくことが重要な課題となる
  • 金 賢, 西井 和夫, 佐々木 邦明, 権 寧仁
    2005 年 22 巻 p. 203-211
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 韓国の道路事業における行政側への不信感, 道路事業理解度や住民参加の満足度, そして新たなPIに対する理解度とPIへの参加意図に着目し, これらと道路事業に対する受容意識との因果構造について, いくつかの分析仮説を設定し, 共分散構造分析を通じてその有効性を検討した. この結果, 道路事業における受容意識は, 行政側への不信感が強い影響を与える阻害要因であることが確認された. 一方, 受容意識に肯定的な影響を及ぼす促進要因としては事業理解度や新たなPIに対する理解度評価があることが確認された.
  • 奥田 隆明, 石川 卓哉, 文 多美
    2005 年 22 巻 p. 213-222
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文では、基準年の地域間産業連関表に基づき過去の地域間産業連関表を遡及推計する方法を提案する。この方法の特長は、推計年における国の産業連関表を情報として取り込んだこと、また、高速道路整備等による地域間距離の変化の情報を取り込んだことの2点にある。また、この方法を用いて1985年の韓国地域間産業連関表の遡及推計を行い、1985年から1995年までの10年間に韓国の地域経済構造がどのように変化したのかを分析した。そして、1) 韓国の機械生産は首都圏と釜山圏の二極構造を持つものの、この時期、首都圏や釜山圏の成長が中部・西南部の機械生産を増加させる地域構造に変化したこと、2) これに対して、首都圏への人口集中や首都圏で提供されるサービスの重要性が増すことにより、首都圏のサービス生産が増加し、首都圏への一極集中構造をさらに強めたことなどが明らかにされる。
  • 近藤 明子, 近藤 光男
    2005 年 22 巻 p. 223-230
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    今後一層の少子高齢化と人口減少時代を迎えるわが国において、人口移動現象を年齢階級に着目し分析することは今後の人口政策に示唆が得られると考えられる。そこで本研究では、Rogersモデルを都道府県間の人口移動に適用することにより得られるパラメータ及び指標から、都道府県を類型化し、各地域の中心都市を明らかにした。その後、起終点を考慮した人口移動スケジュールを推定し、各圏域における中心都市に関する人口移動の地域的特徴を明らかにするとともに、人口移動の時系列の特徴についても示した。その結果、移動スケジュール曲線は各圏域、各期間において、特徴を持ったものとなり、興味深い結果を得ることができた。
  • 江夏 量, 外井 哲志, 坂本 紘二, 菊池 康昭, 梶田 佳孝, 末久 正樹
    2005 年 22 巻 p. 231-238
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は、若久地区コミュニケーション形成事業を事例として、長期に渡って重ねられた調整協議会のプロセスを、協議会議事録の整理を主たる手段として把握することによって、住民参加のプロセスがどのように進行したか、対立点に対しどのように合意形成が図られたかを分析したものである。具体的には発見できた対立点を挙げ、その合意形成プロセス、また合意形成促進のために必要な事項について考察した。また、本事業の特質を述べた後、進行上の課題を挙げ、原因を検証するとともに、問題解決を促すと考えられる方策を提案し、その効果を考察した。最後に、本研究によって明らかになったこと、提案したことをまとめた。
  • 嶋本 寛, 倉内 文孝, 飯田 恭敬
    2005 年 22 巻 p. 239-246
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, common lines problemと容量制約条件を考慮に入れた乗客配分モデルを用いて, 路線網の形状の違いが乗客行動に及ぼす影響分析を行った. その結果, 路線網の形状によって乗客行動が変化することを提案したモデルによって表現可能であることが確認され混雑具合に及ぼす影響を連結信頼性などで定量的に表すことができた. また, 共通運賃制度の導入や特定路線への追加料金の徴収など料金体系を変動させることによって混雑が緩和あるいは分散されることが確認され提案したモデルによって料金施策による混雑緩和効果の検討を実施可能であることを示した.
  • 福本 潤也
    2005 年 22 巻 p. 247-255
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    現在, 国土計画制度の大幅な見直しが諮られている. 今後, 望ましい国土計画が策定されるかどうかは, いかなる国土計画制度が設計されるかと, 設計された制度がいかに運用されていくかに依存する. 国土計画の制度設計と運用過程のあり方をめぐっては, 多様な論点の相互関係を十分に考慮しながら議論を進めていく必要があることから, 本論文では, 国土計画の制度設計と運用過程をめぐる様々な論点の整理に有効な議論の枠組みを提示することを試みる. 国土計画の理想形を動的計画問題として捉え, 計画プロセスの理念形を定義する. さらに, 現実の計画プロセスを理念形に近づけるために必要とされる方策について検討し, 国土計画の制度設計と運用過程をめぐる様々な論点について考察する.
  • 小畠 直人, 内田 賢悦, 加賀屋 誠一, 萩原 亨
    2005 年 22 巻 p. 257-264
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では、積雪寒冷都市において有効であると考えられる、広域熱供給システムについて経済性評価を行った。具体的には、札幌市を対象とし、その事業スキームを構築し、自治体、電力会社等の各主体がどのように整備コストを負担すれば、導入可能となるかについて検討を行った。検討に先立ち、構築した事業スキームに基づき、参入する各主体それぞれについて、コスト分担量を変数とした効用関数を定式化し、これらを用いた目的関数を設定し、その最適化をGA (Genedc Algorithm) 適用して行った。その結果、札幌市を対象とした広域熱供給システムには、経済的観点から導入可能性があることが示された。
  • 永田 尚人, 西村 典子, 山本 幸司
    2005 年 22 巻 p. 265-270
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    大都市部における大規模地震発災直後において, 主要な輸送機関である鉄道の運行停止等により多くの帰宅困難者の発生が予測されている. 帰宅困難者は徒歩により帰宅を行うものと考えられるが, 帰宅経路の安全状態や被害状況に関する情報とともに, 帰宅経路における食料や飲料水の確保が大きな課題となる. 本研究では, 東海地震に対する警戒宣言発令後における交通輸送機関の麻痺により発生する帰宅困難者の問題点を明らかにした上で, 飲食料等確保の観点からコンビニエンスストア活用のあり方について検討を行うことを目的とする.
  • 阿部 宏史, 新家 誠憲, 永禮 拓也
    2005 年 22 巻 p. 271-278
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    運輸部門はわが国の二酸化炭素排出量の約20%を占めており, 地球温暖化対策では, 運輸部門からの温室効果ガス削減が急務となっている。本研究では, 全国9地域別の地域産業連関表から運輸部門を細分化した産業連関表を作成するとともに, 国立環境研究所・京都大学大学院エネルギー科学研究科による二酸化炭素排出量推計値を利用して, 二酸化炭素排出の地域構造を分析した。分析結果より, 運輸部門からの二酸化炭素排出では, 道路貨物輸送の影響が大きいこと, また最終需要項目別では移出による影響が大きいことが明らかになった。従って今後の効果的な二酸化炭素排出削減に向けては, 地域間交易ふまえた施策が重要と言える。
  • 秀島 栄三, 新田 博之
    2005 年 22 巻 p. 279-286
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では社会基盤整備において今後さらに広まると考えられる参画型計画に焦点を当て、そのような場における技術の選択のあり方について考察する。具体的には社会基盤整備の参画型計画プロセスについてまとめた上で、ある河川整備事例の社会的な経緯を観察し、技術や専門家のあり方について考察する。そしてアンケート調査により当該河川を想定して浄化技術を選択して貰い、コンジョイント分析を用いて回答者の選択の背景にある要因等を明らかにする。結果として参画型計画における技術の取扱いについてダイナミクスがあることを示すとともに、都市社会における主体の多様性を踏まえた技術選択の可能性を示した。
  • 洗練化と合理化
    林山 泰久, 稲垣 雅一, 阪田 和哉
    2005 年 22 巻 p. 287-296
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, 双曲型割引関数モデルに依拠した態度行動変容モデルを定式化し, 環境教育の長期的効果を明らかにしたものである. その結果, 環境教育は洗練化と合理化という2つの大きな効果が存在し, 洗練化は負の効果をもたらす可能性があることおよび合理化は正の効果があることを示した. 最後に, 本研究では環境教育を実施する際に, 洗練化と合理化に対してどのような環境教育が有効であるか明らかにした.
  • 柴 有香, 桜井 慎一
    2005 年 22 巻 p. 297-303
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    全国各地の河川において親水テラス整備が進められる中で、橋梁の真下にあたる橋梁下空間は大部分が手付かずの状態で取り残されている。しかしながら、全国の行政機関のうち約8割もがゴミの不法投棄といった問題を橋梁下空間に認識していること、さらにはそれら問題が河川空間全体の質を左右することが本研究から明らかとなり、整備の必要性がないとは言い難いであろう。そこで本研究では橋梁下空間の整備を阻む事情やその要因を把握し、整備を進める上で取り組むべきと考えられる課題を示すことを目的とした。その結果、橋梁下空間と親水テラスとして整備される橋梁間とを一体的に捉えるといった認識改善が行政機関に求められることなどが明らかとなった。
  • 竹内 雄亮, 新田 保次, 松村 暢彦, 吉田 雄亮, 藤江 徹
    2005 年 22 巻 p. 305-314
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    現在, 貨物交通部門における地球温暖化対策, 沿道大気汚染対策として環境, 経済の両面で効果のある運転方法である「エコドライブ」が注目されている. 本論文では, そのドライバーへの支援ツールとして「車載機器」を取り上げた. そして実際に運行中の貨物車に車載機器を装着し, その支援下で走行をしてもらう実証実験により「車載機器を用いたエコドライブ支援」の効果の評価を行った. その結果, 車載機器を用いたエコドライブ支援は, ドライバーの運転態度・行動を大きく変容させた. そして運転行動の変化に伴い, CO2, NOx排出量や燃料費用を削減することがわかった.
  • 須崎市を対象として
    濱田 洋平, 近藤 光男, 渡辺 公次郎, 竹内 光生, 山口 満
    2005 年 22 巻 p. 315-323
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 住民を対象としてアンケート調査を実施し, その結果を考慮した避難行動シミュレーションや避難場所配置計画を行った. 具体的には, まず, 3種類の津波を想定して津波浸水シミュレーションと異なる2つの避難行動シミュレーションを行い, 避難できない人数を予測するとともに, 津波襲来時の危険地域を明らかにした. そして, 選定した危険地域とそこに住む人数を考慮し, 全ての人が避難できることを前提とした公平性を重視した配置モデルを適用し避難場所配置について検討した.
  • 松田 曜子, 多々納 裕一, 岡田 憲夫
    2005 年 22 巻 p. 325-334
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    災害に対するリスク回避の選択行動は, 各家計が信念として持つ主観的リスクに基づいていると考えられる. 本研究ではリスク回避的効用関数を規定した家計が災害による被害に対して持つリスク回避度とリスクプレミアムをCVMアンケートを用いて直接的に計量化する手法を構築する. 実証分析としてCVMを地震リスク下における資産損失被害の回避オプション (地震保険) に対する支払意思額の分布推定に適用することでリスク回避度の計量化を行う. さらにリスクに関する情報を所与としないサンプルを併用し, 所与リスク下と主観的リスク下の家計の認知リスクと回避選好行動の違いについて考察する.
  • 田中 正吾, 岡田 憲夫, 松田 曜子
    2005 年 22 巻 p. 335-344
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    現在懸念されている東海, 東南海・南海地震のような大規模地震の発生に備え, 個々の地域が自らその防災力を高め, 自助努力によって災害発生直後の緊急時を克服することの重要性が指摘されている. またそのために平常時から地域がいかに「備える」かが極めて緊要となってきている, 本研究では, 実際行われている試みをシステム的視点から一定期間観察しモデル化することで, プリペアドネス向上を目的とするコミュニティ型防災の方法論に向けた基礎的モデルの構築を行う.
  • 小島 弘子, 田中 尚人, 奥嶋 政嗣, 秋山 孝正
    2005 年 22 巻 p. 345-352
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は、都市景観評価のエキスパートシステムを構築し、都市景観の水準向上に役立てることを目的とする。岐阜県大垣市を対象とした景観評価システムのプロトタイプでは、都市景観を「構造物の意匠性」、「視覚的な調和性」、「立地の風土性」の3側面から評価することが可能となった。本研究では評価論理の検討を行い、特に「視覚的な調和性」評価で色彩の様々な調和形態を考慮した複雑な論理を構築した。最終的に、168個の推論ルール (評価知識) を評価システムに組み込んだ。この評価結果とアンケート結果を比較し、一般性を検証した。本システムでは評価の推論過程を分析することで、改善案を提示することが可能となった。
  • 伊藤 宏匡, 田中 尚人, 秋山 孝正
    2005 年 22 巻 p. 353-360
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 鉄道網を基軸として, 近代以降の岐阜市における都市形成を明らかにして, 鉄道網が果たしてきた役割を抽出することを目的とした. まず, 歴史的文献などに基づき, 明治期から現代にかけて鉄道網の立地と計画意図及び, その機能, 配置の変遷を明らかにした. 次に, 都市計画の変遷を整理し, 鉄道網と都市計画の関係を明らかにした上で, 鉄道網が岐阜市に与えた影響について分析を行った. その結果, 他の都市と岐阜市を結ぶ岐阜駅の存在は中心部の発展と南下を促し, 電気軌道網は都市内において都市構造を再編した. 近年, 鉄道網と都市の関係は弱まっている現実はあるが, 岐阜市は鉄道網を都市形成の基盤としてきたことが分かった.
  • 樋口 明彦, 吉原 真理子, 高尾 忠志
    2005 年 22 巻 p. 361-370
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文では、二つの事例を比較することで, 地方幹線道路の拡幅事業を住民参加型で実施する際の意義と課題について整理することを試みた.その結果、住民参加による地方幹線道路拡幅事業の手法には, 地域性に配慮した設計が可能となること、住民間の話し合いにより様々な合意形成がスムーズに進む可能性のあること、住民参加の形態をとることで線的な街路整備事業が面的なまちづくりに展開していく可能性のあることが明らかになった。一方、行政側による住民が参加しやすい場作りが必要であること, 住民の定義が不明確となりがちであること, 専門家の中立的な参画が必要であること等の課題が明らかになった.
  • 愛媛県外泊地区を事例に
    三宅 正弘, 庄野 武朗
    2005 年 22 巻 p. 371-378
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    ヨーロッパの石文化に対してわが国は木の文化と言われているが、石造建造物はわが国の空間形成において必要なものであった。しかしながら、景観論や街並み論においてその議論は少ない。また近年、土木分野では、土木遺産や近代化遺産の気運の高まっているが、その中で石垣の位置づけは定かではない。わが国の石垣は地域性が極めて繁栄されるものであり、今後の保全方策の検討が必要であろう。本研究は、まだわが国で保全方策が定まらない石垣の保全状態、および石垣を基礎石垣と壁石垣 (壁を形成する石垣) の視点で考察したものである。研究対象地域は愛媛県愛南町 (旧西海町) 外泊地区とした。
  • 徳島県・高開 (たかがい) の石積みを事例に
    三宅 正弘, 庄野 武朗, 山中 英生
    2005 年 22 巻 p. 379-386
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    中山間地域における段々畑や棚田の集落景観は, 地域の風土が反映された風土的景観として評価されるようになってきた。そのような集落環境は公的に資本整備されてきたものでなく, 集落の人々が自ら築き, 時には共同作業で作り上げた環境である。その社会基盤は, 中山間地域の場合, それらは主に石積みによって施されていることが多い。今日, そのような環境の維持管理や保全が必要とされているが, 中山間地域のその景観保全には, その材料や技術, また人材が必要である。そこで本研究は, 中山間地域における集落維持管理システムの中でも, 石造社会基盤の景観保全システムについて考察するものである。対象地域は徳島県・高開の石積みとした。
  • 樋口 明彦, 佐藤 直之, 高尾 忠志
    2005 年 22 巻 p. 387-396
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文では, 福岡市博多川で実施された博多川夢回廊事業と徳島市新町川で実施された東船場ボードウオーク整備事業を比較することにより, 都市河川整備をまちの活性化に活かしていく上で考慮すべきポイントを抽出することを試みた. 関係者へのヒアリングを中心とした比較調査の結果,(1) 河川整備を河川空間を活かしたまちづくりとして認識すること,(2) 河川行政だけでなく地域住民や専門家が協働すること,(3) 河川整備とまちづくりを一体的に捉えた行政の枠組みが必要であることが明らかになった.
  • 出村 嘉史, 川崎 雅史, 樋口 忠彦
    2005 年 22 巻 p. 397-404
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文では, 南禅寺福地町周辺を対象地域として, 近代における景域の形成プロセスを明らかにするとともに, ここに注がれた景域の構成上の工夫と知恵を再評価することを目的とした.第1に歴史的地図資料などをもとに, 敷地の変遷を調査・確認した.次に対象地域に関わる琵琶湖疏水工事の記録を調査して, 景域の軸となる小径の成, 対象地域内の用途別のエリアが地形に収まる状況と, デザイン上の位置づけを示した.その結果, 小径・住居の開発時に, 幅員 (空間規模)・植栽・水の工夫により, 対象領域へ景域としての関係性が与えられていたことを見出した.
  • 和泉 範之, 奥嶋 政嗣, 秋山 孝正
    2005 年 22 巻 p. 405-412
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    パーソントリップ調査データは, 交通計画の基本データであり, トリップメーカーの1日の交通行動が記載されている. 一方で, 空間情報システムは各種の空間情報を格納することが可能である. 本研究では, 全般的に交通計画の基本資料である都市圏PT調査の有効利用方法を検討する. 具体的には,(1) GISで創出可能な空間情報を交通データと統合し, 都市圏の交通現象を時空問的に把握する. これにより, 都市交通現象を時間的変化, 空間的分布の任意側面から検討できる.(2) 精緻な交通行動分析には, 道路交通センサス, 都市交通調査などの特定目的別交通調査の統合的利用が望まれる. しかしながらGISの空間情報補足と分析機能の援用により交通現象の理解が容易となる.
  • 松村 暢彦, 森田 卓志
    2005 年 22 巻 p. 413-420
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 大阪南港ポートタウンで実施されているノーカーゾーンという, 居住区域内を車両通行禁止とする交通政策に着目する. 共有地の悲劇における知見から, 「入居時の規制に対する合意」に着目し, ノーカーゾーンが自動車利用に与える影響を明らかにするために, 大阪南港ポートタウン, 公団武庫川住宅, 神戸ポートアイランド, の3臨海住宅団地を対象にアンケート調査を実施した. その結果, ノーカーゾーンに賛成し入居した人は自動車利用頻度が低く, ノーカーゾーンに反対し入居した人は自動車利用頻度が高いことから, 「自動車交通の排除」という交通政策に対する入居時の態度が交通行動に影響を与えていることが明らかになった. したがって, 新規転入者に対し, 入居時に住宅団地の自動車交通政策に対する同意を取り付けることが, 住宅団地の自動車交通問題の解決に有効であると考えられる.
  • 福田 大輔, 渡部 数樹, Kali Prasad NEPAL, 屋井 鉄雄
    2005 年 22 巻 p. 421-429
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 潜在変数モデルと時間配分モデルの統合を行って, 平日の時間利用によって規定される潜在的要因が休日の時間配分に影響を及ぼす状況を行動モデルとして定式化し, 平日の時間利用に対する評価が休日における時間配分, 及び, 活動時間価値の形成にどのような影響を及ぼしているのかを実証的に検討するための方法を提案した. 提案したモデルの妥当性を検証するために, 平休日の時間利用, 及び, 時間利用評価に関する情報を得るための小規模調査を横浜市青葉区で行い, 得られた個票データを用いて, 時間配分モデルと潜在変数モデルのパラメータ推定を行った. 実証分析の結果, 平日の時間利用評価が, 休日活動の時間配分, 及び, 活動時間価値の形成に対して, 有意な影響を及ぼしていることが示唆された.
  • 李 燕
    2005 年 22 巻 p. 431-437
    発行日: 2005/10/31
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    パーソントリップ調査および四段階推定法は、1950年代に開発されて以来、さまざまな問題点が指摘されているが、その問題点を解決することが今日まで膨大な交通計画・研究分野のメインストリームになっているように思われる。しかし、これらのさまざまな成果は必ずしも現実の交通計画に適用できていないのが現状である。情報化が進んでいる現在、これらの成果を新しいプラットフォームで再考し、より実用的な交通計画を行うことが可能な環境が整っている。本研究は、GISをこのようなプラットフォームとして選び、すべての道路を取り上げたネットワークにおいて、ほぼ一台一台まで細分した交通量の配分を試み、高い再現性を得ることができた。また、GISを導入することによって、従来、の交通計画実務にとっても有益な示唆が得られた。
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