ペット栄養学会誌
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19 巻, 1 号
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原著論文
  • 木元 広実, 守谷 直子
    2016 年 19 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2016/04/09
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
    我々はこれまでに Lactococcus lactis H61の摂取が加齢に伴うマウスの皮膚の潰瘍の発生や脱毛等を抑制することを報告している。本研究ではH61株のペットフードへの応用を目指し、イヌにおける有効性を検証した。年齢、性別、体重、犬種の異なる家庭犬(24頭)を無作為に3群に分け、H61株非摂取群の他、加熱処理菌体3mg(109 cfuレベル/日)または30mg(1010 cfuレベル/日)を4週間継続的に摂取させた。試験前後に、老化に関わる外観や体臭、生活習慣の様子をエイジングレベル判定スコアにより評価した。その結果、すべての群でエイジングレベルに有意な変化は認められなかった。また、H61株で製造したヨーグルト(生菌109~1010 cfuレベル/日)を様々な犬種の家庭犬20頭に6週間継続的に摂取させ、試験前後に老化の指標と皮膚トラブル・良性腫瘤に着目したエイジングレベルの評価を行った結果、エイジングレベルが有意に低下した。以上のことからH61株生菌体の摂取はイヌのエイジングレベルの改善に有益な効果をもたらす可能性が得られた。
  • 松本浩毅 , 大草 朋子, 吉松 宏基, 望月 庸平, 手嶋 隆洋, 小山 秀一
    2016 年 19 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 2016/04/09
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
    ビーグルに対して Streptcoccus salivarius K12(SSK12)を連日給与することにより口臭や口腔内細菌に対する影響を検討した。SSK12の給与群(n=3頭)と無給与の対照群(n=3頭)を用いて口腔ガス臭と呼気臭の官能検査そして気体検知管測定器を用いて口腔内のアンモニア、メチルアミン、メチルメルカプタンおよび硫化水素を測定した。口腔内スワブを嫌気培養し黒色色素産生菌集落の数を求めた。PorphiromonasP.)gingivalis P. gulae の検出は、口腔内スワブと黒色色素産生菌を用いてPCR法により行った。口腔内細菌数の測定は Real-time PCR法で行った。官能検査ではSSK12給与群の口腔ガス臭の評価ポイントの低下と呼気臭感知までの距離の延長が認められた。また、対照群のアンモニア濃度は、実験前に比べその4週後は増加したがSSK12給与群ではSSK12給与後に低下した。対照群のメチルアミンは、実験4週後には有意(p<0.05)に増加したが、SSK12給与群では給与前後で有意な差は認めなかった。口腔内スワブと黒色色素産生菌の両者からはともに P. gingivalis は検出されず、口腔内細菌数の変化には明らかな差異は認められなかった。これらのことから、SSK12は犬の口臭抑制効果を期待できることが示唆されたが、口腔内細菌に対する効果についてはさらなる検討が必要である。
  • 大辻 一也, 小泉 亜希子, 小林 なつみ, 鈴木 真理, 古川 奈々, 久須美 明子, 小林 豊和
    2016 年 19 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2016/04/09
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
    ボディコンディションスコア(BCS)は犬や猫の栄養診断法として、臨床ではよく使われる方法である。アメリカ動物病院協会は2010年にBCSを栄養診断のスクリーニングの一つとして取り入れた。日本動物病院協会もこれを受け入れた。さらに世界小動物獣医協会はBCSを栄養診断の世界標準にすることを決めた。このようにBCSはイヌやネコの栄養診断法としてオーソライズされたにもかかわらず、診断者によるばらつきは避けられない。そこで、われわれはBCS診断の精度を上げることを目的に、BCSモデル(モデル)を作成した。モデルは人工的に成型した模擬肋骨の上に、各種ゴム素材を積層しBCS1~5になるように調整し作成した。被毛の代替えとして起毛した布を使用した。実験にはBCSの異なる24頭のイヌを使用した。動物看護学を学ぶ学生にイヌを触診させ、モデルの有無によって、BCS 値のばらつきに違いが出るか否かを検討した。その結果、BCS3およびBCS4と診断されたイヌ群において、モデルを使用して診断した方が、モデル無しで診断した方に比較して、ばらつきは統計的に有意に減少した。BCS2は対象個体数が少なく統計処理が不可能であった。BCS1とBCS5の個体は被験犬の中に含まれなかった。今後、個体数を増やし検討する予定である。また、BCSはモデル有の方が無しに比較して、スコアが高く診断される傾向があった。この点に関しては、モデルの改良が必要と思われた。さらに、一般のイヌの飼い主に、モデルを用いて飼い犬のBCS測定をさせ、モデルの印象について調査した。その結果、モデルが飼い犬の栄養診断に役立ったかとの質問に対しては、約80%の飼い主が役立ったと回答した。さらに、モデルを使うことで、うまく診断できたかと言う質問に対して、約65%の飼い主がうまく診断できたと回答した。以上の結果、このモデルは改良が必要であるが、獣医療従事者のみならず、イヌやネコの飼い主の栄養診断にも有用であることが示唆された。
  • 平松 朋子, 佐伯 香織, 秋山 蘭, 生野 佐織, 小田 民美, 森 昭博, 左向 敏紀
    2016 年 19 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2016/04/09
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
    血糖変動に最も影響を与える栄養素は炭水化物であり、グルコースの消化吸収速度を緩やかにできれば、食後の血糖上昇を抑制できる。桑の葉にはグルコースと構造が類似したDNJが含まれ、グルコース吸収を抑制すると考えられている。ヒトでは桑の葉投与により食後の血糖上昇が抑制されたが、イヌでの効果は明らかにされていない。そこで、本研究では、桑の葉が健常犬の糖・脂質代謝に与える影響を検討した。6頭の健常犬に高炭水化物食とともに桑の葉粉末を0.5 g/頭で4日間給与した結果、桑の葉給与群では無給与群と比較して食後30分の血糖値が有意に低値を示し、血糖上昇が抑制された。さらに、食後30、180分の血中インスリン濃度に低下傾向が見られ、インスリン分泌もやや抑制された。しかし、血中中性脂肪濃度は給与群と無給与群で有意な差は認められなかった。本研究により桑の葉給与はイヌにおいても血糖上昇を抑制することが分かった。
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