ペット栄養学会誌
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20 巻, 1 号
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原著論文
  • 小野沢 栄里, 生野 佐織, 平松 朋子, 石井 聡子, 後藤 杏依, 宮島 芙美佳, 小田 民美, 呰上 大吾, 森 昭博, 左向 敏紀
    2017 年 20 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2017/04/10
    公開日: 2017/05/02
    ジャーナル フリー
    ヒトのがん患者の研究において、化学療法前後の血漿遊離アミノ酸濃度(PFAAs)が変化することが知られているが、イヌにおいては明らかではない。そこで本研究では、移行上皮癌(TCC)罹患犬における化学療法前後のPFAAsの変化を検討することを目的とした。TCC罹患犬3頭を用いた。TCC罹患犬にミトキサントロンを診断時および診断から3週間後に静脈内投与した。また、化学療法中はピロキシカムも6週間目まで毎日投与した。そして、0(抗がん剤投与前)、1、3、6週間目に採取した絶食時の血漿を高速液体クロマトグラフィー質量分析法にて異なる30種類のアミノ酸濃度を測定した。結果として化学療法前後で血漿中のシスタチオニン濃度に有意な変化が認められた。シスタチオニンは0週目と比較し、1および3週間後で減少、6週間後に増加した。TCC罹患犬の血漿中のシスタチオニンは、腫瘍細胞で利用された可能性が考えられた。以上より、TCC罹患犬におけるPFAAsは抗がん剤投与に影響されることが示された。今後は症例数を増やし、さらに長期間にわたり調べることで、TCCとPFAAsの関係をさらに検討していく必要がある。
  • 前川 友香里, 鈴木 馨
    2017 年 20 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2017/04/10
    公開日: 2017/05/02
    ジャーナル フリー
    エキゾチックペットとして広がりつつあるデグーは粗食に適応した草食齧歯類であり、飼育下での高栄養食給餌は糖尿病や脂質異常症の発症などが危惧されている。本研究では、デグーとのコミュニケーションをはかるための高嗜好性食物の検討とそれらの食餌による血糖への影響を検討した。臨床的に健康な成熟個体(n=6)を用いて、あらかじめ空腹時血糖値(64.2±2.2mg/dl、平均値±標準誤差)を測定後、通常食(ペレット)、高繊維質食(チモシー)、高糖質食(乾燥パイン)、および高脂質食(ヒマワリの種)の嗜好性、ならびに給与後の食後血糖値変動を調べた。17時間絶食後の摂食量は最も多いものから、高脂質食(2.7±0.2g、平均値±標準誤差)、高糖質食(2.4±0.2g)、高繊維質食(1.6±0.3g)、通常食(0.6±0.1g)の順序であった。食後血糖値は、高糖質食で最もピーク値が高く(91.8±7.8mg/dl)、高脂質食で最も低かったが(68.7±3.9mg/dl)、いずれも生理的変動の範囲内であり、150分以内で空腹時血糖値付近に戻った。以上より、常用・長期の場合は除き、高嗜好性食物の利用がデグーの健康に直ちに悪影響を及ぼす可能性は低いことが示唆された。
  • 清水 いと世, 舟場 正幸, 松井 徹
    2017 年 20 巻 1 号 p. 12-21
    発行日: 2017/04/10
    公開日: 2017/05/02
    ジャーナル フリー
    イヌや飼い主の都合により市販のフードが使用できない場合は、手作りによる食餌の調製が必要になるが、入手しやすい食材のみで手作り食を調製する場合、AAFCO養分基準(2015)における特に微量栄養素量の最小値を満たすためには、サプリメントの使用が不可避であった。しかしこの度、AAFCO養分基準(2016)が公表され、多くの微量栄養素量の最小値が減少したため、この新基準に即したレシピ設計を試みた。食材の栄養素量は日本食品標準成分表を主に用いた。通常の食材のみではカルシウムの最小値の充足には限界があるので、カルシウム源として期待できる鶏卵殻のミネラル分析を行った。糖質源とタンパク質源からなる食餌を基本食とし、とうもろこし油、豚レバー、煮干し、小麦胚芽、ひじき、鶏卵殻を補助食とした。糖質源とタンパク質源を湿重量で等量用い、基本食と補助食を代謝エネルギーで等量用いることで、AAFCO養分基準(2016)を満たすことができた。
  • 生野 佐織, 秋山 蘭, 小野沢 栄里, 平松 朋子, 小田 民美, 森 昭博, 左向 敏紀
    2017 年 20 巻 1 号 p. 22-29
    発行日: 2017/04/10
    公開日: 2017/05/02
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者において、運動療法は食事療法や薬物療法と併用し実施する治療法の一つである。しかし、1型糖尿病患者においては、運動時間帯や食事の栄養組成によっては、低血糖など二次的弊害を引き起こす危険性がある。そこで本研究では、糖尿病犬に食物繊維量の異なるフードを給与し、運動開始時間の違いおよびフード内の食物繊維量が運動時の血糖変動に及ぼす影響を明らかとすることを目的とした。結果より、食事給与6時間後の運動実施では、血糖値が急激に低下した。しかし、食物繊維の多い食事を与えると血糖値の急激な低下がわずかに抑制された。食事給与10時間後の運動実施においては、運動後の血糖値の低下はほぼ認められず、またフード内の食物繊維量が増加しても、運動時の血糖値に大きな変動を認めないことが明らかとなった。本研究より、食物繊維の量に関係なく血糖値の急激な低下を伴わない運動開始時間は、食事給与10時間後であることがわかった。
  • 高橋 知也, 森 昭博, 廣渡 祐史, 小田 民美, 田高良 聡恵, 真仁田 大輔, 水谷 尚, 三木 陽平, 板橋 由起子, 左向 敏紀
    2017 年 20 巻 1 号 p. 30-38
    発行日: 2017/04/10
    公開日: 2017/05/02
    ジャーナル フリー
    イオン交換高速クロマトグラフィー(AEX-HPLC)法は近年、ヒト領域で開発され、血清リポ蛋白質を高密度リポ蛋白質(HDL)、低密度リポ蛋白質(LDL)、中間密度リポ蛋白質、および超低密度リポ蛋白質に分けて測定することが可能となった。しかしながら、今までウシでは測定されていない。本試験の目的として、ウシの血清を用いてAEX-HPLC法による測定が可能か、AEX-HPLC法と超遠心法およびゲルろ過高速液体クロマトグラフィー(GP-HPLC)法との相関性を調査し、さらに1酪農家で飼養された泌乳ステージの異なったウシ24頭を用いてリポ蛋白質分画を評価した。AEX-HPLC法の再現性は良好な結果が得られ、超遠心法およびGP-HPLC法との測定値比較において、総コレステロール、HDL、およびLDLで有意な正の相関が得られた。また、泌乳ステージの異なる成乳牛のリポ蛋白質分画は、HDLおよびLDLともに泌乳初期から泌乳中期まで上昇し、その後乾乳期にかけて低下した。以上の結果から、AEX-HPLC法は乳牛のリポ蛋白質分画を評価するのに優れた方法であることが示唆された。
  • 松本 浩毅, 内田 祐輔, 手嶋 隆洋, 小山 秀一
    2017 年 20 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 2017/04/10
    公開日: 2017/05/02
    ジャーナル フリー

    臨床的に健常なビーグルに対するPortulaca oleracea L.(POL)を加えた加減法による五味消毒飲(MGSI)の連日給与が血清中脂肪酸濃度に与える影響を調査した。MGSIの給与量は、推奨量群(n=5)に対しては1錠270mg錠あたりにPOLを60%以上含む錠剤を日量4錠、そして高用量群(n=5)はその2.5倍量である10錠とした。給与方法は、両群ともに1日2回に等分しフードに混ぜて連日8週間与えた。MGSIの給与前(Pre)と給与後8週(8W)の血清中脂肪酸濃度は、内部標準法によるガスクロマトグラフィ(GC)により測定した。推奨量群において、8Wのエイコサペンタエン酸(EPA)濃度は、Preよりも有意に高値であった(p<0.01)。一方のn-6脂肪酸であるアラキドン酸(AA)は、Preに比べ8Wは、有意に低値であった(p<0.05)。高用量群におけるEPAとAAの変化も推奨量群と類似した結果であった。また、推奨量群のn-6/n-3は、8Wの方がPreに比べ有意に低値であった(p<0.05)。高用量群のn-6/n-3も推奨量群と同様に、8Wの方がPreに比べ有意に低値であった(p<0.05)。EPA/AAは両群のともに8Wの方がPreよりも有意に高値であった(p<0.01)。以上のことから、本研究で証明された血清脂肪酸組成の変化は、皮膚疾患を含む炎症性疾患の治療に対するMGSI給与の有用性をサポートするデータであると考える。

  • 池田 裕美, 山口 剛史, 小平 桃子, Bahry, M. A., Chowdhury, V. S., 安尾 しのぶ, 古瀬 充宏
    2017 年 20 巻 1 号 p. 47-58
    発行日: 2017/04/10
    公開日: 2017/05/02
    ジャーナル フリー
    ジャンガリアンハムスター(以下、ジャンガリアン)とロボロフスキーハムスター(以下、ロボロフスキー)はともにドワーフハムスターと呼ばれ同属でありながら、ロボロフスキーはヒトに慣れにくく多動性を示す。これまでの研究により、ジャンガリアンに比してロボロフスキーでストレス感受性が高いのではないかと仮説を立て、多動性とストレス感受性との関連性を解明することを目的とした。野生のドワーフハムスターは群れで生活するために単離ストレスがかかりやすいのではないかと考え、単離飼育を用いた。ジャンガリアンとロボロフスキーの3週齢雄を群飼で馴化した後、群飼と単飼の2つのグループに分けた。3種類の行動試験を実施し、行動量、不安様行動および社会的行動を測定した。その後得られた海馬および小脳のサンプルを用いて、L型ならびにD型アミノ酸およびモノアミンの分析を行い、さらに、血漿中コルチゾール含量の測定も行った。その結果、単飼開始初期の行動試験においては、ロボロフスキーの多動性が不安様行動を反映している可能性が得られたものの、その後の行動試験ではストレスによる影響はみられなかった。このことから、ハムスターに対し単離は弱いストレスであり、両者の行動量ならびに脳内アミノ酸およびモノアミン代謝にはほとんど影響を及ぼさないことが示唆された。
総説
解説
診療室便り
第19回日本ペット栄養学会大会ランチョンセミナーレポート
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